23: 弥次郎 :2021/06/19(土) 22:46:46 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
憂鬱SRW 融合惑星 パトレイバー世界編SS「WXⅢ」2
ズイカクからの報告、また、ギガフロートとその周辺の環境浄化装置で確認された異常を以て、地球連合の現地司令部はバイオハザードの発生を認定。
同時に、現地に駐留もしくは展開中の連合の勢力に対して非常事態が宣言されることとなった。
それはγ世界に限定されたものではなく、融合惑星上の隣接する世界においても同じであり、各所でバイオハザードに備えた行動が一斉に開始。
加えてアンブレラや生物災害に対応する組織への通報も行われた。ことはすでにだいぶ進行していることが懸念されたためだ。
ノコギリザメという生態系上位の生物が変異を起こしているということは、それだけ生物濃縮が進行しているということであり、蔓延しているということなのだから。
それ故に、実働戦力、それこそB.O.W.の排除などを目的とした軍事的なオプションも含んだ部隊の展開だった。
また、その非常事態を理由に、連合とパトレイバー世界関東日本政府との間の地位協定に基づいた内政への介入が通達された。
もとより、東京湾上のギガフロートおよび東京都に属していた諸島の施政権その他を買い上げていた地球連合と企業連だったが、それ以上の介入を行うと宣告したのだ。
即ち、関東日本政府の領土・領海・領空および施政権の及ぶ範囲に事前の許可や通達なく、地球連合や企業連の人員や戦力が入り、活動するということである。
これに対して関東日本政府はバイオハザードという危機慣れぬ言葉に困惑しつつも、事態の説明を要求した。
だが、その説明もそこそこに地球連合は動くことを優先とした。すでに自体は進行しており、ひょっとすれば関東政府も見過ごしていたことがる、とさえ明言した。
そして、事実それは正しかったのである。すでに自体は進行していたどころか、分かりにくい形であれ、関東政府も認知するところになっていたのだ。
ともあれ、関東政府をしり目に連合は実働戦力を動かし始めたのであった。
東京湾のギガフロートからは大型兵器であるカーズが艦載機や装備を満載にして出撃。その他、船舶を含めた対応部隊が東京湾全体に出発した。
既に事が進行しているというのを前提に、徹底した対応を行うために。過去のトラウマがあるゆえにとてつもない危機感を抱いて。
そして、それらは結果的には正しかったのだ。
おぞましいまでのバイオハザードは、着実に東京湾とその周辺で進行しつつあったのだから。
24: 弥次郎 :2021/06/19(土) 22:48:18 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
- C.E.世界 融合惑星 γ世界日本列島 東京湾 某港
停泊している船舶の船上に無残に破壊された無人潜水艇の姿があった。
東京湾を走る海底ケーブルの破損についての調査を行っていたところ、ふいにシグナルをロスト。
慌てて別機体を送り込んでみれば、海底でボロボロになった無人潜水艇が発見された、というわけであった。
実況見分を行っている刑事の秦と久住は、新品を破壊されて嘆く担当者から話を聞きながらも、その残骸を調べていた。
「こりゃあ、ひどい……」
事実、潜水艇は表面が大きく破壊され、内部構造や電子系統などをむき出しにした状態で、かろうじて原形を保っている有様だった。
潜水艇は潜水限度があるとはいえ、水圧に耐久出来るように頑丈に作られているのが常だ。だが、それがあっけなく壊されている。
そして、それは明らかに圧潰だけでなく、何かによって破壊されたというのがありありと伺えた。
外部走行についている傷の一つが、まるで紙を力任せに引きちぎったような、そんな風に見えるのだ。
「久住さん、これって」
「ああ。鑑識の調査を待っているだが……自然にできたとか圧潰とかじゃないだろうな」
「じゃあ、なんでしょうね?何かがぶつかったとしか思えませんけど」
彼ら二人にとっては、自動車の衝突事故で破壊された車に近いといえる破壊痕だった故に特に目に付いた。
だが、現場の海域にそんな衝突して破壊されてしまうようなものはなかったというし、そもそも、この潜水艇はそこまでの速度が出ない。
そして、最前見せてもらった潜水艇の最後の映像では、何かが急速に接近してきて画面が暗転するという物だった。
