718: 弥次郎 :2021/07/04(日) 23:08:12 HOST:softbank126066071234.bbtec.net


憂鬱SRW 融合惑星 パトレイパー世界編SS「WXⅢ」7-2


  • C.E.世界 融合惑星 γ世界 日本列島 関東日本政府施政下 都内 某湾港施設付近



 展開する自衛隊の生物兵器対応部隊とは別に、警察組織のレイバーにより構成された対応部隊も展開していた。
自衛隊などよりも軽装備であることは否めない。しかし、それでも最新のレイバーであるミルトンらを配備し、B.O.W.に通じる武器を持つため、戦力なり得た。
殊更、この大規模な誘導ポイントに配備されている特車二課の練度はそこらのレイバー部隊を凌ぐレベルである。
 とは言いつつも、彼らはあくまでも自衛隊の補助に他ならない。
 誘導用に設置したレイバーのモーターの駆動におびき寄せられる変異体は必ずしも正面からくるとは限らない。
殊更に小型種になると思わぬところから現れて襲い掛かってくるのだ。

「まったく、すごい数だよ……」

 陣頭指揮という形でセルバンテスの車内に収まる後藤は、次々と倒れていくB.O.W.の群れに感嘆の声を漏らす。
前線で戦う自衛隊の部隊の放つ銃火器の音と振動はここにも届いている。そして、B.O.W.のあげる悲鳴のような、あるいは雄たけびも。
 そして、特車二課のレイバーたちが主に小型種に対応している戦闘音や破壊音もこちらに届いてくる。
 もうこの周辺一帯は穏やかな湾港ではなく、戦争が起こっている世界だった。
 あの柘植の起こしたまがい物の戦争などとは次元の違う、まさに大戦争だった。人が相手ではないという点では異なっている。
しかし、その相手が人を積極的に襲う怪物、しかも人工的に作られた生物だというのだから、これもある意味人間同士の戦争か。

 周辺一帯の住人はとっくに所轄を含む警察の誘導で安全な場所まで退避している。
 また、事態が事態だけに自衛隊も警察も建造物や道路などへの被害や流れ弾は斟酌しなくてもよいと通達されている。
だからこそ、ここまで「戦争」が実行に移されている状況だ。警察までも動員した、まさに総力戦。
あの柘植でさえも疑似的にしか再現することができず、結局は野望を阻止されて、発生しなかった「戦争」。
それがまさか、こんな形で実現することになろうとは。

「柘植が見たら、なんて思うんだろうね……」

 ある意味では彼も被害者というべきなのだろうが、それでも犯罪者であった男。
 この東京に架空の戦争の空気をもたらそうとあらゆることを引き起こした男。
 だが、その引き起こした事件の後に、本当に戦争になったと知ったならば、どう思うだろうか。
待ちかねた戦争が起きて国民や政府の意識が変わることを期待するか、連合からの外圧でしか結局戦争できない実情に失望するか。
はたまた、人の生み出した怪物との戦いに恐怖してしまうだろうか?
 まあ、もはやそれは過去の事件のことであり、過ぎ去った出来事にすぎない。
 今は生存競争あるいは生存戦争だ。人間という種の生存と存続をかけるという、なんとも大きなものを背負っての戦い。
むしろ、これまでの戦争が児戯にしか見えなくなるようなスケールと重さだと思えてくる。
まさか市民を守るお巡りさんが、そんなことに参加するとは、まったく飛躍にもほどがあるではないか。

「ともあれ、頑張ってくれよ」

 そして、後藤は最前線に立つ二課のメンバーの無事を祈る。
 たいそうな事は言えないし背負えないが、彼らのことくらいは背負いたい。そう思えた。

719: 弥次郎 :2021/07/04(日) 23:08:46 HOST:softbank126066071234.bbtec.net

 そして、前線。
 決して大量のN-β型B.O.W.の相手をするわけではないにしても、小型故に逃げやすく、またどこかに隠れてしまう可能性があるので根気が求められる戦場。
そこに、特車二課のレイバー部隊は展開していた。ミルトンとイングラムを主軸とする小隊はいつになく緊張感を持っていた。
また、上空からの情報管制と索敵や装備の投下などを担当するヘリコプターが空で待機している。
さらに言えば、セルバンテスから放たれたドローンによる細かい道路や通路の索敵も入念に行われており、万全の体制であった。
武装面でも、対B.O.W.の弾薬を装填したライフルや自動拳銃を標準装備していることもあって抜かりはない。
 故にこそ、あとは搭乗者たちの技量と判断に任される状態だった。

『太田さん、やたらめったらに撃たないでくださいよ』
『なんでこっちは拳銃と前もつかっていたライオットガンだけなんだ』
『だって、その、トリガーハッピーは困りますし……』

 しかし、現場の面子は案外緊張感がないというか、いつも通りであった。
 市街地ということもあってサプレッサーを装着し、またB.O.W.の体液などを想定したジャケットを装着した武器を構える彼らは、しきりに武器のことを話していた。
実際、太田の乗るミルトンはレイバー用の自動拳銃とライオットガンのみに限定されていた。
残りの機体がアサルトライフルなどを装備していることと合わせれば結構な差があるといえる。
如何に自動拳銃と言えどもアサルトライフルにはかなわない。一発の威力、有効射程、連射性などで負けているところが多いのだ。
 だが、太田の性格を考えるとこれが順当、と南雲や後藤は判断していたのだ。射撃の腕を疑うわけではないが、やたらめったらに撃たれて誤射も困る。

