703: 635 :2021/07/21(水) 07:15:59 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp

銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ サセボ異界紀行八冊目という名のside:艦長なお話



自分たちの目の前に我らが指揮官がいらっしゃる。
その美貌は正しく女神あり我らが夢想した如何なる御姿よりもお美しい。
否、美しいという言葉すら陳腐で取るに足らない、その御姿を顕す言葉を私は持ち得ていない。
芸術の国家を自称し他称される我らフランス連邦共和国が誇る画家も音楽家も詩人も人である以上その御影を作り出すこと能わず。
ただただ頭を垂れたことしか出来ないであろう。

そして何より慈悲深い。
我らの不敬、いや不敬というのも烏滸がましい程の我々の罪、貴女の秘密を暴こうとするという定命の者故の罪。
その全てを我らが指揮官はお許しになった。


「私、艦娘リシュリューも我らが指揮官と貴方達が呼ぶ戦艦リシュリューも怒ってはいません」


その一言でどれだけの者が救われたか…貴女はご存知でありましょうか?
そして私が返上した戦艦リシュリューの指揮権、その証として共に返上した貴女の鋼の身体より生み出された剣、その剣を佩いた貴女の御姿。
戦艦リシュリューの指揮権を御身自らが携えると我々に言葉なくとも示されたその神々しい御姿に我々がどれ程涙したことか。




「艦長、立ちなさい。」


そして我々の知る如何なる色より鮮やかな朱の唇より神命とも言うべき天上のFrancaisを紡ぎ出し我らにその意志を我らに直接伝えられる。
ただそれだけで私の精神は願い出る間もなくオセアンの下へと転属してしまいそうになる。

しかしその誘惑を必死に跳ね除け命に従い立ち上がる。
機関長や通信長も即座に立ち上がり敬礼を行いその場にいた水兵達も身体を強張らせながらもそれに続く。
中でも若い水兵らの鯱張ったその姿は我らが指揮官も天上よりご照覧あらせられると緊張と興奮の中で初めて参加した観閲式の己を想起させる。
無理もない自分また同じ心境なのだから。

その様な心境であったので我らが指揮官の瞳に我々の姿は無様に映ってはいないだろうかと心配になったがそれは杞憂であった。



「美事…。」



我らが指揮官はただそう御褒めの言葉呟かれると小さな拍手を我らに下賜なされた。
それにホッとし人心地つく。
精神が安定し、その時に初めて我らが指揮官の傍らで共に拍手する存在に気付いた。





なぜもう一柱、女神(戦艦金剛)と星の王子様(イゼイラ人)がここにいる!?




我らが指揮官の御前故に叫び出しそうになった声を辛うじて飲み込んだ。
ここ艦橋は非常時には国家統制すら行う戦略指揮所や戦術レベルの指揮を執る戦艦戦闘指揮所に比べれば機密レベルは落ちる。
だが、ここもまた我らが指揮官の心臓部、FFRにとっての聖域。


迂闊っ!!我らが指揮官の存在に気取られたとはいえ総員が彼女らの存在を認識出来ずここまで至ることを許すとは…!


女神金剛らが我らが指揮官と共にあり、咎めない以上敵ではないこと明白であるが、有り得てはならない失態に自分を含め乗員全ての再訓練が必要と痛感する。
己の不甲斐なさに思わず自らの誇りであり、寄す処でもある我らが指揮官の一部より作られた腰の剣へと手を伸ばす。
しかしそこにある筈のモノはない。
己が持つ指揮権と共に自ら我らが指揮官に返上したのを今更に思い出し溜息をつく。

704: 635 :2021/07/21(水) 07:16:52 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp



「『我らが指揮官』。」



突然楽器を奏でるが如きFrancaisが紡がれ全員が驚愕とともに星の王子様へと視線を向ける。
この星の王子様は今なんと言った?Francaisを話したのか?

我々の驚愕を他所に星の王子様はまるで主君に仕える騎士の如く我らが指揮官の御前に片膝をつき片手を胸へと当てる。
あれは確か星の王子様の国での最上級の敬礼である筈、主君に対し気に食わなければ自らの首を刎ねても良いという意思表示。



「何かしら『我が副官』?」



忠義の騎士の諫言の如き様子、それに応える様に我らが指揮官は星の王子様を我が副官と呼ぶ…『我が副官』だと!?

全員が目を見張る中、星の王子様は我らが指揮官の言葉に瞳を大きく見開く。
そんな星の王子様の様子に我らが指揮官は悪戯の成功した少女の如く微笑みを浮かべられる。
己の貧相な語量でその笑みを例えるならばローヌ=アルプの小さな農村で働く羊飼い或いは農家の純朴な童女の如き透き通った素朴な笑み。

我らが指揮官の言葉に驚きを覚えたがそれ以上にその微笑みにこそ目を奪われる。



「…はい、『我らが指揮官』。貴女はこの地上に於ける御身の半身であらせられる戦艦リシュリューの指揮権の返上を艦長より受けられました。」 

「そうね。しかしそれで我が子の心に平穏が訪れるのならばそれをするのは母と慕われる戦艦リシュリューとして当然の行いでしょう?」

「左様かと。」



臣下に接する様に星の王子様と会話を行う我らが指揮官。
『我が子』、我々をそう呼ぶ母と慕う我らが指揮官の言葉に私を始め艦橋にいる者達の涙が止まらない。
若い者などは嗚咽を漏らし感激に咽び泣く。



