642: 名無しさん :2021/06/06(日) 13:21:18 HOST:sp1-79-82-160.msb.spmode.ne.jp

樺太県 鉾部

間宮海峡、樺太と大陸の再狭部の沿岸部には、多数の歩兵や戦車、ヘリが集結している。その後方には集積された大量の物資。
彼らは列を成し、沿岸に並ぶエアクッション揚陸艇に乗り込んでいる。
その上空には日本空軍の作戦機が多数、編隊を組んで広大なロシアの大陸を目指して飛んでいく。



北方に展開する陸、海、空軍、海兵隊から編成された日本軍ロシア方面軍団。
陸上戦力として機甲師団を含む5個師団45000人。
航空戦力は大型無人攻撃機や戦略爆撃機を含む作戦機約600機。
海上には、海軍第2艦隊から揚陸艦とその護衛、地上支援用艦艇を抽出した第21任務部隊。

目標は只一つ。
「ウラル以東に存在するロシア軍戦力の破壊」
それを以て、日本領沿海州ひいては本土の安全を確保することにある。

場合によってはエカテリンブルクの辺りまで進出する事を想定している為か、精鋭たる第7機甲師団を始めとした陸戦のプロフェッショナルで固められている前線部隊には、増強された兵站部隊を始めとする潤沢な後方部隊が付属している。



戦いは空から始まった。
ロシア奥深くへと突き進んでいく日本海軍の巡航ミサイルを傍目に、日露両国の航空戦力が極東の空で合いまみえる。
とは言っても、極東に展開するロシア空軍の半数は、電子戦能力で圧倒する日本空軍によって目と耳を奪われた末に蹂躙され、もう半数は飛び立つ前に地上で破壊されていたのだが。

「日本軍の攻撃です!避難を!」

ハバロフスクに存在するロシア軍東部軍管区地区本部にも、その攻撃は及びつつあった。
超音速の巡航ミサイルと、正確で疲れ知らずなコンピュータによって低空高速侵入を果たした大型無人攻撃機によって、ハバロフスク周辺に展開するレーダーや対空ミサイルなどの防空兵器が次々と破壊されていっている。
これに使用された大型UAV「火龍」は、中国方面へと大量投入された安価なモノとは一線を画す高性能機であり、搭載量や機体性能は一線級の有人戦闘爆撃機に匹敵する。

「レーダーロスト!くそっ、近隣の陸軍部隊とも連絡が取れません!」

「伝令を出せ!!仕舞ってある対空火器でもなんでも良いから出させるんだ!!」

その言葉を遮るように、市内の守りを固めていた筈のS-300防空システムのミサイル車輌とレーダー車輌が、火龍の放った空対地ミサイルによって爆発炎上する。

「参謀本部より通信です!」

「何!?よし、貸せ!」

中央との通信機能がまだ生きていたことに驚きつつも、受話器を受け止る。

『日本による攻撃が始まったと聞いたが、状況はどうなっているのだ?』

「日本による大規模な航空攻撃が行われています!この様子では地上軍による攻勢も近いかと……」

『現地戦力での対抗は────』

突然通話にノイズが走ると、それっきり受話器の相手は反応しなくなった。

「閣下?……参謀総長閣下!?くそっ!」

同時に行われていた高高度極超音速爆撃機「飛龍」の投下した滑空誘導爆弾が、モスクワ中央区の参謀本部ビルに直撃したからだ。

そして数分後、防空システムの壊滅と同時にこの地区本部も、誘導爆弾の直撃を受けて司令部ごと消し飛んだのだった。

643: 名無しさん :2021/06/06(日) 13:23:55 HOST:sp1-79-82-160.msb.spmode.ne.jp
日本軍の揚陸艇が砂浜に乗り上げる。
開放されたランプドアからは勢い良く歩兵と戦車が飛び出し、素早く展開していく。

多大な被害が出やすい上陸作戦だが、この時、ロシア軍将兵は日本軍の上陸を阻止する所か、目にする事も叶わなかった。
上空を飛び回るヘリや攻撃機、沖に待機している海軍艦艇が上陸の妨げとなりうるロシア軍戦力を歩兵の一人に至るまで、高性能な赤外線センサーやレーダーによって残らず狩り尽くした為である。

