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銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ ゲートの先は神崎島もヤルバーンも無いようですその五十八



「しかしなんだこちらのファーダも色々と思う所はあるんだね。」

「それはそうだろ?もう一人の自分が成したことが大き過ぎる。私なら自分と比べて心が折れてしまうよ。」


実質リシュリューの副官扱いでフランスまで引っ張られたアインビルと戦艦金剛の何でも屋と化しつつあるエストレェルはそんな話をする。
彼らの視線の先には街灯に照らされメジロマックイーンと浜風が柏木の愚痴を聞き、ついでアデーレもいるが柏木は気づいた様子はない。


「分かっちゃいるが俺だってよぉ~、あの俺みたいに冒険だとか英雄と一緒に戦うだとかしてみたかったんだよぉ。」


一升瓶を抱え管を巻く柏木。
うんうんと柏木の愚痴を聞く美少女三名…というか全員が生年月日や進水日考えるとマックイーンですらみそ…いやいい大人である。
アデーレに至っては生まれたのは1万年前この世界ならば有史以前である。

そして二人はちらりとゼルモニターに目をやる。
質問に移った記者会見場では米中のオタ記者二名とこちらのワクワク動画相当と組んだワク動の記者が質問無双をしている。
他の記者は質問すら躊躇している。


「しかしまあ学習しないものだね…愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶという言葉もあるけど。」

「あの記者は経験からも学ぼうとしないんじゃないかな?」


そう辛辣な言葉を吐くアインビル、画面の隅には某対馬のおひいさんにガン見され気絶、身体中から液体を漏らしている記者が一人。
例によって例の如く総理やアナスタシアへの質問で対馬に関して不用意な発言をしてキレさせた挙げ句に正面からその怒気を受け全世界にその姿を晒すこととなった。
そりゃ他の記者も質問を躊躇するというものだ、逆に言うとその中で果敢に質問する米中の記者のバイタリティがヤバイ。
そんな中話をしながらエストレェルは何かに気がついた。


「そういえばこの世界のヤルバーンが来て…!」

「どうした…?…!!あれはヴァルメ!」


二人は見れば柏木らの所、空中に見慣れたヴァルメが浮かぶ。
マックイーンらは柏木を背にヴァルメの前に立ちはだかる。
それを見て二人も動く、エストレェルはヴァルメにも効く重力子ブラスターを造成。
アインビルもまた手元のフランス戦線時代に生命を救われて以来の相棒を持ち駆け出す。




「………。」


フェルの操るヴァルメが捉える映像がゼルモニターへと映る。
マシュと同じハルマ人と思しき武装を向ける銀色の髪の少女と茶色の髪を持つ少女、
ハルマ人に相似しながらもマシュのそれとは違う耳と長い尾を持つ少女はヴァルメの方を向き耳を伏せ、尾を立てこちらを威嚇している。
そしてイゼイラ人と思しきデルンが二人、重力子ブラスターに加え槍を構えている。
そこにはあのカミと呼ばれる創造主同士の戦いの場にいた『フェル』の夫である『カシワギマサト』が映し出されていた。
並行宇宙の自分の因果の相手。
もし、たられば既に自分も子を成していただろう人物。
何故自分はそうではないのか、何故あの自分だけが家族が出来たのか。


『ちょっとカシワギサン!前に出ないで下さいません!?』


尾を持つ少女を押しのけカシワギマサトが前に出る。


『折角愚痴吐き出してったろに一体何だあこの柱は?宇宙人のドローンか何かかあ?』


若干口調が怪しい気もするがカシワギマサトが自分に話し掛けているという事実に精神がぐちゃぐちゃになり混乱する。


『何か言いたいことがあるならさっさと言うんらよ!何だったらお前らの所で話を聞いてやろうじゃにゃいか!』

『ちょっとカシワギサン何言ってますの!?』

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その一言が決定打だった。


「局長!?なにを!!」

『これは!』

『まさか転送!?』


震える声でヴァルメにあのカシワギマサトらの転送を命じていた。


「ハアハアハア…。」


コンソールに腕を付き荒い息を吐き膝がガクガクと震え、頭の中がごちゃごちゃになり腹の奥がぐちゃぐちゃに感じる。


「局長…。」

「………責任は全部ワタシが取りマス……。」


スタッフの声にそう答えるのがやっとだった。





「随分と気持ちよさそうに眠ってますこと…。」


マックイーンは一升瓶抱えて床に座り泥の様に眠る柏木を見て溜息をついた。
柏木がヴァルメ相手に喚くと突如として転送されてしまった。
周りを見回すと見慣れたイゼイラの都市型艦艇で見られる転送室、恐らくここはヤルバーンの転送室だろう。
しかし腑に落ちないのは交渉もなく突如として、それこそ拉致の様に転送されたことだ。
まあ、少しすれば誰か来るだろうとこの場で最上位階級、一応佐官である浜風に声を掛ける。


