730: ham ◆sneo5SWWRw :2021/07/27(火) 01:03:33 HOST:sp49-98-13-128.msb.spmode.ne.jp
この作品はGATE(ゲート) 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えりと憂鬱のクロスものです。
原作の平成日本とは繋がりません。
色々破茶けてます。
こんなの無いだろ、なオリ設定もあります。
笑い飛ばす程度に読んでください。
以上の事を留意してお読みください。
GATEネタ GATE 皇軍 彼の地にて、斯く戦えり 第18話 会議の前
1945年12月17日 日本 東京・銀座 大日本帝国陸軍並びに海軍陸戦隊 銀座衛戍地
帝国皇女 ピニャ・コ・ラーダは、その日の日記にこう書いている。
「世界の境たる『門』をくぐりぬけると、そこは摩天楼だった」と。
巨大な建物と言えば帝都の宮殿とか、元老院議事堂、あとは軍事用の城塞しか知らないピニャたちにとって、銀座の街並みでも十分に摩天楼であった。
もちろん、レレイやテュカ、そしてロゥリィすら、目を丸くして呆然と立ちつくしていた。
彼女らが立ち尽くしている一方で伊丹は、検問所で外へ出る手続を行う。
その途中、伊丹は声をかけられた。
「伊丹大尉ですね?」
手続きを早々と終えて声を掛けてきた人物を見ると、見た目には、『いかにも』という黒服の集団である。
「今回の皆様のご案内役を仰せつかった駒門です」
その代表者らしい男は、どこにでもいそうな中年オヤジ風の男だったが、雰囲気が違うことを伊丹は素早く感じ取った。
「(憲兵・・・じゃ、ねぇな)特高か?」
「ほぅ、わかりますか・・・さすが英雄だ」
「駒門さん、だっけ?
あんた、大陸には行ったことあるかい?」
「? いや・・・」
「むこうは魑魅魍魎の巣窟だ。
誰もが認める善人が、実は鬼畜なテロリストのリーダーなんてザラにある。
そういったところで生きるには、人間を匂いで区別しなきゃならねぇ。
そんな生活をしていたら、嫌でも区別がつく」
「なるほどねぇ・・・。実は、あんたの経歴を調べさせて貰ったんだよ」
黒革の手帳をめくりながら、駒門は伊丹の概略を読み上げた。
731: ham ◆sneo5SWWRw :2021/07/27(火) 01:04:05 HOST:sp49-98-13-128.msb.spmode.ne.jp
「伊丹耀司。
父親を早くに無くすが、その父親が陸軍軍人だったために学費免除制度の有り、高等教育が受けられる幼年学校に入学。いわゆるCさん。
士官学校卒業時の成績は最下位のはずが、途中で怪我をした学生が出たため、下から2番目に繰り上がる。
勤務成績は、中の下と下の上を行き来する程度。
怠け者根性を叩き直すために上官から、中野学校に放り込まれて、無事退校。
危険を回避する超人的な能力、どんな苦境でも変わらない精神を見込まれ、定期的な交代で満州へ治安維持任務に出征している習志野の騎兵連隊に配属。
しかし成績は振るわず・・・いや、振るおうともせず、万年少尉であと数年で定年のはずが、例の事件のおかげで二階級特進した・・・と」
「良く調べているねぇ・・・あんた情報局に行ったほうが良いよ」
駒門の調査能力に対し、伊丹が感心してそう言う。
「くっくっくっ…。
『月給泥棒』、『同じオタクでも働かない非生産的の一番ダメなオタク』、こてんぱんだねぇ・・・
で、そんなあんたが、なんで機動旅団なんぞに?」
機動旅団
史実のグリーンベレーやデルタフォース、特殊作戦群を参考に、
夢幻会の肝いり創設された日本陸軍の特殊部隊。
対ソ戦に備え、ソ連領内に侵入し、反乱分子の戦力化、ゲリラ戦の展開、後方攪乱等の特殊作戦を行う目的で編成された。
共産主義が思想集団であることから、特殊作戦群のように洗脳工作に備え、隊員は公の場では目出し帽で覆ったりする等の徹底した情報管理がされている。
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ」
伊丹の経歴に栗林が悲しい悲鳴を挙げる。
その一方で、伊丹は観念したようにふぅ、と、息を吐いて肩を竦めた。
「20年近く前にね、フランスでこんな論文が発表されたそうです。
綱引きをする人数を、1人、2人と増やして、その引っ張る力を計測していたんです。
同じ身長、同じ体格、同じ筋力の人間が倍、さらに倍と増えたら、どうなったと思います?」
「同じなら、引っ張る力も倍に増えていくだろ?」
「ところがどっこい。
1人当たりの引っ張る力がどんどん減って、8人になる1人当たり半分未満の力しか出していなかったんです。
つまり、人間ってのは集団になると無意識に手を抜いちまうってことがわかったんです。」
「人間は集団になると甘えちまう、ってやつか。聞いたことあるな」
伊丹の言う論文に、そういえばそんな論文があったなと駒門は思った。
「で、これと似たような論文で、働き蟻の論文というのが出たんですわ。
働き蟻の内2割は怠け者で、その2割を取り除くと、それまで働き者だった蟻の内の2割が新たな怠け者になってしまう、と」
「優秀な働き蟻が、優秀なままでいるためには、同じ集団の中に怠け者が必要だ、というわけか」
「で、『なんでお前はそうも怠け者なんだ』と叱られた時に、この2つの論文で屁理屈を口走りましてね。
それが上の関心を引いてしまって、
『優秀な人間ばかり集めると甘えてしまう上、2割が怠け者になってしまう。
だったら、最初から怠け者を混ぜておけ』という話になっちまって・・・」
「くっくっくっ・・・それで、あんたが機動旅団へ行くことになったと?
