369 :名無しさん:2011/12/07(水) 22:02:45
陸奥返還ネタに刺激されて
「斜陽の老帝国」 陸奥返還の裏側で
――西暦1966年5月5日 大英帝国 首都ロンドン
この日、首相官邸では閣議が開かれていた。
「では報告を聞こう。」
首相であるハロルド・ウィルソンが言葉を発する。
「本国周辺及び南アフリカ航路の機雷は何とか除去しました。
しかしスエズ運河が使用できない為、インド・太平洋地域へは大幅に時間がかかります。」
第1海軍卿ヴァリル・ベグが発言する。
先の第4次世界大戦で英国は多数の核ミサイルを撃ち込まれ、内1発がスカパフローを直撃し、
海軍主力・・・特にやっと建造したジブラルタルやアークロイヤルを含め多数の主力艦を失っていた。
(幸い?本土直撃はこれだけ。他は周辺海域に着弾し深刻な放射能汚染で漁業が衰退)
また本国周辺の主要航路帯に多数の機雷がばらまかれ、数日前にようやく除去できたのだった。
「スエズ運河の復旧は絶望的です。」
次いで国防大臣が報告する。
スエズ運河は大戦時、イスラエル及び中東地域に駐留する米軍を攻撃するため、ドイツが複数の
放射性物質を積んだ大型船を派遣し開戦と同時に爆破。
運河を閉塞すると同時に周辺地域に凄まじい放射能汚染を引き起こし、未だに人が近づけない状態だった。
「また空軍も戦略爆撃機がほぼ全滅。陸上型弾道弾も全弾打ち尽くしたうえ、工場が破壊され生産不可能です。
更に建造中だったレゾリューションは爆撃により破壊され、原子炉から放射能漏れを起こしています。」
「陸軍も中東地域に派遣した部隊は全滅です。南アや太平洋地域の部隊は比較的無事ですが士気の低下が
著しいです。さらに物資が不足し補給困難です。カナダも主要地域が汚染さており支援を求めています。」
陸軍・空軍の司令官も悲観的な報告しかできなかった。
空軍は自慢の3Ⅴボマーが基地ごと破壊あるいは報復爆撃中に撃墜されほぼ全滅。弾道弾も打ち尽くして生産不能。
建造中の弾道ミサイル原潜も破壊され戦略核戦力をほぼ喪失していた。
海軍に至っては先のスカパフロー核攻撃を生き残った艦は米軍主導によるキール・ブレスト攻撃(事実上の特攻)により
損失し残った主力艦は戦艦ドレーク(陸奥)・ヴァンガード、空母イーグル(他WW2型軽・護衛空母数隻)という有様だった。
(因みに本土に駐留していた米軍は殆どが中東に派遣されて置いた)。
「南アとは辛うじて交易が可能ですが船舶が不足しており太平洋地域までは手が回りません。
また食糧不足・治安低下による不満が増大し一部では暴動も起きています。」
「北アイルランドからもIRAの活動が活発になっているとの報告が来ています。
ドイツ・アメリカ製の高性能兵器が密輸され、わが軍に甚大な被害が出ております。」
太平洋地域の連邦諸国との交易が困難。おまけに食糧不足・治安悪化が重なり軍も壊滅。
ここでウィルソン首相は一つの決断を下した。
「太平洋地域のわが軍への補給は日本人達にやらせよう。また彼らは本土や領域が無事なのだ。
支援も要請しよう。我らは連邦諸国との交易復活に専念する。」
この言葉に外相は驚いた。
「日本が聞き入れるでしょうか。」
「聞き入れるさ。いかに連合国に貢献したとしても彼らは第2次大戦の敗戦国だ。自分達の立場位理解しているだろう。」
余裕がなくなっているせいか首相からは本音が漏れた。
連合国より追放されたにもかかわらず、反省するどころか友好国(すり寄った)
アメリカに戦争を仕掛けた。
毒ガスによる被害も自業自得、自分たちの残虐な行為も愚かな日本人への鉄槌。賠償も当然だし自国救援に関わった軍人の
戦犯扱いも全力で救援して当然なのに手を抜いてワザと損害を大きくさせたとの傲慢すぎる思いもあった。
要するに彼らは日本は自分たちに尽くして当然だと思っていたのだった。
「では早速日本に伝えます。」
外相はそう言って駐日大使に連絡を取るべく退室していった。
370 :名無しさん:2011/12/07(水) 22:03:16
――数日後――
「なんだこれはっ!!」
ウィルソン首相は激怒していた。原因は先の要求に対する日本からの返信。そこには・・・
「「恥知らずのジョンブルに恵んでやる物はない。」」
これだけが書かれていた。
「首相、因みに日本への懲罰は不可能ですぞ。わが軍は壊滅状態。対して彼らは本土が無傷なうえに
核戦力も豊富。それに加え、嘗ての強大な軍が復活しつつありますからな。」
国防大臣の言葉にウィルソンは肩を落とした。彼自身も現実は理解していたが感情が理解していなかったのだ。
「それにこのままでは交易どころかいざという時の王室疎開もできませんし・・・。」
大臣が言葉を続けようとしたところで緊急の報告が入る。
「なにぃ、アメリカのケネディ臨時大統領が日本に降伏しただと!!」
「はい、日本に向かう途中のエアフォースワン機内から日本に申し入れたとのことです。」
驚くべき報告に全員が固まった。
世界最強国家アメリカだ。本土が多数の核攻撃を受けたとしてもまだ余裕があり、そこから支援が見込めると考えていたからだ。
「もはやプライドを捨てて日本に縋り付くしかないか。かつてアメリカにそうしたように。」
ウィルソンは力なく呟いた。
この数日後、彼らは日本に対し陸奥返還を代償に食糧援助を求めるのだった。
最終更新:2012年02月12日 07:38