「浜風さん誰か来ると思うので交渉はお願いしても?」

「…いえ交渉はマックイーンがお願いします。」


浜風はマックイーンの言葉にそう答えた。
何故にと問えばこの場の最高戦力が浜風だからとの回答、他の者も同調しマックイーンは再度溜息を吐く。


「…同じイゼイラ人でも良いでしょうに…。」


ジト目で見るとイゼイラ人二名は目を逸らした。
そんなことをしているとスタンブラスターを手に持った集団、恐らくは自衛局と思われる者達が入って来た。
先頭に居るのは獣人ぽいカイラス人のゼルエとシャルリ、知っている人物に安堵するが向こうはこちらを見ると慌てだしシャルリが声を掛けてきた。


「ちょ、ちょっといいかい!!こっちの言葉解るならこちらも武器降ろすからその物騒なモン仕舞って貰えるかい!?」


自衛局の視線先、「え、自分?」という顔をするエストレェルが持っているのは重力子ブラスター、軍用PVMCGでしか造成出来ない代物だ。
納得の表情をしマックイーンは武装を仕舞う様に指示を出し霧散する重力子ブラスター、浜風も主砲を戻した。
アインビルの槍だけは本物なのでとりあえず構えだけ解いた格好だ。
自衛局もスタンブラスターの造成を解きゼルエがこちらに話し掛けてくる。


「こちらの言葉は分かるか?」

「大丈夫、翻訳機は機能していますわ。ゼルエ・フェバルスさん。」


マックイーンがゼルエのフルネームをあっさり口にし自衛局の者達は顔を見合わせる。


「俺の名前が分かるってことはあんた、もしや並行宇宙のティエルクマスカ連合の?」

「はい。」


ゼルエらこの世界のティエルクマスカの人間を前にマックイーンはスカートを摘むと優雅に一礼する。


「申し遅れました。私はティエルクマスカ銀河共和連合加盟国神崎島鎮守府所属の神馬・天斑駒、名をメジロマックイーンと申しますわ。」


そう言うとニコリと笑った。

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「フェル、自分ガ何ヲ仕出カシタカ分カッテルナ…。」

「ハイ…。」


ヤルバーンの艦橋でシエが仁王立ちをしその前でフェルが正座をし小さく縮こまっている。


「ヤルマルティア自ラガ我々ト交渉ヲ持ツト発表シタトシテモ、現状我々ト彼ラノ間ニ意思疎通スル手段ガナイノダゾ?
ソンナ中デ向コウノ要人ト思ワレル人物ヲ一方的ニヤルバーンヘ転送スルナド拉致モ同然デハナイカ。」

「拉致って…で、でもシエさん。あの柏木さんという方は向こう側のティ連の防衛総省の長官ですよ!分かって「マシュ、ソウイウ問題デハナイノダ。」」


ヴェルデオはシエの言葉を引き継ぐ。


「シエ局長の言う通りです。ケラーマシュ。フリンゼがヤルバーンに転送したあのカシワギマサトと思われる人物。
記録映像を見ましたが彼はヴァルメに向かって自分が交渉を行うというニュアンスの発言をし、必要なら同行するとも発言しています。ですが…」


国交、交渉を持っていない国の人間を連れてくる、これは本人の同意があったとしても拉致と該当国家に見做される危険性があるとヴェルデオは言う。
例え拉致と見做されなくてもこれからのヤルマルティア…日本との交渉においてヤルバーン側にとって不利になる要素となる可能性が高い。
ヴェルデオはそこを危惧している。

発達過程文明聖地ヤルマルティアの存在の確定、加え創造主ナヨクァラグヤが存在し精死病を根絶している可能性のある並行宇宙のティ連。
この世界のティ連にとって喉から手が出る程欲しい希望が直ぐそこにあるのにお預けをされたらどうなるか。
特に精死病の治療手段なぞティ連にとって一刻を争う状況である。


「とりあえず転送室へ行きましょう。自衛局のゼルエ局長が対応してくれている筈です。」




ヴェルデオやフェルを始めとするヤルバーン首脳陣が転送室へと入ると自衛局のゼルエとハルマ人と異なる容姿の少女が難しい顔をして話し合っている。
そしてシャルリはハルマ人と思しき少女らと会話をし、残りの自衛局員はイゼイラ人デルン二名と話をしている。


「ゼルエ局長。」

「ああ、ヴェルデオ司令ちょうどいいところに。」


ゼルエと話をしていた少女はヴェルデオの姿を見ると軽くマシュが良くするハルマ様式の一礼をする。


「こちらの方は?」

「この集団のトップだそうで。」

「ファーダカシワギマサトが、ではなくて?」

「そこは私が話しますわ。」


目の前の少女は自己紹介をヴェルデオ達にし、メジロマックイーンと名乗った。


「先に申し上げておきますが、あの柏木真人氏は私達の宇宙のティ連防衛総省の長官ではありません。この宇宙の日本の民間人です。」


マックイーンが指差す先には座り込んで透明な何かの器を抱え眠るカシワギマサトの姿。
ええ…となるヤルバーンの乗員ら。
マックイーンが言うには防衛総省長官のカシワギマサトが有名となれば、
こちらのヤルマルティアのカシワギマサトを利用しようとする輩が出るので護衛として派遣されたのがマックイーンらだと言う。


