594: ライスイン :2021/11/03(水) 17:48:35 HOST:g133-247-64-052.scn-net.ne.jp
1940年1月21日07:00 アムステルダム沖 フランス海軍

「暇だな・・・眠くなる。」

アムステルダム沖を封鎖するフランス海軍北部海洋部隊の司令官ラウル・カステックス大将は気怠そうに呟いた。
開戦以来オランダ海軍は潜水艦や水雷艇による輸送船攻撃以外、その水上艦の殆どがまったく活動していなかった。

「上手くすれば鹵獲できますな。」

補佐すべき参謀長も勝ちが決まったとばかりに楽観的になっていた。部隊編成も

戦艦:ブルターニュ、 プロヴァンス、 ロレーヌ

軽巡洋艦:グロワール、 モンカルム

駆逐艦:シャカル級 2隻、 ブーラスク級 6隻

で近場には同様の任務に当っている

戦艦:マレーヤ、 ヴァリアント

巡洋戦艦:レパルス

重巡洋艦:ヨーク

軽巡洋艦:アリシューザ

駆逐艦:L級 8隻

で構成されているイギリス北大西洋艦隊が存在している為、ユトランドで(自分達の視点で)無様に沈んだ日本製戦艦2隻を主力とする
オランダ海軍など楽に勝てると皆が思っていたのだ。

「ではそろそろ朝食と行こうか・・・。」

カステックス大将が当直要員以外の司令部要員を引き連れて士官食堂へ向かおうとしたその時

「報告、我が方の正面・・距離30000にオランダ駆逐艦出現。更に後方に戦艦及び巡洋艦を確認。」

見張り員の絶叫が響き、カステックス大将たちが双眼鏡で確認すると、そこには猛烈な勢いで突撃してくるオランダ艦隊の姿があった。



                「日米露三国同盟外伝01 アムステルダム作戦」 中編


1940年1月21日07:10 アムステルダム沖 オランダ本国艦隊


「提督、フランス艦隊は緩みきっている様ですぞ。」

「よろしい、ならば教育してやろう。」

オランダ本国艦隊旗艦ウィレム3世の艦橋で参謀長と海軍総司令官フルストナー大将(艦隊司令兼任)が呆れた表情でフランス艦隊を見ながら
呟いた。この距離から見てもフランス艦隊の士気は弛緩している。それは陣形の乱れから見ても明らかであった。

595: ライスイン :2021/11/03(水) 17:49:08 HOST:g133-247-64-052.scn-net.ne.jp
「主砲、有効射程に入りました。」

見張り員から敵艦が主砲の有効射程に入ったことが伝えられる。艦長は素早く砲術長に命じて主砲弾を装填させ、同時に狙いを付ける。

「攻撃開始、撃てぇっ!!」

フルストナー大将の命令が下り、ウィレム3世とゼーゴイセンから計24発の36㎝砲弾が放たれる。そして、

「フランス軽巡撃沈っ」

放たれた砲弾の内2発が駆逐艦を率いて突撃を行おうとしたグロワールに命中し瞬時に轟沈させた。

「幸先が良いぞ。よしっ、水雷戦隊を突入させろ。巡洋艦も突入を援護、戦艦の護衛は不要だ。」

勢いを得たと判断したフルストナー大将は水雷戦隊に突入を命令。同時に2隻の軽巡洋艦もその援護に投入した。

「ファン・スペイク以下水雷戦隊が魚雷を発射しました。」

フランス艦隊へ接近した雷装巡洋艦ファン・スペイクとカレンブルク級駆逐艦6隻から計69本の魚雷が放たれた。無論フランス艦隊も妨害行動には
出ていたが2隻の軽巡洋艦(元米オマハ級)による砲撃で阻止に失敗していた。それから数十秒後、フランス艦隊で複数の炸裂音が木霊した。


