728: 弥次郎 :2021/09/12(日) 20:48:19 HOST:softbank126066071234.bbtec.net

憂鬱SRW ファンタジールートSS「扶桑皇国、開発戦線1941」2



  • F世界 ストライクウィッチーズ世界 扶桑皇国 1941年3月3日 横須賀 「シティシス」技術工廠



「諸卿ら、無茶振りがさっそく来たぞ」

 同年2月に始動した「シティシス」の拠点となる技術工廠---ETM-17612(17612号魔素転換炉)の建造された施設の隣の研究所で、リーゼロッテは宣言した。
 会議室内には「シティシス」の地球連合側の人員がずらりと並んでいた。裏では秘匿されているオカルト関係者が多い。
それとは別に、このF世界におけるエーテル技術を学んだスタッフたちも混じっており、そうそうたる顔ぶれとなっていた。
 本来、連合の総合的な国力からすればもっと多くの人員を、それこそこんな小さな会議室で収まる程度ではすまない数を集めることが可能だった。
 だが、諸般の事情が重なった結果、それを発揮することができない状態であったのだ。
 だからこその少数精鋭。実質的なリーダーであるリーゼロッテさえもいくつもの役職を兼ねる必要に迫られた状態なのであった。
この世界に脅威となりえる存在がいることはわかった。かといって、連合も無尽蔵時戦力を供出できるわけでもないのだ。
 そして、同じことはこの世界の住人にも言えたことだった。

「端的に言えば、この世界における欧州では戦端が開かれている。
 そして、この世界の総力を挙げて退治しており、その真っただ中にある。
 つまり、私たちにかまう暇も惜しいから急いで何か役立つものを出して成果を上げろ、ということだ」

 それは事実だった。扶桑皇国は欧州から遠く、最前線ではない。だが、それに準じる動きはある。
 間接的にしろ戦時ということもあって、国としてのリソースはフル回転だ。そんな中において、お客様にかまう余裕などないというのが扶桑皇国の一般論だった。
それ故に、例えばこの世界に転移している別世界からの日本はマザーマシンや物資の提供などを行い、最前線に兵力を送っている最中であった。
伝え聞く限りではそれはかなり役に立っているようであり、それに気を良くしている側はそれくらいのことをしてもらわねば困ると言ってきたのである。

「まあ、この1か月余り、我々は基礎研究を行う時間を得た。
 それに加えて、この世界の技術に対して我々の持つエーテル技術によるアプローチを探る機会も得ていた。
 よって、それを元手とした成果を提供することで、我々との共同歩調が有益だと理解してもらう」

 居並ぶ面々も納得だった。まあ、少なからず上から目線の態度に思うところがある人員もいなくもない。
 それもしょうがないことだ、とリーゼロッテはあえて指摘することなく、ラップトップパソコンを操作する。
連動したモニターの表示が切り替わり、いくつかのリストが表示されていった。

「この世界におけるいわゆる魔法というのは、これまでの基礎研究からエーテルと魔力を用いたものということがわかっている。
 その観点から、私はいくつかの候補をピックアップすることにした」

  • 魔導装備の改良および発展
  • 魔力を用いるウィッチの装備・補助する用具の開発
  • ウィッチのストライカーユニットの改良
  • エーテル技術を用いた既存兵器・兵科の強化

「……とまあ、こんなところだろう。
 計画が進んでいるパワードスーツ開発に関してはまだ基礎理論を固めている最中だ。
 よって、私はそちらに集中し、割り当てられた各チームごとに短期で戦果を挙げてもらおうと考えている。無論、総括自体は私が行う。
 何か質問はあるか?」

 問いかけた先、真っ先に手を挙げたのは、生身S勢にして物理担当のレベッカ・メンデルスゾーンだった。

「いきなり私事で申し訳ありませんが、私の割り当てがありませんが?」
「レベッカをはじめとした何名かに関しては、引き続き戦技研究の方をやってほしい。
 テストパイロットできている面々の肉体面でのケアと鍛錬を行ってもらって、『体系化』に力を入れてほしい」

 レベッカの仕事はそれだった。
 ウィッチの養成課程についてはリーゼロッテらもカリキュラムなどを詳細に調べてあった。

729: 弥次郎 :2021/09/12(日) 20:50:53 HOST:softbank126066071234.bbtec.net

 そして分かったことは、まだ接触間もない敵対的存在が相手であるがゆえにまだまだ手さぐりに近いということだった。
これに20代になれば引退を強いられるウィッチという特性も合わさり、戦技や技術の引継ぎが難しいという状態だったのだ。
 そして、そこの過程を利用して進められる魔導士のカリキュラムについてもお察し。

