95 名前:陣龍[sage] 投稿日:2021/08/23(月) 20:47:00 ID:124-241-072-201.pool.fctv.ne.jp [2/11]
『 神の居る国、日本国 ~イザナギ様の怒号を添えて~ 』
過去のオグリキャップの如く、或いはそれ以上に日本国全体で人気馬となっていたゴーストウィニングの、
余りにも唐突かつ非業の最期。そしてデビュー戦からずっと彼に乗り続けて世界の芝を征した騎手と共に、
事実上殺されたと言う情報が一週間以上に渡って日本の世間、そして世界の競馬界と関係者達を震撼させ、
『とうとうあの狂人連中が殺人事件を引き起こした』と、厳密な罪状で言えば強盗致傷並びに危険運転
致死傷罪辺りが相当だが実質はそれと同じと日本社会全てに伝播し、日本各地で自然発生した反ツイフェミ
大規模デモの同時多発やSNS運営会社がとうとう反差別規約に違反したとしてツイフェミに関する過激な
投稿を徹底削除する様になり始め、凄まじく今更ながらに相変わらずの『一人一派』を乞われたテープ
レコーダーの如く叫ぶ醜い責任転嫁と擦り付け合いの内ゲバがツイフェミにて勃発している中、競馬関係者のみを
集めたゴーストウィニングと騎手の合同葬儀が始まろうとしていた。
「……ウララのせいだ。ウララが、お馬さんたちと走りたいなんて、言ったから……」
「っ、そんな訳有りませんわ!ウララさんは何も悪くない、悪いのは全部……っ!!」
「そうだよっ…!ウララちゃんは……ウララちゃんは何も悪くない……!」
「でも、でもっ……キングちゃんっ……!!スぺちゃんっ……!!」
出席者の中には、先のJRA・URA共催のレースに出場していたウマ娘が。
「無念……あの輝かしかった晴れ舞台が、この様な顛末になろうとは……」
「理事長……」
「……JRA側としても、この様な事になるとは、忸怩たる思いです。あの馬も、あの騎手も、これからも世界で
躍動出来るコンビでした……」
関係各所との折衝を行い、夢の大舞台を成し遂げた責任者達が。
『……彼らも、彼女らも、辛いだろうな』
『頭の狂った連中のせいで、あの凄まじいレースを共に走った名馬が死んだんだ。取り乱していないだけ、
俺より大人だよ』
『私もそうだが、あの悲報が事実と分かった途端に部屋の調度品を全部破壊する位に荒れ狂ったからな……』
『本当に……どうして、こうなったんだ』
極東より彗星の如く現れた世界的名馬の行く末に目を細め、心躍らせていた欧州、中東ら世界競馬界の重鎮や
要人達が。
「……どうしてだよ……どうして……」
「夢なら早く醒めろよ……銀河の国々の技術でも救えなかったとか、そんなの有りかよ……」
「お前、まだ結婚どころか恋人も居ないって言っとったやろが……馬鹿野郎……」
ゴーストウィニング、そしてその騎手とデビュー戦から共に戦って来た調教師や馬主、牧場関係者達が、
その葬儀場に居た。
96 名前:陣龍[sage] 投稿日:2021/08/23(月) 20:48:27 ID:124-241-072-201.pool.fctv.ne.jp [3/11]
「はぁー……」
「溜息吐いてると…って、既に幸運は逃げちゃってるかー……あはは……」
「ん、ネイチャさん……どうしてここに?」
「あそこに居ると、何か今にもボロ泣きしちゃいそうだから……」
「そうですか……私もですよ」
悲嘆に暮れる人々が詰め、そして余りにも理不尽な最期を迎えた両者を悼む声が小さく
飛び交っている中、葬儀場の入り口外では先のレースで最初で最後のゴーストウィニングとの
勝負で、伝説の神馬をねじ伏せた二人のウマ娘が居た。
「……警察の人も参列してたり、警護も偉く厳重だったりと、普通じゃない葬儀だね」
「ちょっと聞いてみたんですけど、警察の方でも今回の事件に関しては凄く重く受け止められた
みたいで、その関係見たいですよ」
「メンツ…って、ヤツかな?」
「プライド……と言った方が、聞こえは良いかもですね」
先のゴーストウィニング並びに騎手の死亡事件は、日本国の治安を守護する日本警察にも
