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Muv-Luv Alternative The Melancholy of Admirals
第3話

西暦1984年9月12日 ドイツ民主共和国 コットブス基地

「コットブス管制塔〘タワー〙よりシュバルツ01へ。ようやく滑走路があいた。待たせて申し訳ない。第1滑走路への侵入を許可する」

「こちらシュバルツ01より管制塔〘タワー〙。了解した」

コットブス基地、東ドイツが自国へのBETA侵攻を防ぐためにポーランドとの国境地帯に流れるオーデル川およびナイル川に沿って建設し、現在では西側の支援を受け急ピッチで強化改修を実施しているオーデル・ナイセ流域要塞陣地群の防衛戦時には現地で活動する戦術機部隊の拠点として機能する基地の1つとして設営されたこの基地に、666《ビーストナンバー》が刻まれた9機のMig-21が着陸しようとしていた。

(しかし、訓練から帰還したら新型機だがなんだかわからんが基地が混雑中とはついてないにも程がある)

Mig-21を操る衛士の1人であり、第666戦術機中隊のストームバンガードの担い手でもあるテオドール・エーベルバッハ少尉は、そんな雑念をいだきながら手慣れた操作でコットブスに着陸する。

「へぇ?第二世代機がいきなりこんな数来るなんて、ずいぶんと強勢じゃない」

「あれは西側の第二世代機であるF-1カゲロウですね。在独米軍や日本軍欧州方面軍では主力として扱われている機体です。ですが、なぜここにあるのでしょう?」

テオドールと同じく第666戦術機中隊唯一の長刀使いであるコットブスに着陸したアネット・ホーゼンフェルト少尉は、基地の戦術機格納庫の前に置かれた、第一世代機であるMig-21やF-104、F-105等とは違いスリムかつスタイリッシュな戦術機を見ると独り言をこぼし、それに東ドイツ革命の前に西ドイツから東ドイツに亡命してきたと言う珍しい経歴の持ち主で、淡い茶髪のポニーテールと同色の瞳の小柄な少女であるカティア・ヴァルトハイム少尉が応えた。

「もしかしたら補充の衛士も来たりして~?」

「貴様は補充衛士の確保がどれだけ困難かをわかってはいないようだな」

「・・・失礼しました。同志中尉殿」

アネットが軽口を叩くと、革命前は政治将校であり、政治将校と言うものがなくなった現在では補給や人員確保の為の交渉を任されているグレーテル・イェッケルン中尉からお叱りが飛んできた。

何故か中隊隊長であるアイリスディーナやグレーテルが不機嫌な雰囲気を出しながら、部隊は無事に基地へと帰還。戦術機を整備班に任せ、アイリスディーナやその補佐役であるヴァルター・クリューガー中尉、事実上の部隊の人事係であるグレーテルを除きデブリーフィングの為にブリーフィング室に集まっていた。

そして、この場にいる全員が、どうも部隊の上の様子が可笑しい事に気がついており、程度は違うものの身構えていた。

第666戦術機中隊の各員がブリーフィング室に集まっている頃、基地内の応接室ではブリーフィング室に居なかった第666戦術機中隊隊長アイリスディーナ・ベルンハルト大尉を始めヴァルター・クリューガー中尉、グレーテル・イェッケルン中尉の3人が席の前で立って、ある男を待っていた。

「久しぶりだね、アイリス。最近は革命のゴタゴタで君に会えなくて実に悲しかったよ」

「はっ、恐縮です。祖国のため、皆精一杯の奮闘をして任務に励んでくれました」

元国家保安省隷下武装警察軍中佐でありながら、これまでの功績と実績から現在はドイツ民主共和国外務長官にまでのし上がった男にして、アイリスディーナからしたら自らに兄を撃たせた張本人であるハインツ・アクスマンその人がにこやかな笑顔を掲げてそう言う。

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これに対してアイリスディーナは感情を押し殺したような、冷酷な雰囲気でただただ機械的に応えた。

「本来なら君との会話を楽しみたいところだが、時間もない。早速本題に移ろう。座りたまえ」

「ありがとうございます」

そう言い3人、いやアクスマンも含めると席に座る

「ポーランドのビスワ川絶対防衛線を支える為に2ヶ月後に国連主導で行われるセイバー・ジャンクション1984の事は聞いているかな?」

「はい。確か欧州連合軍と米軍、日本軍などの西側諸国の予備兵力から抽出された戦力を主力としてミンスクハイブの間引きを目的とした作戦だとか・・・」

「その作戦に西側諸国の一角であり、欧州連合の一角である我が国も参加することが閣議で決まった。しかし、国家人民軍は再編成中であり、西側諸国として参戦する以上旧武装警察軍は政治的に参加させられない。つまり、大規模な部隊の派遣は不可能だ。故に、私はドイツ民主共和国最強の君たちに声を掛けた」

