533: リラックス :2021/10/17(日) 08:24:39 HOST:softbank126002191158.bbtec.net
さて、むしゃくしゃしたので投稿
天の涙世界における漆黒のステイヤー~皐月賞まで~
さて、偉大なるレジェンドの孫として誕生したオオフジ改めライスシャワーは、馴染みある名前にしてもらえたことをひとまず喜んだのだが、やはり色々と混乱するものはあった。
漆黒のステイヤーと名を馳せ、種牡馬としての価値をつけるべく挑戦した宝塚記念で骨折、予後不良となったと思えば、気づいたら見知らぬ馬房で見知らぬ牝馬を見上げていたのである。
何やら偉大な祖母(確か前世で縁がないではなかったと記憶している)と優秀な母の血を引いているとして周囲が大喜びしていたのは、まあ、悪い気分ではなかったが。
何やら自分が生まれた時代よりも遥かに前の時代で、しかも海外の競馬が壊滅状態と聞かされた時は流石にショックだったが、よりショックだったのは好敵手が残念ながらいないということだった。
ミホノブルボン。前世では菊花賞で一矢報いたとはいえ、皐月賞、日本ダービーを含めて実に4度も煮湯を飲まされている。
ミホノブルボンの大記録達成の前に立ち塞がったとか言われたが、冗談ではない。ライスシャワーからすればミホノブルボンこそがデカ過ぎる壁だったのだ。
そうやってようやく一矢報いて、さあ、これからだと思えば怪我で退場だ。
自分がこうして転生しているのだから、彼だって転生していても良いだろうに。
「寂しいのは分かるが、そうヘソを曲げるな。強い競走馬はこの世界にもいる。
それにミホノブルボンのライバルは、こんなにも強いんだぞ、と、この世界で証明出来るのは、彼の大記録を阻んだお前にしか出来ない挑戦だ」
まあ、不甲斐ない様を見せて祖母やら母やら馬主やらに迷惑をかける訳にはいかないか、と同じ(?)転生者の説得もあって気を取り直し、しっかりと食べてトレーニングに励み強い身体を作ることにした。
ミホノブルボンがやっていたという坂路トレーニングはキツかったが、関節などかけてはならない箇所に負荷がかからず効率よく筋肉に負荷がかけられるとのことで、祖母からの血統もあってか前世以上に速く駆けられるようになったことは実感できた。
特にステイヤーの脚質もあり、弱点であった加速の鈍さは大幅に改善されたし、元々得意だった下り坂と合わせて坂道では他の追随を許さない速さを手に入れた。
専属となった転生者曰く、坂路を走るのが速いのでも強いのでもなく、上手いのだとのことだが。
534: リラックス :2021/10/17(日) 08:25:23 HOST:softbank126002191158.bbtec.net
それはそれとして、
転生者達が欧米の競馬業界が壊滅状態になったと判断した1943年以降、史実に合わせて改革が進められており、サラブレッド系種の平地競走の重賞競走の格付けとしてグレード製が1950年半ばには導入。
八大競走に加えて国際招待競走と指定された日本杯(ジャパンカップ)、西宮記念(鳴尾競馬場(阪神競馬倶楽部)が軍に接収されなかった関係でそのまま競馬場として存続した結果、宝塚記念でなくなってしまった)、エリザベス女王杯(※1)、更に新設の秋華賞(※2)が最高階位であるG1として設定された。
宝塚記念じゃなくなった!?とか、国際的な競馬の衰退を少しでも食い止めるべく、欧米(という表現すら使えなくなっていたが)の関係者の負けん気を刺激すべく日本杯の設立を行うだの、
弥生賞などトライアル競走となるレースを早期に設立して、少しでも史実のレース形態に近づけようとするなど、関係者が特に
アメリカで消滅したレースや競走馬の血統に血涙を流しながら、史実との変化に混乱しながら、如何に努力と苦労を重ねたかが窺い知れるだろう。
という話を時折聞かされて、自分も競走馬として活躍して競馬界の発展の一助になればいいな、と密かに奮起したりもした彼と転生者達が一丸と目指すは、やはりクラシック三冠だった。
デビュー戦となった3歳新馬戦、続いて行われた新潟3歳Sを勝利して重賞初勝利を達成して勢いに乗り、皐月賞のトライアルである弥生賞もノビノビと先頭を逃げて見事勝利。
徹底マークしてついて行く戦法も悪くなかったが、他の馬を気にせず先頭を走るのも中々気持ちいいものだと語ったという。
