223: 加賀 :2021/10/25(月) 20:35:13 HOST:softbank126194144008.bbtec.net


「第二次攻撃隊を送り出した後、『霧島』の対空電探が接近してくる米攻撃隊を探知したわ」






「全艦対空戦闘用意!!」
「全艦対空戦闘用意!!」

 対空戦闘用意の喇叭が鳴り響く。主砲、両用砲、対空機銃のそれぞれの銃砲身が仰角を上げて上空に向けられる。

「班長、対空戦闘用意ですよ」
「分かっとるわい!!」

 弾薬箱を持って対空機銃に付く整備員達はそう言いながらも戦闘配食の握り飯にかぶり付くのである。そうこうしているうちに米攻撃隊は第三艦隊から距離80キロの地点で零戦隊ーー48機が襲い掛かったのである。
 先行してきたSBD15機は48機の零戦隊の攻撃をモロに食らい全滅した。更に続けて米第二次攻撃隊が飛来した。第二次攻撃隊は零戦隊の猛攻を退けつつも艦隊上空に到達した。

「さぁ来なさい!!」

 瑞鶴(レイテ決戦仕様服)は防空指揮所にて吼えていた。その瑞鶴に叫びに答えるかのように対空砲火が激しく撃ち上げる。

「しゃらくせェ!!」

 『瑞鶴』艦長である野元大佐は見事な操艦を発揮しSBDの急降下爆撃、TBFの雷撃を回避するのである。(『松田式操艦術』本を熟知していたのが幸いした)
 しかし『葛城』はそうはいかなかった。

「敵機直上ォォォォォォォォ!! 急降下ァァァァァァァァ!!」

 対空砲火を嘲笑うかのように2機のSBDが急降下し腹に抱えた1000ポンド爆弾を投下。2発は『葛城』に吸い込まれるように中部エレベーターと前部飛行甲板に突き刺さって格納庫に飛び込み、そこで力を解放した。

「葛城ィィィィィィ!!」

 左舷を航行していた『葛城』の中部エレベーターは完全に吹き飛んで破片等は海面に落下、前部飛行甲板も爆発し防空指揮所にいた葛城は爆風で瑞鶴の前から消えたが直ぐに煙が晴れて見え、葛城は中破の姿をしながらも健気に瑞鶴に手を振ったのである。

「……あの馬鹿……」

 今度は生きていた事に瑞鶴は安堵しながらも油断しないように対空砲火を見守るのである。

「『葛城』は護衛艦と共に後退せよ。全艦に発光信号を送れ!! これより『瑞鶴』は敵機動部隊を追撃する。全艦『瑞鶴』に続け!!」

 艦橋で南雲はそう叫ぶ。参謀長の市丸少将も頷いていた。その一方で第二次攻撃隊は『エンタープライズ』を主力とする第16任務部隊を発見、これに攻撃を加えていた。

「全軍突撃せよ!!」

 関少佐は編隊爆撃で列機の彗星17機と共に『エンタープライズ』に向けて急降下爆撃を敢行。『エンタープライズ』は500キロ爆弾5発が命中、しかし彗星隊も5機を対空砲火で喪失してしまう。そこへ『葛城』の九七式艦攻隊が突撃するも戦艦『サウスダコタ』の対空砲火に阻まれてしまう。

「クソッタレ!! 『サウスダコタ』に突撃するぞ!!」

 『葛城』艦攻隊隊長の田中正臣少佐は『サウスダコタ』に攻撃目標を変更し突撃するも田中少佐を含む14機が撃墜され(なお、田中少佐ら14名はパイロット救助の目的である二式大艇に救助された)4機しか生還しなかった。しかも『サウスダコタ』は投下された魚雷3本は全て回避してである。だが第二次攻撃隊が引き上げると今度は『隼鷹』からの第一次攻撃隊が到着し『サウスダコタ』に急降下爆撃を敢行、500キロ爆弾4発が命中して漸く対空砲火はマシになったのである。
 しかしその代償に『隼鷹』の艦爆隊7機を喪失したのである。だが、まだ『瑞鶴』の反撃はまだ続いていたのである。