極めて大きな衝撃を以て受け止められた。現場、並びに即応体制に関しては瑕疵が殆ど
見受けられない対応で有り、極々一部の某連中による逆恨みなSNSでの雑音以外は世間等からの
バッシングは無かったのだが、予防拘禁等が法律上認められていない現状では今後似たような
事件が発生したらまた同様の結末、最悪は無関係な通行人等にも多数の死傷者が出かねないと言う
簡単に導き出せた未来予想図に警察関係者は揃いも揃って顔を青白くしながら頭を抱えて呻いていた。
【トレセン学園放火未遂事件】と合わせて考えて、何処ぞの化学兵器テロを引き起こした某カルト宗教
団体の様に世間に明確に目立たせる集団ではない、そこら辺のやる気しかない極少数のド素人による
思い付き行動が本物のテロ組織と同レベルかそれ以上の社会的混乱や打撃を発生させてしまう
可能性が突き付けられた現実に、警察並びに諜報関係者が震えない訳が無かった。しかも現在でこそ
やや廃れたとは言え、過去治安神話を持っていたように社会的安定度は諸外国と比べて遥かに高いと
言われる日本での話である。
「……そー言えばさ」
「なんです?」
「トレセン学園の料理人の人らが、オグリさんが食事一人前だけで済ませた事に慄いてたけど、
スペシャルウィークちゃんとかも……?」
「あぁ……ここ最近、一人前だけでお腹いっぱいだって言ってます。食欲が湧かないそうで」
「やっぱりかー……」
JRA・URA共催のレジェンドホース杯に参戦、または観戦していたウマ娘達が長距離走部門後に
行われる筈だったウィニングライブが急遽中止になった上、警官隊の護衛付きでトレセン学園に戻った後は
安全の為に暫く外出・外泊は全面的に禁止され、必然的に各地でJRAと調整しつつ行われる筈だった
URA式レースも中止を余儀なくされていた。警察の総力を挙げた捜査で今回の道路封鎖と馬運車強奪並びに
死亡事故が、意図的・計画性皆無の衝動性と流れによるもの立ったと言う、余りに下らなくしょうも無さ過ぎる
真実が分かるまでは競走馬に続いてウマ娘達にも自動車などを用いた襲撃事件が発生する可能性を本気で
考えられたからなのだが、余りにも不本意過ぎる行動抑制を余儀なくされたウマ娘達の調子が落ちるのは当然で、
しかも報道で伝わって来た此度の事件の詳細な状況が分かってくれば来るほど、心理的悪影響は大きかった。
ウマ娘達が、皆善性で有るが故に。
97 名前:陣龍[sage] 投稿日:2021/08/23(月) 20:50:35 ID:124-241-072-201.pool.fctv.ne.jp [4/11]
【トレセン学園放火未遂事件】は学園生徒の多くが長期休暇で実家へ帰省していたり、
何処ぞのトレンチコートが似合いそうな男率いる者共が迅速かつ徹底した初期対応に
成功させた事で、ニュース報道で大々的に事件の顛末が流されたとは言え、実質的な
被害が皆無だった事も有って生徒に取っては半ば他人事染みた昼休みの話のタネに
なる程度で終わったのだが、今回は学園生徒と共にレースを走った競走馬と騎手が
悲惨な形で実質的に殺害されると言う、理不尽な害意を直視させられざる負えない状況の為、
そしてトレセン学園に通うウマ娘は皆個人差こそ有れど感受性豊かで優しい性格の為も有り、
心痛で食を細くしたウマ娘や精神的不調を訴えるウマ娘も出て来ていた。不幸中の幸いなのが、
ウマ娘達トレセン学園関係者が使うウマッター等のウマ娘世界のSNSと日本国側のSNSは
互換性が微妙に合っていない為に未だリンクが繋がっておらず、必然的にツイフェミが
ウマ娘達のアカウントに特攻して来る事が不可能だった事だろうか。もし繋がって居れば
間違い無くウマ娘達にもツイフェミの理不尽な差別投稿や誹謗中傷の集中砲火が
叩き付けられた挙句に、健啖家で有名なウマ娘が食が細くなる所か拒食症を患ったり、
鬱病を患いレース引退を余儀なくされるウマ娘が続出して居た事だろう。彼女たちは走る事
以外は割と純朴で、剥き出しの悪意に強い筈も無いのだ。
