107: 弥次郎 :2021/07/17(土) 21:33:07 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
憂鬱SRW 融合惑星 パトレイバー世界編SS「WXⅢ」9-2
γ世界関東日本政府領内同時多発バイオハザード---通称廃棄物13号事件から5日余り。
未曽有の危機に襲われたγ世界は、一応の平穏を取り戻しつつあった。
バイオハザードの鎮圧および該当地域の隔離、封鎖、汚染除去の実施などにより、被害の侵攻を押しとどめつつあったのだ。
無論のこと、経済的あるいは人的打撃は避けえないものだった。しかし、本当にバイオハザードが発生した場合のことを考えれば、遥かに安いモノだった。
そう、バイオハザード拡散阻止のために戦略兵器を広域に用いて人的被害を一切無視した「滅菌」などよりははるかに。
しかして、バイオハザードの連鎖は何も日本に終わらない。
背後関係を洗う中で米国までもかかわっているということが発覚し、尚且つ、製造されたB.O.W.がほかの場所に運び込まれた可能性が出てきたのだ。
その場所こそが、マーシャル諸島。太平洋上に浮かぶ小さな島の集まり。文民の統制も、政府による管理もない。
どれだけ恐ろしいものであるかも理解することなく、ただ個人の思想で動く人々の最後のあがきがそこにあった。
これだけ短い期間で連合や企業連の捜査の手が及んだのも、バイオハザードに対して刻まれたトラウマや、その鎮圧を使命とする人々の働きによるものだ。
また、関係者を容赦なく尋問やメモリースキャニング解析などにかけ、半ば人権などというものを無視して調べ上げたことも影響しているだろう。
研究員や関係者は、言ってみればバイオテロを行ったテロリストなのだ。連合からすればそれに堕ちた時点で人権だ尊厳だという擁護は受けられない。
むしろ、東京湾周辺で発生した被害を理由に即座に処刑しないだけ、極めて理性的とさえ言えるだろう。
閑話休題。
ともあれ、情報を集め、確定させ、戦力を集めた連合にロックオンされた時点で、このマーシャル諸島の基地の運命は決まったようなものであった。
もとより、助力を得ていたユージア、日本、
アメリカの3か国からもすでに見切りをつけられた勢力にすぎないのだ。
そして、その国にしても自らの意思に反して行動する連中を弁護するほど甘くはない。まして、実際にテロを引き起こし、血税を費やした連中なのだから。
そんなわけで、5日という十分すぎる期間を経て、マーシャル諸島は、米軍のマイケル大佐は、自衛隊の石原一佐は、その派閥はチェックメイトを駆けられたのだった。
- C.E.世界 融合惑星 γ世界 マーシャル諸島 クェゼリン島 米軍基地
マーシャル諸島は、お世辞に広い島々の集まりとは言えない。
どちらかと言えば、南太平洋に浮かんでいる、吹けば飛ぶような小さな島ばかりである。
米国は案外、このマーシャル諸島と縁が深い。WW2においてはWW1で日本の委任統治領とされた此処をめぐって激戦が繰り広げられた。
そのあとは太平洋諸島信託統治領となり、有名なビキニ環礁における核実験の舞台となったのである。
一応信託統治から抜けて独立国と放っているが、アメリカとの間に結ばれた自由連合盟約に抵触しない範囲でしか外交権を有さないなど、その影響力は衰えていない。
故にこそ、この適度に僻地で本国の目が届きにくく、それでいて米国の威光を振りかざせば自由がある程度効く場所をマイケル大佐は利用した、というわけだ。
だが、中途半端に米軍の、米国の力を利用したばかりに、マイケル大佐の動きはわずかながらも記録に残ってしまった。
それこそ、本国では見逃されるものだとしても、違和感を以て追及を受ける程度には証拠を残してしまった。
108: 弥次郎 :2021/07/17(土) 21:33:48 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
地球連合はこのクェゼリンを第一目標、ついで、米軍の関与のあった島を順に目標として設定。
高高度からのB.O.W.を含む歩兵の空挺投入を先駆けに、海上からの強襲揚陸を仕掛けることで一致した。
さらに、バイオハザードの影響が拡散しているということを想定し、MAアプサラスを滅却用に護衛戦力と共に投入。
とどめとばかりに、融合惑星衛星軌道上からの爆撃の用意も行っている。マーシャル諸島の被害?知ったことではない。
厳密に言えば配慮はするし、いざとなれば住人を逃がすことはするが、多少のダメージは目をつむってほしい、というやつである。
まあ、ここまでやるというのはそれほど状況が悪い時に限ってということであるので、如何に迅速に制圧を行うかが肝であった。
そして、作戦の決行日。
