689: 635 :2021/09/20(月) 16:33:27 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp
銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ ゲートの先は神崎島もヤルバーンも無いようです 幕間 静かな星 中編三
あの四頭の野良レースは関係各所に大きな波紋を呼んだ。
日本中央競馬会及び神崎島大使館への問い合わせが殺到し回線がパンクしたが両者とも沈黙を保っていた。
彼女らについて語る資格があるのは彼女ら自身と日本では彼くらいだからだ。
あのレースから一週間が過ぎた。
府中のターフ、そのゴール板を一頭の馬が駆け抜ける。
後ろに一頭の馬もいない大逃げだ。
実況と観客が興奮したように叫ぶ。
その光景を競馬場の来賓席から見下ろす者達がいた。
神崎島の軍服を纏う"彼女ら"がこの場に入るまで競馬場と日本中央競馬関係者に案内され、事情を知らないスタッフら関係者はその姿を見ると己の目を疑った。
彼女らの存在はそれだけ競馬界で重い、関係者に彼女らこそ競馬界の至宝、その存在こそ奇跡とまで言わしめる。
『勝ちました!!戦後初のレースでの勝利!!圧倒的な大逃げ!!嘗ての逃亡者サイレンススズカを見ているようです。!』
「ありゃりゃ凄い大逃げだねえ…。スズカ、君に例えられてるよ…。」
「あの人は私に再び挑むまで負けないと言ってたけど無理はして欲しくないわ…。あの人にも馬にも…。」
二の舞いを踏んで欲しくないと栗毛の少女が言外に言うのを鹿毛のポニーテールの少女は察した。
「インタビュー始まったね…。」
「そうね…。」
テイオーとスズカは備え付けのテレビモニターで勝利騎手インタビューを見ていると彼が映る。
『…騎手、勝利の要因はなんでしょうか?』
『馬のコンディションが非常に良かったのと後は…絶対に負けないという強い意思ですかね。』
『負けないという意思、なるほど…その意思はどこから出たのでしょう?』
『"彼女"と約束したからです。彼女に再び挑むその時まで負けないと。』
『"彼女"とは…誰でしょうか?』
『競馬記者さんなら直ぐに気付く筈ですよ?』
頭を捻る記者、だが彼に近しい“彼女“の存在に直ぐに思い至りハッとする。
『まさか…あのレースの?』
『はい、僕が敗北した彼女のことです。』
そして彼は一頭の名を出す。
記者席のその中でも若い競馬記者達は彼が出した名にお互いの顔を見合いざわつく。
最後のレースは伝説的だから誰もが知る。
そして長年この業界にいる記者らは彼が言葉に出した懐かしい名にあの名馬が戻って来たのだと涙を流す。
当時を知る者があの悲劇を忘れることなどできない。
彼は言う。
『もう一度、今度こそ自分らしく悔いないレースを彼女としたい。それだけが望みです。』
そんな中、競馬紙やスポーツ紙の競馬記者ではない者もいた。
悪意ある質問や因縁をつける様な質問をして彼から望む言葉を引き出そうとするそれらに競馬記者達は嫌悪感を隠そうともしない。
それらは何とかスクープを得ないともう後がないマスメディアの記者達だ。
競馬記者からは対馬の件で利敵行為をしたのだから自業自得という視線や親の仇を見るような者もいる。
中には完全に無視する競馬記者もいるがそれはそれらが親会社や系列紙である記者だ、同じ存在とは見られたくないらしい。
690: 635 :2021/09/20(月) 16:34:51 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp
「あー僕たちのこと出しちゃったかあー。」
「しょうがないわ。私達もいつかは表に出なきゃならなかったんだもの。それにこの後の記者会見でどの道顔を出すことになっていたわよ?」
項垂れ、ウマ耳も垂れた鹿毛のポニーテールの少女トウカイテイオーを栗毛の少女、サイレンススズカはクスクスと笑いながら嗜める。
テイオーは溜息を吐きながらなんとか頭を上げる。
「でもスズカ、これで彼逃げられないよ?記者さん達の目の前で宣言しちゃったんだから、頑張り過ぎちゃうんじゃ…。」
「まあそこはKRA(神崎島中央競馬会)や設立予定のTRC(ティエルクマスカ競馬連盟)、私達も協力しましょ?
