126: 弥次郎 :2021/12/03(金) 19:52:33 HOST:softbank126066071234.bbtec.net

日本大陸SS 漆黒アメリカルート「暗闇の銃撃 -Shoot in Darkness-」

 マンハンター。あるいは人さらい、人狩り、スナッチャー。
 アメリカ合衆国における「労働者」「人的資源」の源泉を担う彼らは、国家規模で後援を受ける一大産業界を構築していた。
合衆国における戦争経済、その歯車であり資源であり投資対象であるそれは、決して欠かすことのできないものだからだ。
現代でいうところの消費財にして、便利な道具。それが、アメリカ合衆国にとって極めて伝統的なものだというのは言うまでもない。
アメリカという国家が誕生し成長する過程において国家の遺伝子にプログラムされた、極めて自然な行動だったのだから。
アメリカ合衆国の経済、すなわち戦争経済を循環させることに何の疑問も抱かなかったのだ。

 だが、その消耗や消費は早い。当然だ。人としてまともに扱わないのだから、劣化が早いのも当然。
 そうなれば補填が必要ということで、アフリカ、北米(カナダ、米連、スペイン、加州)、さらには中国大陸から次々と人材を連れてくるのであるが、それは当然法に触れる。
元より、人の意思に反して他国から人間を合衆国に連れてくるのは拉致であり、国家に対する主権侵害である。
それを国家規模で平然と行っているという時点ですでにその国家の品格は落ちているも同然だが、合衆国は一切気にしていなかった。

 さて、そのマンハンター達であるが、彼らの装備というのは独特のものが多かった。
 その中で最たるものは相手を生かして捕獲するというのがかなり重視されるのである。
 これがまた、難しい。抵抗することもある相手を無力化するのは骨が折れる。むしろ殺してしまうよりも難しいと言える。
急所に弾丸を一発撃ち込めば殺せるが、それをやってしまっては商品の価値が落ちてしまうというのだし。
 だが、そんな都合よく相手を弱らせるというのは存在しなかったりする。まあ、ここら辺は実験を繰り返す中で非殺傷弾を生み出すのだが、これはのちの話。

 そして、マンハンター達が求めた能力の一つが静音性であった。
 時に隠密行動を行って拉致や誘拐を行う必要があるマンハンター達にとっては己の存在を隠すことは特に重要なことであった。
それ故に、一般に使われている銃を何の気なしに発砲してしまうことは、自己の存在を大きくアピールしてしまうことにつながる。
元々火薬の爆発という、音と衝撃がどうしても発生するものだからこそ、

 だが、だからと言って銃を使うなというのは酷な要求である。
 マンハンター達の天敵の一つである犬を無力化するのにノコノコ近づいたら感知されて警戒されてしまうわけであるから、遠距離から殺傷するのが望ましい。
犬でなくとも、歩哨に立つ警備員や兵士なども天敵だ。常に複数名で見回る彼らを排除するか回避しなくては仕事ができなくなる。
しかれども、銃を使えば音を立ててしまい、これまた警戒されるか音を頼りに追跡され、あるいは増援を呼ばれるという二律背反状態。
これの解消はマンハンター達の努力では補いきれない。その判断から、メーカーへとその要望は伝えられることとなったのである。

 要求を出された各種メーカーは頭を悩ませた。
 遠距離から相手を殺傷乃至無力化できる。
 音を極力立てない。
 おまけに、携行性も良くしなければならない。
 こんな無茶苦茶な要求を満たすことのできる武器など存在するのだろうかと、匙を投げるメーカーもいたほどだ。
 だが、彼らとて矜持がある。銃火器だけでなく、あらゆる武器の方向性を探った。

 まずは投げナイフや投石器というのがあがった。ナイフやそこら辺に落ちている手ごろな石ころを飛ばし、殺傷するというもの。
 しかし、これは却下された。扱いが難しく習熟しにくく、それでいて射程は短すぎる、そういった欠陥があらわになったのだ。
というか、そのくらいは試したというのがマンハンター達の声であった。

 ついで候補となったのは短弓。携行性に優れた小さな弓と矢を用いて標的を射抜く、というものである。
 こちらはまあまあ評価を受けた。音も小さい、小ささゆえに携行性も優れる、射程もあるなどだ。
 しかし、扱いに慣れるまで時間がかかること癖が伴うというのがあり及第ではあっても大歓迎とはいかなかった。
評価はされたが、もう一声欲しい、というのである。