「ツマリ何ダ。フェルハ民間人拉致ッタトイウコトカ?」

「まあそうなりますわね…って私達転送したのフェルさんですの!?」


思わずシエの言葉に反応しフェルの全身を上から下まで見るマックイーン。
顔を青くするフェルを見て何か察したのかマックイーンはそれ以上の追求はしなかった。

頭を抱えるヤルバーン首脳陣、そもそも交渉前から民間人をヤルバーンに連れてくるなぞ完全に想定外だ。
こらが突撃バカならばピンチもチャンス2変えるのだが。
そんな姿を見てマックイーンは助け船を出した。

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「…何か互いの不幸な認識の相違もありそうですし日本政府にも伝手はありますので上の方と合わせ少し口添えを致しますわ。」


ヤルバーンとの関係が拗れるなぞどっちの得にもならない上、これを利用する馬鹿が出ないとも限らないし。
野党とか隣国とか。


「そう言って頂けると助かります。えー。」

「ケラー、でよろしいですわ。ケラーヴェルデオ。」


マックイーンは自身の掌をヴェルデオの前に差し出す。
それを見てヴェルデオは目の前の人物がティエルクマスカの文化を完全に理解しているのだと察し、その掌の上に自分の掌を重ねた。
その二人の姿を見てほっとするヤルバーン乗員。

そんな中、マックイーンとヴェルデオの側をフラフラと通り過ぎる人物。


「ケラーマシュ?」


ヴェルデオがその名を呼ぶ。
マックイーンから見れば地球人類にしか見えない銀の髪の浜風にソックリな容姿のマシュというその人物。
この世界のティ連には斯様な種族もいるのかと思うがその人物は一点を見つめる、その先にはシャルリと話す浜風とアデーレの姿。
ヤルバーンも改めて浜風とアデーレに気づくと浜風とマシュの姿に視線が行き来する。




マシュの視線の先には信じられない人物が二人映る。
一人は自分にソックリな人物、ハマカセと呼ばれた少女はあのイナヅマなるデミ・サーヴァントと思しき少女から考えると彼女はこの世界の自分なのか。
彼女はシャルリと楽しそうに会話をする。

もう一人楽しげに会話をするのは…その姿を二度と見ることはないと思っていた人物。
アデーレ、異聞帯に消えた少女。
ああ、この世界に貴女は存在出来たのか、昨日ではない明日を普通に見ることが出来るのか。
絶対に彼女ではないと分かってはいてももう一度その姿を見れた事を嬉しく思う。


しかし、


しかし、彼女は私を知らない、知る訳がない。彼女の知る私はあの私だ…。
その事実にマシュは絶望する。

そしてシャルリと会話をしていた少女(アデーレ)がマシュの存在に気づく。
気づかれたくはなかった自分を知らない友人(アデーレ)に。
それを突きつけられれば自分は壊れてしまうだろう。
この地球(ほし)が自分の故郷ではないと知っただけでも胸が張り裂けそうだったのだ。



すると彼女は目を大きく開き、言葉が口から溢れる…マシュ、と…。
聞き間違いかと思った、自分の脳が錯覚した都合の良い幻聴だと。
少女(アデーレ)が自分に近づく。


「貴女は、マシュ…マシュ・キリエライト…?カルデアの…?」


聞き間違いではなかった眼前の少女(アデーレ)は自分の名を呼ぶ。
信じられなかった、上手く声が出ず何度も頷く。
眼前の少女(アデーレ)は瞳に涙を浮かべる。


「私よ、破神同盟で一緒にゼウス神相手に戦ったギリシャ異聞帯の、オリュンポスのアデーレよ…。」


顔をクシャクシャしに涙を流しながら笑うアデーレ。
信じられず立ち尽くすマシュをアデーレは引き寄せた。
アデーレはコツンと額をマシュの額に当て、マシュの瞳を覗き込む。
記憶にあるアデーレより瞳の位置が高い。


「オリュンポスで別れてから身長も少し伸びたの。私、昨日ではない明日を生きてるのよ…。」


アデーレの顔がぼやける。
ちゃんと見たい筈なのに手で何度拭っても視界はぼやけていた。
アデーレはそんなマシュを抱きしめる。
アデーレは言う自分はここに確かにいると、自分はもう有り得ざる歴史の断片の存在ではないと。


その言葉にマシュはハッとしアデーレの顔を見ると強く抱きついた。


そして、泣いた。
アデーレの肩に顔を埋めこれまでの時を埋めるかの様にマシュは大きな声で泣いた。

457: 635 :2021/10/14(木) 22:37:58 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp
以上になります。転載はご自由にどうぞ。

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最終更新:2021年10月16日 11:00