「軍に関することに関しては国防省が担当しております。我々に命令したいならそちらを通してからにしてください」

「これは実に政治的、そして外交的なことでね。大統領や国防長官からは全権を任されている」

これが、その書類だ。そう言ってアクスマンは大統領と国防長官のサインの入った書類を見せる。

「・・・定員割し、旧式のMig-21〘バラライカ〙しか配備されていない我々がその任に相応しいと?」

「アイリス、カティア君への事情聴取の時にも言っったが、私は君たちを高く評価しているし信頼している。少数の部隊しか派遣できない以上、もっとも信頼のおける君たちを選ぶのは当然の事だろ?」

「高く評価されているの事は光栄ですか、それでも出来ることと出来ないことがあります。最低でも準第2世代機が主力の西側との共同作戦は足を引っ張るだけかと」

「Mig-21の更新が遅れたことは詫びよう。しかし、それも今日までだ。君たちの為に最新鋭機であるF-1EG カゲロウ・カスタムを手配した。基地への帰還時に見てくれているかな?」

「最新鋭機・・・ですか?」

アイリスディーナは怪訝そうな顔をする。

「ん、ああ、初期不良は心配しなくていい。すでに日本陸軍や米陸軍によって東アジアや中東などで実戦の洗礼を受け、そういったものは解消されている」

そして、とアクスマンは続ける

「衛士も1人だが補充しよう。リィズ・ホーエンシュタイン少尉、入りたまえ」

「ハッ」

アクスマンがそう呼ぶと、金色の髪を白と水色のストライプのリボンで結んだした幼い顔立ちをした少女が応接室に入ってき、アイリス達に敬礼をしながら名乗る。

「リィズ・ホーエンシュタイン少尉であります」

「外務長官殿、彼女は?」

「彼女はリィズ・ホーエンシュタイン元武装警察軍少尉。私の義理の娘だ。今後は君の中隊に補充要員として配属させる。腕は保証しよう。ポーランド戦線で初陣も済ましているし、革命時にはMig-23〘チェボラシュカ〙単機で人狼〘ヴェアヴォルフ〙大隊のMig-27〘アリゲートル〙を5機落とした実績(※1)もある」

「それも決定事項ですか?」

「ああ、そうだとも。君達の活躍に期待しているよ。要件は以上なのだが、質問はなにかあるかな?」

疑問点がないのか、あるいは聞いても無駄だと思っているのだろうか、質問は特にはなかった。

「特にないならそれでいいだろう。デブリーフィング前に時間をとってしまい申し訳なかったな」

では、デブリーフィング室に行こうではないか。アクスマンのその言葉に、ようやくこいつから開放されると思っていた3人は意表を突かれ、鳩が豆鉄砲を食ったよう顔をしてしまう。

この後、ブリーフィング室では死んでしまったと思っていた義妹との再開にテオドールが驚いたり、テオドールが中隊女性陣からドン引きされたり、アクスマンがリィズの義理の父親となっている事とアクスマンから「リィズの兄なら私の息子も同然さ。何か困ったことがあったらいつでも頼ってくれ。全力で協力しよう」と言われて寒気を覚えたりした。

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また、歓迎会ではアクスマンのポケットマネーで所属部隊員や基地要員に日本製の天然ものビールとアイスバインが振る舞われお祭り状態となり、リィズによりテオドールの恥ずかしい記憶がバラさるなどそれはまた別の話である。ただ、いくつか付け加えるとしたら、その場には原作とは違い純粋な歓喜の感情が大半を占めていた事と、その後のカゲロウ・カスタムの慣熟訓練では、原作通りの性能しかないOSを搭載したMig-21(第1世代機)から、M3S(XM3)に対応したF-1EG(第2世代機)に装備が更新されたせいで第666戦術機中隊が慣熟訓練で地獄を見る事ぐらいであろう。


西暦1984年9月16日 日米共同統治領アイスランド ファクサ湾統合基地群 レイキャヴィーク基地 広域演習場

東ドイツでは大半の原作キャラがアイスランド、デンマークが20世紀初頭に日米に割譲し、第一次世界大戦から第二次大戦、東西冷戦を経て現在に至るまで欧州における日米最大の軍事基地として機能しているこの地の広域訓練場では大量のBETA群と日米の戦術機部隊が戦闘を繰り広げていた。

