538: ホワイトベアー :2021/10/13(水) 13:03:38 HOST:om126133230077.21.openmobile.ne.jp
Muv-Luv Alternative The Melancholy of Admirals
序章

西暦1967年、地球では共産主義と資本主義と言う2つのイデオロギー対立と言うお遊戯にふけっていた人類は、地球から384,400 kmも離れている月において、日米が協力して築き上げた恒久月面基地プラトー1所属の地質調査チームの全滅、後に「サクロボスコ事件」と呼ばれ形で火星生命体、後に人類に敵対的な地球外起源酒=BETA呼ばれる存在とのファーストコンタクトを迎えた。

それはある意味で念願の、されど誰もがこのような形では望んでいなかった出来事であった。

地質調査チームの全滅はその生々しい映像とともに大日本帝国航空宇宙軍が月軌道に配備していた偵察衛星によりプラトー1と地球に送信され、また数日後には月面各地の観測拠点がBETAに襲撃されたことにより、人類はBETAとの平和的接触計画を完全に破棄。プラトー1を運用していた日米は月面に観測基地を持つ各国にプラトー1の一時使用を許可。各国も最も堅牢かつ安全性の高いプラトー1に観測基地要員を退避させる。

地球ではBETAの月面侵攻と言う事態に際してニューヨークの国連本部にて緊急招集された安全保障理事会で、直ちに日米英仏ソの常任理事国と非常任理事国の全会一致で国連憲章第43条に基づく国際連合軍の編成と、プラトー1を前線基地とし、日米両国の宇宙軍がJAXAやNASAと共同で運用していた大型月軌道ステーションの1つであるゲートウェイⅠを司令部とする月面方面軍の設置を決定。

幸いにして西暦1958年に火星生命体が発見された時から大日本帝国が月面における軍事力を増強していたことにより、西側東側とわず月にはそれなりの軍事力を駐留させていた。

特に月面最大の恒常基地であるプラトー1には約1個師団近い戦力と小火器や火砲、月面用に開発されていた戦闘車両群、MMUの構造と理論を応用して開発されたES(ExosKeleton=強化外骨格)兵装、大型MMUを発展させた大型人型兵器であるNCAF-3などの大量の兵器、約10万トンとという潤沢な弾薬が夢幻会の手により配備されており、また、地球軌道上の大型軌道ステーションには大量の物資を搭載して地球ー月までの往復を可能とした物資輸送船が大量に待機していた。

このため、人類は急増兵器で補給が途絶え途絶えな戦場で戦うという絶望的な事態は避けられたが、それでも月面で繁殖したのか大量に増幅したBETAに対して人類側は戦力が足りず、国連軍は低軌道戦力が豊富な日米ソ3カ国の宇宙軍から人員をかき集め、日本製の武器とともに月面に派遣する。

国連軍とBETAによる月面での戦闘は一進一退を繰り返していた。数にまさるBETA側は、後に地球でも見られる事になる数と強靭な肉体を武器とした単純な人海戦術を多用し、これに対して数と兵站能力でBETAに劣る人類は、偵察衛星からの情報とNCAF-3やES兵装などの俊敏な三次元機動を可能とする機動兵器による確実な攻撃、再突入型装甲巡洋艦を主力とした月軌道艦隊からの補給物資の軌道投下や軌道爆撃など戦術的には人類が優勢に立つことの方が多かったが、戦略的には圧倒的な数を誇るBETAが優勢であり、ジリジリと国連軍は押し込まれていた。

月面という土地も人類にとってBETAの圧倒的な物量に匹敵するほどの難敵であった。その長すぎる補給線はもちろん、真空、±300°という昼夜の温度差、宇宙線に高速粒子などの月の環境は地球では僅かな損傷程度で済む傷でも致命傷としてしまい、些細なミスも死に直結する月での戦闘は地球で戦うよりも遥かに重い負担を兵士にかける。

539: ホワイトベアー :2021/10/13(水) 13:06:31 HOST:om126133230077.21.openmobile.ne.jp
「月は地獄だ」いくら優れた兵器があろうともBETAと言う人をむさぼり喰らう異形を相手にし、少しの傷が致命傷となる月面と言う過酷な戦場での消耗戦は多くの兵士を重度のPTSDに追い散らせ、当時の国連軍月面方面軍司令官にそう言わせるほど苛烈を極めていく。