ラザレフ近郊に上陸した日本軍は素早く橋頭堡を確保すると、一息にアムール川東岸まで進出。
この動きに対して、空爆によって混乱を極めたロシア軍に能動的な対処は不可能であり、その混乱を尻目に日本軍はアムール川沿いにハバロフスクを目指し南下を始めた。



「目標空域に到達しました、今管制機から情報が…来ました。この先に移動中の敵自動車化師団」

「よし、ブリーフィング通りだな。爆撃手、準備はいいか?」

「目標指示器異常なし、いつでも行けます」

上空、敵航空戦力の居なくなった極東ロシアの空を、比較的低速で悠々と飛行しているのは日本空軍の戦略爆撃機「呑龍」だ。

4発のターボファンエンジンを搭載し長い後退翼を持つそれは、見る人が見ればB-1Bを彷彿とさせる外見の亜音速爆撃機。
制式採用から長い年月が経っているものの、高い信頼性から改良型が未だに実戦配備されている長寿兵器である。

そして、その腹には目標指示ポッドと共に、大量の誘導爆弾を抱えていた。

────────

「畜生!何でこうなるんだ!」

極東に展開していたロシア陸軍の自動車化歩兵部隊は、日本空軍の容赦無い爆撃を受けて既に半壊状態へと陥っていた。

「車から離れろ!巻き込まれる!!」

無防備に路上を走っていたBTR装甲車が、誘導爆弾の直撃を受けて爆散する。

日本の空爆は周到であり、ECMによって目と耳を封じられた所で真っ先に野戦レーダーと対空車輌が消し飛び、その後は上空にぴったり張り付いた爆撃機から降ってくる爆弾によって、目立つ車輌が片っ端から破壊されていた。


一方、地上ではデ=カストリ~マリインスコエを繋ぐラインまで進出した日本陸軍が、空爆を受けて敗走するロシア軍と接触する。

「くそっ、生き残りはこれだけか……!」

「他とは連絡が取れません……或は全滅したのかも」

ロシア軍の僅かに残った戦力は、近隣の市街地を目指して後退していた。
マリインスコエ前面まで逃げ延びたこの部隊も、アムール川に面したここに追い込まれ、いよいよ以て逃げることは叶わなくなった。

日本陸軍が進攻してきていることは確実だが、どこまで来ているのかは分からない。
しかし、偵察に出た部隊が戻って来ないことからも、近くまで来ている事は明らかだった。

「見張りを怠るなよ…奴等は必ず来る」

街道近くの家屋の一つに隠れ、対戦車ミサイルを設置し待ち伏せの用意をするロシア軍歩兵。

「もし来たら、ありったけのロケットを浴びせてから逃げるんだ」

周辺は鬱蒼と繁った森林であり、よほど地元に慣れている人間でも無い限り、車輌を含む部隊が移動するにはこの道を使うしか無い。

「祖国の土を踏んだ事を後悔させてやる……」

その時、静かに戦意を高めていたロシア兵の目の前に、小型のドローンが現れる。

「なんだ…?」

何かしらの小型の機器を積んだそれと、室内に隠れたロシア兵の目が合った。
ドローンにはそれと分かる目など無い筈だが、確実にそう言えるだけの確信があったのだ。

ドローンはいきなり上昇し始め、遠くへ逃げ出す。
それは、日本軍が来ていると思しき方向だ。

「不味い…逃げ──」

言葉を発する間もなく、潜んでいたロシア兵達は家屋ごと猛烈な爆発に巻き込まれて消し飛んだ。

その近く、森林内に身を隠していた歩兵の一団。
その先頭に居る一人が、帰って来たドローンを回収する。
その後ろでは、パワーアシストスーツを装着し、他国では車載用に分類される自動擲弾銃を構えて立っているのだった。

644: 名無しさん :2021/06/06(日) 13:27:23 HOST:sp1-79-82-160.msb.spmode.ne.jp
今回分の投下は完了です。
なかなか更新できずに申し訳ない…

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最終更新:2021年06月13日 19:19