614: 194 :2021/08/12(木) 18:05:30 HOST:ai126197117042.18.access-internet.ne.jp
現代日本大陸化&銀連神崎島クロスSS ある日、日本が『超』大陸と化してしまった件セカンドシーズン?特別番外編 ウマ娘とその関係者達が、超大陸世界にやって来たようです その10
レース終了後、普段の活発さが鳴りを潜めて無言な状態のターボ。
何せ普段の走りを封じて戦い、そしてある意味予想通りに苦戦を強いられたのだ。辛うじて決勝には進出した物の、何とも苦い戦いだった。
そんなターボの心情を察しつつも、何とか励まそうと声を掛けるカノープスのメンバー達。
イクノ「・・・ターボ、大丈夫ですか?」
ターボ「・・・・・」
イクノ「・・・ターボ?」
ターボ「・・・・・あっ、ゴメン。何?イクノ?」
マチタン「・・・やっぱり、落ち込んでる?」
ターボ「そ、そんな事ない!ターボは、大丈夫だから!!」
そう言って元気だとアピールしようとしているが、それが空元気に過ぎないのは誰の目にも明らかだった。
どう声を掛けて良いか分からない所に、トリーとカナが合流してきた。
トリー「失礼します。・・・・・お姉ちゃん、大丈夫?」
ターボ「大丈夫だって!皆、心配し過ぎだって!」
カナ「・・・まぁ、今回の戦いはかなりキツかったのう。・・・周りを囲まれて出れなくなるのはよく有る事やし、取り敢えずは決勝に出れるんや。・・・やから、あまり落ち込むなや」
ターボ「・・・心配してくれて有難う、カナ。でも大丈夫!決勝で周りを見返すから!」
ターボが半ば無理してそう宣言していた頃、スピカの方も暗い空気を漂わせていた。
トウカイテイオーがメジロパーマーに惨敗したのが原因だが、絶対の走りが通用しなかった事で少なからずショックを受けていた様だった。
スぺ「・・・テイオーさん」
テイオー「・・・何?スぺちゃん?」
此方も務めて明るく振舞おうとしていたが、やはり無理している様だ。
沖野「・・・テイオー、何故今回、メジロパーマーの後を追った?」
テイオー「・・・ゴメン、トレーナー」
沖野「俺は『何故メジロパーマーの後を追った』と聞いているんだ」
テイオー「・・・確かめたかったんだ。自分の走りが、大逃げにどこまで通用するかを。ターボ師匠が決勝へと進んだ以上、避けて通れないと判断したから」
沖野「・・・キツイ言い方だが、それじゃ負けて当然だ」
ウオッカ「オ、オイ!トレーナー!!」
615: 194 :2021/08/12(木) 18:06:00 HOST:ai126197117042.18.access-internet.ne.jp
沖野の言い方に思わず声を荒げるウオッカ。だが沖野は、それを無視して続ける。
沖野「いいか?お前の『絶対の走り』というのは、運に頼らず湛然不動の実力を持って勝利する走り。そうだな?」
テイオー「・・・うん」
沖野「だがな。大逃げというのは、お前の走りとはまた違う資質が求められる走りなんだ」
テイオー「違う・・・資質?」
沖野「何が有ろうと常にトップスピードで駆け抜け、スタミナが切れても出せる限りのスピードを出し続ける。どれだけ苦しくても常に先頭で自分自身と戦い、迫る後続に怯えながら走り抜く」
沖野「大逃げってのはな、常に自分自身と戦い続ける根性と心の強さが求められる物だ。誰でも出来る様に見えて、その実天性の資質が求められる走りでもある」
沖野「そこを理解せずに『自分の走りで戦える』と思って相手の土俵に立ってしまった時点で、勝敗は完全に決していた。実際メジロパーマーにスタミナ切れにされて負けたのも、ある意味で当たり前の事だったんだ」
テイオー「・・・・・」
沖野「最初に言ったよな、『大逃げに惑わされるな』と。大逃げ勝負となったら、お前に勝ち目はない。大逃げの資質で言えば、メジロパーマーやツインターボの方が上だからだ」
テイオー「・・・・・」
沖野「だから、自らが得意とする戦いに引きずり込むんだ。奴等に勝利するには、それが一番確実だ。自分の得意とする戦いなら、誰にも負けないんだろ?」
テイオー「トレーナー・・・」
沖野「見せてやれ。決勝で、お前の『絶対の走り』を。そして絶対に優勝しろ。信じてるぞ!」
テイオーの頭にポンと手を置きながら、改めて励ます沖野。その表情には、テイオーに対する信頼が表れていた。
テイオー「・・・うん。僕、必ず勝つ!見てて、皆!」
改めてメンバー達にそう宣言するテイオー。再び活気を取り戻した彼女に、スピカのメンバー達もホッとしたのだった。
