217: 加賀 :2021/10/03(日) 23:00:42 HOST:softbank060072154198.bbtec.net
「それじゃあ三空母には艦爆や艦攻は無かったと?」
「うーん、ちょっと複雑なんだけど……」

 青葉の問いに瑞鶴は紙に書き写す。

「ミッドウェー島の攻撃隊はこの編成ね」

 ミッドウェー島攻撃隊

 『飛龍』
 零戦9 九七式艦攻21機
 『雲龍』
 零戦9機 九九式艦爆18機 九七式艦攻18機
 『翔鶴』
 零戦18機 九九式艦爆18機
 『瑞鶴』
 零戦18機 九九式艦爆18機 彗星9機 九七式艦攻18機


「……確かに複雑ですね」
「でしょ? まぁこの時は仕方なかったのよ。私達五航戦と『雲龍』の六航戦は珊瑚海海戦で飛行隊も半壊していたから混ぜ合わせるしかなかったのよ。錬度も不安視されたしね。それで急遽、飛龍も追加したわけね」
「成る程。そのような理由があったんですね」

 瑞鶴の問いに青葉は納得したように頷く。

「爆装の転装もミッドウェー島からの空襲中にも危険を犯して行われたわ。けど……翔鶴姉から発艦した一式艦偵が一通の電文を発信してきたわ……『敵艦隊見ユ。敵ハソノ後方ニ空母ラシキモノ一隻ヲ伴ウ。ミッドウェー島ヨリ方位8度、250浬』とね」







「一式艦偵の第四号偵察機より入電!! 『敵艦隊見ユ。敵ハソノ後方ニ空母ラシキモノ一隻ヲ伴ウ。ミッドウェー島ヨリ方位8度、250浬』」
「何だと!?」

 通信兵からの報告に南雲司令部は騒然とした。まさか本当に敵空母が現れるとは予想していなかったのだ。

「直ちに攻撃隊の発艦を!!」
「馬鹿を言うな。もうすぐミッドウェー島爆撃隊が戻ってくるのだ。彼等を不時着水させるわけにはイカン!! それに出せると言っても陸用爆弾だぞ」
「飛行甲板を破壊させる事は可能です!! このままの状態では……」
「それに零戦隊は上空警戒に出している。零戦隊の護衛無しでは落とされるぞ!!」
「……………」

 草鹿と源田が言い合う中、南雲はゆっくりと椅子から降り振り返る。

「第二次攻撃隊……魚雷に転装!!」

 またしても赤城から発光信号が飛び交う。それに対し飛龍に乗艦する第二航空戦隊司令官山口多聞少将は発光信号で南雲司令部に具申をする。

「飛龍より発光信号。『直チニ攻撃隊発進ノ要アリト認ム』」
「………」

 南雲の返答は無言だった。赤城からの返信が無いのを確認した山口は深い溜め息を吐いたのである。







「ふむふむ。ですが本当に護衛の零戦隊はいなかったのですか?」
「……本当はそれに当てる零戦隊はあったわ」
「と言いますと?」
「ミッドウェー島へ進出予定だった零戦21機よ。各空母に分配して配備されていたの。それと各空母から出したとしても30機は出せる筈だった……」
「何か理由が?」

 青葉の問いに瑞鶴は眼を細める。

「簡単な事よ……全部上空警戒に上げたのよ」
「アチャー(ノ∀`)」

 瑞鶴の答えに青葉はわざとらしいリアクションをするが瑞鶴は気にしていない。

「まぁ仕方ないわ。あの時はミッドウェー島からの攻撃隊が断続的に飛来していたからね。当時の南雲司令部の判断は間違ってはいないわ」

 ギリギリまで吸ったタバコの火を灰皿に消して再度新しいタバコに火を付け煙を楽しむ瑞鶴。

「そう言えば機動部隊に打電してきた四号機はどうしたので?」
「無事に生還してるわ。本当は四号機はギリギリまで敵機動部隊の全容を証明してほしかった……けど、四号機の無線機が不調で打電出来なかったのよ」
「oh……」
「けど救世主は現れたわ」
「救世主ですか?」
「……一航艦の前衛に展開していた第七艦隊よ」
「あっ……」

 今の今まで忘れていた存在であった。

「第七艦隊も瑞雲でミッドウェー島を爆撃しようとしたけど、四号機の電文を受信して五藤司令官が瑞雲を偵察に出してくれたのよ。当時の瑞雲は450キロ後半の速度を出せれたからグラマンから逃げれる確率は高かったからね」
「成る程」
「だから第七艦隊の瑞雲は交代で敵機動部隊に張りつく事が出来たのよ。そして艦隊も何とか魚雷への転装を終えたわ。その時の時刻は0715程。この頃、米機動部隊から飛来してきた攻撃隊ーー雷撃隊が攻撃してきて零戦隊48機の殆どは低空に降りていた」
「………」
「そして0723……この時刻は一生忘れる事は無いわ」