「……そろそろ、戻ろっか。ゴールドシップとか、マーベラスも、萎びたほうれん草よりもしおらしくしてるし」
「何時も大騒ぎしているあの二人が、珍しいよね、あの顔。……うん、戻りましょうか」
頭が良すぎるが故か、普段は様々な奇行と暴走で生徒副会長との追い掛けっこを毎日の如く
学園内で繰り返している黄金の不沈艦も、全ての事に『マーベラス!』と元気一杯な不屈の
遅咲き強豪バも、ここ最近は恐ろしい位に騒ぐ様子も無く静か。二人とよくつるんだり関わっている
友人たちの方が元に戻そうと悪戦苦闘しているが、成果は芳しくなかった。トレセン学園生徒でも
騒がしさではトップクラスの二人ですらそんな有様なのだから、学園内の【音】と生徒間の雰囲気は
押して図るべし、だろう。
「ねぇ二人共。私の席、有る?それと鞍上の席も」
「うん?そりゃ有るんじゃ……な、い……」
「どったのスカイ……はぇ?!」
葬儀場に戻ろうとした二人の背後から唐突に投げかけられた少女の声に、自然と反応して振り返った
セイウンスカイとナイスネイチャは、直後思考と共に硬直した。
「やー、この前のレース振り、お二人さん。何か良く分かんないけど、馬運車が衝突事故した後気絶して、
そうして気付いたらこんな事になってたんだよねー。しかし自分の葬儀を外から見るのって何だか
笑えて来るね。あっはっは」
困惑と思考停止に陥る二人を前にして、彼女らの心境を知ってか知らずか、からからと能天気に
笑っている、トレセン学園の制服を着たウマ娘。かの名馬、ゴーストウィニングは栗毛の平々凡々な
容姿だったが、唯一目立つ他馬との違いとして、鬣(たてがみ)が少し白み掛かった珍しい特徴があった。
彼女にも、髪色が栗毛の中に白が混ざっていた。
「あー……うん。まぁ、そう言う訳?なのだけど……俺も、何でここに居るのかサッパリなんだよなって。
トラックと地面への叩き付けで頭割れた様な気がしたんだけど」
「え!?鞍上、大丈夫なの?!痛い所とか有るなら病院行かないと!!」
「あぁ、うん、まぁ、そう?そう、なのかな?今は別に何ともないんだがな……うん、大丈夫だから担ぐな、
危ないから」
「もにゅー……」
肩車しに掛かるウマ娘の両頬を抑えてもにゅらせているこの男性。セイウンスカイとナイスネイチャは
見覚えが有った。何せあの死力を尽くしたレースで共に走り抜いた、ゴーストウィニングの騎手なのだから。
「よっ……よっ……」
「むにゅ?」
「うん?」
そして目の前の光景と言動を見て、混乱しながらナイスネイチャたちが弾き出した答えを元に行われるべき
行動は、一つしか無かった。
「「……蘇ったぁぁぁあーーーー!?!?」」
「……失敬な。私らは死んでないよ」
「いや、時系列とか見たら俺達一旦死んでたんだが」
「?」
98 名前:陣龍[sage] 投稿日:2021/08/23(月) 20:52:18 ID:124-241-072-201.pool.fctv.ne.jp [5/11]
「……つまり、貴女は『ゴーストウィニング』……と、言う事ですか?」
「そうだよー、メジロマックイーン。この前のレース楽しかったよ。あ、このカフェオレって言うの、
結構甘くて美味しい」
「……幽霊、とかじゃ無いよね?マヤ、生きているウマ娘と話してるんだよね?」
「何言ってるのか良く分からないけど、ちゃんと両足も有るよ、マヤノトップガン。何なら見る?」
「ひゃぁ!?ご、ゴーストウィニングさん!スカートを持ち上げるのは止めよう!ね!?」
「?なんでそんなに慌ててるの、ライスシャワー?」
ナイスネイチャとセイウンスカイの絶叫に即応した、葬儀場内のウマ娘達や関係者が飛び出して、
遺影の写真と同じ男と謎のウマ娘が居る事により騒然となった上、そのウマ娘がゴーストウィニングの
調教師や馬主に「テキさん!主さん!数日振りですね!」と親し気に駆け寄って行った事で更に
大混乱が始まったが、取り合えず葬儀場内の一室に招いて事情聴取する事になり、『ゴーストウィニング』と