616: 194 :2021/08/12(木) 18:06:31 HOST:ai126197117042.18.access-internet.ne.jp
さて、レース後の世間の反響だが、予想以上に波乱を生んだ。
トウカイテイオーがメジロパーマーとの大逃げ勝負で惨敗を喫し、ツインターボは逃げずに勝負した結果、決勝進出ギリギリの九着でのゴール。
どちらも人気者故に注目が集まり、それ故にこの結果にバッシングの声が上がり始める。
特にツインターボに関して言えば、実馬の方で果たせなかった『生涯大逃げ一筋』をせめてウマ娘の方で果たして欲しいという声が強かった事もあり、大逃げを封印した今回の戦いとその結果に、バッシングの声が強まっていく。
ツインターボの経歴に泥を塗った上に、勝つ事も出来なかったのだから、猶更だった。
そして期待に反しての決勝進出に『一着を断念して、決勝進出に絞った走り』と報じられると、バッシングの声は更に強くなった。
- あくまで個人的な見解だが、ツインターボが大逃げをするのは言うまでもなく『本人の気質等の関係で、それが一番勝利が望めるから。また、それ以外では戦うのは無理だから』という理由があり、もっとぶっちゃけて言うと
『勝つ為に』この戦い方を採用しているに過ぎない。もし気質が違って他の戦い方が出来るのならば、他の戦い方も検討されていただろう。
勘違いしてはいけないのが、あくまで『勝つ為』に大逃げをしているのであって、断じて『勝敗に関係無く大逃げでレースを盛り上げる為に』走っている訳では無いのだ。
もしそんな考えで応援しているのだとしたら、もはや応援する資格は無いと、個人的だが断ずる。それはツインターボのみに留まらず逃げや大逃げで戦う全ての馬・UMA・ウマ娘への侮辱そのものだろう。
ただその一方で、やはり厳しい戦いだったのも事実であり、ツインターボの根本的なパワー不足と『大逃げ以外では一位になれない』という、厳しい現実を突き付けられたのも確かだ。
南坂「・・・・・ハァ」
予想を遥かに超える反響に、南坂は夜が更けてもなお、トレーナー室でパソコンと向き合ったまま深いため息をつく。
批判上等だったとはいえ、ツインターボの人気がそのまま跳ね返ってきており、勝利は少なくとも人々に勇気や夢を与えてきたツインターボの経歴に泥を塗ってしまったのだと、改めて実感していた。
ネットの掲示板に『準決勝のツインターボの走りは、トレーナーの指示』という書き込みをして、批判が少しでも自分の方に向く様に工作をしていると、同じく資料と睨み合い、アレコレ唸っていた沖野が、パソコンを覗き込んできた。
沖野「何だ?ツインターボのマル秘情報か?」
南坂「お、沖野さん!?・・・・・いえ、何でもありませんよ」
実際ツインターボの情報ではないものの、ホーム画面へと戻す南坂。それを見て、沖野はあからさまに落胆する様な素振りを見せる。
沖野「何だよ、せっかくツインターボの秘密の一つでも知れると思ったのに」
南坂「そういうのでは無いですよ。・・・・・沖野さんは、凄いですよね」
沖野「ん?俺が?」
南坂「スピカの皆さんは軒並み凄い資質を持ち、沖野さんはそれを見事に開花させた。もし僕に彼女達を教えろと言われても・・・多分、無理だと思います」
沖野「・・・あいつ等は俺が走りを教えなくても自分で上がっていったさ。俺があいつ等に教えられたのは、お互いに高めあうライバルの大切さ位だ」
南坂「ライバル・・・ですか」
沖野「今回のJURAファイナルだが、テイオーはツインターボをライバルだって言ったんだぞ」
南坂「テイオーさんが、ですか!?」
617: 194 :2021/08/12(木) 18:07:03 HOST:ai126197117042.18.access-internet.ne.jp
この世界に転移してから新設されたJURAファイナル。そのトリを飾る事となったこの中距離部門の戦いで、トウカイテイオーがツインターボをライバルと認めている。
その驚きの事実に、南坂は目を丸くする。
沖野「俺はビワハヤヒデとかの方がいいんじゃないかって言ったんだがな。どうしてもツインターボじゃなきゃ駄目だって言い切ったんだ。そしてツインターボは、本当に決勝まで勝ち上がってきた」
南坂「テイオーさんが、そこまで・・・」
沖野「途中経過や結果なんて、俺達トレーナーが気にしてもしょうがないだろ。受け持つウマ娘が走りたいレースに出させてやる事と、勝たせてやるのが俺達トレーナーの役目だ」
沖野「9位云々って言うが、その9位に負けた娘達も沢山居るんだ。ならば、胸張って挑まないとチームメンバー達に示しがつかないぞ!」
