304: 加賀 :2021/07/24(土) 18:03:55 HOST:softbank126243101222.bbtec.net



「えっ? もう一個も勲章を貰うので?」
「そうだ。どうやら君が『榊』で奮戦したのがイギリス側からえらく評価されたようでな」

 数日後、マルタ島の第二特務艦隊司令部に呼ばれた橋本は佐藤少将からの言葉に目を点とした。

「でも自分は前に勲章を貰ったばかりですし……」
「潜水艦を沈めているんだ。航路も安全になるし良いじゃないか。貰える物は貰っておけ」

 佐藤は橋本にそう言うのである。更に数日後、橋本は勲章授与のためイギリスに向かうのであった。なお、授与する勲章は聖マイケル・聖ジョージ勲章コンパニオンである。

「ふぅ……息苦しくて敵わん……」

 勲章授与後、イギリス記者からの質問攻めを適当に行って切り上げ今はロンドンのとあるカフェで休憩をしていた。

「さて……何か本でも買うか。英語版のホームズとか良いな……」

 橋本は近くの書店に立ち寄り目ぼしい小説を物色、購入しつつ立ち読みに耽る(コナン・ドイルのを見つけたので立ち読みに突入)が不意に視線を感じた。隣に誰かいる。書店の店主かと思い頭を上げて立ち読みをしているのを謝ろうとした。
 だが、そこにいたのは一人の女性だった。いや、確かに女性だった。だがその女性はかつて橋本が未来の日本で過ごしていた時にパソコン、スマホでプレイしていたとあるゲームの人物によく似ていたのだ。

「……ネルソン……?」
「おぉ!?」

 思わず呟いた橋本の言葉に女性はニパッと笑う。口の左側にある八重歯が凄く印象的であった。

「流石はアドミラルハシモトだ!! まさか一発で余が判るとはな!!」
「( 'ω')ファッ!?」

 何故かフンフーンと自信満々な表情をする女性。まるで自分を見つけてもらって嬉しそうだった。

「そう、余こそが……」

 そこで何故か女性は一旦溜めて顔を下に向けつつも満面の笑みを橋本に向けた。

「余が『ネルソン』級戦艦一番艦のネルソンだ!! 慶良間諸島での艦隊決戦では二回程世話になったな!!」
「………ハアァァァァァァァァァァァァァァァ!?」

 女性ーーネルソンの言葉に橋本は思わず絶叫するのであった。





「……多少というか……かなり驚いたが……じゃあ君は『艦これ』のネルソンで間違いないんだな?」
「その通りだアドミラルハシモト」

 夜、橋本は自身が宿泊する宿にネルソンを招いて取り敢えずの事情を聞いていた。なお、二人の右手にはラム酒が入ったコップを握られていた。

「私という存在を気付いたのはつい最近だ。そしてたまたま新聞でハシモトがこのブリテンに来ると書いていたからな。まぁ初手で私を見破るとは流石だ」
「………うーん、遂に現実と仮想が混ざり合う世界に……」
「何を言う。憑依や転生をするお前達がいる時点で仮想世界ではないか」
「………知っていたのか?」
「無論。玉座から『あの世界』を見ていたからな」

 『あの世界』を見ていた。そう聞いた瞬間、橋本は何も言えなかった。そう、最初の世界とも言える憂鬱世界で日本は勝つために『あの出来事』をやったからだ。

305: 加賀 :2021/07/24(土) 18:06:19 HOST:softbank126243101222.bbtec.net
「おいおい、私は別に責めはしない。むしろ戦略上、味方の犠牲を如何に少なくするのであれば責められる行為ではない。というより日本を切り捨てたブリテンが責められるな」

 ネルソンはそう言って一杯目のラム酒を飲み干しまたコップに注ぐ。

「そう…か……」
「むしろ食糧を断ちきって干乾しにする戦国時代のがよっぽど酷いぞ。後、十字軍とかな」
「それを言われるとなぁ……。じゃあ話を変えよう、何でネルソンは受肉……この世にいるんだ?」
「分からん!!」
「……………」

 満面の笑みでそう言い返されては橋本も頭を抱えるしかなかった。

「というのは半分冗談だ」
「半分は冗談かよ……」
「……怨念だな」
「怨念……?」
「あぁ。ハシモト、私は元々何だ?」
「何だってそれは……戦艦『ネルソン』だろう?」
「そう、戦艦『ネルソン』が擬人化して艦娘という存在になった。だがその存在になる過程は?」
「過程……?」
「怨みだ」

 ネルソンはそう言って二杯目を飲み干し空になったコップにラム酒を注いで一口付ける。

「古来より人々からの怨みはこの星に……地、空、海等あらゆる所に溜まるがそれらは自然界の調和によってやがては浄化されていく……そうなる筈だった」
「筈だった……?」
「心当たりは無いか?」
「………まさか!?」

 ネルソンの言葉に橋本は勘づいた。そうか、だとすればネルソンが自分達の前にいるのは……。

「貴様……いや多くの憑依・転生者らが前回と前々回、頑張り過ぎたせいで人の怨みの量が多すぎてな。無論、怨みの自己回復や調整もあったらしいが……何分と日本が頑張り過ぎたな」
「………………」

 ネルソンの言葉に橋本は顔を伏せた。

「やはり……我々の衝号作戦か……」
「……引き金はな。日本の八百万の神々というのか? むしろ賛同していたと玉座で聞いた事があるが果たしてな……」

 まぁ日本の神々からすればさもありなんであろう。

「じゃあそうするとネルソンは怨みが無くなればこの世から消えるのか?」
「いや……怨みはそう簡単には無くならないから暫くは大丈夫だ。私の艤装等を通して怨みは浄化させる話だ。早い話が私ーー艦娘は受け皿だな」

 話は以上だとばかりにネルソンは三杯目のラム酒を飲み干す。

「だがこれからネルソンはどうするのだ?」
「愚問だな」

 橋本の言葉にネルソンはニヤリと笑い目の前にいる橋本を見つめる。

「私の正面にいるアドミラルハシモトに世話してもらう。何せ私の身体をそれはもう好き放題にしていたからな!!」
「その言い方ヤメェイ!! お前が言ってるのは慶良間諸島沖海戦での話だろ!!」

 ネルソンの問題発言に橋本は慌ててそう言うのであった。

「暫くしたら私は日本に行くからな。どうもお前の仲間達も何人かは既にいるらしいからな」
「やっぱりかよ……」

 どうせあの瑞雲馬鹿もいるのだろうと溜め息を吐く橋本であった。なお、その後の展開はというと酒盛りに突入してしまい泥酔したネルソンが橋本のベッドで寝てしまい橋本はソファで寝る羽目になるのであった。

306: 加賀 :2021/07/24(土) 18:10:12 HOST:softbank126243101222.bbtec.net
  • 橋本、聖マイケル・聖ジョージ勲章コンパニオンを授与へ。なお、佐藤少将は史実だとナイト・コマンダーという上位のを授与されます。

  • \ネルソン/\ネルソン/\ネルソン/\ヨォォォ/\ネルソン/
ネルソン登場。なお、ネルソンについてはいどさん、コノシゲさん、ムンムさんのネルソンの性格が入り交ざっている模様

次回、一旦はネルソンと別れて二特艦隊が派遣終了し帰還する橋本。だが橋本はとある料亭に呼ばれ部屋に入れば懐かしい面々と再会するのである。

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最終更新:2021年07月28日 21:43