その騎手がどうやら本当に蘇ったらしい事が分かるに連れて、混乱の度合いは徐々に落ち着いて行った。
死者が蘇った上に一方が何故かウマ娘になっていると言う情報爆弾で一旦冷静にならざる負えなかったとも言う。
因みに海外から来ている世界競馬の重鎮たちは『神の奇跡』が起きたと喜ぶべきか、何故に『競走馬』では無く
『ウマ娘』なのだと疑問を提示するべきか分からず、何とも微妙な顔をしていた。
「……それで、本当に覚えていないのか?どうしてこうなった事とか……」
「すみません。覚えているのはトラックにぶつかって地面に叩き付けられたら頭が割れたらしい感覚がしたと言う
一瞬の事だけで……。その後は気付いたら葬儀場の入り口前に、あの娘と居たとしか……」
「そうか……」
「……すまない。君も、あの馬も、俺は救えなかった。もしあの時、俺が何が何でも運転席にしがみ付いて、
馬運車を奪われなかったら……」
「あの事に関しては、もうどうしようもなかった、としか言いようがないですよ」
本来新しいウマ娘が来た場合と言った事になるといの一番に暴風の如く引っ掻き回すゴールドシップだったが、
彼女の明晰な頭脳でも流石に死者の蘇生と競走馬からウマ娘化と言うのは情報過多だったのか唖然としつつ
置物状態になっており、結果比較的落ち着いた会話が成り立っていた。何だかホンワカ真面目系天然ボケ少女の気を
見せまくるゴーストウィニング(ウマ娘)の一挙一動は兎も角。
「んー……それじゃあ、何か持ってたりしない?」
「スペシャルウィーク?」
「この前グラスちゃんとゲームしていたら、大事なモノは必ず何処かに持ってるって言うシステムだったし、
もしかしたらって思って」
「スぺちゃん、あの時部屋に戻るのが遅かったのって、グラスちゃんと遊んでいたからなのね……」
「もしよろしければ、グラスさんもスぺちゃんと一緒に遊びましょうか?」
「うーん……考えておくわね」
先輩後輩とその友人の仲良しエピソードは兎も角、スペシャルウィークに言われるがまま自身のポケット等を弄る
ゴーストウィニング。
「……あれ、封筒?何時の間に持ってたんだろう?」
「!それです!きっとそれは、ゴーストウィニングさんと騎手さんにかかわった人のメッセージです!」
「……普通の人がこんな事出来るのかなぁ」
スペシャルウィークの言葉尻に思わずセイウンスカイの口を吐いて出た疑問は兎も角、ナイスネイチャが丁寧に
糊付けされている封筒をハサミで開封し、ゴーストウィニング当人が確認し始めた。
99 名前:陣龍[sage] 投稿日:2021/08/23(月) 20:55:03 ID:124-241-072-201.pool.fctv.ne.jp [6/11]
「差出人は……えーっと……い、い、いじゃ……?……何て読むの、これ?」
はてな顔でそんな事を言い出したゴーストウィニングに思わずズッコケたナイスネイチャと
タマモクロス。ノリの良い関西人気質の賜物である。
「あー……ちょっと見せてみぃ」
「えっと……『伊邪那岐』……」
「うんうん、差出人はイザナギ様やな……って、い、イ、イザナギ様ぁぁぁあーーーー!?!?」
想定外のビッグネームに、自分で口に出した言葉を理解するのに一瞬時間が掛かって思わず
絶叫したタマモクロスや、日本神話を知らない海外勢に日本人が簡単な説明をしたり、今更ながらに
タマモクロスの叫びで再起動したゴールドシップがマックイーンに静かにするように口を塞がれ
白目剥き始めたりする混沌が巻き起こる中、『イザナギ様』がどう言う存在か殆ど知らないゴースト
ウィニングは首を傾げつつ、自分の鞍上が隣に来て肩越しに読もうとするのを嬉しく感じながら
音読を始めていた。このゴーストウィニング、一度たりとも自分の騎手をこの男から変えなかった程度には
大好きである。
「拝啓、競馬関係者並びにウマ娘の皆様方へ」
と言う丁寧な筆跡と枕詞で始まった封筒の文書は、突発的な思い付きで別世界の存在(トレセン学園とウマ娘)を
