625 :YVH:2012/02/08(水) 21:23:50
 今回の「サジタリアス回廊会戦」に関する報告が、帝都にもたらされたのは会戦終了から
数日ほど経ってからだった。
統帥本部から報告を受けた軍務尚書・エーレンベルク元帥は、他の三元帥に対し緊急招集をかけた。

 -軍務省・高官専用会議室-

今此処のスクリーンにはサジタリアス回廊会戦の様子が映し出され、帝国元帥四名がそれを視聴していた。

「・・・なんと言う戦力だ・・・ニホン軍は・・」

記録を見終わってから宇宙艦隊司令長官・ミュッケンベルガー元帥が呟いた。

「この回廊を突破するのは、容易ではないな・・・
 司令長官、卿に聞くが、もしこの回廊を突破しようとすれば、
 どの位の戦力が必要であると考えるか?」

軍務尚書の問いに、元帥は考え込むように答えた。

「ウーム・・・十八個艦隊すべてを投入しても、難しいかも知れぬ・・・
 回廊に着くまでに叛徒どもの抵抗も考慮せねばならぬからな・・・」

その元帥の発言の後、幕僚総監のクラーゼン元帥が口を開いた。

「何を弱気な、と言いたい所だが、私はフェザーンで実際に見て居るからなぁ
 クラトカ大佐が日本の技術者にそれとなく訊いた所によると、あの日本の戦艦、
 「ナガト級」、「イセ級」共に射程距離が一千万キロを越えるそうだ」

因みに、帝国軍の標準戦艦の射程は最大でも一千万キロに届かず、有効射程は六百万キロである。

「今は仮定の話をしていても、仕方あるまい。
 もう一つの問題は、あれだけの数の海賊どもが何故、イゼルローン回廊の
 我が軍の哨戒網をすり抜けられたか、だ。事は国防に関わる事だと思うが?」

ある意味、不毛な話に突入し掛けた所で、統帥本部総長・シュタインホフ元帥が問題提起を行なった。

確かにあれだけの数の宇宙海賊が大手を振ってイゼルローン回廊を通るのは不可能であり、
現在の哨戒網に穴があるのか、または海賊側に情報をリークする者がいるのかを早急に調べる事に
意見の纏まった四元帥は、情報部や憲兵隊を密かに動かしてイゼルロ-ン要塞を内定する事に決めた。

また同じ頃、新無憂宮では辺境を含むオーディン非在住の貴族たちに対し、軽挙を戒める勅使の派遣が決定し
即日、帝都を飛び立って行った。

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最終更新:2012年02月08日 21:41