「ウィッチの鍛錬はどちらかといえば対人に比重が偏っている節があるからな。
 まあ、精神涵養という意味では問題はないが……やはり相手を想定しなければならん」
「……わかりました。そこを含めての、研究ということですね?」
「そうなる。これまでに確認されたネウロイを模した無人標的機やシミュレーターの使用……いかに短い期間で形とするか。これが課題だ。
 これに関してはすぐに戦果が出るものではないだろう。未来を見越した、先行研究だ」

 次、と問いかけた先、技術門を統括するアーキテクト「フランソワ」が挙手をしている。
 裏でも表でもリーゼロッテと付き合いのある技術者だ。無論のことフランソワが圧倒的に年下であるが、見た目と年齢のギャップが著しい相手だ。
ガタイが2mの技術屋でリーゼロッテよりも年下で部下というのは、些か以上に衝撃的だ。

「開発についてですが、やはりウィッチ向け優先でしょうか?それとも、魔導士やそれ以外を優先で?」
「それについてだが、扶桑皇国側や欧州の最前線国家からは魔導士や一般兵科を急ぐように言われている」

 何しろ、とリーゼロッテは嘆息しながらいう。

「現状、この世界の国家に協力している別世界の国々がウィッチに忌避感を示していてな。少年兵を最前線に立たせるのは倫理にもとると。
 そして、その代替として魔導士や通常兵科が前面に押し立てられている。今のところは被害も出ているが勝てている。
 ならば、その兵科に役立つモノを作れ、というのがあちらの言い分だ」
「それは……なんといいますか……」
「有効戦力であるウィッチを使わないとは、なんとも贅沢な話だがな。
 だが、今のところはそれで勝てているから良い、というわけだろう」
「……今は、ですか。いつしっぺ返しを受けるかわからないというのに」
「それについては私も同意だ。今勝てているからと言って、油断は決してならん。
 ともあれ、だ。一応の候補は用意した。どれを優先するかはフランソワ達に任せる。だが、できれば成果を短い期間で出せたほうが望ましいことを忘れないでくれ」
「かしこまりました」

 そして、フランソワとの応答の後、いくつかの確認事項を確かめ合った後、リーゼロッテは〆る。

「連合への心証をよくするためにも、最初が肝心だ。各員、奮起してほしい。
 何、私が選抜した人員だ、一流の仕事をしてくれると信じている」

 以上、解散。
 そして、それぞれが自らの仕事をこなすべく、動き出した。

730: 弥次郎 :2021/09/12(日) 20:52:26 HOST:softbank126066071234.bbtec.net


  • 1941年3月11日 長島飛行脚社 技術設計課


 長島飛行脚に勤め、地球連合との共同開発チームである「シティシス」に出向している惠上大輔は朝一でリーゼロッテの秘書の襲撃を受けた。

「お邪魔いたします」

 いや、襲撃というか、単なる来訪であったのだが、アポなしでいきなり長島の自分のところに駆け込んでくるとは。

「な、なんでしょうか……ルビーさん」

 フラワー・ルビー。眼鏡の向こうに鋭い眼光を宿したパンツスーツ姿の女性に、大輔は若干怯みながらも用向きを尋ねる。
 確かに連合に、「シティシス」に協力するにあたり、こういったことはあると聞かされていたが、まさか動き出していきなり来るとは思わなかったのだ。

「リーゼロッテ様以下開発陣からです、ご確認を」

 差し出されたスーツケースの蓋を若干怯えながらも明けると、そこには双眼鏡のようなものと、大量の書類が梱包されて納まっていた。

「これは……」
「試作魔導補助偵察双眼鏡となっております。
 演算宝珠を用いた偵察用のスコープ……従来の双眼鏡などをは一線を画すものとなっております」

 それを取り出し、手に取って眺める大輔にルビーは簡単に説明をする。
 これは、アーキテクトたちが演算宝珠を基に生み出した補助魔道具だ。
 ウィッチたちでも魔導士でも使えるような、魔力やエーテルにより稼働する道具であり、同時にこの世界の技術水準に合わせた一品だった。

「こちらの仕様はありますが、望遠距離のコントロールのほか、NV(ナイトビジョン)、ネウロイ探知、諸元の解析機能(アナライズ)など充実させております。
 これまでの光学測距装置や電探(レーダー)を大幅に縮小し、個人携行装備としたといっても過言ではありません」
「……これは」

 ざっと目を通した仕様書の通りであるならば、すさまじい技術だ、と大輔は感嘆せざるを得ない。
 長島も魔導士の用いる演算宝珠やその他の装備の開発や研究を行っているが、常に苦労がつきものだった。
まだ新しい兵科であり、新しい分野ということも相まってまだまだ未熟だという自覚があるほどに。
 だが、これはどうか?設計図やその他の資料を見る限りであるが、まるで完成された方式や調和のとれた絵画のような美しさがあった。