まあ、血統から来る才能と転生者総力でのバックアップを受けて努力した結果、先行寄りに走ろうとしても他の馬を置き去りにしてしまうフィジカルのせいで逃げになってしまったというのが事実なのだが……
「さぁ、今年もやってまいりました。クラシックロードのスタート地点、最も速い者が勝つと言われる皐月賞。今年は、例年以上の観客達で観客席が埋め尽くされております」
「ここまで10戦10勝、船橋代表。ヒノデゲキテツ、3番人気です」
「地方とはいえ10戦10勝、地方出身馬がG1制覇を成し遂げるか、注目です」
「2番人気は、ウララカビヨリ」
「牝馬でありながらクラシック三冠路線への挑戦、彼女の代名詞でもある大逃げがどこまで通用するか、場合によっては台風の目にもなり得ますよ」
「1番人気はライスシャワー」
「弥生賞では素晴らしい走りをみせてくれました。本日も好走を期待です」
各馬一斉にスタートを切る。
そして飛び出していくのは予想通りウララカビヨリ、それを追うようにライスシャワー、ヒノデゲキテツが続く。
ウララカビヨリはスタートダッシュのキレと、そのままスタミナが切れるまで足を緩めることなく駆け続ける勇ましい走りでファンを魅了した競走馬であり、牝馬でありながらクラシック三冠路線への挑戦を宣言し、この皐月賞でも二番人気に食い込むほどの支持を受けている。
535: リラックス :2021/10/17(日) 08:26:02 HOST:softbank126002191158.bbtec.net
尤も、ウララカビヨリ自身は
(ヒィィ~!!知らないお馬さんがたくさんいる~!!怖いよ~!!)
と、『他の出走馬が怖い』という勇ましさもへったくれもない理由で全力で逃げていたりするのだが。
そんな彼女をすぐ後ろで見ていたライスシャワーは、
(あー…何か前世でも似たような奴いたなぁ…ドゥーエモトーレとか言ったっけ)
オールカマー戦では煮湯を飲まされたものだと振り返る。
思えば、自分はここぞという時に逃げ馬に痛い目に遭わされることが多かったように思う。
先述のオールカマーもそうだし、長距離G1で唯一取れなかった有馬記念(※3)も、一度目はメジロパーマーに逃げ切られた(トウカイテイオーの不調に気づくのが遅れたのもあるが)。
そもそもにして、四度も煮湯を飲まされたミホノブルボンからして逃げ馬ではないか。
(……)
何となく腹が立って来た。
だからと言う訳ではないが、ライスシャワーはウララカビヨリの真後ろにつけてプレッシャーをかけつつ、彼女を風除けにしてスイップストリームでスタミナを温存するという戦法を取ることにした。
やはり経験の差は大きく、ウララカビヨリは真後ろのライスシャワーのプレッシャーに足を緩めることなど出来ずスタミナを消耗、ついでにウララカビヨリのペースに釣られた後続のヒノデゲキテツ以下も見事に掛かってしまう。
そして元凶のライスシャワーはと言えば、1600メートルを超えた辺りで力尽きて後退していくウララカビヨリをヒョイとかわすと、悠々とスパートをかけて後続を置き去りにして見事に1着を取った。
コレを見た転生者が
「その走りお前やないやろ!」
と思わずツッコミを入れるような、「(ウララカビヨリ共々)逃げながら足を溜めて後続を差し切る」という「ちょっと待て、何かがおかしい!(褒め言葉)」な見事なレースであり、日本競馬界におけるちょっとした伝説となった。
※1、当初はビクトリアカップとなる予定だったが、ちょうどエリザベス2世の訪日があったこともあり、イギリスとの関係改善のアピールも兼ねて最初からこの名前になった。
※2、ちなみに秋華賞の初代優勝者はヤマイチとなっており、ライスシャワーの母は桜花賞、牝馬優駿、秋華賞の牝馬三冠の初の達成馬となっている。
※3、菊花賞、天皇賞(春)、有馬記念の三つ。ライスシャワーは菊花賞でミホノブルボンを、天皇賞(春)でメジロマックイーンを降して優勝している為、有馬記念を制していればシンボリルドルフ以来の快挙。
尚、史実では他に達成者はマンハッタンカフェのみ。
536: リラックス :2021/10/17(日) 08:28:53 HOST:softbank126002191158.bbtec.net
以上、私に熱いレース展開なぞ無理なので緩~くお楽しみ下さい。
最終更新:2021年10月21日 12:51