726: モントゴメリー :2021/11/10(水) 20:29:54 HOST:116-64-111-22.rev.home.ne.jp
FFR社会の情景③ ——淡水化技術——
フランス連邦共和国(以下、FFR)の衛生観念が世界最高水準であることは以前述べた。
それに必要な水資源を海水の淡水化で賄っていることも。
淡水化の方法には、初期では「蒸発法」を採用している。
これは文字通り海水を蒸発させてその水蒸気から真水を精製する方法である。
しかし、これは単純で技術的障害も少ないがエネルギーを大量に消費するという欠点がある。
「暗黒の30年」の夜の中、アルジェリア地域で油田が発見されるまでは自前の石油資源を持たなかったFFRには荷が重かった。
そのため大規模な精製は不可能であり、半ば技術維持と発展のために細々と行われるに過ぎなかった。
この時期に代替案として浸透したアルコール消毒の習慣は21世紀現在でもFFRで健在である。
また、同時に進められた水資源の再利用技術と節水技術は後のアフリカ州緑地化や宇宙開発で大いに活躍することになるが、それについては別に語る機会があるであろう。
そして暗黒の30年が終わり、「暁の20年」と呼ばれる高度経済成長期を迎えた結果。
人口も工業生産量も加速度的に増加していきそれに比例して水資源を需要も高まっていった。
FFR政府はここに淡水化事業の拡大を決定、実行していくことになる。
長年の継続研究の結果、この時代には精製方法も進歩していた。
具体的には「逆浸透法」と呼ばれる方式である。
これは逆浸透膜というフィルターに海水を通して真水を精製する方法である。
蒸発法と異なり海水を加熱する必要がないのでそれほど多くのエネルギーは必要とされない画期的な方法であった。
政府はこの逆浸透法式プラントを各地(特に北アフリカ地域)に建設していったが、ここで問題が発生した。
727: モントゴメリー :2021/11/10(水) 20:30:37 HOST:116-64-111-22.rev.home.ne.jp
問題点は主に2つである。
逆浸透法では得ようとする淡水の塩分濃度が低いほど高い圧力をかけて濾過する必要がある。
この圧力を生み出すための動力がプラント運営コストの約半数を占めるのである。
(それでも蒸発法と比較するとかなり効率的なのであるが)
もう一つは逆浸透法に限らず海水淡水化の過程で必ず発生する排水の処理である。
この排水は高濃度塩水であり、そのまま海に流すと周辺の塩分濃度が上昇してしまう。
さらに排水は温度も高く、酸素濃度も低いためプラント周辺海域の生態系は大打撃を受けることになる。
これまではごく小規模での精製であったため取り上げられてこなかったが、これは水産資源への影響という点から見過ごせる問題ではなかった。
それどころか近隣諸国から「これは新手の戦略攻撃であるのか?」と皮肉半分(半分は本気)の苦言が呈されたため早急に解決しなければならなかった。
難題ではあったが、FFR技術陣は解決策を導きだした。
下水を膜で処理する過程で発生する排水(下水RO 濃縮水)を、海水を逆浸透膜で処理する工程に混合するのである。
これにより排水の塩分濃度を、海水同様のレベルに抑えることが可能となった。
さらに、必要な圧力も半分程度になったため動力コストも抑制することに成功した。
下水という人間が生活していく限り枯渇する事のない「資源」を見事に活用してみせたのである。
無論、下水を使用したことにより膜の劣化速度が速まるなど各種弊害も発生した。
しかし、殺菌方法の発明や膜の製造技術などの発展により解決されることになる。
こうした努力の結果、21世紀を迎える頃にはFFRの海水淡水化技術は世界最高水準となる。
必要となるコストは初期蒸発法の1割程度となり、河川水の浄水場と変わらない程にまで抑制された。
こうして安価に提供される水がアフリカ州の、引いてはFFR全体の開発・発展を促進しているのである。
728: モントゴメリー :2021/11/10(水) 20:31:08 HOST:116-64-111-22.rev.home.ne.jp
以上です。
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昨日あたり大陸スレで海水淡水化の話題が出たので予定を急遽変更いたしました。
即興品なので短いですがご容赦を。
アフリカの砂漠を楽土とするのは、安価で安全な淡水化プラントが多数必要なのです。
(あと入浴や手洗いにも)
最終更新:2021年11月15日 12:37