無論、人類側も何の対策も行っていない訳ではない。日本やアメリカでは日本の全領域歩行戦闘機であるNCAF-3やES兵装の後継機開発が進められており、1968年には日本がNCAF-3よりも重装甲でありながら高い機動性を誇り、近接戦用短刀、近接戦用長刀、105mm滑腔砲・20mm機関砲を搭載する突撃砲などの強力な武装を装備可能でジャンプユニットを搭載する事で地球上でも運用可能な全領域歩行戦闘機であるNCAF-4を実戦投入。

1972年にはアメリカがNCAF-4と比べると装甲や主機出力こそ低いものの、NCAF-4と同じ武装を使用可能な上で生産・整備・経済性に優れ、軽快な運動性を誇るNCAF-5を、日本は複合装甲を採用することで防御力を維持したまま重量を削減し、オペレーション・バイ・ワイヤによる機体制御を採用した新機軸の戦術歩行戦闘機であるF-1A 陽炎を月面戦線に投入するなど新型兵器を次々とロールアウトしていき、さらに人的資源の損耗を抑えるために無人兵器の積極的な開発と投入がされていく。これら新型兵器の投入により月面での戦闘は人類の支配領域をジリジリと減らしながらであるが何とか戦線の維持ができていた。

また、日米は国連宇宙総軍と共同でこれ以上のBETA着陸ユニットの地球圏着陸を防ぐために、日米両国がソ連の弾道弾を迎撃するシステムとして戦略防衛構想に則り構築していた攻撃衛星、偵察衛星、軌道ステーションを転用する形で築かれたBETA着陸ユニット迎撃システムである「テルースの首飾り」と、大日本帝国が火星生物発見後に整備した月軌道上の攻撃衛星、偵察衛星、軌道ステーションを転用したBETA着陸ユニット迎撃システムである「ルーナの首飾り」の2つのBETA着陸ユニット迎撃システムを構築。この二重の護りで人類の本拠地たる地球へのBETA侵攻を防いでいたことから何とか国連軍月面方面軍は10年間以上月面においてBETAと戦う事ができていた。

国連軍の決死の消耗戦と日米両国宇宙軍と国連宇宙総軍が共同で開発した2つの首飾りにより生まれた時間的余裕を夢幻会は無駄にはせず、地球での対BETA戦闘も見込んだ次世代人型機動兵器を筆頭にした対BETA兵器・兵装の開発や地球上での対BETA戦ドクトリンの研究、低軌道艦隊による精密軌道爆撃の実用化などを相次いで実施していき、さらに大型人型機動兵器のパイロット育成制度や施設、設備の充実化や人型機動兵器の生産ラインの増設、NCAF-4の製造ライン流用した低価格戦術機の開発などが、帝国政府が行った自重を捨てた莫大な軍事予算の下に行われていく。

こうした大日本帝国の投資と研究が合わさり、1972年には地球上での対BETA戦を見越した世界初の戦術歩行戦闘機であるF-1A 陽炎とF-4A 時雨が、1974年にはより安価なF-2A 不知火が帝国軍で相次いで採用されていき、BETA地球侵攻を前に大日本帝国軍では本格的な戦術機甲部隊の編成に成功する。また、予備役であった戦艦の近代化改修を施した上での再就役や、同様に予備役であった大型空母を戦術機母艦改装した上で再就役させるなど他国から、いや少しでも軍事の知識を持つ人間なら異常と思える軍備計画や装備の採用を次々と実行していった。

540: ホワイトベアー :2021/10/13(水) 13:07:32 HOST:om126133230077.21.openmobile.ne.jp
無論、こうした軍備計画は主導した夢幻会自身もこれらの計画はあくまでも念の為に備えた保険的な計画でしかなく、馬鹿げた軍備計画と笑いものになる未来を望んでいた。だが、彼らの願いが神に届くことはなく、1978年12月16日、夢幻会が知る原作から5年遅れではあるが、火星より撃ち出されたと思われるBETA着陸ユニットが「テルースの首飾り」の迎撃を突破し、ソビエト連邦新疆ウイグル自治区カシュガルに着陸。人類は遂にBETAの地球侵攻を許してしまう

