564: ham ◆sneo5SWWRw :2021/08/01(日) 14:38:27 HOST:sp1-75-241-46.msb.spmode.ne.jp
戦後夢幻会ネタ ham世界線 マレー沖夜戦 「撃退する」の名を持つ艦


「魚雷戦用意!発射雷数3!必ず当てろ!」

脱落した『熊野』に替わって先頭を進む『三隈』艦長、崎山釈夫大佐は、水雷長にそう言った。
熊野を避けるために面舵に転舵したが、期せずして取舵を取る『レパルス』と反航する形となったことから、魚雷攻撃を決断した。
元々、頭を抑える形で増速して先回りしようとしていたことから、両艦の距離は5000m近くにまで接近しており、絶好のチャンスであった。
両艦が横並びしようという頃合で、『三隈』は左舷の2番発射管から魚雷3本を発射した。
しかし、以前にも話したように、戦訓の無いこの時期、水雷員たちはまたも信管を過敏にしてしまい、『レパルス』が立てる波の衝撃で起爆し、3本全てが100m手前で爆発してしまった。

一方、後続の『鈴谷』も同じく魚雷3本を発射した。
こちらは転生者の木村が、戦闘前から信管過敏に対して直接水雷員に注意しており、攻撃前に副長を発射管に派遣してまで注意していた。
この徹底した行動に水雷員たちは霹靂していたが、これにより魚雷が無事作動し、『レパルス』の左舷に2本命中。
テナント艦長は、『最上』との衝突での浸水からバランスを取るために注水していた左舷のバラストタンクを排水することでバランスを取ったが、これにより20ノットにまで低下することとなる。

『レパルス』と擦れ違った2隻は右旋回を続けていたが、ここで『三隈』が外側にズレて、『鈴谷』に先頭を譲ることとした。
『三隈』の崎山艦長は海兵42期、『鈴谷』の木村は海兵41期であることから、先任順位を考慮してことだった。
途中、左舷側に炎上中の『最上』が見えてきた。
この『最上』の登場に、木村は嫌な予感を覚えた。
前世において、ミッドウェーで潜水艦からの回避で一斉回頭指示に混乱が生じたため、『最上』と『三隈』が衝突した。
木村は『三隈』に注意するよう、発光信号で指示した。
しかし、

「『三隈』、『最上』と衝突!!」

『三隈』と『最上』が衝突してしまったのだ。
『最上』を確認しており、『鈴谷』からの指示で崎山は注意していた。
『最上』は火災が激しく、徐々に速力が落ちるものだと予断していたが、機関が無事の『最上』は落ちるどころか、速力を維持していたのだ。
加えて、艦橋被弾で艦長、副長どころか、航海長や砲術長、水雷長、さらに後部マスト周辺に居た飛行長までを含む指揮官クラスが軒並み砲撃で死傷したため、指揮官不在という最悪の状態となっていた。
ようやく運用長が臨時指揮官として艦橋に上がった時には『三隈』との衝突コースに入った時だった。
両艦は急いで回避運動を取ったが、『三隈』の左舷中央に最上の艦尾が衝突した。
浅い角度であったため、『三隈』は史実ほどの破孔を生じなかったが、この衝突により『三隈』は戦列を一時離れる形となり、脱落。
『レパルス』と砲戦を続けているのは『鈴谷』だけとなった。

565: ham ◆sneo5SWWRw :2021/08/01(日) 14:38:59 HOST:sp1-75-241-46.msb.spmode.ne.jp
突如として味方を失った『鈴谷』は窮地に立たされた。
いくら相手が第一次大戦型の旧式艦で、被雷で速力を落としているとはいえ、巡洋戦艦なのだ。
発射される15インチ砲は協力であり、重巡が1隻で相対するのは分が悪い。
他艦はそれぞれ『POW』や英駆逐隊に対応しているはずなのでこちらには来れないはず。
転進して体勢を立て直してからの再攻撃も木村が考えたその時、吊光弾が『レパルス』を照らし出した。