これらを統合すれば、海中にいた潜水艇に何かが急速に接近して激突し、そのなにかによって潜水艇が破壊されてしまった、ということが考えられた。
状況を振り返ろう、と久住は頭を掻きながらも順に並べていく。
「最近続いているレイバーが何かに破壊される事件。目撃者や目撃情報はほとんどない。
共通しているのは、メーカーこそ違ってもレイバーが襲われ、この潜水艇もレイバーと同じ部品を使っていること。
そして、海もしくは沿岸部で事件が発生していること」
「さらにこの事件が起こり始めたのが、貨物飛行機の墜落事故の後しばらくしてから、ということですね」
うむ、と久住は頷く。関連があると100%決まったわけではない。だが、可能性はあるから虱潰しにしていくしかない。
べたではあるが足で稼いでいくしかないわけだ。畑違いなところであろうとも、誰かの手も借りて可能性を見出さねばならない。
「まあ、正直なところ、レイバーが襲撃されているってのは、言っちゃ悪いが珍しいものじゃなかった。
治安がかなり悪くなっていたというのもあるし、それ関連と思っていた」
「けど、今回のことでその可能性は消えた」
秦は久住の言わんとすることを理解できた。レイバーに対する破壊活動は0ではないにしろそれなりにあったことなのだ。
レイバーは人の形をしてはいるが所詮は車のようなもの。やり方によっては人の手によって簡単に破壊できてしまうのだ。
殊更、民生用となれば、犯罪への悪用などを防ぐためにもスペックを抑えているところがあるのだ。
だが、今回の件はどうか?厳密に言えばレイバーではなく、尚且つ、人がどうやっても活動できない場所での事件だ。
もちろん、潜水服という物を使えば人間だって同じような深度において活動することはできるだろう。
だが、果たしてその状況で潜水艇を破壊してしまうような大ごとが果たして可能であろうか?
多少論じる価値はあるだろうが、答えはNOだ。
同じような潜水艇を使えば、と考えられるが、これもまた否定できる。ラジコンなどとは話が違う物品なのだ。
個人や民間で抱えるにはあまりにも高額で持てあますのがこの手の潜水艇だ。証言からも、周囲に同様の潜水艇がいなったことは確認してある。
つまりは、ナンセンスかもしれないが、これは人間の手によるものではない可能性がある。
25: 弥次郎 :2021/06/19(土) 22:49:18 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
「前のレイバーの破壊事件にしても、操縦者の遺体がごく一部しか残っていない時点でおかしかった。
殺害して死体を隠したかったにしてはお粗末だし、まるで『食い残し』みたいだったしな」
「かといって、レイバーが破壊された際に遺体が破損したにしては残っているものが少なすぎる。
でも、久住さん。人がやったんじゃないとしたら、何がやったっていうんです?」
さぁな、と久住は首をひねる。
「ともかく、これが自然に発生したものじゃないってことは確かなことだ」
そこまで言ったとき、特車二課の人員が到着し、現場を引き継ぐことになった。
特車二課だけではない。そこには見慣れない人員までもぞろぞろとついて来ていた。
「企業連合治安維持即応部隊のものです。こちらは…」
「特殊生物災害対応派遣群です。地球連合の所属となります」
そう自己紹介している彼らをしり目に、二人は次なる目的地に向かうことにしたのだった。
「……ん?」
船から降りて陸地の感覚に体を慣らしているとき、秦は視界に小さな影を二つ認めた。
それは、幼い少女二人組であった。この時節に珍しいという感想を最初は抱いて、見過ごしそうとした。
(待てよ……?」
しかし、引っ掛かるところがありそれをやめた。
近頃犯罪が多発して治安が悪い状況なのは、民間でも警察でも共通認識となっていることだった。
ATMや銀行を狙った強盗は頻発しているし、ひったくりや空き巣などの犯罪も多発。それだけでなく詐欺も増えているとのことだ。
さらには子供を狙った誘拐事件というのも増えており、警察は上は警視庁、下は交番までかなり厳戒態勢だ。
そんな状況であるため、不要不急の外出は避けるように通達され、子供の一人歩きなどは避けるように呼びかけが行われている。
そんな状況で、子供が二人とはいえ一緒に行動する?しかも、こんな港にやってくるであろうか?
