641: 弥次郎 :2021/09/10(金) 22:58:03 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
憂鬱SRW 未来編鉄血世界SS「放たれたミストルテイン」
地球経済圏の対火星連合戦線異状アリ。
それは、ギャラルホルンや経済圏の予想に反し、なんとオセアニア連邦から始まった。
元々火星連合との交渉に積極的だったアーブラウが離脱というならばまだ予想はできたことだ。元々、クーデリアとの交渉を持ったのはそこだったのだから。
現在、その交渉を進めようとしていた蒔苗が亡命し事実上失脚している状態では、それは起こりえないと結論付けされていたほどに。
だが、まさかのオセアニア連邦だ。しかし、すぐに納得が追い付く。クーデリアを護衛する艦隊は、オセアニア連邦を訪れた。
それはそこに亡命している蒔苗に会うため、というのもあるだろう。だが、その蒔苗の仲介があればオセアニア連邦とコンタクトをとることも可能なのだ。
つまり、経済圏が一致して行っている対火星連合の戦線や協調を、火星連合調略によって崩しに来たといえるかもしれない。
だが、解せないところがある。
即ち、オセアニア連邦がこれまでの方針を大きく撤回し、何故火星連合に味方する方向へと意見を買えたのかである。
地球連合と企業連を背後に持つ火星連合が火星の植民地を制圧し、独立を果たしたことで不利益を被ったのは経済圏にとって等しく襲ったダメージだ。
それだけでなく、コロニー群の独立運動を後押ししたことで火星同様に多くの利権がパーになってしまったのである。
積みあがる不利益を飲み込むだけの条件を火星連合が提示したのか、それとも何か別な理由が存在したのか。
そして、その答えは火星連合代表クーデリア・藍那・バーンスタインの口から語られることとなった。
地球圏を覆うLCSのネットワークに介入、全世界に対し、火星連合の所信表明演説を実施したのだ。
その内容は、まさに劇物。すなわち、エドモントン条約の内容の公表とそれに伴い経済圏とギャラルホルンが本来担う内容に及んだ。
如何にして連合や企業連がこのP.D.世界に介入するのかを決定したのかまでも、そして、それを地球経済圏が公表もせず、実行に移していなかったことも。
まさにそれは、バルドルに向けて放たれたミストルティンに他ならない。
厄祭戦以来、300年もの間守られてきた平穏を打ち破る一撃となったのだ。
P.D.世界の人々にとっては多くが衝撃だっただろう。
何せ、これまで無関心だった世界の事情についていきなり告発を受けることになったのだから。
多くにとっては今一ピンとこなかったことも確かだろう。加えて、事態を重く見た経済圏上層部とギャラルホルンは情報統制に乗り出して対処した。
その結果として、幸いにして火星連合による調略放送という触れ込みを付け加え、拡散しないように口止めすることはできたのだ。
しかし、同時に人の口には戸が立てられない。
どうやっても一般市井の人々の間にはそのエドモントン条約の内容や地球連合という存在が知られた。
多くの人々が無関心を選ぶか、あるいは情報統制とカバーストーリーの流布によりそれを真剣に受け取ることはなかった。
それでも、少ない人々が反応したのは事実であり、そこから動きが生まれたことは確かだった。
642: 弥次郎 :2021/09/10(金) 22:58:42 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
元々、地球経済圏は地球連合との接触とエドモントン条約の存在をあまり公表していなかった。
P.D.世界の太陽系ごと別な宇宙に展開したことは確認されいたが、さほど話題にもならなかったことであったのだし。
とどめに、相互不干渉という関係に落ち着いたことにより、事実上の鎖国体制となり、地球連合の存在が世間一般に広まらなかったことも後押ししていた。
当時の経済圏上層部が選んだことは現状維持であり、開かれた世界からの閉鎖であった。
まあ、それが間違いではなかったことも確かだ。P.D.世界の内側と外の世界とでは、余りにも差がありすぎた。
300年が過ぎてもなお厄祭戦の爪痕が色濃く残り、尚且つ圏外圏を中心に手出しの難しい勢力が展開している状況。
そんな中でまともに外の世界と交流や交易などをすれば、あっという間に飲み込まれてしまいかねないという懸念が存在したのだ。
だが、彼らは外の世界との間を埋めるという自助努力を怠ることとなり、現状維持だけで満足することになった。
人間、ぬるま湯から脱却するのは楽ではないのだ。ましてや個人だけでなく集団ともなればなおのこと。
それこそ、それまでの世界を破壊してしまうような衝撃的な事件や出来事がなければ多くの人間の意思と心を動かすことは不可能だ。
彼ら個人個人のレベルではどうだったかはともかくとして、多くの人々がそれを選んだ、という結果に変わりはなかった。
加えてそれをクーデリアによって暴露され、堂々と指摘されてしまった。
火星連合が独立運動を行い、地球連合や企業連と手を取り合い、自ら体制を変えることで時代の変化に対応しようとしたのと対照的に、経済圏は固執を選んだのだと。
これには経済圏上層部もショックを受けざるを得なかった。
折しも、ドルト・コロニー群での一連の騒動や、コロニー群の独立と火星連合への加盟に伴い行われた盛大な観艦式のこともあったからだ。
ギャラルホルン最精鋭にして最大の艦隊であるアリアンロッドさえもかなわなかった相手が、それまで想定された以上の戦力を抱えていることが分かっていたからだ。
即ち、その気になれば、ギャラルホルンを容易く蹴散らし、経済圏までもを追い詰めることが可能だということ。
即ち、これまで積み重ねていた国家戦略が大失敗どころではなかったということを突き付けられたのだ。
地球連合を名乗る組織の力がそこまで大きいなど、誰もが想定していなかったことだったのだから。
斯くして、経済圏とギャラルホルンは追い詰められることとなったのだ。
P.D.世界の内側に対しては何とかなる。だが、外からの外圧を跳ねのけることは不可能だったからだ。
今すぐの破滅か、それとも、いずれ来る破滅か。
彼らにできたことは、一つ。すなわち、従来の行動を続行し、なんとか取り繕うということだけであった。
即ち、クーデリア・藍那・バーンスタインの身柄を抑え、火星連合を何とか追い込むことであった。
既に退路は断たれてしまっており、前に進むしかない。そして、進んだ先でもうまくやらねば、待ち受けるは破滅。
斯くして、少数の懸念や制止の意見を押しのける形で、P.D.世界の地球経済圏は自らの力をぶつけることと相成ったのである。
それは、オセアニア連邦との交渉を目論見通りに終えて、クーデリアがアーブラウの首都エドモントンに向かい始めたころ。
後に、既存の世界の滅びを告げる角笛が吹き鳴らされたときと評されることになった時であった。
643: 弥次郎 :2021/09/10(金) 22:59:14 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。
エドモントン編に入る前に、各勢力の様子を描いておこうと思います。
最終更新:2023年11月23日 14:14