『瑞鳳』より発艦した夜間雷撃隊である。

2式練習戦闘機に電探を搭載した試作機の試製2式夜間戦闘機2機、99艦爆2機、97式4号艦攻4機と少ないが、航空援護の無い単艦の『レパルス』には脅威であった。

「炎上している艦隊の中央にいるのは『レパルス』だ!あれを狙え!」

誘導機の森本少尉が突撃する雷撃隊に無線でそう指示する。
航法で飛び抜けて優秀な成績を持つベテランの彼は、困難な夜間雷撃に打って付けであると判断され指揮を任されていた。
これまで偵察一筋の彼にとって初めての実戦指揮に声が上擦る。
彼の艦攻と艦爆2機から投下された吊光弾をバックにして、事前に高度を下げていた3機の艦攻が『レパルス』を目指す。
『レパルス』は応戦を開始するが、吊光弾をバックにしていることで目が眩んで照準がまともに付けないでいた。
対水上レーダーは有っても対空レーダーもない。
加えて、遅いソードフィッシュに合わせた時限信管のままである高射砲は、それより約2倍以上速い97式4号艦攻相手では、はるか後方に爆発するばかりであった。
おまけに機銃は、悪名名高きポンポン砲であるため、故障が頻発。
唯一まともに動けたのがエリコン20mm機関砲6門だったが、目が眩んだ中での直接照準では狙いが定まらない。

雷撃隊は400km/hを維持しながら高度100mで雷撃を開始した。
投下された内1本は落下の衝撃でスクリューが歪んで海底に向かってしまったが、残る2本は『レパルス』の艦尾に命中。
『レパルス』は速力を15ノットに落とし、若干右に傾斜し始めた。
雷撃隊は搭乗員1名が機銃弾で撃たれ戦死するなどしたが、森本少尉の優れた航法の下、全機が帰還した。


雷撃隊の奮戦は、『鈴谷』にとって起死回生につながった。
折りしも、『レパルス』への一斉雷撃後、南進していた第9戦隊が合流し、『三隈』が浸水箇所を塞いで戦列に復帰。
損傷軽微な『鈴谷』を先頭に、『大井』『北上』『三隈』の順で戦列を組み直した日本艦隊は、南東に針路を取る『レパルス』へ反航戦を開始した。
『レパルス』も応射するが、速力低下に加えて、傾斜で砲弾もまともに装填できない状況では数の暴力に抗えない。
そして、相対距離1万mを切ったところで、第9戦隊が左舷側の一斉雷撃を開始。
40射線の魚雷は、今度は無事『レパルス』に命中。
「撃退する」という意味の『レパルス』の名を持つ巡洋戦艦は、左に横倒しとなって沈みだした。


かくて、大勢は決した。

566: ham ◆sneo5SWWRw :2021/08/01(日) 14:39:31 HOST:sp1-75-241-46.msb.spmode.ne.jp
以上です。
やっぱり最上と三隈は衝突しました。
ワザトジャナイヨ?

雷撃隊を率いている森本少尉は滝沢聖峰先生の空母艦攻隊の人物です。
原作では真珠湾に参加した護衛空母からの転属ですが、史実にそんな艦は無いですから、瑞鳳に乗せました。

真珠湾攻撃で知られる高度10mの雷撃を知っていると100mは高度が高いと感じる方もいるでしょうが、日本海軍では高速雷撃は40m以上、最低でも30m以上と規定されています。
銀河や陸軍の飛龍でテストした際、30m未満で撃った魚雷が水切りジャンプしてしまったという例もあったみたいですので、夜間という事もあり、100mと定めました。

第9戦隊は最後にレパルスを仕留めたので、面目は守れた感じです。
まぁ、戦隊自体がその後どうなるかは分かりませんが。


今回はここまでです。
次回のマレー沖は最終回になる予定です。

611: ham ◆sneo5SWWRw :2021/08/01(日) 23:23:58 HOST:sp1-75-243-145.msb.spmode.ne.jp
564-566の『戦後夢幻会ネタ ham世界線 マレー沖夜戦 「撃退する」の名を持つ艦』ですが、
wiki掲載時に>>564の

ようやく機関長が臨時指揮官として艦橋に上がった時には『三隈』との衝突コースに入った時だった。

以上の文の「機関長」を「運用長」に修正して掲載をお願いいたします。

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最終更新:2021年08月02日 12:00