『相手は撃っても再生するんだろう?それなら拳銃なんかじゃ足りないだろう』
『もっともですけど、その拳銃の弾丸はすべてラムロッド弾というもので、効果的な弾薬だそうです。
 と……来ました』

 その時、ドローンが急速に接近するB.O.W.を補足する。
 すぐさまデータリンクによって位置情報や速度などが共有されてしまう。相手がどのように動こうが、立体的な監視の目から逃れるのは容易ではないのだ。

『フロントには泉機、バックアップには太田機と熊耳機が展開を。
 確認されたのはいずれも小型のT型。懐に潜り込まれると厄介なので、確実に排除を』
『了解』
『了解だ』

 オペレーターの声と共に、小隊は迅速に動く。
 音響センサーは確かに疾走するT型の足音を複数補足していた。自動車くらいの大きさというと大きく見えるが、レイバーの目線では意外と小さく見える。
まして、自動車並みの速度で有機的且つ俊敏に動くとなれば、なおのこととらえにくいものだ。レイバーと言えど、懐に入られて噛みつかれればただでは済まない。
 目視で確認したそれらは総数が9体。レイバーの数の倍以上だ。そして、一気に迫りくるそれはこちらを明確に獲物としてみていた。

『とらえた、撃ちます!』

 だが、あくまでもそれは一般的な目線での話だ。
 コンピューターによる照準補正と適切な姿勢制御によって、接近を試みるT型はライフルの弾幕に次々ととらわれる。
40㎜というのは小さく見えるかもしれないが、地上においては絶大な火力だ。事実、直撃でなくとも至近弾で肉体はそがれ、破壊される。
それでも前進してくるのは再生能力ありきなのだが、立て続けに放たれるアサルトライフルが相手では分が悪い。

『ええい、クソ……効率が悪いだろうに』

720: 弥次郎 :2021/07/04(日) 23:09:42 HOST:softbank126066071234.bbtec.net

 泉と熊耳の射撃に合わせ、太田もライオットガンを引き抜いて照準を定める。
 弾丸をばらまく役は二人が行っているので、太田の役目はなおも接近してくる個体の排除だ。
 OSによる補助があり、弾道予測と進路予想も表示される。だが、最後には乗り手の操縦がモノを言う。

『そこだぁ!』

 そして、トリガー。
 吐き出された対B.O.W.徹甲弾は、もつれながらも接近していたT型に大きな穴を穿った。体の中心を見事に貫く、いい射撃だった。
 だが、一発で満足するほど太田は甘くはない。ここは鉄火場だ。多少のことで気を抜けば痛い目を見ることをよく理解している。
すぐさまポンプアクション。次弾を込めて、すぐさま発砲してのける。トリガーハッピーとか、特車二課に付きまとう悪い噂の元凶ともいえる太田。
 しかし、その能力は決して悪いわけではない。むしろ、補助もあるとはいえよく命中させているほどだった。
 これであと少し普段の冷静さなどがあれば、と太田のバックアップも担当する熊耳は思わざるを得ない。
 しかし、そんなことを考えている間に、さらに増援が現れた。今度は肥大化した肉の塊のようなC型と突破力に優れたD型。

『泉!』
『わかっています!』

 こちらの射撃を受けてもD型はひるまない。というか、表皮で弾いて突撃してくる。
 それがわかっているから、泉の乗るミルトンはとっさに横っ飛びにジャンプして回避する。
 同時に、相手の進路上にうまく重なるように、ビルの壁面へとミルトンの腕からカーボンワイヤーを射出していた。
B.O.W.との戦いのために普段とは違う特殊なワイヤーのそれは、定められた通りに高電圧の電流を流し始める。
そして、D型はそこへと一気に突っ込み……電気に焼かれた。

『今です!』
『おお!』

 いっそ香ばしいとさえいえる匂いと煙の中で、太田はD型の弱点---すなわち、柔軟に動かすために柔らかい脚部に狙いを定めていた。
 電流が一気に流れたショックで一瞬の硬直を起こしている間に、太田は動作入力を完了している。
 オートマチックハンドガンからラムロッド弾を含んだそれが立て続けに発砲され、吸い込まれるように命中する。
 そして、ラムロッド弾は遅滞なく効果を発揮し、D型の脚を奪い、再生をさせないように作用した。

『とどめ!』

 そして、熊耳機がとどめとばかりに足を撃たれて動けないD型に弾丸をフルオートで叩き込む。
 とどめにアッドオングレネードランチャーで焼夷弾もぶち込んだ。
 高電圧を食らい、連続して弾丸を撃ち込まれ、焼夷弾で焼かれたD型は、やがて活動を停止させる。体液とその他もろもろを垂れ流しにして、生物兵器は息絶えた。

『次、3時方向から6体接近中!』

 だが、終わりはまだ来ない。次のB.O.W.が迫ってくることをオペレーターたちが伝えてきた。

『まったく、千客万来だな!』
『本当ですよ!』

 言い合いながらも、リロードと弾薬の斬段の確認を済ませ、次なる敵を求めて特車二課のレイバーたちは戦う。
 市民を守る警察さえも武器をとらねばならない地獄のような環境でも、必死に、生き延びるために。

721: 弥次郎 :2021/07/04(日) 23:10:25 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。
あんまり戦闘書けません……(白目
ま、まあ、ストーリー進行優先ということで
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最終更新:2023年07月09日 21:34