577: リラックス :2021/08/11(水) 21:15:19 HOST:softbank126163140131.bbtec.net
即興で競走馬ネタを考えてみた。一応、天の涙世界のネタです。
天の涙世界における競馬事情
その中にはMMJを筆頭に様々な派閥が存在し、お互いを尊重しながら暴走し過ぎないようブレーキをかける目的もある。
今回はその中の一つ、競馬ファンが集まって派閥の活躍についての話である。
競馬派閥と呼ばれる一派の結成は早かった、が、活動そのものは小規模だった。
というのも、転生者の競馬ファンという関係上、彼らを虜にした80年代後半から90年代の産駒を誕生させるにはあまり大きく活動することは憚られた為だ。
その為、彼らは血統による強化でなく坂路トレーニングの早期導入に始まる、トレーニング方法の強化により日本競馬界を地道に強化するという地道な活動に終始した。
一応、WW1の際に戦火に巻き込まれたり、大恐慌の際に行方不明になる欧州産競走馬を保護しようという動きもあったのだが、欧州人にとり自国産の競走馬を極東の黄色い猿に売り渡すというのは心理的な抵抗が大きく、あまり上手くいかなかった。
一応、戦火に巻き込まれるならと断腸の思いで愛馬を日本に避難させることを決断させた馬主もいないことはなかったのだが、感動のアンビリバボ○か何かに取り上げられるくらいの稀少例に過ぎない。
彼らが活動を本格化した、というかせざるを得なくなったのは大西洋大津波により大西洋全域が大打撃を受けて現代日本競馬の祖とも言える競走馬の誕生が絶望的になった後のことである。
そんな中、珍しくというか何とか立ち直った転生者達が積極的に保護すべく動いた数少ない例の一つがクリフジという牝馬とその産駒である。
彼女がどれほどの存在かというと、現代競馬ファン、もしくはとあるアプリゲームから入ったファンに分かりやすく説明するならウオッカという競走馬の経歴を用いるのが良いだろう。
ウオッカは2007年のダービー馬であり、牝馬としては実に64年ぶりに日本ダービー(東京優駿)を制覇した競走馬である。
そう、ウオッカのダービー制覇から遡ること64年、1943年に東京優駿(後の日本ダービー)を制覇した牝馬こそが、このクリフジなのである。
578: リラックス :2021/08/11(水) 21:16:30 HOST:softbank126163140131.bbtec.net
このクリフジの残した成績、東京優駿競走(日本ダービー)、阪神優駿牝馬(オークス)、京都農商省賞典四歳呼馬(菊花賞)を含む生涯11戦11勝という記録は日本競馬における最多全勝記録としては、2021年に至るまで破られていない大記録である(地方競馬では15戦15勝のツルマルサンデーという記録もあるが)。
このクリフジの産駒のヤマイチという牝馬もまた桜花賞、優駿牝馬を勝利し史上初の優駿牝馬母仔制覇を達成した優秀な競走馬なのだが、残念ながらこのヤマイチの産駒は史実において現代に残っていない。
転生者はこのヤマイチの血筋を確保する為に、海外の競走馬の保護と合わせて奮闘することになる。
そして天の涙事件、ドイツ第三帝国の支配と戦後の経済難により欧州競馬界が更なる打撃を受けることになり転生者が嘆くことになるが、ある時、珍しく朗報が入る。
ヤマイチが元気な仔を産み、更に転生者の経営する牧場でスクスクと育ち、競走馬としても有望という知らせだった。
しかし、偉大な祖母の名前からオオフジと幼名をつけられたその馬は何故か名前を呼ばれると異様に不機嫌となり、微妙に気性難であることが懸念される、と。
そこで転生者の中でも元ジョッキーで調教師で、仲間曰く「アレは馬と会話できてる」とまで言われる切札的存在がオオフジと呼ばれるヤマイチの息子に会いに行くことになる。