「もっと俺に快感をよこせアベンジャーァァァァァァ」

「ありったけ喰らわしてやる」

「ヒャッハー、BETAは消毒だァァァァ」

そんな戦場でア○マスやシャ○マス、デ○マスのキャラが描かれた第188戦術機甲大隊通称、痛い子大隊のA-10 流星 戦術歩行攻撃機が、自身の肩部に設置されている自慢のGAU-8 アベンジャー36mmガトリングモーターキャノンと両腕に装備する計2門の突撃砲を用いた全力掃射をレーダーを埋め尽くさんとする要撃級に浴びせていた。

「陸軍のPどもなかなかやる。総員奴らに遅れをとるな! T督の誇りを見せつけてやれ!」

「「「「「了解!」」」」」

回線から暑苦しい漢達の声が流れると、流星が開いた道を艦○れやアズ○ンのキャラが描かれたF-4E 夕凪改1個中隊がF-5E/F 野分改の先導の下に軽々と突破していき、戦車級群に接敵する野分改が120ミリ砲で邪魔な戦車級を倒す。そして、光線級を発見する。

「アズレン1よりアドミラル隊へ。光線級を確認した。諸元を送る」

「確認した。アドミラル1よりアズレンへ。誘導を感謝する。総員、クソッタレの光線級どもにフェニックスを喰らわしてやれ!!」

「「「「「了解!」」」」」

アドミラル1の合図とともに全夕凪改は光線級に向け一斉にミサイルを発射、計96発のミサイルとそこから放たれられる息子の爆弾が光線級を消滅させた。


「なあ、嶋田。俺の幻覚かもしれないが、 なんか痛い子大隊の奴らが海軍まで侵食しているように見えるんだが?」

「・・・残念ながら幻覚ではないぞ山本。しかもたちが悪い事に第4母艦戦術歩行戦闘団の奴ら、あのペイントをしてから目に見えて操縦技術も部隊間共同作戦能力が向上してやがるせいで何も言えん」

海軍第118戦術歩行戦闘隊隊長と第2母艦戦術歩行戦闘団隊長を兼任する嶋田少佐と同隊のストームバンガード1を任されている山本大尉はともに引き攣った顔をしながら、コマンドポストで陸海軍共同の対BETA戦演習を視察していた。

「・・・確か、彼らはセイバー・ジャンクションに派遣される部隊の1つだったよな?」

「ああ、腕は確かだからな、腕は・・・」

「・・・大丈夫なのか?」

「大丈夫だ。胃薬ならもう用意した」

「・・・俺の分も頼むぞ」

画面でイタ戦術機が軍団規模BETA群を相手に無双する映像が流されているのを背景に将来の帝国宰相と海軍大臣はうなだれながら、近い将来、具体的には2ヶ月後に起きるだろう面倒に思いを馳せるのであった。

163: ホワイトベアー :2021/10/19(火) 20:03:31 HOST:163-139-151-176.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
※1)
武装警察軍の最精鋭部隊である人狼大隊であってもMig-23 3機で挑んでもMig-27 1機に勝てない。それだけ、両機の間には性能差がある。


キャラクター・部隊紹介
国家人民軍第666戦術機中隊
東ドイツ最強の戦術機中隊。革命前は東欧派遣兵団の一員としてポーランド戦線に派遣され、レーザーヤークト部隊として活躍していた。
しかし、その練度の高さと比例して激戦区に多く投入された事から中隊でありながら2個小隊規模の戦術機しか運用していないと言う定員割れが向上化しており、革命後の国家人民軍再編でも練度の高さを崩したくないと言う判断により人員がなかなか補充されていない。
なお、ポーランドの国土の殆どが健在でポーランド軍もいまだに機能しているのでシルヴィアはいない。

リィズ・ホーエンシュタイン
シュバルツスマーケンの主人公であるテオドール・エーベルバッハの義理の妹であり、原作では国家保安省直属のスパイとして活動し、その結果テオドールの手で処刑される。ゲーム版でも基本的に死ぬ運命にあり、唯一生き残るルートでもアクスマンにより心を壊されると言う救いのないキャラ(他のキャラのルートでは救いはないのになんでこうなった(白目))。
今世界線ではアクスマンと同様に原作キャラに転生した転生者の一人であり、国家保安省に拘束され、アクスマンにより保護された後に転生者として覚醒した。
余談であるが、テオドールラブ度は原作とは違う方向性に悪化しており、武装警察軍時代はそれが原因で度々アクスマンの胃にダメージを与えていた。

164: ホワイトベアー :2021/10/19(火) 20:05:16 HOST:163-139-151-176.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
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最終更新:2021年10月21日 11:22