15: 635 :2021/08/20(金) 22:37:26 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp
銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ サセボ異界紀行九冊目後編
「ではFFRは我々と敵対、いえ戦争を起こす気はないと?」
「ない、というより起こす必要もなく私達が行ったのは単なる抜き打ちの戦略機動演習ですわ。Monsieuニトベお間違えなきよう…。」
東京総理官邸、特別応接室。
そこには議員の勝負服たる背広を纏う二藤部新蔵大日本帝国内閣総理大臣に加え副総理兼外務大臣の三島太郎。
加えサイヴァル・ダァント・シーズイゼイラ星間共和国議長、マリヘイル・ティラ・ズーサティエルクマスカ星間共和連合議長が席を並べる。
二藤部らが厳しい視線を向ける先。
そんな剣呑な視線を物ともせずいけしゃあしゃあと先の台詞を宣うのはFFR正装たるドレス(FFR機甲科戦闘服)を纏うマリー・マフタンフランス連邦共和国大統領。
否、『彼女』のいる現状ではフランス連邦共和国軍最高司令官『代行』か我らが指揮官『筆頭補佐』とでも言った方が正解か。
そのマリーの隣には駐日FFR大使や補佐官たるオリアーヌとアデール、秘書官のイザベルとソフィーも席を並べる。
FFR大統領ともあろう者が長崎空港に降り、突然サセボを訪れることなど出来るはずもなく日本の空の玄関口たる東京の空港に降り立った。
マリーが乗り込んだ輸送機も日本のティ連加盟式典参加に向けたFFR関係者と関連物資輸送用の便であったのも理由であるが。
そしてFFR司令官『代行』である以上、『彼女』とFFRの今後の為日本との関係悪化は避けなければならない。
その為にもここに居た。
『彼女』がいる以上FFRの今後に対して心配の二文字はあり得ない。
しかし自分が『代行』である時に発生した事案懸念事項、否、不始末を『彼女』にそのまま渡すことは子たる国民と何より自分自身が許すことが出来ない。
そのためならばマリーは自らのプライドなどドブに捨てることすら厭わない。
何よりそれ以上の責がある可能性もあるのだから。
「Monsieuニトベ、我らが、いえ『私』が設定し行ったのは『演習』に間違いありません。」
マリーは此度の演習を自らが設定したと殊更に強調し、言外にFFRとして正式に謝罪は出来ぬと伝える。
「しかし、それが大日本帝国、ひいてはティエルクマスカ連合に対して危機感を持たせたのならばここに演習を設定した一個人として謝罪しましょう。」
そしてマリーは二藤部らの眼前で演習を設定したマリー・マフタンとして深々と頭を下げる。
FFR大統領としてではなくマリー・マフタン一個人としてであるがFFRトップが仮想敵国の眼前で頭を下げるその事実が何を意味しているか分からぬ者はいない。
全ての責は己にあるとしている彼女にある種の覚悟を見た。
「それ程までに『彼女』がお大事ですか…。」
二藤部は絞り出すように言葉を発し、息を吐く。
しかし、マリーはもとより周りの者も何も言わない。
公式に言葉を引き出せなかったがトップから謝罪の言葉もでた。
これ以上関係悪化をさせることもあるまいと二藤部は考える。
「マリー・マフタンFFR最高司令官『代行』、FFRは我々と砲ではなく握手を以て相対する。それで宜しいですね?」
二藤部の言葉にマリーは顔を上げ頷き破顔する。
二藤部は笑顔で右手を差し出し、その右手を笑顔のマリーが握り握手をする。
ある種歴史的な瞬間であった。
「総理!緊急事態です!」
そこへ官邸スタッフが駆け込んで来た。
いい所なのにと日本側の三島やFFR側のオリアーヌらが顔を顰める。
此度の会談が完全に首相官邸の主要スタッフ以外に秘匿かつ非公式であったのが裏目に出たかと二藤部は頭を抱えた。
16: 635 :2021/08/20(金) 22:38:22 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp
「何でしょう?見ての通りマフタン大統領と会談中だったのですが…。」
「!?申し訳ありません!!しかし柏木大臣から緊急を要し、総理に映像を見て頂いきたいということでして…。」
柏木の名を出した途端に二藤部やサイヴァルは顔色を変え、マリーも「彼か…」と呟く。
