476 :ひゅうが:2012/02/07(火) 16:42:42
→438-441 →461-463 の続きです。
――同 海賊船「イヴァンのばか」号
「い・・・一撃で?一撃で1000隻を超える軍艦が沈んだだと!?
しかもあれだけの広範囲に広がっているのに!?」
「バカな。トールハンマーでさえ300隻を撃沈するのが精いっぱいだぞ!?」
「あ。また発砲しました!」
「最初から一斉撃ち方か・・・! これは完全に罠にはめられているようなものだぞ。」
「船長?」
船長は、地球時代の砲撃戦を思い出していた。
空中を飛翔する砲弾は条件が変われば落下場所が変わる。
そのため試射を行い、命中可能と思われる照準を導き出してから命中する可能性を高めるべく多数の砲弾を放つ。
これが試射、斉射の流れである。
宇宙時代に入ってもこの方法は基本的に変わっていない。
しかし、日本艦隊は当初から一斉射撃を開始した。
これは、射撃データを完ぺきに近い形で日本側が手にしていることを意味している。
もしくは、この距離が日本の移動要塞にとり至近距離なのかもしれないが。
「船長、『海賊艦隊』が壊乱状態に!後方の第5、第6梯団は反転していきます!」
「後方に艦影多数!識別信号・・・日本宇宙軍第4艦隊です!」
見ると、要塞と白色輝巨星「須佐乃男」を中心軸にして扇形に展開する日本艦隊の左翼同盟側出口方向に光る艦影が見えた。
海賊船団の後方から2000メートル級の汎用戦闘艦部隊が出現したのだ。
数は1万を超えている。
「信号受信、『降伏船団へ、これよりわれら貴艦隊を臨検す。その場より動くなかれ。』」
「臨検?退避する海賊船団に向かうのではないのか?」
「船長。そのことですが、この識別信号をご覧ください。『IJN-TF』実験艦隊と。」
「モニターに拡大図を。」
第4艦隊の後方に位置している一団から発信された識別信号と、望遠映像がスクリーンに映し出される。
そこにいたのは、第4艦隊の円錐形とは少し違った艦艇たちだった。
外見は地球時代の軍艦の船体に似ている。
しかし、その艦首には2つの艦首砲と思われる開口部があり、多数の半球体のような「レーザー砲塔」と思われるものがついている。
そして同盟や帝国艦では艦首に集中している10門以上の主砲は影も形もない。
そして先頭にいるのは。
「女王陛下のお召し艦『シラサギ』・・・それに儀仗艦隊!?」
「さらに後方に別の識別信号があります。――なんてこった。冗談だろう?」
船長は驚くのをやめようと思いつつモニターを見、それに映し出された国旗を見て愕然となった。
「大英帝国…ロイヤルネイヴィー・グランドフリートとフィンランド共和国国防軍 星界 艦隊だと?ここは宇宙空間であって13日戦争時の大西洋じゃないんだぞ!?」
――このとき、回廊の同盟側出口から「背後からの一撃(バックハンドブロウ)」を加えたのは、艦隊の合同演習任務を急きょ変更した銀河系内郭国家連合(UNIG)条約軍と、遠くフェザーン回廊からの帰途にあった今村均中将率いる実験艦隊(第1儀仗派遣任務部隊)だった。
海賊船団は、文字通り袋の鼠と化していたのである。
後方へ反転し脱出を図れば、「シラサギ」の主砲の餌食となり、さらに逃げようとすれば実験艦隊の全周囲偏向ビーム砲により次々に撃ち取られていく。
そして、気合十分な第2艦隊の汎用艦部隊がさらに後方で網を張り、支援砲撃のもとで数は少ないがそれでもあわせて3000隻に達する英艦隊とフィンランド艦隊が快速を発揮しこれを攻撃するのである。
しまいには面倒くさくなったのか、日本艦隊は「攻撃型」といわれる大型の「魚雷」をしょった汎用戦闘艦を投入。
広域殲滅攻撃まで仕掛ける始末だった。
こうして後ろが押さえられた海賊船団は、前へ進むことしかできなかった。
この間、要塞速射砲群や「戦艦」主砲は火(光子と準タキオン)を吹き続け、7斉射を行った段階で残敵掃討へ移行した。
戦闘終了が宣言されたのは宙京標準時0700だった。
この戦闘を半ば公然と観察していた自由惑星同盟情報部および銀河帝国情報部は異口同音の報告を上司に送ることになる。
いわく「サジタリウス回廊は海賊の鉄血で舗装されたり」と。
最終更新:2012年02月07日 18:54