「しかしながら御身は女神であらせられようともその存在は一つであります。」

「ええ、確かにその通り。今の私の身体は艦娘と戦艦の二つ、それらを操りそれ以上も出来ますが限界というものは確かに存在します。」

「然らば更なる頭脳と手足が必要かと愚行致します。」



星の王子様の言葉に確かにと私は思う。
我らが指揮官のその存在は一つ、何か事あれば足元を掬われその大事な御身に重大な事態が起こるやもしれない。
如何にかすべきと機関長や通信長に視線を回すと彼らも私と同じ思いであったようでこちらを見ると頷く。
しかし星の王子様は既に頭脳も手足も相応しきものが既に存在すると言うと一点を指差す。


「間違いなく今までもそしてこれからも御身の忠実な頭脳であり、その四肢にして血肉足り得るでしょう。」


星の王子様は確信を持って私を含め戦艦リシュリューの乗員である我々こそが我らが指揮官の忠実な頭脳であり手足であると我らが指揮官に主張する。
無論我々が我らが指揮官に忠実であることは疑い無きことであるが、我らが指揮官に真っ向から意見するとは…。
精神的にもまだまだ未熟な若い水兵達などは我らが指揮官に意見するなど不敬であると星の王子様に対し憤怒を抱いている様子。

しかし我らが指揮官は星の王子様の言葉にさもありなんと御答えになり如何にすべきかと問う。
我らが指揮官が星の王子様の申し出る言葉に耳を傾けさらなる助言を御求めになるという事実に憤怒にかられていた若い水兵達も騒然となる。
しかしその後の言葉が私を含め全員を唖然とさせた。


「彼らに御身の頭脳にして手足であるその左証を直々に下賜されるべきかと愚考致します。さすれば奮起し御身の為に粉骨砕身の精神で事に当たることでしょう。」


我らが指揮官自らが直々に我らがその身の、血肉の一部であるという証を我々に下賜される?
その様な都合の良いことが…。

705: 635 :2021/07/21(水) 07:18:40 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp


「…分かりました。ちょうど良い、私も彼らの今までの献身に何らかの形で報いなければならないと思っていた所です。」


それで少しでも報えるのならばと我らが指揮官は言葉を結ぶ。
この場にいる戦艦リシュリュー乗員の全てが再度の、至高の歓喜の涙を流す…。
我らが指揮官、我らFFRの母がどれ程に我ら子らのことを想って下さっていたのかと…。


「まずは…指揮権を返上してくれた艦長からかしらね。腰に相応しいものを佩かなかれば艦長として部下や他国の者にも示しがつかないでしょう?」


そう言うと我らが指揮官の背後に巨大な機械、戦艦リシュリューの艦体のようなソレを浮び上がる。
すると主砲塔、なのだろうか?そこから四本の砲身の内一門取り外すと右手に握り、左手の掌を砲身へと翳すと案内を努めたジェゴフ大尉へと話しかける。


「ジョルジュ・ド・ジェゴフ大尉。」

「なんでありましょうか?」

「FFR海軍の軍人は白兵戦にも造詣が深かったわよね?」

「はい、我らが指揮官。我らはAbordage(接舷攻撃)に関し攻守両方においてBCは元よりOCUに対しても備えは怠っておりません!!」


大尉は我らの白兵戦力はBCでは相手にならず、OCUにすら負けはしないと我らが指揮官に奏上する。


「そう…では実用的な物の方が良いわね。」


そう言うと我らが指揮官は砲身へと翳した掌を滑らせると主砲身が輝き出し我々の目の前に衝撃的な光景が広がった。



「砲身が剣へと変わっていく…?」



誰かが呟いた。その通りに砲身が剣へと姿を変えていく。
最早奇跡としか言えない光景、芸術品としか思えない剣が形づくられていく。



「さて…こんなものかしらね…。」



我らが指揮官は満足気に頷かれた。
我らが指揮官に握られ、照明を浴びて輝く一振りのCoutelas(カットラス)。

その姿形は以前博物館で見た連邦共和国海軍の前身たる共和国海軍にて正式採用されていた革命歴11年型Coutelas、
それに似るが樋の掘られたその刀身の纏う光輝の桁が違う。

そして何より特徴的なのがヒルトの黄金の籠鍔(ナックルガード)。
正面より見た戦艦リシュリューが中心に配され、左右に鶏が描かれている。
右の鶏は今にも飛び立たんとするフランスの象徴にして常在戦場の象徴たる雄鶏、左には子を連れた母たる象徴の雌鶏。

そして我らが指揮官は今度は鞘を創り出されるとそのCoutelasの刀身を鞘へと収められた。


これが我がフランス連邦共和国海軍の至宝が我らが指揮官より下賜された海軍正統(当)性の象徴(Regalia)たる聖剣、その歴史的な出現、その瞬間であった。

706: 635 :2021/07/21(水) 07:21:33 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp
以上になります。転載はご自由にどうぞ。

『私』、我らが指揮官の生み出した聖剣を本人直々にFFR海軍へ下賜されるという偉業をやらかすの巻でござる(FFR視点)

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最終更新:2021年07月23日 10:29