ま、あんたみたいなのがのんびりやってれば、壁にぶち当たって伸び悩んでる奴だって、自分を追い込むほど焦ったりしないだろうからなぁ」
駒門は腹を抱えて笑った。
どうにか笑いを堪えようとしてるが、それでも抑えきれずに笑っていた。
それも時間を経ることでどうにか収まってきて正常な呼吸が出来るようになると、駒門は伊丹の前で背筋を整え、ピシッと実に色気のある敬礼をして次のように言い放った。
「アンタやっぱりタダ者じゃないよ。
優秀な働き蟻の中で、怠け者を演じてられるその神経が、凄い。
俺は冗談じゃなくあんたを尊敬する」
732: ham ◆sneo5SWWRw :2021/07/27(火) 01:04:41 HOST:sp49-98-13-128.msb.spmode.ne.jp
伊丹が駒門と会っている頃 日本領ハワイ オアフ島ヒッカム飛行場
日本が異世界からの賓客を招いていることで注目を集めている裏で、ここハワイで、密かにある会談が始まろうとしていた。
「かつて太平洋戦争で対峙した日米の英雄が会合する・・・その瞬間をカメラに収めようと日伽両国の報道陣が集まったようだな」
ハワイで会談相手を待つ東条英機は、そう言って、集まる報道陣を見た。
嶋田に比べればいくぶん劣るが、自身が常勝将軍と呼ばれて英雄扱いされてこのように注目を浴びることに若干嫌気が出る。
「異世界の脅威のためにかつての敵同士が協力し合って立ち向かう、いい絵になりそうだな。だからカリフォルニアの報道陣が多いんだろうな」
「大方、あのマスゴミの仕込みだろう。文屋上がりだけにイメージ戦略は上手い」
「しかし、ライバルが目立つのは好ましくないと文官であるはずの自分も参加する・・・無事進行してくれればいいんだがな」
同伴する一木清直ら夢幻会の陸軍転生者らがそう小声で話す。
一木らの言う通り、記者は白人が多く、彼らは皆がカリフォルニアの記者であった。
と、そこへ、大型レシプロ機の音が聞こえてくる。
空にはC-54スカイマスターこと、ダグラスDC-4が着陸態勢に入ってきた。
地上では、軍楽隊が「弾薬輸送車は進んでいく」を奏で始める。
滑走路を走りながら、着陸したDC-4はそのまま東条らの近くで止まり、すぐにタラップが横付けする。
そして、ドアが開かれ、コーンパイプを持った男が登場した。
そう、マッカーサーである。
マッカーサーは一歩一歩踏み占めるかのようにゆっくりと降り立ち、東条の元へ歩み寄った。
「初めまして、東条大将」
マッカーサーの流暢な日本語に、東条らは驚きつつ、差し出された手に握手を返した。
「初めまして、マッカーサー補佐官。日本語をよく勉強されてますな」
「ええ。悪しき独裁者だけでなく、異世界の敵と戦うという摩訶不思議な危機において、人類が一丸となって戦わなければなりません。
そのような中で、同盟国と意思疎通ができないようでは、それ以前の問題ですから」
遠回しに『日本語が出来ないような奴は、同盟国を名乗る資格はない』と記者の前で言っている当たり、マッカーサーの魂胆が見えよう。
そんなマッカーサーの後ろから、同じように流暢な日本語が聞こえてくる。
「たしかに、意思疎通も大事ですな。
それに、自分の立身出世で行動するのも、まさにそれ以前の問題ですな」
『そういうお前はこの会談を利用して自分の利益を得ようとしてんじゃねぇのか?』という嫌味を織り交ぜて言うのは、首席補佐官のハーストである。
この会談で、国家安全保障問題担当大統領補佐官のマッカーサーの派遣が決まった際、彼の一人勝ちをさせるものかとハーストも首席補佐官の地位を利用して、急遽会談に飛び入り参加していた。
「そうですな。儲けのために戦争をし、挙句祖国も売るような輩も、ですな」
『金のために戦争を煽り、金のために祖国を売りとばそうとした売国奴はどこのどいつだ?』と嫌味を返すマッカーサー。
二人の間に飛び散る火花を幻視した東条は、これからの会談に胃を痛めるような感覚にとらわれるのだった。
733: ham ◆sneo5SWWRw :2021/07/27(火) 01:05:13 HOST:sp49-98-13-128.msb.spmode.ne.jp
少しして・・・ 日本 東京・銀座 とある大衆食堂
テュカ用のスーツを購入した伊丹ら一同は、駒門の案内でとある大衆食堂で食事をとっていた。
スーツの購入費などで軍資金を使った伊丹はここでの食費すら心もとないため、より安い牛丼屋で済まそうとしたが、駒門から警備上の理由で却下された。
そんなわけで入った伊丹は、なんとか安い料理で済まそうとメニュー表を睨んでいた。
伊丹のそんな悩みを露知らず、初めて入る異世界の食堂を興味深くみている異世界の女性陣。
穏やかな音楽が流れ、真新しいテレビが映像を流している。
そんなとき、テレビから『陸軍分列行進曲』が流れると同時に映像が突如として変わった。
『大本営陸海軍部発表!12月17日正午!
