50: 弥次郎 :2021/12/23(木) 00:00:27 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「天翔ける剣」
G弾による幾多の並行世界の融合は、並列的であり、複列的であるというのが連合の見解である。
即ち、並行する世界が混じり合うことで融合惑星が誕生しただけでなく、過去現在未来という連結する部分でもごちゃごちゃになった、ということである。
具体的なところで言えば、β世界においては主観1998年の衛士(兼元教官)と主観2006年「バビロン作戦」後の衛士が客観1999年に存在するのだ。
これらに類似したケースは大日本帝国に限らずβ世界各地において多数発生しており、死者や行方不明者が見つかるといった事例が多数発生した。
中には死を覚悟した、あるいは死んだと思われた人間が復活するという事象も起きていたことをここに記する。
この現象がβ世界に特有の事象として発生しているのは、やはりG弾が使われた世界であり、その影響と推測されている。
これらは各国にとってはありがたくもあり、他方面倒な事態であった。
楽観的に言えば、死んだと思われた人間が生きていたというのは、すなわち人類の戦力の増強につながる。
衛士に限った話ではなく、人類が刻一刻とすり減らされていく中においてプラスとなる要素というのは歓迎するしかないのだ。
悲観的に言うと、新たな人間が急に湧いて出てきたわけで、その分だけリソースを割かれることになったということだった。
余剰をすり減らしつつある国家にとって、急な人口増加、それこそ降ってわいた人口を養うのは一苦労だ。
場合によっては主観1983年という、かなり過去から飛ばされてきた人間もおり、状況説明やその人間の帰属といった問題も付きまとったのだ。
さて、β世界においてその過去や未来、並行世界から人々などが現れたのはそういう現象だとしよう。
果たしてその手の現象に巻き込まれたのが人間だけだったなどという、そんな都合の良い出来事であっただろうか?
言うまでもないことである。答えは否、である。
即ち、並行世界あるいは主観時間の異なる世界のBETAもまた、同じような現象により融合惑星上に出現したのである。
ここまでが前提条件となるならば、BETAの習性を踏まえれば言わんとすることは明らかであろう。
即ち、融合惑星誕生後、BETAはハイヴ内などにそれまで以上の個体を収容することとなった。
そして、ハイヴが抱えるBETAの数が一定以上に膨れ上がった場合、BETAのとる行動は一つである。
簡潔に言えば、余剰スペースを求めて集団で侵攻を開始。そして新たなハイヴの構築を目指す、というわけである。
ついでに言えば、それ即ち人類の生存地域に対する侵攻となるわけであり、その数は並行世界から飛んできた分を合わせ空前絶後と言っていい量である。
その最前線となったのは、β世界における領域で大きく分けて5か所だった。
欧州唯一の人類生存圏であるイギリス、未だに極東で持ちこたえるソ連、そして半分が占拠されて踏ん張る日本列島。おまけにアフリカ北岸と東南アジア方面である。
如何に人類側に戦力が、人口が増えたと言え、BETAの物量と比較すれば雀の涙としか形容できない。
そのままであるならば、これまで人類が構築してきた防衛線は紙の如く突き破られたことであろう。
そして、人類は決定的なまでの敗北を喫してしまったことに違いない。
そう、そのままであるならば、だ。
あいにくとして、ここは融合惑星。
この惑星が敵対的な異星人---殊更侵略を行ってくるような場合にはその総力を挙げて抵抗する勢力の存在する宇宙だ。
そして、その勢力である地球連合は、BETA程度で苦戦するような生半可な経験と実力しかない、弱小な存在ではなかった。
51: 弥次郎 :2021/12/23(木) 00:01:11 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
- C.E.世界 融合惑星 β世界 日本列島近海 AF「トヨアシハラ」内部ネクスト用ガレージ(β世界主観時間1999年)
大洋連合の企業「ムラクモミレニアム」に属するリンクス「タケミカヅチ」はアセンの完了した愛機の前で最後の調整などを行っていた。