ドンッ
南坂「痛っ!?」
勝ち目が殆ど無い戦いをさせた事で責任を感じていた南坂に、沖野が激励の言葉を掛けると共に背中を思いっきり叩いて大きな笑い声をあげた。
南坂(困った人だ・・・)
沖野なりの励ましに苦笑しながら、悪い思考に囚われかけていた南坂も、思い直す事が出来た。準決勝でのあの走りは、決勝に出る為じゃなく、決勝で必ず優勝させる為に必要な経験だったからだ。
悔しさをバネに、勝利への思いを燃料へと変える事が出来る。ツインターボのそんな資質を信じるからこそ、この作戦をやらせたのだ。そして、彼女の力はそれだけじゃない。
南坂「ターボさんは必ず勝ちますよ、僕達カノープスの想い。そして、トリーさんの叶えられなかった夢を背負って、走るのですから」
沖野「夢?」
南坂「・・・さっきテイオーさんの事を教えてくれたお礼に、こちらもお話しします。まぁ、僕自身半信半疑ではあるのですが・・・」
そう前置きした上で、病院にて聞いたトリーとカナの事。彼女達が転生者である事。特にトリーは、UMAと馬の記憶を持っている事。最初の生涯が、他ならぬツインターボだった事。
そして、ツインターボだった頃に叶えられなかった『いつの日か、強敵相手に一泡吹かせて勝利する。そんな痛快なレースを見せてくれる』という夢を、彼女に代わってターボが叶えようとしているという事を。
沖野「・・・て、転生者!?そんな与太話」
南坂「さっきも言った通り、僕自身は半信半疑ですけどね。でも、ターボさんは本気で信じている。そして彼女の果たせなかった夢を叶える。その思いを背負って、今回のレースに臨んでいるんです」
南坂「だから・・・必ず勝ちますよ。ターボさんは」
沖野「・・・転生云々が本当かどうかはさておいて、こっちも負けねーよ。うちのテイオーに狙われた事、心底後悔させて見せるさ」
トレーナー達がお互いの教え子が勝つと牽制し合ってたその頃、ツインターボはカノープスのメンバー達の監視の目を掻い潜って寮から出ると、例の大樹のウロ・負けたウマ娘達が悔しい思いを吐き出す事で
有名な名所の前にやってきていた。
食事と入浴・睡眠時以外は常に付けておく様に指示されていた高地トレーニング用マスクを外すと、中がすっぽりと開いている切り株に手を付き、胸の内を叫んだ。
ターボ「ターボのアホーッ!何でビワハヤヒデを抜けなかったの!抜きさえすれば勝機はあったのに!何でッ!何で抜けないの・・・!」
ターボ「しかも終盤に変なのにまで追い抜かれるし・・・こんなんじゃトウカイテイオーに勝てないだろーーーーー!!!!!」
小さい頃は、走るのがそこまで得意ではなかった。
ゲートを出るのも上手くなく、体も小さい為、集団に巻き込まれればそこから脱出して追い抜くのもままならない。余りにも不利な条件が多かったのだ。
だがその悩みを打ち明けたトリーに
トリー(幼少)「じゃあ、大逃げをやってみたらどう?馬群に巻き込まれるのが不利なら、そもそも巻き込まれない先頭を突っ走れば、有利に戦えると思うの」
とアドバイスを受け、その当時のトレーナーとも相談した上でデビュー戦を大逃げで戦った所、これまで苦労していたコース取りも自由になり、何より一番の景色を誰よりも長く見れる快感を知った。
デビュー戦での勝利でターボの心に火が付き、それ以降誰よりも早く、誰よりも長く、誰よりも一番であり続けるという不屈の精神を得たのだ。
だが・・・初めてそれ等を全て封印して挑んだ準決勝。以前より成長した自分なら、前よりも善戦出来ると思っていた。しかし、結果は辛うじて決勝進出するのが精一杯。
我儘を言わないと約束した手前、皆の前では強がっていたが、やはり本気で戦っての敗北が悔しいのには変わらなかった。
618: 194 :2021/08/12(木) 18:07:34 HOST:ai126197117042.18.access-internet.ne.jp
普段は負けても次の勝負を前向きに見据えて来たツインターボが、今回ばかりは自分の不甲斐無さに涙を流している。彼女を探していたカノープスのメンバー達も、どう声を掛けるべきかと顔を見合わせている。
すると、それを尻目にツインターボに近づくウマ娘の姿が。足音が聞こえたので、ツインターボも慌てて涙を拭って振り返ると・・・そこに居たのはトウカイテイオーだった。
ターボ「っテ、テイオー・・・」
テイオー「そこ、僕も使っていい?」
ターボ「えっ!?」
テイオーは指さす先にあるのは、あの切り株。ツインターボが退くとトウカイテイオーは切り株の淵を握り、大きく息を吸って叫んだ。