ティ連医術なら繋靭帯炎や骨折も治療出来るから予後不良を防げる確率も上がるから…。」
「そうだね。」
来賓室のドアがノックされる。
「はーい?」
『トウカイテイオー様、サイレンススズカ様準備の為ご移動をお願いします。』
「ほいほーい。じゃスズカ行こうか?」
「ええ。」
「…おりょ?」
「…あら?」
二人は来賓席を後にしようとして気づいた。
ターフの上で彼女達が歌っている。
そういえば"彼女"達のイベントでもあったことを思い出した。
「あ…彼女たちが歌ってるね。」
「そういえばと知ってる?吹雪ちゃんとタキオンさん同じ声だって?」
「何ソレーw?」
来賓席を後にする間際スズカはちらりともう一度ターフを見下ろす。
今流れるの声は彼女(スズカ)と同じだが彼女ではない、同じ沈黙の日曜日を超えた遠い世界の"彼女(スズカ)"が勝利の舞台で歌った歌。
「私らしく…悔いのないレースを…か…。」
一言呟き踵を返すとスズカは来賓席を後にした。
彼の勝利騎手インタビューが終了した後、騒いでいた記者たちの姿はもうない。
彼女達について終ぞ望む言葉が引き出せず彼の姿が消えるとさっさと帰ってしまった。
JRA関係者の会見があるということで残っているのは競馬記者達だけ。
彼らとて帰って彼のインタビューを記事にする必要があるが根っからの記者のカンが彼らをここに留めた。
何かがある…と。
加え映像を録画する競馬番組に加えワクワク動画の記者が唯一生放送で流し続けている。
記者の一人は騒いでいたのと入れ替わる様にこの場に現れた粗ぐわぬ女性らも気になった。
彼女達は今回のレースの協賛で開催されたイベントの主役だった筈。
中には彼の言葉の中に出てきた彼女を演ずる人物もおり酷く困惑している。
そんなことを考えていると誰かが入ってきて全員の目が見開かれる。
691: 635 :2021/09/20(月) 16:35:27 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp
名前:名無しの競馬ファン 投稿日:~
だから今日のレースわよ?
名前:名無しの競馬ファン 投稿日:~
おいーッ!?ワク生サイレンススズカとか出てるゾ!!
名前:名無しの競馬ファン 投稿日:~
マジか!?
名前:名無しの競馬ファン 投稿日:~
サイレンススズカキタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!
名前:名無しの競馬ファン 投稿日:~
トウカイテイオーも!!
名前:名無しの競馬ファン 投稿日:~
父ちゃんのシンボリルドルフまで…
名前:名無しの競馬ファン 投稿日:~
もう泣きそう…
「サイレンススズカにトウカイテイオー、シンボリルドルフ…!?後…。」
「「「(誰!?)」」」
十数名の名馬を従えテイオーより小柄というか完全に中学生以下な少女が一人。
全員を座らせると会見席の中央に陣取りマイクを握り扇子を開く。
その扇子には初見と書かれている。
「初見ッ!!お初お目に掛かる!私が神崎島中央競馬会理事長である!!」
「秋川理事長!?」
「「「誰だよ!?」」」
「知っているのか?雷電!?」
「「「雷電って誰だよ!?」」」
「あー、ウマ娘さんのゲームの舞台の学園の理事長さんの名前なのです。それと私は局戦じゃないのです。」
「「「えっ!?」」」
答えが背後から来たのでぎょっとして振り向けば雷電、ではなく笑顔の駆逐艦の電が会見席の後ろの壁際に立っていた。
こちらを向く者達に電は神崎島中央競馬会、KRA理事長の話を聞くよう促す。
競馬界のこれから、ウマ娘にも関わることだからと。
「感謝ッ!!電君!そして皆様にまずはこの記者会見の場に来て頂いたことに感謝申し上げる。」
理事長は日本そして世界の競馬界の現状を語る。
日本競馬界は戦後初のレース開催に漕ぎ着けたが長期の戦争によるレースの中止で青色吐息。
日本の馬生産者はティ連、そして多くの馬を失った欧州への馬の輸出となんとか息を繋いでいるがそれもいつまで続くか分からない。
特に地方競馬やそれに関わる人々なぞ風前の灯火だ。
そして日本が馬を輸出する競馬の本場欧州では馬の生産、そして競馬そのものが消滅の危機にある。
比較的被害の少なかった
アメリカですら戦後の不景気や趣味の多角化により競馬の未来は不透明であった。
「決意ッ!だからこそ我々が立たねばならない!」
しかし当初はどの様な支援を行うか議論が纏まらずにいた。
資金だけ与えれば良い訳ではない、物資だけ充足させれば良い訳ではない。
それだけでは栄養と水を与え延命させた植物の如くゆっくりと腐り果てるだけだ。
理事長はこの場にいる"彼女達"の声を演じ、物語を紡いだ者達に目を向ける。
全員の目がそちらを向き、向けられた方はたじろいだ。
692: 635 :2021/09/20(月) 16:35:57 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp
「想起ッ!!我々が何をすべきか、人々に何を与えるべきか…。思い起こさせてくれたのが遠き世界の"彼女達"であった。」
かつての綺羅星の如く競走馬達。
かつて人々はトウカイテイオーに何を見たか?オグリキャップは何を見せたか?そして、サイレンススズカはどんなIFを幻視させたか?