そして二藤部はマリーをちらりと見るとスタッフに機密に属するものかと問えば、現地では報道機関もおり機密には該当しないだろうとスタッフは返す。
「フゥ、大統領申し訳ありません。家の大臣が何やらやらかしたようでして…。」
「クスクス、柏木特務大佐は本当に元気の良い方ですわね。私達は席を外した方が宜しいかしら?」
「いえこれから見る映像は現地に報道機関もいるようなので大丈夫そうです。宜しければ一緒にご覧になりませんか?」
腰を浮かしかけたマリーはお言葉に甘えてと二藤部の言葉に腰を戻した。
スタッフが手元のPVMCGを操作しゼルモニターを造成し全員が見えるサイズまで巨大化させる。
初めて直接見るゼルモニターにマリーは眉を動かし、オリアーヌらは関心したような声を上げる。
そしてゼルモニターに映るのは此度の騒動の対応の為の現地拠点となる宿泊予定の蘭帝系列のホテルロビー。
連れ去られた筈のヤルバーンスタッフの姿が映り二藤部らは一安心するがそれもそこまでだった。
そこに止まる車両のドアを柏木が開けるとサイヴァルとマリヘイルから驚愕の声が上がる。
「創造主ナヨクァラグヤ!?」
「フリンゼ・ナヨクァラグヤ!?」
二藤部や三島は辛うじて声を出さなかったが驚愕が顔に出ていた。
柏木がナヨクァラグヤ帝と呼び本人?も応えていたことからナヨクァラグヤであることはほぼ間違いないだろう。
それも佐世保の公園で姿が確認された彼女かもしれない。
そしてナヨクァラグヤに続き車より姿を見せた人物に今度は二藤部らが驚愕の声を上げる。
「バカな!?」
「戦艦陸奥!?」
イゼイラ人の子供を抱く女性、その姿はどう見ても戦艦艦娘陸奥その人。
加えその背後に瞬時に艤装が現れフェルが陸奥と呼んでいたことから疑いはないだろう。
陸奥を見た瞬間マリーらFFR側も二藤部ら日本側程ではないが驚愕の表情をする。
そしてFFR側は驚愕する日本側を他所に小声で話始める。
17: 635 :2021/08/20(金) 22:41:39 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp
「(まさか金剛だけでなくネメシス=フローティア、その姉妹が降臨しているとは…。)」
「(ですがマリー様これではっきりしました。此度の我らが指揮官と金剛ら女神の降臨に日本は関与しておりません。)」
「(アレはどう見ても想定外な反応ですものね。これで演技ならば総理ら全員がモリエール演劇賞ものよ?)」
「(後ナヨクァラグヤという星の王子いえ王女様、確か彼女はティエルクマスカ主要国の一つで日本の同盟国イゼイラの女神だったのでは?)」
「突如として我らが指揮官や他の女神が降りる。この日本という国はタケトリモノガタリだけでなく他にも色々あるのかしら?」
マリーがそんなことを呟くと今度は血相を変えたFFRスタッフが早足で部屋に入って来るとマリーに何かの紙の端であろう紙片を見せる。
訝しげにその紙片を覗き込むと目を見開き紙を奪い取ると何度も見直すと他の者に渡す。
他の者も紙片の走り書きを見て血相を変える。
【リシュリュー艦長、剣を返上し己が責を我らが指揮官に問う。我らが指揮官返答として聖剣を下賜せり】
マリーは応接室の天井を見上げる。ああ今度は自分の番だ。
明日、フランス連邦共和国軍最高司令官『代行』マリー・マフタン戦艦リシュリューに乗艦予定。
目的は、『彼女』との謁見及び指揮権の返上。
そして…これまでの人生、『彼女』戦艦リシュリューの子としてのこれまでの責を問われる。
彼女、マリー・マフタンはそう思っている、思い込んでいる。
18: 635 :2021/08/20(金) 22:47:02 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp
以上になります。転載はご自由にどうぞ。
私の中でマリーという人物は政治家以上にリシュリューの子であろうとする人物像です。
リシュリューの為ならば砲煙弾雨をくぐり抜け、泥水を啜り、敵の靴を舐め、己の首すら差し出すことは厭わないそんな人物です。
それが子に己の名誉などと引き換えにしても命を繋いで欲しいと願うリシュリューの意思に沿っているかどうかは別問題となりますが…。
最終更新:2021年08月22日 14:26