522: 635 :2021/10/16(土) 21:36:05 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp
銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ サセボ異界紀行十冊目
side:『私』
カットラスを作り上げ艦長にそのまま手土産でも渡す様な感じで渡そうとしたファーダリシュリューであったが説得され艦長らに止められてしまった。
彼らの言い分を纏めるとその剣はそれこそ神が民にレガリア与える的なアトモスフィアなものなので儀式的な式典で下賜して欲しいとの事である。
しかも記録映像に残しこの慶事を遍く国民全員と共有したいとか。
ファーダからすれば納得できるデザインと性能でさっくりとそれこそバゲットを焼き上げるよりお手軽に作り上げたものであるが艦長らから見るとそれどころではない。
よくよく考えれば分かる事であった。彼らから見ればあのカットラスは『我らが指揮官』が『直々』に『己の一部』から作り上げ与えた、
それこそ戦艦リシュリュー乗員というかFFR海軍、否FFR全体にとって聖剣とでも言うべき代物に仕上がっていたのだ。
そんなものを手土産でも貰うノリで受け取れる訳がない。艦長らの懇願もむべなるかな。
剣を作ることでそんなことになるとはそこまで考えなかった自分の迂闊さに頭が痛い。
故に午後には簡素であるが式典を行う事になったが艦長らは頭を痛めているようであった。
こういった宗教儀式的なものに関してFFRとなってからのフランスでは前例がないらしい。
我らが指揮官に捧げる儀式、いや式典と言えば演習やパレード等軍事的なものであるのが通例であるそうで、
それでいいのではと思っていたが艦長らが頭捻り話し合う様子見て口を噤んだ。
我らが指揮官御臨席という慶事をいつものものにしたくはないのだろうという艦長らの熱意を見たからだ。
ファーダリシュリューは溜息を吐くとファーダコンゴウと私に声を掛けた。
side:艦長
午後の儀式に関して我らが指揮官は自ら采配を取り指示を出された。
それもこれも我々の議論が堂々巡りをし中々に決まらなかったからだ。
我らが指揮官の御手を煩わせてしまったという後悔が頭を過る、しかし我らが指揮官は人(FFR)には不得意もあるのだからこれから改善すれば良いと諭して下さった。
その我らが指揮官が何をなさっているかと言えば。
「バゲット、三番の窯が焼き上げったわよ!そこの子はサラダの用意の支援に回って、それからスープの用意には私が回るわ!!」
戦艦リシュリューのもう一つの戦場とも言えるキッチン、そこを我らが指揮官はまるで艦隊を率い海を行くかの如く、自ら主砲(バゲット)を掲げ、指示を飛ばし、弾薬(スープ)を準備する戦場(キッチン)を縦横無尽に駆け巡られている。
いつもは我々も頭の上がらない料理長すら借りてきた猫、いや我らが指揮官の指揮下の一兵卒となる。
必要人員を残し我らが指揮官捜索へ全力を傾けていた戦艦リシュリュー、そのキッチンもまたその能力はまた最低限の状況にあった。
そして時は昼食時、サセボ市内に散った寝る間や朝食も惜しんで探索に携わり疲れ果てた乗員全員が即刻戻ってくることが想定される。
状況を考えれば状況は最悪である。
そこで我らが指揮官は自らキッチンに立つと申せられた。
私を始め料理長らも止めたがそれに対して一喝された。
「乗員の腹すら満たせなくて何が指揮官ですか!!」
だが戦力(スタッフ)が足りず、戦術(メニュー)もどうすれば良いのかと料理長が申し上げると戦力(スタッフ)ならば持ってくれば良い、
そして戦える戦術(メニュー)にすれば良いと仰られ、艦内残留者より戦力を選抜、戦場(キッチン)へと立たれたのである。
驚くべきことは乗員の抜けた穴をコンソール等を用いずシステムそのものすら制御するという我々の想像を超えた能力を示された。
成程、御身の半身であるのならばその程度は容易いということか。
「艦長!」
「我らが指揮官なんでありましょうか…!?」
私を呼ぶその御声に私は新兵の如く鯱張り声の方を向く。
我らが指揮官はどこから取り出したのか巨大な樽を二つその細い白磁様な腕で担いでいる。
その様に周囲の者達はあ然としている。
523: 635 :2021/10/16(土) 21:37:14 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp
「皆に振る舞うからこの樽を開けて中のワインを少量ずつ各員の席に分けて頂戴。」
「こ、この量をですか?」
「午後には式典もあるでしょ。緊張解す為に少しくらい呑んでもバチは当たらないわよ?」
それとも少なかったかと我らが指揮官は仰ると今度は更に大きなvinの樽を二つどこからともなく取り出すと床に置かれた。
一体何処から取り出したのか…?