ブリーフィングは完了してあとは乗り込んで出撃となるのだが、如何せん最終調整やコンディションチェックに余念がないのだ。
高級戦力であるネクストは確かに強い。だが、その性能や能力に比例し、調整や準備に時間がかかるというもの。
それこそ、軽量二脚で機動力を売りとする「フツノミタマ」らしからぬ重武装をした分だけ、そういった準備を行う箇所は飛躍的に拡大しているのだ。
何しろ、そこに壊れる要因が存在するならば、いつか必ずそこは壊れるものだから。
そして、整備箇所などが増えていけば、チェックや整備がいつか追いつかなくなり、不具合が発生しかねない。
確率論になってくるが、それが致命的になる可能性は十分にあり、起こりうることなのだ。だから、未だに準備中というわけである。
「……もどかしいな」
「そうはいっても、こちらもタケミさんを不十分な機体で放り込むわけにはいきませんから」
戦闘前メディカルケアを行うコメディカルスタッフの心外だという言葉に、タケミカヅチは肩をすくめるだけだった。
確かに高級戦力として大切に扱ってもらっているのはありがたいことだ。だが、そこまで過保護すぎるのも、タケミカヅチにとってはむず痒い。
もうちょっとざっくばらんでもいいと思うのだ。それこそ、使い倒してくらいでちょうどいいのだ。具体的に言えばELS戦役の時くらいに。
「それにしても、これでよかったんです?これでも結構負荷がかかりますし、タケミさんのスタイルに合っていないような気がしますよ?」
「素敵性能がな」
「はぁ?」
「いや、気にしないでくれ。ともあれ、こういう場だからこそ、派手な機体で暴れたほうがPRになるというわけだ」
素敵性能。言うまでもなく、外観の美しさ……という言葉だけでは表しきれないスペックだ。
「その時、君は美しい」と言われるような、そんなスペックを発揮するには、相応のアセンと腕前が必要となる。
そして、この窮地において派手な活躍を見せれば地球連合への心証も良くなる、というわけである。なればこそ、目立たなくてはならない。
「まあ、確かにこの世界の人たちから仕事をもらうには、それが一番必要でしょうけど……」
「だからこそ、前線に自ら赴いて鼓舞する必要がある」
すでに帝国軍および斯衛軍は展開して戦線を構築。短い時間でも可能な限りの準備を行い、戦端を開いている。
だが、入ってくる情報では圧倒的な物量に対して、事前の準備が足りていないという不安がある状況だ。
無論、連合の正規戦力、すなわち帝国を担当する大洋連合を主力とする部隊も出張っているが、実力未知数の味方ほど不安なモノもないだろう。
帝国から見て、連合の実力はよくわかっていないのが現状だ。何しろ、まだまともにBETAと戦ったところを見せていないのだし。
「……と、終わったか?」
「お待たせしましたー!」
メカニック班の声を受け、タケミカヅチはコクピットへと向かう。
今回のフツノミタマは戦術の通り重武装だ。銃剣付きのライフルを二丁、背部には見た目にも優れるホーミングレーザーキャノンを二つ。
肩部には武装ハンガーを装着して、長期戦に備えたマガジンとその装填機構を搭載した状態。
その他フレームはそのままであるし、レーザーブレード内蔵の武器腕を採用している点も変更はない。
それでも、従来のアセンとはだいぶ違う戦いになることだろう。まあ、相手が圧倒的多数で広範囲にわたるのだから、ELS戦のようなアセンが望ましい。
ぶっちゃけた話、ELS戦のようなブレードとシールドで固めなかったのはそれがビジュアルで劣るからだ。
PRというのもお仕事と考えると、一々行動が制限されるな、とタケミカヅチは一人ごちる。
52: 弥次郎 :2021/12/23(木) 00:02:30 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
そんなことをしている間にも順調に準備は進むが、それは慎重を極めた。殊更に人間と機械を繋ぐ工程には注意が必要となる。
それこそ、接続した瞬間が一番危険だった。
実は起動していた機体制御用CPUからの大量の情報のフィードバックで脳が焼かれるという事故もごく最近発生したことだ。
その事故は機体のCPUをシャットダウンせず、あまつさえ演算処理をさせていたというチェックミスに生じたものであった。