テイオー「僕のアホーッ!何でパーマー相手に油断して戦ったんだ!大逃げするウマ娘に、自分の常識が通用する訳無いのは、ちょっと考えれば分かる事だろー!そんな有様じゃ、ツインターボに勝てないだろーーーーー!!!」
自身の絶対の走りが大逃げ相手に通用しなかった事。相手の土俵に上がらされた果ての無残な敗北。皆の前では活気を見せたものの、やはり悔しい事には変わりがない。
そのテイオーの渾身の叫びにツインターボが驚いていると、悔しさを吐き出したテイオーが満面の笑みを浮かべていた。
テイオー「は~~~、スッキリしたー!初めてここで叫んだけど、意外と気持ちいいね!」
ターボ「トウカイテイオー・・・ターボと、走ってくれるの・・・?」
テイオー「え、何で?当然だよ。ちゃんと決勝まで来たんだし」
ターボ「でもターボは、テイオーみたいにちゃんと走れてなかったし・・・」
テイオー「レースを見たけど、師匠以外にも先行の娘は沢山いたし、その中で最も勝率が高いビワハヤヒデを選んで、懸命についていこうと適度な距離を保とうとしていた」
テイオー「でも慣れてないのもあって終盤に囲まれて出れなくなった。僕も似た経験は幾らでもあるし、師匠なら猶更走りにくかったと思うよ」
テイオー「後は・・・・・あの『有る意味』怪物なチョクセンリーダーだっけ?あれは、誰も予想なんて出来ないよ・・・」
ターボ「・・・た、確かに(汗)」
ツインターボはテイオーと競うのに相応しいのか思い悩んでいたが、テイオーはターボの走りを映像で確認して、レース展開からターボが難しい位置にいた事を指摘。
そして、チョクセンリーダーの終盤のあの走りは誰も予測不可能だと言い切った。
何故自分の準決勝の走りを知っているのかとターボは驚くが、そんな彼女にテイオーはターボの手を握りしめながら何気もなしに言った。
619: 194 :2021/08/12(木) 18:08:04 HOST:ai126197117042.18.access-internet.ne.jp
テイオー「今回のレースでのライバルだもん。当然研究はするよ」と。
テイオー「あの走り、トレーナーの指示だったんでしょ?」
ターボ「ち、違うもん!トレーナーは負けろなんて一言も言ってない!ビワハヤヒデに付いて行けると信じてくれてたから、その走りに付いて行けなかったターボが悪いの!」
テイオー「でも指示は、最後まで守れたんでしょ?」
ターボ「それは・・・途中までは何とか付いて行けたけど・・・」
テイオー「なら周りがどう言おうと関係無いよ。あの時、何もかも諦めていた僕に『諦めない事』を思い出させてくれたのは、他ならぬ師匠なんだよ。その師匠が、経緯はどうあれ決勝まで上がってこれたんだ」
テイオー「決勝では間違いなく逃げ、それもメジロパーマーを念頭に置いた戦いになる筈。僕はメジロパーマーにリベンジを決めて勝利する師匠の姿が見たい。そしてその師匠に、僕は勝って見せる!」
同世代で最強の呼び名の高いトウカイテイオーが、自分の勝利を信じてくれている。その事実がターボの心に再び火をつけた。
ターボ「テイオー、有難う!ターボはもう負けない!パーマーにもテイオーにも勝って、トリーが、皆がターボに抱いてくれている夢を絶対に叶えて見せるから!」
テイオー「それでこそだよ、師匠。そして、その師匠に僕は勝つ!」
ターボ「ターボが勝つもん!」
テイオー「いーや、僕だ!」
普段とあまり変わらない様子で言い合う二人。だが、何回か言い合った所で二人で大笑いする。
ターボ「泣いても笑っても、あと二週間。最高の状態で勝負して、決着をつけよう!」
テイオー「・・・うん。二週間後、きっちりと決着をつけよう!」
そう言い合って、改めて固く握手する二人。遠くから見守っていたカノープスのメンバー達も、ホッと胸を撫で下ろしたのだった。
620: 194 :2021/08/12(木) 18:08:35 HOST:ai126197117042.18.access-internet.ne.jp
以上です。箸休め的な中継ぎ回でした。
バッシングが強くなってしまいましたが、人気の裏返しでもあるんですよね。具体的な内容は割愛しましたが、酷いのだと見るに堪えない意見とかも書かれていたんでしょうね。
世間はそんな有様ですが、両チームのトレーナーとターボとテイオーの二人は気持ちを改めて、決勝へと挑みます。
次回は残り二週間での両陣営の様子をお送りした後、決勝スタートまで書けたらと思います。お楽しみに。
wiki掲載は、自由です。
最終更新:2021年08月12日 18:57