127: 弥次郎 :2021/12/03(金) 19:53:59 HOST:softbank126066071234.bbtec.net

 そして、二つの武器が候補として挙げられた。
 クロスボウ。そして、空気銃であった。

 まずはクロスボウ。弓と銃の中間のような、板バネの力で太く短い矢を発射する飛び道具だ。
 殺傷力がありすぎて、金銭(と書いて騎士道と読ませる)的な観点からキリスト教徒相手に使用することが禁止されたこともあるという歴史ある武器。
 この武器、実のところマンハンター達の要求にピタリと合致していた。
 まずは静音性。これに関しては言うまでもなく静かだ。完全に0ではないものの、銃よりもはるかに小さい。
 ついで、射程。狩猟用のモノでも大体50mほどはあてやすい。たかが50mと侮るなかれ、案外50mという距離は絶大だ。
 そして習得のしやすさがある。これは銃に近い感覚で扱えることに加え、火薬銃にある反動が少ないことなども理由として挙げられる。
無論一発ずつしか装填できず、連射もしにくいという欠点はあった。然れども、それらを補ってしまえるだけの利点が存在していたのだ。
後にハンドピストルボウという50センチほどまで縮めたものも開発され、携行性に優れたものとして重宝されることとなった。

 隠密行動用と割り切られたそれは、静かに、しかし確実に猛威を振るうことになった。
 マンハントに投じられたそれは、求められた通りの能力を発揮したためである。
 難点としてはライフル銃並みに目立つことであったが、威力と射程を犠牲に小型化したものも開発されたことでカバーされた。
片手で使える静音性の射撃武器。単発であろうとも、撃てる撃てないの差は大きい。これらにより、警備兵やその手の番犬の被害は拡大したのである。
無論のこと、人間ならば衣服や防寒着などで防御することも可能であった。だが、それでも負傷して動きが制限されることは確かだ。

 さらにマンハンター達にとってありがたかったのは、その多目的性にあった。
 意外なことかもしれないが、史実におけるWW1における塹壕戦でこの手のクロスボウは大活躍した。
 そう、矢を放つだけではなく、手榴弾などを発射も可能な擲弾発射装置なのがこのクロスボウの特徴だったのだ。
人が投げるよりも遠距離に擲弾が投てきできるというのは、塹壕で対峙して銃撃だけでは解決できない状況で優位に働いたのだ。
これらを応用し、例えばであるが火種を飛ばす、石ころなどを代わりに発射して物音を立てる、紐を括り付けた矢を飛ばすなどして活用できた。

 さらにこれと同じく重宝されたのが空気銃であった。
 空気銃とは、その名の通り、空気を圧縮し、これを用いて弾丸を飛ばす銃である。
 当時のアメリカにおいてはマーカム・チャレンジャーというものが存在していたのだ。
 有効射程はライフル銃サイズならば何と100m前後。小型化すれば相応に射程と威力は落ちるが、それでも有効射程で優れていた。
それこそ、専用のスコープや照準器などを付けた狙撃仕様が開発され、運用されるようになるほどには。

 無論、ボウガンと比べて欠点もあった。
 空気銃は圧縮した空気もしくは空気を圧縮するという行程が必須となる。
 ジランドーニ空気銃を例にとれば、銃に備え付けられるエアータンクは20~30発ほどセミオートで撃てるだけ空気が詰められている。
しかし、当時の工業精度や工業能力の限界から、故障や空気漏れが発生しやすく打ち切れば再度の充填が必要であったのである。
勿論、その場で空気を圧縮するポンプ式というものもあるが、ボウガンと異なり一度故障したら修繕が難しいという欠点が伴うのは避けえないものであった。
時として荒い扱いもしなければならないのに、衝撃や振動一つで使えなくなっては元も子もないのであるわけであるし。