放り込んで関係各所に想像以上に苦労を掛けた事に対する謝罪と、先のレジェンドホース杯の激闘を
楽しませて貰った事に対する感謝が綴られ。そして先の事件で無惨にも殺害された顛末に怒って何度目かの
衝動的な現世への関与をした結果、ゴーストウィニングがウマ娘にて、彼の騎手はそのまま人として蘇らせたのだ、
と釈明されていた。後半は此度の件でも自分の妻に折檻された旨の愚痴と言うか一部惚気混じりの事が
書かれていたが、途中で神の威厳等無い赤裸々な私生活模様情報に呆れた代表者のエアグルーヴが止めに
入ったので中断した。
「神様が生き返らせてくれたと言われても、何だか実感ないですね。四つ足だった記憶が有るのに、二本足で
立ってるのが全然違和感無かったりしますし」
「仕方が無い事かも知れないが、当事者意識が無さ過ぎるぞ……のほほんとし過ぎだ」
「でも塞ぎ込むよりも全然良いと思うなー!ねぇねぇ、今度一緒にゲーセン行こうよ!はちみーもマックイーンと
飲みながらさ!」
「ちょっと、テイオー!?行き成り私を巻き込むのは止めて下さい!」
「えー…嫌なの?」
「もちろん行きますわ!しかし了承だけは取って欲しいと何時も言ってますわよ!」
「ぶほぁ……ぜぇ……ぜぇ……マ、マックイーン……流石に、息出来なくなるまで、口閉めんのは、
ゴルシ様でも……キツイって……」
流石にゴルシとは言え、理不尽に息を止めさせられた挙句に適当に放り出されると言う余りにもあんまりな
雑な扱いをマックイーンにされた事に憐れみを感じたか、机にうつ伏せでもたれ掛かって荒い息を整えている
ゴールドシップをライスシャワーが背中を摩って介抱を始めたり、取り合えず暗い雰囲気が吹き飛んだ事で
何時もの調子を取り戻したサクラバクシンオーやバンブーメモリーらがお祝いしようと騒ぎ始め、それとは別に
ゴーストウィニングとその騎手が生き返った事に感極まり大号泣したハルウララがゴーストウィニングに抱き着いて
ごめんなさいとだけ泣きながら連呼し続けてキングヘイローらにあやされたり等、何時ものトレセン学園の雰囲気に
なって行った。此処はトレセン学園では無く葬儀会場なのだが、大人達は口を挟む気にはならなかった。
「……さて」
そんな元気を取り戻したウマ娘達の姿を見た生徒会長シンボリルドルフは、静かに気付かれない様に部屋を出ていく。
「……失礼。少々よろしいだろうか」
「づぉっ?!し、しシシ、シンボリルドルフさん!?」
「仕事を邪魔するつもりは有りません。ですが……『何か』が有った様子ですので、宜しければお教え願えませんでしょうか。
私も、トレセン学園の生徒会長として、生徒達を守る義務が有ります」
そして、ゴーストウィニングとその騎手が現れる前後に、視界の端で警備の為張り付いていた刑事がスマートフォンで
通話を受けてから妙な動揺を見せていた事を見逃さなかったシンボリルドルフは、生徒達の注意が完全に逸れている間に
理由を聞きに行ったのだ。
101 名前:陣龍[sage] 投稿日:2021/08/23(月) 20:57:02 ID:124-241-072-201.pool.fctv.ne.jp [7/11]
「…………」
「……やはり、機密に当たる事でしょうか」
「……未だ、不確定な事項が多く、連絡を受けた私にも、この事が真実かどうか分かりません。その点だけは、
承知下さい」
「……承知しました」
難しい顔をして拳で額を覆う刑事を慮ったシンボリルドルフだったが、表情が『信じられない』と言う事をありありと
語りながら、二重に『本当か分からない』と予防線を張った刑事の言葉に、真摯に応えるシンボリルドルフ。
そうして告げられた言葉は、確かに俄かには信じられない『事象』だった。
「……あれ?」
「どうした、スカーレット」
「この手紙……一番最後に、何か書いてある」
「へー、なんて書いてあるんだ?」
「…………『罪を罪と思わぬ罪人には、神罰は遍く降り注がん』」
『――――現場から中継です!現在、駅前に集団で集まっている抗議と名乗る集団は、警察官の警告を無視して
