757: 加賀 :2021/07/22(木) 18:52:16 HOST:om126157195105.27.openmobile.ne.jp
「皇帝? 送りつけて送還するのがJKだろう」
「デスヨネー」
「それよりサイオキシン麻薬の元締めを公表してフェザーンの息の根を止めるのが先決だな」
「金髪の孺子がどう出るか見物だがな」

 皇帝ーーエルウィン・ヨーゼフ・フォン・ゴールデンバウムらの亡命を拒否すると共にレムシャイド伯等も同時に逮捕し纏めてイゼルローン回廊から帝国へ引き渡したのである。更にトリューニヒトは皇帝達が亡命してきたルートーーフェザーン回廊からのルートだった事を公表し、合わせてその懲罰としてフェザーンに支払っていた負債額を今後支払わない事を通告したのである。
なお、フェザーンは異議を唱えて無効を主張していたが同盟側代表として(通信)出てきたレベロはこう通告した。

『それならばサイオキシン麻薬の元締めである貴国に対し帝国と共同して貴国を占領する』

 サイオキシン麻薬の事を言われてはフェザーンもぐうの音は出なかった。そしてだが此処で一本の緊急連絡がトリューニヒトの元に届いた。

「何? 皇帝と亡命帝国政府一行を載せた巡航艦が爆発されただと!?」

 フェザーン経由のためポレヴィト星系を航行していた巡航艦『レダ2』が突如爆発、皇帝と亡命帝国政府一行は脱出が間に合わず全員死亡したのである。直ぐにトリューニヒトはレベロとホアン・ルイを呼んだが二人の仕業ではなかった。

「まさか……ルビンスキーか?」
「それしか無いでしょうな。今回と前回の件でルビンスキーが此方に含む物があるのは確かですし……」
「だがこれで金髪の孺子が此方に来る理由は出来たな……」

 トリューニヒトはそう溜め息を吐くがその通りだった。ラインハルトは帝国・同盟に通信を送ったのである。

『私は此処に宣言する。幼き皇帝を拐った罪人どもに力を以て懲罰を加える事を!! あまつさえ皇帝を拐った罪人どもを返還するが矢先に幼き皇帝に死を賜った自由惑星同盟も同様の運命を免れる事はない!! 罪人に必要なものは交渉でも説得でも無くただ力のみが彼等の蒙を啓かせるだろう』

 そう送ったラインハルトに通信を見ていたハシモトは頭をかく。

「金髪の孺子はどうしても戦争をやりたいんだろうな……」

 その呟きに誰も答える者はいなかった。西暦3598年/宇宙歴798年/帝国歴489年9月19日、ラインハルトは決断する。彼が集めに集めた諸将達の前で新たな作戦名を伝えた。

「作戦名は……『神々の黄昏』(ラグナロック)」

 そして11月20日、同盟領侵攻作戦とも言える『神々の黄昏』作戦の第一陣としてオスカー・フォン・ロイエンタール上級大将率いる三個艦隊約36000隻がイゼルローン回廊に進出してきたのである。だがイゼルローン回廊に出向いたのはこの第一陣のみだった。
 他の第二陣、第三陣、第四陣等はフェザーン回廊を目指していた。

『吾々が赴くところはイゼルローン回廊にあらず。フェザーン回廊である!!』

758: 加賀 :2021/07/22(木) 18:53:14 HOST:om126157195105.27.openmobile.ne.jp
 斯くして帝国艦隊は原作通りにフェザーン回廊を侵攻しフェザーンを占領するのである。なお、ルビンスキーは雲隠れしている模様。さて、同盟では迎撃態勢に移行していた。

「やはりランテマリオへの一番乗りはウランフ・ボロディン中将の両艦隊かな」

 ハシモトの第二艦隊はエル・ファシル星域からランテマリオ星域への移動が命じられていた。その到着が今であったのだ。

「後はビュコック大将の直率隊が到着すれば……か」

 本来であれば第一艦隊とパエッタ中将の第五艦隊も来る予定だった。だが、ロイエンタールとミッターマイヤーの両艦隊がヒルダに唆されてバーラト星域に来れば話は別になる。
 そのためパエッタ中将を新たに第一艦隊提督とさせ、第五艦隊はルグランジュ中将が提督に就任、この二個艦隊はバーラト星域で待機となったのだ。
 結果としてランテマリオ星域に集まったのは以下の艦隊だった。

  • 直率隊(ビュコック大将)5600隻
  • 第二艦隊(ハシモト中将)16000隻
  • 第十艦隊(ウランフ中将)13000隻
  • 第十二艦隊(ボロディン中将)14500隻
  • 混成警備艦隊 9800隻
  • 第一自動艦隊(アップルトン中将)13000隻(有人艦2000隻)
  • 第二自動艦隊(アル・サレム中将)9600隻(有人艦1000隻)

「此処が決戦となろうのぅ」

 将官会議で集まった将官らを前にビュコック大将は開口一番にそう口を開いた。なお、ビュコック大将は元帥に内定している。

「数だけは何とか81500隻を揃える事が出来ました」
「だが動けるのは三個艦隊だけじゃが……あの二個艦隊は役に立つかね?」
「役に立ちます」

 ビュコックの問いに答えたのはハシモトだった。

「二個自動艦隊は戦況を見計らって帝国艦隊に突撃してもらいます」
「ふむ……中身は『アレ』じゃろ?」
「はい、『アレ』です」

 ハシモトはニヤリと笑う。それに釣られてチュン参謀長達も笑うのであった。そして2月8日1300、帝国軍と同盟軍の距離は5.9光秒までに接近したのである。

「元帥昇任か……これは政府が生きて帰るなと言っておるのじゃろ……特進の前渡しでな」
「いやぁ、単なる自棄でしょう」

 帝国軍112700隻、将兵1660万人。同盟軍81500隻、将兵975万人。後に第一次ランテマリオ星域会戦と呼ばれる戦いが始まったのである。

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最終更新:2021年07月23日 11:23