そこへあの星の王子様、副官殿(Adjudant)が入ってくる。
午後の儀式に関して我らが指揮官より女神金剛と共に任され、副艦長と共に準備している筈であったが。
「ファーダちょっとお話が…ってこれはワイン樽?」
「ええ皆に振る舞おうと思ってね。」
「ああこのラベルは…一昨年の出来が良かったヤツですか…。」
副官殿は言葉を零す、霧の向こう(神崎島)で我らが指揮官が運営する農場で自ら育てた葡萄の木から我らが指揮官が自ら作られたvinと。
我らが指揮官の作られたvin、その言葉にその場の全員が立ち上がるが我らが指揮官の言葉に全員が絶句する。
「そっ。その時にオセアンや練巡のジャンヌと一緒に足踏みで作ったヤツよ。」
Notre Commandantォォォォォっ!?
昼食時の戦艦リシュリューの食堂、そこにはいつも笑い声や雑談など活気に溢れているが此度違う。
乗員全員が揃った各食堂のテーブルには汚れ一つない純白の布が掛けられ、テーブルの上には磨き上げられた燭台の蝋燭に火が灯されその明かりが乗員の顔を照らす。
私を含め乗員たちはいつもの作業服や戦闘服ではなくFFR海軍正式の礼装を身に纏い食堂には厳かな空気が流れる。
「皆の前のバゲットは我らが指揮官自ら焼き上げられたもの。そして皆の前のVinは…死の女神戦艦オセアン、
学問と教育の女神にして子供たちとその未来の守護者たる巡洋艦ジャンヌ・ダルク、そして全てに勝る母にして我らが指揮官たる戦艦リシュリュー、
三柱の女神が作られたもの、三女神の血と言っても良いだろう…皆、心して頂く様に…。」
私が口を開き言葉を口にすると全員が緊張した面持ちとなる。
私が我らが指揮官ら女神達に日々の感謝と加護を祈る言葉を口にし全員が続き同じ言葉を口にする。
そしてグラス、否最早我らの女神の血の入ったこれは聖杯とでも呼ぶべきだろうそれを天高く掲げ皆もそれに続く。
「 Vive la Richelieu!! Vive la Ocean!! Vive la Jeanne d'Arc!! Vive la France!!!」
「「「 Vive la Richelieu!! Vive la Ocean!! Vive la Jeanne d'Arc!! Vive la France!!!」」」
三女神とフランスに栄光あれ、全員が唱和し聖杯の中身を飲み干す。
身体が熱くなり身体の奥底から力が湧いて来るようであった。
今ならば例えOCUが二倍の戦力を持って来ようとも我々はFFRを守りきれると思える程だ。
そして皆が我らが指揮官の焼いたバゲットを口にし始めた。
感激のあまり涙を流す者、一口一口噛み締めて味わう者など様々である。
皆同じなのは悪しき感情が須らく消し去られ、我らが指揮官への感謝と尊崇の念が高まり純化されていることである。
あのvinについての我らが指揮官の言葉に心の中で絶叫してしまったがこうして自分を含め食す皆の様子を見て何故我らに女神の血肉を与え給うたのかが分かる。
食事の後に行われるのは我らが指揮官による聖剣の下賜というFFR始まって以来の慶事、否神事。
臨むに当たり気を引き締め身を清めよという我らが指揮官の御意思であろう。
私もまた皆と同じ様にバゲットを一口頬張り儀式に向け気を引き締めた。
524: 635 :2021/10/16(土) 21:38:17 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp
昼食を終え身だしなみを再度整えた私は副艦長とジェゴフ大尉らに加え撮影機材を回す通信部門の者達を引き連れ戦艦リシュリュー内の最大の会議室向かっていた。