プラカードを振り回したり、えー大声で叫び回っている状況です!』
『――――○○さん、此方には今現在抗議デモの許可等を取らずに集団で活動して居ると言う情報が有りますが、
本当でしょうか?』
『――――……はい!恐らく、そうだと思われます!駅の利用客が出口を封鎖されている為に駅から出て来られないと……え、
雷?きゃあ?!』
『――――○○さん?○○さん!?……えー、今、映像が乱れていますが、何でしょう、雷の様な轟音と閃光が映りましたが、
○○さん達は大丈夫でしょうか……?』
『――――…………な、何?』
『――――○○さん?大丈夫ですか?』
『――――……は、はい!現場の○○です!え、えー、只今、雷が、近くに落ちたのか凄い轟音と閃光が起きましたが……』
『――――えーっと……○○さん?映像には、先程の集団が綺麗サッパリ居なくなっているように見えるのですが』
『――――……はい、映像に映っている通りだと思いますが、先程の集団が消失しています。現在警察官の方々が
調査に向かっている様子です……あ、はい!警察からの要請で、一旦現場の駅を含む近隣を一時的封鎖するとの事ですので、
一旦中継を切ります!スタジオにお返しいたします!!』
とある民放にて放送された様に、日本全体から袋叩きにされる現状に耐え切れずに反攻を目論んで、ツイフェミと呼ばれる類の
集団は街中乃至はネット上にて規模の大小様々な方法問わずに日本社会に対して【抗議活動】を展開。当然反ツイフェミの
空気に染まっていた日本人から更なる袋叩きの連鎖による罵詈雑言の殴り合いが多発している中、ある時唐突にツイフェミの
音信や生存確認が途絶える事件が発生。これがSNS上だけならば単に逃げたかシステムの故障が疑われるかに終わったのだが、
時を同じくして街に繰り出して【抗議活動】を行っていたツイフェミの集団が、衆人環視の中で落雷の様な轟音と閃光と共に
『消失』する事件が発生。監視カメラや野次馬がスマートフォン等で撮影して居た映像等の解析や警察の捜査も、まるで『神隠し』に
有ったかの如き証拠も何も無い蒸発具合で有り、何の成果も無かった。
「……先程来た情報によると、日本全土の悪質なツイフェミと目された人物が、ゴーストウィニング氏とその騎手が、この葬儀場の
入り口に現れた頃の時間に、突如全員音信不通や消息不明となったようです。しかも、先の襲撃事件で留置場に収監されていた
三人組も、謎の閃光と轟音と共に消失していた、と……」
原因不明の多数の人間の『神隠し』が発生し、ネット上では唯の音信不通等で片付けるには余りにも規模が大き過ぎ、
しかもテレビの生放送中に発生した突然の集団消失と言う証拠付きの事象に『神罰』『ティ連による制裁』『超能力者による
ゴミ掃除』等々の予想がされる中、ティ連が関与を否定した事や現実・ネット共に無駄に騒ぐ面々が物理的に消滅した事で
治安や安全性が上昇した事も有って、一週間も経てば自然と過半の日本国民の中では『過去の事』となっていった。
警察や捜査の協力要請を受けたティ連は日本国民の中で過去の事になろうとも調査・捜査・行方不明者の捜索を行っていたが、
成果は全くと言うしかない程に無かった。消失した多数の人間が日本に戻って来る時が何時来るのかは、この時の日本人は
誰も知る事は無かった。
102 名前:陣龍[sage] 投稿日:2021/08/23(月) 21:00:44 ID:124-241-072-201.pool.fctv.ne.jp [8/11]
|д゚) と言う訳で、種明かしはこの世界特有の現世介入モーマンタイ(古代遺物言語)な神様の大暴れで御座った
|д゚) 後ちょっと【何か】やっちゃってる見たいですが、まぁ一月位したらどっかに『消失』した面々も日本に戻って来ますので逃げられたりは
しませんな
|д゚) …やらかした事による影響の酷さに比べれば超絶微罪ですが、取っ捕まった四人組の三人、後で逃亡罪か何かも
罪状追加されるんやなって(今気付いた)
最終更新:2021年08月26日 17:36