「問題なのは……これを長島、いえ、扶桑皇国などで同じようなものを量産できるか、ということです」
「量産……」

 ルビーの、そして開発チームの最も気になるところはそこだった。
 確かに技術力に関しては高いものがある「シティシス」であるが、その生産能力には限界がある。
 物品を提供するにせよ、技術を提供するにせよ、この世界の住人が自前で作り、運用し、整備できなくては意味がないのだから。
その意図を察することができたからこそ、大輔は興奮よりも先にそのスコープについての今後を考えた。
作ってもらえても、それが行き渡らなければ意味がないのだから。

「演算宝珠を組み込んで、術式による機能の拡張を行っている、ですか」
「そうなります。ただし、演算宝珠は汎用的ではなく、機能を限定する代わりに特化させたものです」
「そう来ましたか……」

 ルビーの言葉に、大輔は少し微妙な表情をする。
 演算宝珠の設計というのは簡単ではない。その量産過程に関しても、だ。
 無論魔導士他使うレベルの複雑なものではないというのはありがたいことだが、演算宝珠は機能と能力に比例して複雑化していくものだ。
加えて、それを高等化させるに従い使う術式も複雑かつ煩雑なものとなり、確実な動作性をもたらすのに大きく苦労することになる。

「無論、これをすべて再現しろとは言いません。こちらとしても、難しいことを述べていると分かっていますので。
 ですが、これまでのシティシスの研究が生み出した成果ですので、精査を頂ければと」
「……なるほど、これだけのことができる、と示すためのものでもありましたか」

 大輔とて、新参である「シティシス」の立ち位置はわからなくもない。
 魔導士という兵科の出現でメーカーのキャパシティーはぎりぎりだ。そんな中でも新参がうまく入り込めるかは如何に有用性を証明するかにある。

731: 弥次郎 :2021/09/12(日) 20:53:10 HOST:softbank126066071234.bbtec.net

 そして、独自の物を売り込みつつも、既存のメーカーとのうまい折り合いをつけていこうという考えの連合のやり方は強かだと言えた。
 だが、それにしても、と思うことがある。

「……そちらに、こういったものはないと聞いておりますが、よくもこれだけ短期間で形にできましたね?」

 そう、地球連合ではこういった魔法だとか魔導具というのは存在していないと聞く。

「元々エーテルを扱う技術に関しては連合の方も習熟していますので。
 演算宝珠にしてもその根幹技術に関しては外の世界、すなわち連合の元手になっているところも大きいですから」

 ルビーはしれっと答えているが、実際のところはもっと込み入った事情が存在する。
 実際のところはオカルト関係---魔法だとか魔導という世界はC.E.世界にしっかり根ついている。
 しかし、その性質の関係上歴史の表舞台に出ることは余りなく、秘匿され続けている。だから、そんなことを言うわけもない。
 だから、あらかじめ用意されていたカバーストーリーを口にする。

「こういった精密機器を地球連合では一般的に用いております。
 これらの動く仕組みを元手にして、エーテル技術を織り込めば存外簡単に作れてしまうものなのですよ」

 取り出して見せるのは、この世界での運用を前提としている携帯端末だ。
 一般的な電話やメール、ネットワークへのアクセスなどの機能は一通りそろえている。
 それを見せられ、大輔はぽかんとした表情だ。無理もない。如何に発展しているといっても、1940年という時系列でしかない。
だから、こんな携帯端末などというものを見せられても困惑することだろう。
 試しに簡単な操作をして見せると、腰を抜かさんばかりに驚いている。
 ともあれ、とそれを仕舞いルビーは改めて依頼する。

「同じサンプルに関しては軍の方にも届ける予定です。
 長島の方でもこちらを調べ、先ほども申し上げましたが、量産できるかや再現できるかの精査をお願いいたします」
「承りました」

 ともあれ、やることは明白だ。
 早くも技術屋としての血が騒ぐ大輔はこれの性能を試したくなった。

「惠上さん、落ち着いてくださいね?」
「あっ……ハイ、失礼しました」

 少し興奮しすぎた大輔を見て、ルビーは釘をさす。
 興奮してしまうのも無理はないが、仕事をしてもらわねば困るのだから。
 まだ、この世界での活動は始まったばかりにすぎない。だから、確実に成功させねばという意志があった。
 後のことだが、この最初のプレゼンスは成功裏に終わり「シティシス」への注目と評価を稼ぐことに成功したことをここに記す。

732: 弥次郎 :2021/09/12(日) 20:53:47 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。
RTAやってんのかっていうレベルですが、実際C.E.世界での知見があるからこれくらいは当然なんですよなぁ


734: 弥次郎 :2021/09/12(日) 21:12:01 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
730
誤字修正を
×魔導士という陛下の出現で
〇魔導士という兵科の出現で
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最終更新:2023年11月03日 10:14