大会議室こそ此度の儀式の場と成るべき場所である。
そしてその場の映像は通信部門の者達の手でFFR本土Hexagoneだけでなく各地へと送られる手筈となっている。
「副艦長、君は準備時に中の様子を見たのだったな。どんな感じだった?」
道中、副艦長に問うと彼は視線を彷徨わせ意を決し語りだした。
「正直今でも中での状況が現実であったと信じることが出来ません…。
そしてあれこそが我らが指揮官の御力の一端であるとするならば我らはどれ程偉大な御方を頂点に頂いているのかと興奮で震えが止みません。」
「それはどういう…。」
「それは御自分の瞳で確かめられた方が宜しいかと…。」
そして我々は会議室の扉の前に着いたの。
「お待ちしておりました。艦長。」
そこには青い肌のイゼイラ人である副官殿がイゼイラのものとも大日本帝国各軍のものとも違う礼装を纏いぎこちないながらもFFR海軍式の敬礼をしそこにいた。
腰にはサーベル、というよりは日本刀をサーベル風に拵えた様な剣を佩く。そのナ護拳には大改装以前の我らが指揮官の御影が彫られている。
そして彼は会議室の扉へと身体を向け扉を叩く。
「『Notre Commandant』、艦長以下只今到着されました!!」
その声に静かに扉が開き光が溢れる。
「!…こ…これは…!!」
私の喉から出る声が震える。そこは私が知っている会議室ではなかった。
本土の王政時代からの宮殿か大聖堂の内部かと思うほどの、いやそれすらも上回る威容と芸術性。
現代まで生きたル・コルビュジエがデザインしたと言われても信じるだろうデザイン。
そしてそこは確かに我らが敬愛する方が鎮まる聖堂であると我々に訴え掛ける。
壁にはHexagone各州に加えアフリカ、エスト・シナ各地の紋章が描かれたタペストリーが翻り、扉から真っ直ぐに真紅の絨毯が敷かれている。
その真紅の道の両脇には一兵卒になるまで彼の方を守らんとする我らFFR海軍が誇る精強なる海兵が小銃とサーベルを佩き一糸乱れず列を成す。
そしてその最奥、FFR国旗と国章が掲げられ一段高くなった場所。
裾の長い白い無地のローブの上から深い青と深紅の長いケープを纏う女性が金の稲穂の様な長い髪を身体に纏わせFFRの旗の下に静かに座っている。
その御姿に呆然としている私に副官殿が耳打ちする。
「(艦長、あそこに座られているのが女神としての戦艦リシュリューの姿をしたファーダリシュリューであります。)」
その言葉に私は我らが指揮官の姿を目に焼き付ける。
同時に見惚れていた撮影班が機材を回し我らが指揮官の姿をカメラに収めFFR国民へと我らが指揮官の姿を伝える。
歴史にも残るFFR全体を包む最大の歓喜と熱狂は我らが指揮官の女神たる姿より始まり、エスト・シナの観閲式より拡大、数ヶ月に渡り続くこととなった。
我らが指揮官の半身たる艦娘リシュリューが本来の役目、霧の向こうのオセアンの下で戦う我らの父母達の所へと戻るまで…。
525: 635 :2021/10/16(土) 21:42:26 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp
以上になります。転載はご自由にどうぞ。
リシュリュー「決まりそうもないから貴方達で準備進めて頂戴。」
金剛「会場の内装とかどうするネ?聖堂風とか?」
リシュリュー「…ル・コルビュジエがデザインしたデータとかあるけど…狭いわよねえ…。」
私「いっそファーダ達のゼルリアクターで部屋を丸々聖堂内部に仮想造成するとかは?」
リシュリュー&金剛「それだあああ!!」
最終更新:2021年10月21日 12:44