その日のクェゼリンの米軍基地は、朝から本国や他の拠点との通信が繋がらないという事態の発生から始まった。
海底ケーブル、無線、衛星電話のいずれもが使用不可という事態に、流石に基地の誰もが違和感を覚えた。
故障というよりも、つながらないという方が正しい。その悉くが接続はされるにしても、どこかに飛ばされているかのようだった。
ついでに言えば、それはクェゼリン島の属する家主たるマーシャル諸島共和国に問い合わせをするが容量を得ない回答が返ってくるばかり。
唯一わかることは、マーシャル諸島共和国側も通信インフラが用をなしていない、ということだった。
「一体これはどういうことなのだ……?」
日本から逃れてからここマーシャル諸島に身を置いているマイケル大佐は、困惑を隠せないと同時に、得体のしれない恐怖を感じていた。
連合の強制介入という事態が発覚した直後、矢も楯もたまらずとっさに日本から出国することで難を逃れた彼だったが、本国に戻ることもかなわなかった。
本国にいた部下、そして日本に残った部下から、自分の身柄が狙われているらしいということを知った。
そして、ニシワキセル計画が露呈しているかもしれない、ということも。
通信が寸断される直前に送られてきた最後の情報では、日本で首都東京に怪物が現れた、というニュースが流れていたこと。
思い当たるところがあるどころではない。まあ、彼にしてもやけっぱちになった研究員たちがB.O.W.を解放するなど考えもしなかった。
それに、貨物飛行機が墜落しその中身が漏洩して大きく成長して暴れているなど、知りもしなかった。つまるところ、彼は多くを過信し、あるいは見過ごしていたということに他ならなかったのである。
そして、そうこうしている間に、連合によるマーシャル諸島クェゼリン制圧作戦の火蓋は切って落とされた。
始まりは、航空機からの制圧用のB.O.W.---透明化能力を持つハンターの改良型であるファルファレルロ、大型の甲殻類ベースのU-8の投入だった。
事前にジャミングを行い、通信を遮断し、人の出入りも制限していた状態のクェゼリンはそれらの治められたポットの着地を見ていることしかできなかった。
無論、このクェゼリンにはロナルド・レーガン弾道ミサイル防衛試験場というものがあり、施設自体は決して劣っているわけではない。
しかして、どうしてもというか、規模は大きくないし、備えられているモノも立派とは言えない。
何しろ南太平洋に浮かぶ小島にすぎず、アメリカの勢力圏の内側にあって、外敵というものが存在していないようなものなのだから。
そんなわけもあり、大量の投入ポットは難なくクェゼリンの基地内部に着地。そして、次々と中身を吐き出し始めた。
この世界で生み出された本能に従って暴れるだけのB.O.W.などとは違う、完成され、制御されたB.O.W.達。
それは定められたプログラムに従い、抵抗する人間を排除すべく行動を開始した。
「おいおい、なんだよあれ……!?」
「怪物だ!」
「武器を持ってこい!警報を鳴らせ!」
当然、これには米軍関係者も気が付いた。明らかに人為的に投入されたであろう生物。
クェゼリン基地は、沖縄などにある米軍基地同様、基地に勤務する兵士やアメリカ政府の職員とその家族が生活しているのだ。
総人口は2500人と言えども、代えがたい2500人だ。そして、ここにいる軍人たちは職務に忠実であり、これを守る必要があった。
しかし、その勇んで飛び出した兵士たちはいきなり出鼻をくじかれることになる。
そう、ハンターの亜種であるファルファレルロは透明化能力を有するのである。すなわち、目視確認ができなくなる。
正確には体表の色を周囲の環境に合わせて変化させる一種のカメレオンに近いもので、よく見れば視認も可能なのだが、精度も色合いの変化も段違いすぎた。
109: 弥次郎 :2021/07/17(土) 21:34:34 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
「き、消えた!?」
「嘘だろ!」
飛び出してきた兵士たちは困惑するしかない。
目を凝らすが、その程度でごまかせるものではない。サーモセンサーや生体感知センサーなどがあればなんとかなっただろうが、それはかなわない。
あるいは、赤外線カメラなどがあれば。しかし、ないものねだりに過ぎない。
「ど、どこに…グアァ!?」
「なっ…いつの間に……!こなくそ!」
いつの間に接近を許したのか、兵士の一人がそのハンターの鋭利な爪の餌食となる。
明確に人を狙った一撃、すなわち、首を狙った一閃はあっけないほど簡単に人に致命傷を与えてしまえる。
当然、反撃の射撃が襲い掛かってくるのだが、それはハンターの体表にある頑丈な繊維によって弾かれてしまう。