その転生者は、黒鹿毛の小柄なその馬を見るなり、原因を理解してこう言った。
「名前が気に入らないのだろう。新たな名前をつけてはどうか。例えば……『ライスシャワー』とか」
男の呼んだ名前に、黒鹿毛のヤマイチの息子は満足気に返事をした。
男が呼んだ名前は、二度に渡り大記録達成を阻んだことにより、レコードタイムを叩き出してのG1制覇という偉業を達成しながらもヒールとして名を広め、淀に散った漆黒のステイヤーの名前だった。
579: リラックス :2021/08/11(水) 21:17:09 HOST:softbank126163140131.bbtec.net
彼により、馬の転生者という前代未聞の可能性が誕生してしまった訳だが、もしかすると犬猫その他の動物でも転生者がいたけど気づかなかっただけじゃね?という説まで浮上したが、それはさておき。
ライスシャワーはようやく関係改善のPRを兼ねて欧州競馬に日本競走馬が招待されるようになった年に、日本代表馬の一頭として選出され、祖母の物を模した勝負服を纏った騎手と共に当時のレコードタイムを叩き出して凱旋門賞等を制覇。
転生者の言葉を借りると、「ここはもう、俺たちの憧れた欧州競馬はない…」と絶望(罵倒や中傷でなく、絶望である)する程に戦後の経済難や食糧難、軍による馬の摘発などにより多くの競走馬(産まれなかった分を含めて)の血統、ジョッキー、調教師が失われており、育成ノウハウも大きく衰退していたことから、この結果は残当以外の何物でもなかったのだが、
ただでさえ長年絶えていた上に、復活を喜んでいた辛坊強いファンに冷や水を浴びせる結果となってしまった。
自国の誇る競技を海外勢に荒らされて嬉しい奴は余程の売国奴か国辱大好きな反体制派くらいのものであり、その不甲斐なさから来る鬱憤を関係者にぶつける者も一定の割合でいる。
その結果、欧州競馬は更なる衰退が進んでしまうことになり、ライスシャワーの名は欧州において長らくヒールとして刻まれてしまうことになるのだが、遠征を終えて日本に凱旋帰国した彼を迎える人々の声は暖かった。
(ちなみに、この世界において転生者は大体2011年くらいの時間軸から遡って来たのが最先端であり、「どけ!俺はお兄様だぞ!」というネタは残念ながら二重の意味で言われることはなかった。)
更にライスシャワーの一件から後、名前を呼ばれる度に不機嫌になる馬が発見される度に例の転生者が呼び寄せられ、彼によりサクラスターオー、サイレンススズカ、トキノミノル、テンポイント、ヴェルデグリーンといった名前が与えられてから後、名前を呼ばれて不機嫌になることはなくなったという。
唯一の例外として、彼が新しくつけた名前をも拒否した馬がいたという。
曰く、「故郷が消滅したのは仕方ないが、この暗いご時世にこの辛気臭い名前もないだろう。折角この国に生まれたのだから、それに因んだ景気の良い名前にしてくれ」と頼まれたらしい。
「なら、そうだな。日、出ずる牧場の王、『ヒノデマキバオー』はどうだ」
後に転生者の中で「沈黙の日曜日事件」と呼ばれる事件の後、ヒノデマキバオーと名付けられた競走馬が本人の活躍もさることながら、リーディングサイアー(ある国、ある地域、もしくは団体において、1シーズンの産駒の獲得賞金の合計額による種牡馬の順位のこと)として日本競馬界に長らく貢献することになるのは、また別の話である。
580: リラックス :2021/08/11(水) 21:18:48 HOST:softbank126163140131.bbtec.net
以上、この転生者が仲間から「やっぱり会話してんじゃねーか!」と突っ込まれたりするのは余談。
ついでにライスシャワーとクリフジの勝負服云々は史実ネタである。
最終更新:2021年08月12日 19:08