ここは砂浜などがあるわけでもなく、遊びに適しているとはいいがたい場所だ。というか、この港は民間人がほいほい入れただろうか?
「久住さん、ちょっと」
「あん?」
だから、秦は久住の名を呼んだ。
事件とは関係ないことかもしれない。だが、彼女たちを見過ごしてしまうというのはどうしても警官としてできないことであったのだ。
斯くして、刑事二人は歩き去っていく少女二人を追いかけることとなったのであった。
『追尾されているな』
『ああ。大人二人。一人は足音からして杖を突いている。おそらく足の怪我だろう』
そして、そんな刑事二人の追跡は二人の少女、ズイカクとイ400の知るところとなった。
彼女らはそもそも人間をはるかに超えたものだ。連合のアンドロイドなどと同等かそれ以上の能力とスペックを有する。
それこそ、対人レーダーなど標準装備であり、それによって自分たちを追いかける存在を感知するなど朝飯前である。別に食事は必須ではないが。
『敵意はない。どうやらあの二人は警察官のようだ。会話からしてもこちらをただの人間の子供としか見ていないようだしな』
『……そういえば、このナリで外を出歩くのは危険というか、目立ちすぎるのだったな。うっかりしていた。
それで、どうする?撒くのは簡単だが』
『ここで姿を消してもいいが……あの船での会話を聞いた限りでは、あの刑事はレイバーが襲われる事件を調べているようだ』
イ400は盗聴していた会話のログをズイカクに渡す。
ジ、という演算音と共にズイカクはデータの内容を理解し、一つ頷いた。
26: 弥次郎 :2021/06/19(土) 22:49:57 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
『こちらではまだ調べ始めたばかりの事案だ。彼らはどうやら人間の仕業ではないと疑っている。
連合も同意見だと考えているところにたどり着いているといえるな』
『やはり関東日本政府も関連する事案にぶつかっていたわけか…』
『特車二課を通じて事件を引き継いでいるが、二課に依存する形では碌に調べられないだろう。
ならば、外側から調べる必要があるかもしれない』
『あの二人に事情を説明するのか?』
刑事二人の視界から逃れ、積み上げられたコンテナに軽く飛び乗って死角に回り込みつつ、イ400は驚きの声をあげる。
確かに、特車二課といういわゆる嫌われ部署が外側から介入するというのは心証が良くなく、連携がうまくいくか不安だ。
だが、だからと言っていきなり正体を明かし、説明したところで信用と信頼を得られるとは限らない。
『だが、これも……うん、人間の言うところの縁というやつだろう』
眼下、いきなり姿を消したズイカクとイ400の姿を探す刑事の姿が見える。
明らかに慌てており、少女たちを心配するのが窺える。年を取った方の刑事は本当に少女だったのかと疑っているようだ。
実際、それは正しい。少女ではないというか、そもそもそも人間ではないのだから。
『……大丈夫なのか?』
『これでも人との交流は経験があるんだ、任せておけ』
胸を張るズイカクだが、イ400は不安を隠せない。
人間の言い方を借りるならば、フラグというやつを感じるのである。
漠然とした、演算では導き出せない、極めて感覚的であやふやなものであるが、それをひしひしと感じるのだ。
人間との交流を長く持っているズイカクとはいっても、うまくいく保証はない。
だが、代わりに自分ができるかと言われると微妙なところだ。仕方なしに、イ400は許可を出すことにしたのであった。
車に戻った久住と秦は、墜落した飛行機の積み荷を輸入したヘルメス商事という会社について調べるべく移動を開始した。
その積み荷は他の積み荷や飛行機ともども引き上げられたのだが、明らかに外傷ではない何か損傷があり、これは怪しいと踏んでいた会社だったのだ。
しかし、そんな二人の問題はそんなことではなかった。
「……」
「……」
「どうしたのだ、ハタ、クズミ」
そう、後部座席に居座る二人の少女---の姿をしたメンタルモデルとかいう存在についてだ。
彼女らは人間ではなく、高度なコンピューターによって再現された人格を持つ人外の存在なのだという。
そして、彼女らは秦や久住も聞いたことがある地球連合に籍を置いており、自分たち同様にこの事件を調べているのだという。
「いや、なんというかその……俄かに信じられなくて」