生半可な銃火器を弾けるほどの頑丈なそれは、長年の改良を経て生み出されたもの。至近距離からであれ、この西暦世界の銃火器など、まともに通用しない。
「グアア!」
「ガッ……!いってえ……!」
そして、撃たれながらも邪魔だといわんばかりにハンターは兵士を殴り飛ばす。
軽く数メートル吹っ飛ばされた兵士をかばうように他の兵士が援護するが、一向にハンターは気にも留めない。
さらに言えば、何もハンターは一匹だけではない。ほかのハンターが死角に回り込み、次々に襲い掛かってくるのだ。
拳銃か、あるいはアサルトライフル程度の武装しかない兵士たちに抵抗のしようはなかった。
「この……化け物どもがぁぁぁぁぁ!」
だが、そこにジープに重機関銃を載せたテクニカルが到着し、弾幕で薙ぎ払う。
長年使われ続けている信頼性に優れた12.7㎜の弾幕の嵐は、その圧倒的な段数でファルファレルロの姿を強引にあらわにしていく。
透明化するといっても、存在までも消すことはできないのだ。当然、弾丸がぶつかればそこに存在することが露呈する。
加えて、12.7㎜という大口径砲は少なからずハンターにダメージを与えることができる口径だ。
致命傷を与えることはできなくとも、ハンターたちがそれを脅威と認識し、動きをけん制することができる。
110: 弥次郎 :2021/07/17(土) 21:35:04 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
「今のうちに体勢を立て直せ!もっと重火器を持ってこい!」
「負傷者を下げろ!急げよ!」
一応の立て直しには成功しているが、依然として状況は不利だ。
必死に攻撃を放っているが、怪物たちは健在なままであり、ついでに言えばこちらを虎視眈々と狙っている。
もし、この事態を冷静に俯瞰することができれば、その奇妙さに気が付いたことだろう。すなわち、なぜ米軍基地だけが狙われているのか、ということに。
そう、人為的に投入されたこれらは、きちんと人為的なコントロールを受けて、米軍基地だけを重点的に狙うようにコントロールされていたのだ。
それこそが、兵器として開発された生物兵器、すなわちB.O.W.なのだから。
そして、投じられたコンテナからはファルファレルロに続いてのっそりとU-8もまた動き出す。
こちらはまさに怪物というしかない巨体と姿を持っていた。というか、ハンターがかわいらしく見えるレベルの怪物だ。
故にこそ、コンテナの中から外装を押しのけてその巨躯をさらしたとき、誰もがそれに目を奪われた。
慌てた動きで重機関銃が一斉に指向され、放たれていく。しかし、甲殻類をベースとした堅い外殻はあっけないほど簡単にそれらを弾いてしまった。
「GYUAAAAAAAAAAAAAAAA!」
そして、おぞましい咆哮があがった。
兵士たちの肝を寒からしめる、極めて生物的で、敵意に満ちた咆哮。
これからお前たちを殺すのだと、そう宣言するかのような巨大な叫び声。
「おお、神よ……」
誰かが、思わずこぼした。
こんな怪物が突如現れるなど想像もしていなかった。
そして、こんな怪物に勝てるのだろうかと、怯えが走った。生理的にというか、本能的に感じるのだ。
個の怪物はとてつもなく恐ろしく、とんでもないものなのだと。人が簡単にどうにかできるものではないのだと。
それでも、と彼らは武器を構え、必死に歯を食いしばって立ち向かう。彼らの背後には守るべき国民がいるのだから。
米軍兵士たちの苦難は、まだ始まったばかりであった。
そして、そのB.O.W.の投下にまぎれるように、両生類(フロッグマン)たちがクェゼリンへと密かに上陸を果たしていた。
ハンターやU-8を陽動とした、別方向からの兵士の浸透揚陸、というわけである。
潜水艦から発した潜水艇を経て上陸した歩兵たちは、水中航行用の装備を脱ぎ捨てると、一糸乱れぬ動きで米軍基地へと突入する。
時間との戦い。それをだれもが認識していた。ハンターたちが騒ぎを起こしている間に、要人を抑え、基地を制圧すること。
そして、今回のバイオハザードに関わる情報などを抑え、これ以上の拡散を抑えること。
彼らの密やかなる戦いは、始まった。
111: 弥次郎 :2021/07/17(土) 21:36:06 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。
多分次の話で制圧は完了しそうですね(無慈悲)
修正を
108
×正確には体表の色を周囲の環境に合わせて変化させる一種のカメレオンに近いもので、よく見れば視認も可能なのだが、
〇正確には体表の色を周囲の環境に合わせて変化させる一種のカメレオンに近いもので、よく見れば視認も可能なのだが、精度も色合いの変化も段違いすぎた。
最終更新:2023年07月09日 21:37