「首よ首。『エンタープライズ』の首を取ってくるのよ」

 タバコを吸いながら発艦していく第三次攻撃隊を見送る瑞鶴である。

「『エンタープライズ』……貴女はタダで帰すわけには行かないわ。だから……此処で死ね」

224: 加賀 :2021/10/25(月) 20:35:48 HOST:softbank126194144008.bbtec.net
「ァァァァァァァァ。これは恥ずかしいィィィィィィ……」
(でもちゃんと悶えながらも語る瑞鶴さんも良いです……)
「所謂『黒歴史』ってヤツですねー」
「五月蝿いわよオイゲン!! あんたはヒラコーのノッブみたいに『ソ連滅べ。ソ連滅ぼした国は100万年無税』とか言ってたじゃない!!」
「それは今もでーす♪」
(八雲さん怖いです……)

 笑顔で答える八雲に青葉は背筋が凍りそうだった。





 『瑞鶴』から発艦した第三次攻撃隊は遁走を開始する『エンタープライズ』を発見し直ちに攻撃を開始する。先に彗星隊8機が急降下爆撃をし2発が命中。続いて九九式艦爆9機も急降下爆撃をするが1発が命中したのみであり逆に4機も撃墜されてしまった。
 だがその隙を突くように村田隊長の天山隊12機と加賀少尉率いる九七式艦攻隊4機が左右から突撃、結果として『エンタープライズ』は3本の魚雷が命中した。だがそれでも『エンタープライズ』は18ノットの速力で遁走を続けていた。
 しかし『エンタープライズ』の運はそこで尽きた。『隼鷹』から第二次攻撃隊(零戦9機 九九式艦爆6機 九七式艦攻18機)が到着し攻撃を開始したのである。

「いっけェー雨宮!!」
「おうよ!!」

 『隼鷹』艦攻隊の中に雨宮機(雨宮 秋沢 木場)がいた。機銃手だった福島は別の機の機銃手となり既に戦死していた。マラリアで倒れた森本少尉が秋沢と代わった事で雨宮達も参加が出来たのである。

「警戒艦通過!!」

 巡洋艦を飛び越した直後に分隊長機が対空砲火を食らい爆発四散する。

「分隊長!?」
「構うな雨宮!! ドンドン突っ込め!!」

 秋沢の指示に雨宮は操縦桿を握りしめ、高度3メートルを維持する。それは鹿児島の錦江湾で鍛えられたパイロットに与えられた証だった。

「距離……」
「用意……」
「700!!」
「ヨーイ……テッ!!」

 雨宮は魚雷を投下、ギリギリの高度で『エンタープライズ』を追い越すが機銃弾が雨宮の機体を叩きつける。

「大丈夫か!?」
「大丈夫だ、高度を上げるな。木場、雷跡は……」

 その時、『エンタープライズ』の左舷に水柱が吹き上がった。

「命中!! やった、当たったー!?」

 はしゃぐ木場に雨宮は微笑み秋沢に語りかける。

「やったな秋沢。またブチこんだな……」
「………」
「おい秋沢……」
「雨宮さん、秋沢兵曹は……」
「………」

 木場の言葉に雨宮は理解した。

「またかよ……なぁ秋沢……?」

 雨宮の呟きは誰も答える者はいなかったのである。なお、雨宮機は無事に『隼鷹』に帰還する事が出来たのである。

「見えるか秋沢……母艦だぞ……帰って……帰ってきたぞ!!」

225: 加賀 :2021/10/25(月) 20:37:40 HOST:softbank126194144008.bbtec.net
次回、ラスト。
遂に瑞鶴が語る南太平洋海戦は終着する。
全ての空母を倒した第三艦隊……しかしその代償は若き海鷲達の命だったのである。


次回、『勝者は誰か?』

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最終更新:2021年10月31日 16:38