去る12月13日、帝国陸海軍は盗賊団によって襲撃されし街を開放せり!
盗賊は特地帝国軍敗残兵並びに特地帝国兵の略奪で父祖の地を追われた者たちと判明!
ああ、なんと浅ましき者共か、帝国の皇族、貴族たちよ!!
己が贅を貪るために民を虐げるその悪行!
盗賊であろう彼らは皆、かの者共の被害者とも言えよう!
かのような者共が他国を蛮族と貶める資格なし!
盗賊に悪口を言う資格なし!
彼の者らこそ、まさしく盗賊なり!』
テレビから流れる"カラー映像"による臨時ニュースに異世界娘たちは釘付けになる。
レレイの副音声で訳語を聞き、ピニャらはいたたまれない気持ちとなり、時折他の客が上げる話声に居心地の悪さを感じる。
レレイはテレビの翻訳に集中しているため、話声の翻訳は出来ないが、内容についてはおおよそ想像がついた。
そんなピニャたちを横目に伊丹は駒門のほうに向いた。
「駒門さん、ここの飯代、全額特高のおごりで頼むわ」
「おいおい、さすがにそれは・・・「あのテレビも声を上げる客も特高の差し金でしょ」・・・っ!」
伊丹の指摘に駒門は居住まいを正す。
「おめえさん、どういう推理でそうなった?」
「単純な話さ。あんたは最初からこの店で食事させようとする気がアリアリだった。
そんでもって見たら、特高の御仲間らしき匂いのする客・・・いや、あのウェイトレスやコックも・・・驚いた、店員全員そっくり入れ替わってるわ。
で、アンタの御仲間だらけの店で4日前の特地情報のニュースと来た。
特に検閲が厳しい特地のニュースが4日で届くのは早すぎる。
もちろん、速報性の高いニュースなら可能だが、地方の田舎の盗賊退治をわざわざニュースする必要もあるめぇ。
しかも数少なく高価なカラーテレビで、だ」
伊丹の推理に、駒門はぐうの音もでない。
734: ham ◆sneo5SWWRw :2021/07/27(火) 01:05:46 HOST:sp49-98-13-128.msb.spmode.ne.jp
「で、おごりを断ると言ったら?」
「そん時は姫さんたちにカラクリを伝えるだけよ」
「分かった分かった。俺の負けだ。好きなだけ食え」
その後、言葉通り伊丹達(特に異世界女子達)はたらふくと料理を食べ、後日、駒門は経理に呼び出されるのであった。
以上です。
伊丹の経歴は原作の伊丹の生い立ちを辻褄合わせしているときに丁度良い歴史イベントがあったので、こうなりました。
何気に父親が軍人なので学費免除の有るCさんです。
綱引き云々は社会的手抜き(リンゲルマン効果)というもので、働きアリの法則を調べた際に出て来たので入れました。
こういう他国で似たような論文があれば、働きアリの法則も発表できるでしょうし。
ハワイでの会談は第5話から出ていた外交会談です。
数年前の敵国同士が異世界相手に手を取り合って戦うなんて、いいアピールですから、ハーストもマッカーサーもノリノリでバチバチです。
最後のニュースは異世界娘、特に薔薇騎士団の面々への精神攻撃目的でやりました。
自らよりはるかに高度な文明を目の当たりにし、帝国の悪行を挙げ連ねて、それに反応する周囲のひそひそ話でピニャ達は自国の立場を改めて思い知らされています。
今回はここまで。
更新も話の展開も亀ペースですが、なるべくエタらないようには頑張りたいです。
それでは、また次回に。
735: ham ◆sneo5SWWRw :2021/07/27(火) 06:14:02 HOST:sp49-98-13-128.msb.spmode.ne.jp
申し訳ありません。
733の「陸軍分列行進局」は誤字です。
wiki掲載時には「陸軍分列行進曲」に直してください。
最終更新:2021年09月06日 10:00