BETAの地球侵攻を許してしまった人類であったが、この時の人類は一部を除いて月面戦線で経験したことのない圧倒的なBETAの物量を目にしてもなお、地球上でのBETAの殲滅に絶対的な自信を抱いていた。この背景には戦場が地球という今まで人類が発明してきたあらゆる兵器・戦術が投入可能なホームグラウンドで、さらにBETAに対空兵器、航空兵力が一切存在しないと言う事実があり、カシュガルを領土とするソ連はBETA研究の独占を図るためにBETA着陸を自国の国内問題だとして国連軍の介入に対し拒否権を発動。自国単独での対BETA戦を開始する。

世界で唯一BETAの真の恐ろしさを知る日本ではカシュガルへの核攻撃を実施寸前まで行ったものの、これを察知した米国が世界大戦を恐れたためにソ連や欧州と協力して全力で日本を抑え込むと言う、後に米国史上最大の判断ミスと呼ばれる行為を行ってしまい、未遂に終わってしまう。

日本の核攻撃により世界があわや第三次世界大戦勃発かと言う危機的状況に陥っていた一方でカシュガルでの対BETA戦は航空機の投入によりソ連軍の一方的な虐殺と言える状態であった。しかし、1978年12月30日、新年を前に航空機やミサイル、果には砲弾まで空中で撃破してしまう新種のBETAである光線級が出現。ソ連軍の航空優勢は瓦解し、地球上でならBETAを殲滅できると言う考えが妄想に過ぎなかった事をソ連軍もちろん人類は思い知らされた。

光線級の登場により航空優勢を喪失したソ連軍に対してBETAは地を文字通り埋め尽くさんとする圧倒的な物量で現地のソ連地上軍を粉砕。これに慌てたソ連は上海協力軍を招集、残存極東ソ連軍、中華人民共和国人民解放軍を中核にベトナム、ラオス、カンボジア軍からなる上海協力機構軍を編成しカシュガルに送り込む。しかし、極東ソ連軍主力を粉砕できるだけの圧倒的な物量を誇るBETAに対して、航空攻撃はもちろん輸送機による補給やヘリコプターによる輸送、果には航空偵察などの航空支援全般を封じ込められた状態である上海協力機構軍が対応できるはずもなく、ソ連や中華人民共和国がかき集めた大規模地上部隊はその殆どがBETAの腹の中に消えていった。

こうした事態に陥り、ようやくソ連や中国は核兵器をもちいた攻撃を開始するも、光線級による万全の防空体制が敷かれていた着陸ユニット周辺地域には投入は不可能であり、BETAの一時的な遅滞には成功したものの根本的な解決手段とならなかった。また、日本側が提案した低軌道艦隊をもちいた戦略核による軌道爆撃は、カシュガルにBETAの巨大前哨基地であるハイブが築かれた時点で日本側がリスクが高いと撤回したことでこれまた未遂に終わり、上海協力機構軍は敗走に次ぐ敗走を重ねる事になる。ときここいたり、ようやくソ連は日米や欧州西側諸国を中心とした国連軍の介入を認める。

戦術機甲部隊やAL弾などの対BETA戦兵装が充実した大日本帝国陸軍が参戦した事でBETAの東進は抑えられ、さらに日米の2大工業大国が自国の工業力を活用してNCAF-4を地球仕様に改装したF-108 初凪やNCAF-5を地球仕様に改装したF-5 タイガーなどの戦術機を増産。戦術機を欲するユーラシア各国に大量に供給した事でBETAの侵攻は夢幻会が知る"原作"よりかも遥かに遅く、ワルシャワ条約機構軍や中東連合軍は遥かに善戦した。

541: ホワイトベアー :2021/10/13(水) 13:08:24 HOST:om126133230077.21.openmobile.ne.jp
それでもワルシャワ条約機構軍を主力とする欧州戦線や中東連合軍を主力とする中東戦線ではBETAの進撃を完全に止めることができず、人類は地球でもその支配領域をズルズルと減らしていき、1983年にはイラン領マシュハドにマシュハドハイブが、1984年にはソ連領ヴェリスクにミンスクハイブが建設され本格的に欧州とアラビア半島に戦火が迫ることになる。

これは、そんな未だに希望の燈火が消えぬ世界で語られるアイとユウキの御伽噺である。

542: ホワイトベアー :2021/10/13(水) 13:10:20 HOST:om126133230077.21.openmobile.ne.jp
以上になります。多分にご都合主義的な展開もありますが、原作がご都合主義悪い主義なんでそれでもヨシ。wikiへの転載はOkです。

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最終更新:2021年10月16日 10:47