当然というか、情報の多さにそのリンクスは廃人となり、そのまま一度肉体を捨てさせる羽目になったのも記憶に新しい。
そんなことでリンクスという戦力を失うわけにはいかないので、その手のスタッフも何度やってもこの瞬間ばかりは緊張の一瞬である。
「……よし、AMS接続」
「コンタクト確認。チェックリスト、定常クリア。非定常もクリア……」
「感度はどうです?」
「……問題ない」
「前回」、AC4の世界観でとどまっていた時に比べればはるかに楽な接続感覚だ。
あちらでも改良を重ねていたが、それでも体に走る嫌悪感のようなものは存在していた。それから見れば、なんと楽なことか。
そういえば、初期型AMSを師匠といえる一目連は使っていたのであったか。スペックで劣り、負荷も大きいそれを使いこなした実力と胆力には感心しかない。
自分は、自分たちは恵まれているのだと、素直に思うしかないのだ。
「ではこのまま機体接続を続行します。ご武運を」
「ああ、派手に暴れてくるとしよう」
チェックが終われば、コクピットブロックはフツノミタマのコアに格納されていく。
それに合わせるようにして徐々にタケミカヅチの体には自分の体と意識が拡張していく、特有の感覚が襲ってくる。
ネクストという巨体と合一化することで生じるフィードバック。あるいは、人の意識が人の体を超えて展張していく反応。
順々に、AMSを通じて機体の情報が脳内に流れ込んでくる。アセンが違えば入ってくる情報も違ってくる。
(ああ、たまらないなぁ……)
それらを脳内で捌きながらも、タケミカヅチは戦いに向けて気分が否応なく高まるのを感じていた。
ウォーモンガーというわけではない。だが、戦いは好きな部類だ。
それが戦闘前のカウンセリングや心的ストレスなどを軽減するための投薬、あるいは訓練による刷り込みによるものというのは否定できない。
そして最も大きなのは、転生を経てもなお闘争を求める意志だろう。魂が、身体が、それを求めてやまない。たかがゲームと侮るなかれ。
ずっと前、日企連世界より前の生において、「それ」に最初に触れた時から、ずっと「本気」だったのだから。
(ある意味、幸運だな)
ずっとずっと、戦いを求めていた。好きなように戦い、好きなように死ぬ。それがたった一つの冴えたやり方だった。
それを貫き続けることができるこの人生の、なんと素晴らしいことか。
『タケミカヅチ、戦果を期待します』
「ああ、もちろん」
ガレージからエレベーターで運ばれていく中で、最前線の情報がアップロードされてきたので、それらを一瞬で精査する。
数は地面が埋め尽くされるほど、というのが比喩でも何でもない。衛星からの映像でも大地が真っ黒に染まっているのがわかる。
つまり---状況は最高に仕上がっている、ということになる。ああ、口角が吊り上がってしまう。どうしようか。
やがて、機体はトヨアシハラの一角、機動兵器を射出するカタパルト内蔵の発進ゲートに到着した。
あいにくと露天甲板ではないが、確実かつ安全に射出されるにはうってつけた。
「こちら、タケミカヅチだ。フツノミタマ出るぞ!」
そして、次の瞬間、タケミカヅチという山猫(リンクス)は飛び立った。
目指すは戦いの場所へ、最前線へ。
翼を生やしたようにも見えるネクスト「フツノミタマ」は、一瞬の光の収束の後に、全てを置き去りにして。
53: 弥次郎 :2021/12/23(木) 00:03:22 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。
次回、舞い降りるつるg…ゲフン!
とりあえずイントロまでは完了。
次は唯衣姫視線ですかねぇ…
今回のタケミーのフツノミタマのアセンは以下の通りです。
フツノミタマ改乙型
R ARM:ソードライフル
L ARM:ソードライフル
ARM :実体剣型レーザーブレード/レーザーキャノン
R BACK:ホーミングレーザーキャノン
L BACK:ホーミングレーザーキャノン
SHOULDER UNIT:ハンガーユニット
ノブリス・オブリージュみたいな巨大な翼にも見えるレーザーキャノンをしょっています。
全体的なビジュアルはいい感じに堕天使やっていると思っていただければ…
素敵性能高めですね
最終更新:2025年08月23日 14:58