648: 弥次郎 :2021/11/12(金) 22:52:57 HOST:softbank126066071234.bbtec.net

憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「新時代の敵」前編



  • C.E.世界 融合惑星 β世界 日本列島 帝都東京


 クーデターや突如として現れた「BETA以外の外敵」との戦闘の被害からの復興が進む帝都東京。
 戦災の色は未だに濃く残っており、むしろ、無事なところを数えたほうが速い状況であった。
 地球連合や他国からの援助が処々の事情に伴って乏しくなっている関係上、その復興というのはどうしても大日本帝国の自力によるところが大きかったのだ。
 無論、口さがないものは連合や他国をなじるものもいたのであるが、それは所詮はないものねだりに過ぎなかった。
 連合は他の地域での新たな動きに戦力を割かざるを得ない状況。
 β世界内部では、アメリカが他の世界からやってきた勢力に世界を売り渡すような真似をしていたことが発覚し、国際情勢は大わらわ。
そんな状況ではどの国も互いを頼りにするよりも、自らの力で一定のところまで回復することを強いられていたのだった。
 そして、そんな中で融合惑星の他の世界からもたらされた報告は、現在復興に力を注いでいたβ世界の多くを震撼させることとなっていたのであった。


  • 帝都東京 某所


 将軍を筆頭に五摂家ら武家、政界の有力者、さらには軍部まで交えた帝国の最重要会議。
 これほどまでの面々が集められたのは、それだけの事態がこの融合惑星において発生したためだ。
 それは、γ世界(パトレイバー世界)に派遣されていた篁唯依大尉からの緊急の報告。
 即ち、BETAを基に生み出されたB.O.W.を用いた無差別テロの発生とその顛末についての報告だった。
 ここにいる面々は、いずれもBETAとの戦いを直近まで行っていた国の重鎮だ。BETAの脅威については敏感であった。
さらに言えば、ユーコン襲撃、いやさ、もはやユーコン紛争ともいうべき規模だった事件はテロリストにより引き起こされたのだ。
そんな背景がある状態だから、どうしても関心は集まり、忙しい中でもプライオリティーを優先してしまうこととなったのだった。
 まだ出席者たちがそろっておらず、会議の開始は告げられていない。そんな中でも、緊張感はすでに本番のそれだ。

 そして、それを興味深く眺めているのは、オブザーバーとしてこの場に呼ばれた妙齢の女性だった。
 独特の、巫女服のような、あるいは改造されたモダンな和服を身にまとい、どこか現世離れした空気を纏っている。
というか、この場にあってくつろいでおり、時折隣の男性と楽しげに小声で会話を交わしているのだ。
その男性---大日本帝国政威大将軍煌武院悠陽の剣術指南役にして連合とのつなぎ役---の一目連の方は彼女の緊張感のなさに少々苦慮していた。
 決してその女性が場を乱しているというわけではないのだが、彼女の出自なども相まって、中々に注目を浴びているのだ。
彼女がこうしてこの帝国の公式の場に出るのは初めてではない。とはいえ、話などでは聞いていても直接会うのは初めてという人間もいるのだ。

(彼女が嫌がっていないというならば…まあ、構わないだろうな)

 そう思い、隣の席の彼女---霧の強襲海域制圧艦のメンタルモデルのアカギ「提督」の方を見やった。
 β世界にアカギがバーサク・スティンガーの眷属の捜索の命を帯びて訪れたのは、ほんの少し前のことだ。
 各世界に派遣される提督の一人として地位と権限を有した彼女は、地球連合の紹介もあってこのβ世界にスムーズに入国することができた。
元々β世界はほぼ全世界に連合の戦力が派遣され、BETAの駆逐や戦災からの復興などを行っているため、受け入れるだけの土壌は存在していた。
それだからこそ、δ世界の転移に巻き込まれた霧のメンタルモデルたちが連合の籍を持ってはいることは容易かった。

 一方で、彼女らも「霧」という一つの勢力である以上、他の世界との交流や交渉などを持たねばならなかった。
故にこそ、表立って行動するグループと、アンダーカバーとして入り込む二手に分かれることになったのだ。
そして、アカギはその地位などから表の立場をもって堂々とβ世界大日本帝国に入ることとなったのである。