128: 弥次郎 :2021/12/03(金) 19:54:29 HOST:softbank126066071234.bbtec.net

 さらに、この空気銃はその低コストさなどから銃に慣れるために行われる「人間」の実戦訓練にも転用されることとなった。
史実においては、アメリカやイギリスで新兵の訓練に使われたという過去を持つ空気銃であるが、それの先取りといえるべきものであった。
何しろ、実際に撃てて、暴発のリスクが少なく、おまけに安いというものだから、訓練する側としてはありがたい限りだった。
威力が低いことや発泡炎や発砲音という実際の銃で当然の物がないにしても、それらは補えるだけの価値があった。

 勿論、これらに晒される側も、黙って被害を受けるだけではなかった。
 急所となる箇所を守るボディアーマーや頭を守るヘルメットの開発などの対策を進めた。
あるいは闇夜に紛れにくくするために街灯を整備する、砂利を地面に敷き詰めて足音を大きくするなど警備体制を強化していった。
あるいは、その手のマンハンターが用いる武器を研究し、取り込むことによって自分たちの力を高めようとする動きもあった。
 これはある種の鼬ごっこであったことは言うまでもない。襲う側と守る側の、知恵と根気比べ。
 史実を先取りした、この世界線特有にして特異的な戦いは、斯くして始まったのである。








《アメリカ合衆国 クロスボウ設定》

FA-12 クロスボウ「ナイトホーク」

全長:94センチ
装弾:1発
装填方式:コンパウンド
ポンド数:150ポンド
射程:およそ70m(有効射程はおよそ45m)
製造:アメリカ合衆国 フランケル・アームズ
照準器:オープンサイトもしくはピープサイト、光学スコープ

概要:
 アメリカ合衆国の銃器メーカー「フランケル・アームズ」が開発・販売したクロスボウ。
 マンハンター及び正規軍の両方をターゲットととした、多目的な投射機として開発されている。
 これまでのフランケル・アームズのクロスボウは民間向けと軍向けとで違うモデルを開発していた。
しかし、需要の差異が目立ち始めたことや部品の互換性などの問題、製造ラインでの融通が利かなかったことなどを問題視し、これの解消を試みた。
基本的な構造としては民間向け(マンハンター向け)であるが、必要に応じてオプションパーツと交換することで軍の求める方向へと手軽に変更できる。
即ち、矢のほかにも手りゅう弾などを飛ばすための多目的な投射装置として使えるようになっている。
その為、いわゆる簡易ながらも擲弾発射用の照準器や光学レンズを用いたスコープなどがオプションとして用意されている。
この拡張性の高さは高く評価され、以降のクロスボウに多大な影響を与えることとなった。


FA-117 ハンドピストルボウ「ナイトビー」

全長:54センチ
装弾:1発
ポンド数:75ポンド
有効射程:およそ15m前後
製造:アメリカ合衆国 フランケル・アームズ
照準器:オープンサイト

概要:
 アメリカ合衆国の銃器メーカー「フランケル・アームズ」が開発・販売したクロスボウ。
 こちらは携行性などを重点においた、セカンドウェポン的な意味合いが強いハンドピストルボウというものである。
 最大射程は50mにおよばず、有効射程は20m行けばよい方という、音のない単発拳銃といえるかもしれない。
しかし、室内や近距離にならざるを得ない状況においては、空気銃や通常のボウガンを凌ぐ実用性を発揮した。

129: 弥次郎 :2021/12/03(金) 19:55:48 HOST:softbank126066071234.bbtec.net

以上、wiki転載はご自由に。
こちらに差し替えていただければなと思います。

空気銃が以前議論に出ていたのにすっかり忘れていました…
反省のため、ちょっとトゥ!ヘァ!氏と一緒に的になってきます。

ジランドーニ小銃、マジで音が小さいです
参考動画はこちらに。6:40くらいから発砲するのですが、ん?ってなる程度の音しかしません。
ttps://www.youtube.com/watch?v=_RsW5yWEsi0

ちなみにこの空気銃、江戸時代に日本にもたらされています。
ところが音が小さすぎるので「暗殺に使われるじゃん!」ということで禁止に。
よって我が国には20丁程度しか残っていないそうです。

米合が日干しされた後に、資源カッツカツの状態で本土決戦になったら空気銃も実践投入されそうだなって思います
音がしないことは脅威ですが、それが武器になるとは限らないので…まあ、効果はお察しですが

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最終更新:2021年12月13日 23:44