926: 加賀 :2021/10/18(月) 22:02:06 HOST:softbank126194140160.bbtec.net


「取り敢えずカンパーイ」
「いきなり飲むんですか……ってか大ジョッキで……」
「鳳龍は放っておきましょ」

 いきなり宴会を始める鳳龍は放っておき、瑞鶴は口を開いた。

「第二次ソロモン海戦でサラトガとアトランタの鹵獲に成功して、二隻はトラック諸島経由の内地へ向かってまぁ徹底的に調べられたわね」
「あの時のスタッフは怖かったわね……」

 あの時を思い出すのか水無瀬はブルッと身体が震えた。それ程の事だったのだろう。

「そしてガダルカナル島奪還のために第二師団が第十七軍に配備されて第二師団を主力に先の輸送作戦で壊滅した川口旅団も他方面からの歩兵連隊を加えた混成旅団として再編成され陸戦隊も二個大隊が出される事になったわ。そのために野砲や野戦重砲の輸送に瑞穂や日進が選ばれて輸送する事になった」
「あの時はめんどかったわねぇ」

 不意に、大ジョッキで飲んでいた鳳龍がポツリと呟いた。

「輸送船団を叩こうにも船団の上空にはジークと瑞雲がいたから中々攻撃出来なかったと聞いているわ」
「瑞雲は偉大ですねぇ」
「日向も喜んでるでしょうね」

 まだ航空戦艦として踏ん張っている『伊勢』型の二番艦を思いつつ瑞鶴は話を続けた。

「混成旅団と陸戦隊を先に上陸させ足場を固めようとした第十七軍と海軍と調整は上手くいって海軍は第八艦隊を護衛として出したわ。第八艦隊は猛将の三川中将と増援として配備された橋本少将の五戦隊もいたしね」
「確か橋本少将は……」
「えぇ。ネルソンや伊勢のこれよ」

 瑞鶴は加賀海軍大将に貰った指輪を見せつつ口を開いた。

「まぁそれはさておき、第八艦隊は重火器輸送のために出撃したわ」

 第八艦隊
 『鳥海』(ラバウル)
 第五戦隊
 『妙高』『那智』『羽黒』『足柄』
 第六戦隊
 『青葉』『衣笠』『古鷹』『加古』
 第十一航空戦隊(輸送隊)
 『千歳』『千代田』
 第十二航空戦隊(輸送隊)
 『瑞穂』『日進』
 第三水雷戦隊
 『川内』
 第七駆逐隊(輸送隊)
 『朧』『曙』『漣』『潮』
 第十一護衛隊
 『吹雪』『白雪』『初雪』『白雲』(輸送隊)
 第十九駆逐隊
 『綾波』『敷波』『磯波』『浦波』
 第二十駆逐隊
 『天霧』『狭霧』『朝霧』『夕霧』


「本来なら輸送業務がメインの第十一護衛隊も無理矢理参加させられたけど、第八艦隊は五戦隊の橋本少将が司令官としつつ旗艦は『妙高』だった。そして10月11日の夜半、両艦隊はサボ島沖で激突したわ」
「後に言われる『サボ島沖の五戦隊』ですか……」
「『妙高』には22号水上電探改四が搭載されていて改四は接近してくる米艦隊ーー第64.2任務部隊を捉えていた」

927: 加賀 :2021/10/18(月) 22:02:43 HOST:softbank126194140160.bbtec.net
「司令、敵艦隊です」
「ん。準備出来次第、撃ち方始め」

 2131、『妙高』から先に砲撃をした。『妙高』が放った20.3サンチ砲弾は第64.2任務部隊旗艦『サンフランシスコ』の周囲に着弾した。

「初弾から夾叉だと!?」

 着弾して水柱が吹き上がる中、司令官のスコット少将は驚愕した。奴等、この闇夜でも見えるというのか?





「五戦隊は開戦前から対空・水上電探を優先して搭載していたわ。五戦隊が敵艦隊と多く当たると想定していたからね。だから開戦前から夜戦での電探射撃の訓練は行われていたし射撃・水雷の猛者でもあった橋本少将の意見もあったからね。だから直前まで五戦隊に入っていた『鈴谷』『熊野』がインド洋と北方に振り分けられたのもそれが理由なのよ」
「成る程。それなら『サンフランシスコ』達が破れたのも納得ね」

 そう言って大ジョッキを飲み干す鳳龍である。(五杯目)






「探照灯照射!! 敵弾は全てこの『妙高』が引き受ける!!」

 『妙高』から探照灯が照射される。それに続いて『那智』以下の五戦隊が『サンフランシスコ』に砲撃を集中させた。この一斉砲撃により『羽黒』が放った20.3サンチ砲弾が『サンフランシスコ』艦橋に直撃、スコット少将以下第64.2任務部隊司令部を吹き飛ばし第64.2任務部隊を混乱させる原因を作るのである。
 被弾炎上した『サンフランシスコ』に橋本少将は直ぐに二番艦『ソルトレイクシティ』に照準を変えて再度砲撃を開始した。
 『ソルトレイクシティ』も至近距離(2800m)だったので瞬く間に被弾炎上した。



「此処までは良かった……『妙高』の司令部に輸送隊から急報が入ったのは2203だった」





「『吹雪』より入電!! 『我、敵艦隊ト交戦中』」
「何!?」

 実はスコット少将、戦闘前に別動隊も発見しており(輸送隊)乙巡『ヘレナ』駆逐艦3隻を向かわせていたのだ。無論、接近してくる艦艇に輸送隊も気付いていたが敵味方か確信が持てず『白雲』が独断で近づいたら『ヘレナ』が砲撃、『吹雪』が慌てて『妙高』に電文を発信したのである。

「『白雲』爆沈!!」

 被弾炎上していた『白雲』は更に砲弾が魚雷発射管に直撃、誘爆した事で爆沈したのである。

「砲撃!! 五戦隊が来るまで持ちこたえろ!!」

 第十一護衛隊司令の陣原中佐は五戦隊が到着するまで何とか耐えようと決断、ありったけの砲弾と魚雷を無理矢理にでも叩き込んだ。だがその甲斐があったのか『ヘレナ』は一時的に炎上した。
 その明かりが目印となって五戦隊と六戦隊らが駆けつけ砲撃を叩き込み『ヘレナ』を撃沈する。だがその間に被弾炎上していた『サンフランシスコ』『ソルトレイクシティ』が撤退に成功してしまうのであった。






「結果としてガダルカナル島への輸送は成功したわ。水母は重火器を揚陸し砲弾も予定通りに降ろしたから輸送は成功だったのよ……輸送はね」
「それって……」
「……内陸部へ移送中に飛行場から飛び立った爆撃機が重火器の半分を吹き飛ばしたからどっこいどっこいよ」
「oh……」

 瑞鶴の言葉に天を仰ぐ青葉だった。

928: 加賀 :2021/10/18(月) 22:04:52 HOST:softbank126194140160.bbtec.net
というわけで南太平洋海戦の道のりとしてのサボ島沖海戦でした。
ブッキーの代わりに白雲が爆沈です。
えっ?陣原中佐?
新進気鋭の芋派閥の提督ですはい

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最終更新:2021年10月21日 13:32