649: 弥次郎 :2021/11/12(金) 22:53:41 HOST:softbank126066071234.bbtec.net

 とはいえ、β世界これまで連合に属する異種族をある程度見てきたとはいえ、直接的な人外を、生み出された種族を見るのは初めてだった。
外面はほぼ完ぺきに人間。しかし、それは外面のみであり、その実態はナノマテリアルの集合体であり、本体はコアという異形だ。
なまじっか人間に近いどころかそのものであるために、その正体を明かしたときには大いに混乱が起きた。
そんな反応も面白い、などとアカギは笑っていたのだが、付き添っていた一目連としてはあんまり笑えなかった。
愉快であることは理解したのであるが、それとこれとは別だ。

(本人の順応能力が高くて何よりであるな……それより)

 周囲からの視線を楽しんでいるアカギとは別で、一目連は手元の資料に目を落とす。
 内容としてはすでに閲覧済みであるのだが、改めて目を通すと大惨事であったのだなとつくづく思う。

(廃棄物13号事件、か)

 それは、この融合惑星においてγ世界と呼称される、いわゆる「パトレイバー世界」において発生した一連のバイオテロだ。
 それも、β世界からもたらされた研究用のBETAの細胞と、劇場版で登場したニシワキセルを混ぜて生み出されたという、なんとも「らしい」B.O.W.が使われたらしい。
正確に言えば、管理から抜け出したB.O.W.が活動をはじめ、それにより事件が引き起こされ、大捕り物にまで発展したという。
 原作を知らされている一目連からすれば、クロスオーバーものでありがちだな、と独り言ちたものだ。
βブリットというものを知っている身としては、BETAを基にしたB.O.W.が生み出されるのはあり得ないことではないと思う。
それに、パトレイバーの劇場版ではニシワキセルから生み出された怪獣が暴れ、レイバーにより鎮圧されるという顛末が描かれた。
だが、それらが混じって連合の正規の駐留部隊が動き、島を一つ消し飛ばす事態に発展するとは驚きを隠せない。
思わぬ化学反応が、想定以上の事態を引き起こす。分かってはいても、なかなかに想像を超えてくるものが多い。
例としてはバーサク・スティンガー。あるいはこの世界でのギャラクシー船団とアマルガムの暗躍だが良い例だろう。

 そして、この会議の場は、その廃棄物13号事件についての報告と注意喚起を行うために招集されたのだ。
 アカギが参加しているのも鎮圧に参加した霧の艦隊の一人であることに由来し、一目連もまた連合から代表して参加している。
それぞれの立場と得ている情報を提供するという役目を負っていることなどから、こうして席が並んでいるというわけである。

「考え事は終わったかしら、一目連さん?」
「……ええ、一応のところは。この後のことを考えるとだいぶ動きがありそうです。
 バイオテロというのは、単なるテロなどよりもなおのこと達が悪いものですから」
「そうなのね。
 それにしても、人間っていつも何か考えているわよね。ここにいる人たちもそろって同じような顔をしているもの」

 そんな発言をさらりとする当たり、流石霧の艦艇と妙に納得してしまう。
 一応人との付き合いというか、コミュニケーションについて学んでいるはずであるが、それが逆に「霧」と「人類」の意識の差を浮き彫りにしたか。
 まあ、実際に顔を並べてみると一様に同じような表情だ。

「ですがメンタルモデルでも、演算に集中しているときの表情は似たり寄ったりでは?」
「あら、そうなの?意識したことがなかったわ…」

 ペタペタと自分の顔に触れるアカギは、やがて納得したようにつぶやく。

「メンタルモデルもそこは人間に似ているのね」
「案外、人間とメンタルモデルの差はないのでしょう」
「そうねぇ……自分たちが自然に生まれた、なんて思わないけど……誰がどうしてこう生み出したのかしら?
 と、始まるみたいね」

 アカギが「霧」の根底に関わるところに触れたところで、会議がいよいよ始まる。
 議題はわかっている。だが、ここからそういったテロにどう対応するのかという問題が話し合われることになる。
今後の大日本帝国の安全保障という問題を話し合うのだ、おそらく、白熱したものとなるだろう。
国家を揺るがすクーデターを乗り越えた愛弟子が、政治という戦いの場でどう振舞うか、一目連は興味深く見守ることとしたのだった。

650: 弥次郎 :2021/11/12(金) 22:54:33 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。
後編に続きます。場合によっては3つになるかもですが。

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最終更新:2021年11月15日 11:39