1940年1月21日08:00 アムステルダム沖 フランス海軍


「おのれぇ・・・オランダ人共め。」

軽巡洋艦モンカルムの艦橋で負傷し片腕を吊った状態のカステックス大将は指揮を執りながらも怒り狂っていた。」
オランダ艦隊との1時間にも満たない戦闘で小型巡洋艦(ファン・スペイク)と駆逐艦2隻を撃沈し、軽巡洋艦1隻と
大破、戦艦1隻を中破させるという戦果を挙げていた。しかしその代償として戦艦ブルターニュとロレーヌが撃沈。プロヴァンスも
大破し、今雷撃処分を行った所だった。

「これ以上の戦闘は不可能だ。本国とイギリス艦隊に連絡次第撤退する。」

カステックス大将は撤退を指示。通信を本国とイギリス北大西洋艦隊に送ると残存艦を率いて撤退を開始した。


1940年1月21日08:10 アムステルダム沖 オランダ本国艦隊


「なんとかやりましたな。」

疲れ切った感じで参謀長がフルストナー大将に話しかけるがその表情は明るい。何せ規模で上回るフランス艦隊を損害を出しながらも撃退。
しかも戦艦3隻を葬っていたからだ。もっとも代償もおおきかったが。

「宜しい、港に打電しろ。内容は”風車は回る”だ。我等はこれよりイギリス艦隊へ向けて突撃する。」

フルストナー大将はアムステルダム港へ向けて暗号文を打たせるとイギリス艦隊のいる方向へ向けて艦隊を進めさせた。

596: ライスイン :2021/11/03(水) 17:49:45 HOST:g133-247-64-052.scn-net.ne.jp
1940年1月21日08:20 アムステルダム港


「フルストナー大将より入電、”風車は回る”です。」

「了解した。では陛下、出発します。」

「わかりました。」

フルストナー大将からの報告電を受診した潜水艦ユトレヒトでは艦長(司令官兼任)がヴィリヘルミナ女王や政府首脳部に出発することを報告した。
そして護衛のマッケレル級潜水艦2隻(※1)と共に出港した。計画ではアイスランド経由でアメリカ本土を経由してグアムそしてバタビア
というルートであったが急遽変更された。もっとも欺瞞の為に当初の作戦計画書は海軍省にそのまま残され、変更内容を知る者は極めて少なかった。

「先方からの連絡はどうだ。」

「すでに指定の場所に到着しているとの事です。」

ディルク首相が艦長に”先方”からの連絡は如何なっているのか尋ね、艦長は所定の場所に到着済みと連絡があった事を伝える。
その先方とやらがどの様な存在なのかは極一部の人間しか知らなかった様で皆が首をかしげていた。

「わかった、海軍が時間を稼いでいる間に何としても到着するのだ。」


1940年1月21日12:00 アムステルダム南方 ドイツ陸軍第7装甲師団


「閣下、我が方の損害は想定をはるかに上回っています。」

「そうか・・・、それにしても何なのだこのオランダ兵共は。何故ここまで頑強に抵抗する。」

参謀長より被害の報告を受けた師団長ロンメル少将は愕然としていた。
自分達が到着した時にはベルギー軍は司令官が戦死して壊走中で、勢いに乗るオランダ軍とそのまま戦闘する羽目になってしまった。
数は少なくベルギー軍との戦闘で消耗していたがそれでもオランダ軍は果敢に戦いを挑んできた。

「死者は少ないものの負傷者が多すぎます。加えて燃料弾薬の消費が激しい為、補給を受けなければ主戦線に移動できません。」

それでもドイツ軍は勝利しオランダ軍を撤退に追い込んだが前述のとおり損害が多く、師団は一時的に戦闘力を失っていた。

「ボック元帥に状況を報告してくれ、それと補給部隊の手配も急ぐんだ。」

戦いは未だ続いていた。


※1:ユトレヒト購入時に護衛用として購入していた。


おまけ  オランダ女王・政府首脳部脱出船団

○潜水艦ユトレヒト(女王、政府首脳部搭乗)・・・米アルゴノート級2番艦を購入の上、緊急時の脱出用に改装して配備していた。

○マッケレル級潜水艦 マッケレル、 マーリン(ユトレヒトの護衛)

597: ライスイン :2021/11/03(水) 17:51:27 HOST:g133-247-64-052.scn-net.ne.jp
以上になります。掲載すよろしくお願いします。

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最終更新:2025年04月11日 14:38