 瑞鶴は灰皿の中にあるタバコの灰を見ながらそう呟く。

219: 加賀 :2021/10/03(日) 23:04:10 HOST:softbank060072154198.bbtec.net
「第二次攻撃隊、発艦準備宜し!!」

 電話機に張りついていた源田が南雲に向かって叫ぶ。それを見た南雲は決断をし命令を発した。

「全機発艦!! 始めェ!!」

 各空母で待機していた第二次攻撃隊は発艦を開始した。それを手隙の整備員達が『帽振れ』をしながら見送る。そして誰かが叫んだ。

「あっ!?」

 その声に多くの人々は首を傾げた。そして次の言葉に騒然とした。

「敵機直上ォォォォォォォォ!! 急降下ァァァァァァァァァァ!!」

 叫んだのは赤城の見張り員だった。艦隊上空にはいつの間にか敵の艦爆隊ーーSBDドーントレスが多数飛来していたのだ。そしてドーントレス隊は次々と急降下を開始したのである。

「面舵イッパーイ!!」

 赤城艦長の青木大佐が回避運動を開始させる。ググッと左に傾きながら右に向かう赤城。続けて各艦の対空砲火が開始される。だがそれは遅き行為だった。






「あの時……私と飛龍、雲龍は雲の下を航行していた。最初に狙われたのは加賀さんだったわ。けど加賀さんは救われたわ」
「確か第七艦隊の零戦と瑞雲が到着したんですよね?」
「えぇ。加賀さんに爆撃しようとしていたSBDの一番機は瑞雲の20ミリで一撃に撃墜されたわ」
「瑞雲狂の会員達が狂喜乱舞しそうですねー」







「食わしゃあしねぇぜ!!」

 加賀に爆撃しようとしていたSBDーーマクラスキー少佐機を20ミリで撃墜したのは伊勢瑞雲隊に所属している甲木清実三等飛行兵曹だった。

「やりまくるぞ!!」

 飛来したのは瑞雲8機と零戦27機。彼等は正に救世主だろう。加賀を狙っていたエンタープライズのSBD隊は瞬く間に四散する。しかし、飛来した米攻撃隊の数は多かった。
 ワスプのSBD 22機は零戦隊の追い回されながらも正面に出てきた空母ーー翔鶴に急降下を開始した。

「敵機直上ォォォォォォォォ!! 急降下ァァァァァァァァァァ!!」
「とぉーりかぁーじ!!」

 翔鶴はその機動性を活かして回避をする。三機目までは回避に成功したが四機目は無理だった。四機目が投弾した1000ポンド爆弾は翔鶴の中部エレベーターを突き破り格納庫に転がりこんだ。そしてそこで力を解放したのである。

「翔鶴姉ェ!?」

 瑞鶴は叫ぶ。瑞鶴が見てる前で翔鶴は爆発、炎上した。更に続けて二発、三発、四発が命中した。特に四発目は艦橋付近にいた燃料車を巻き込み燃料車は誘爆、その誘爆の炎は翔鶴の艦橋に襲い掛かり着任したばかりの有馬艦長以下艦橋にいた者全員が炎に包まれたのである。
 更に燃料車の爆風の威力は凄まじく、艦橋は基礎部分から吹き飛び海面に叩きつけられたのである。
 瑞鶴は防空指揮所にいた翔鶴が炎に包まれ艦橋ごと吹き飛ばされたのを目撃してしまうのである。

「あ……あぁ……あぁぁぁぁッ!! アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!???」

 その絶叫は瑞鶴の飛行甲板で待機していた加賀少尉にも届いていた程だった。

「クソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソがァァァァァァァァァァ!! クソッタレのドーントレスが!! 今度は翔鶴姉も喰う気かァ!!」

 瑞鶴は阿鼻叫喚とも言える姿だった。啼き喚き呪怨のごとき上空を勝ったかのように飛行するドーントレスを睨み付ける。他でも蒼龍が1000ポンド爆弾三発が命中、炎上していた。そして赤城にも魔の手が襲い掛かり、一発が命中、格納庫に転がっていた陸用爆弾や搭載していた魚雷が次々と誘爆し三空母は炎上したのである。
 その中で飛龍に乗艦していた山口少将は直ぐに全艦艇に向けて電文を発信した。

『我、航空戦ノ指揮ヲ取ル』




 飛龍達による反撃の始まりであった。

220: 加賀 :2021/10/03(日) 23:06:00 HOST:softbank060072154198.bbtec.net
てなわけで中編でした。
やっぱやさぐれたズイズイはイメージ出来やすいズイ
だから翔鶴は許してズイ



ズイズイ「許さんズイ」

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最終更新:2021年10月11日 22:18