「それはそうだな。連合のこと、我々『霧』のこと、生物災害---バイオハザードのこと。一度に情報をぶつけすぎてすまなかった」
いや、そうじゃない、と思わず秦はツッコミを入れそうになった。
実際に彼女らが接触してきた時---明らかに10m越えの高さから難なく飛び降りてきた時---は大いに驚いたし、その後の身分を明かしてきた内容も衝撃的だった。
だが、それ以上に衝撃だったのは、一連の事件が生物災害(バイオハザード)という、自分たちになじみのない大災害によるものだといわれたことだ。
「それで、そのバイオ、ハザードは……」
「うむ。おそらくだが東京湾全体に及んでいる可能性がある。
聞いたことはないだろうか?東京湾でオバケハゼというのが確認されたというのを」
「ああ、聞いたことがある。というか、その魚拓のある店でハゼを食ったな。
まさか、あのハゼもその生物災害ってやつで生まれたやつなのか?」
心配げに腹を抑える久住にイ400は安心させるように言う。
27: 弥次郎 :2021/06/19(土) 22:51:06 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
「いや、多少摂取したところで問題はないと推測されている。加工され、調理されているならば影響はないだろう。
だが、問題なのはそんな生物を生み出してしまう物質などが東京湾内にばらまかれているということだ」
久住の目の前に、テレビの画面のようなものが浮かび上がる。ズイカクの操作によるものだ。
そこに映っているモノに、ベテランの久住も目をむいた。
「これは私たちが捕縛したノコギリザメだ。全長は5mにも及んでいる上に、高い攻撃性を有していた。
これが自然に生まれた者とは考えにくく、事実として細胞が変異を起こしていた。
おそらくだが、これの原因になったものはまだ野放しになっている。あるいは、もっと変異して怪物になった個体がいるかもしれない」
「ということは……あんたらは……連合は一連のレイバー破壊事件が、異常に進化した生き物によるものって考えているのか?」
「より正確に言えば、人間によって人為的あるいは偶発的に生み出された生物によるもの、だな。
その生物による影響は他の生物にまで及んでいる可能性が高い」
だから、とイ400の目は東京湾の出口の方を向く。
遠く、地球連合から派遣された船団---いや最早艦隊が東京湾の封鎖作業に取り掛かっている頃だ。
原因物質や生物がまだ未確定である以上、拡散を抑止するためには完全に物理的に封鎖を行うしかない。
「今頃、東京湾は封鎖を行っている頃だろう。関東政府も追認せざるを得ない。
これが外洋にまで拡散したら、もっと多くの生物が変異して被害をもたらすかもしれない」
「そんなことになったら……」
「ああ。今度はレイバーどころではないだろう。見境なく人が襲われることになる。
最悪の選択をする必要になる前に、何とかしなくてはな」
重たい沈黙が車内に降りた。レイバーの破壊事件が、ここまで大きな事態に発展するとはだれが考えたであろうか。
彼女らの言うところの最悪の選択については聞くことを控えたが、久住と秦はそれがろくでもないことであることをなんとなく察した。
そして、彼ら4名は問題のヘルメス商事についての事実をつかむことになった。
すなわち、ダミー会社。会社のあったテナントはすでに空であり、そもそもテナントへの人の出入りも乏しく、郵便受けはDMやチラシで満杯。
さらには、転居した先の住所及び電話番号については出鱈目そのもの。つまり、実態も何もなかったということになる。
果たして、そんな会社が輸入した「荷物」が理化学用品というまともなものであると断言できるであろうか?
連合へと逐次報告を行うイ400とズイカクを伴い、二人の刑事はさらなる情報を求め、捜査を続行することにしたのだった。
28: 弥次郎 :2021/06/19(土) 22:51:42 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。
というわけで第二話です。
いきなり原作と?離する感じとなりますね。まあ、是非もないよね。
しかし少女二人を引き連れた大人二人…おまわりさんこいつです!あ、こいつらもおまわりさんだったわ
最終更新:2023年06月20日 21:35