そして遠き世界の人々は渡ってきた彼女達に何を見ているか。
「夢想ッ!!勇気ッ!!希望ッ!!それこそ現在の競馬界と世界に必要なのである!」
人はパンにのみ生きるに非ず。夢をかけるものこそ今必要なのだと理事長は訴える。
そして理事長はJRAとウマ娘関係者に感謝を述べる。
その夢の礎となる種は既に蒔かれていた。後は我々がそれを発芽させ立派に育てるのみだと。
「宣言ッ!!我々KRA、神崎島中央競馬会とJRAは、開設準備中のティ連競馬連盟の協力も得て中央競馬場及び日本各地の休眠中、
そして廃止されながらも復活可能な地方競馬場もフル活用した新レース
シリーズ、『ドリームトロフィー』の開設と開催をここに宣言する!!」
ドリームトロフィー、その名に気づかぬ者はここにいない。
ウマ娘に出演したものは目を見張り、関係者はこれを知っていたのか真実と知り泣き出す者もいる。
記者達も知らぬ者はいないあの野良レースの後にウマ娘についてここにいる全員が調べたのだから。
「夢の第11レース…!!」
誰かが呟きそのざわめきと興奮が会見場を包む。
そして理事長はレースについて説明を開始する。
参加可能な馬はこの場にいるトウカイテイオー、サイレンススズカ始め現世へと降り人の姿を取れる神馬天斑駒。
かつての伝説の名馬たちが馬の姿で行う。
馬券と入場券の売上の内、人件費及び諸経費以外の余剰金は馬生産者等関係者の支援及び騎手の育成、各国競馬界への援助にのみ使用される。
そして払い戻しは金だけではなくグッズ、サービス等で賄うことも検討され、
レースはスプリント、マイル、中距離、長距離を芝とダートで行うだけでなく障害すらも行われる。
かつての名勝負。あり得なかった戦い。伝説のその先。
それをこの目で見れるという事実にこの場にいる者達は興奮する。
そして質問に移る。
レースの名前、開催場所、誰が走るのか。
そして待ちに待った各馬への質問へと移る。
「スペシャルウィークさん、どの様な馬になりたいですか?」
「はい!生んでくれたお母ちゃんとお乳をくれたお乳母(かあ)ちゃん、
それから育ててくれた厩舎員のお養母ちゃんに恥じない立派な日本一の馬になることです!!」
「………。」
「記者さん?」
スペシャルウィークを昔から追ってた記者が轟沈し。
「トウカイテイオーさん、レースへの意気込みを。」
「んー、今度は無敗の三冠とその先、伝説である七冠を超えたいかな?」
「………。」
「おーい?」
かつて期待したトウカイテイオーへの夢を思い出した者が堕ち。
「サイレンススズカさん、競馬ファンへの意気込みを一言。」
「………。」
しばし思案するサイレンススズカ、その姿に全員が息を呑む。
どの様なことを言うべきか。
695: 635 :2021/09/20(月) 16:39:29 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp
おう最後の部分違うの投下してしまった…以下修正
「サイレンススズカさん?」
「…今度は…。」
「はい?」
「今度この東京競馬場で走るその時、第三コーナーの先、大欅を超え向こうから…必ず…必ず皆さんの前に戻って来るとお約束します…。」
「「「「………。」」」」
「(ああ、推しが尊い…しゅき…。)」
大欅の向こうから必ず帰ってくるという宣言。
名前:名無しの競馬ファン 投稿日:~
ごめんもう泣いていい?あの日府中にいてサイレンススズカ見てたから
名前:名無しの競馬ファン 投稿日:~
存分に泣くが良いぞ…良いぞ…俺も涙で画面見えねえし
名前:名無しの競馬ファン 投稿日:~
記者や声優達も大破轟沈多数!!
名前:名無しの競馬ファン 投稿日:~
そりゃ(サイレンススズカがそんなんなこと言えば)そうやろ?
名前:名無しの競馬ファン 投稿日:~
府中で大欅の向こうから帰ってくるという言葉をススズから聞ける日が来ようとは…
名前:名無しの競馬ファン 投稿日:~
取り敢えず沈黙の日曜日が原因で競馬引退した友人に超え掛けるべ
名前:名無しの競馬ファン 投稿日:~
そうしとけその友人も喜ぶべ
名前:名無しの競馬ファン 投稿日:~
なあ隅っこの馬…立ってヘブン状態な笑顔のまま、あれ気絶してんのか?
名前:名無しの競馬ファン 投稿日:~
…あれ、アグネスタキオン?
名前:名無しの競馬ファン 投稿日:~
節子アグネス違いやアレはアグネスデジタルやぞ
名前:名無しの競馬ファン 投稿日:~
またアグネス殿が死んでおられるぞ
名前:名無しの競馬ファン 投稿日:~
なぜここに…?
名前:名無しの競馬ファン 投稿日:~
勇者(色んな意味で)は戦場選ばねえからな…
697: 635 :2021/09/20(月) 16:40:07 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp
以上修正完了
最終更新:2021年09月21日 11:48