426: 弥次郎 :2021/12/28(火) 21:17:35 HOST:softbank126066071234.bbtec.net


憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「天翔ける剣」5




  • C.E.世界 融合惑星 β世界 日本列島 旧神奈川県西部 富士防衛ライン 上空

 介入を開始してからほどなく、タケミカヅチの戦闘は作業となった。
 衛星あるいは観測機、あるいはネクストのセンサーによる索敵により戦術機を発見し、駆けつけて事情説明とBETAの排除をする。これの繰り返しであるからだ。
何らかの変化が起こっているかと思ったが、所詮はBETAはBETAにすぎず、苦戦する相手など存在しなかったのだ。
光線級にしても集中砲火を受けようがPAを貫通するには至らず、そもそもBETAの挙動がネクストに追いつけないこともあって、戦闘にならないのだ。

 むしろ、救出した戦術機に乗る衛士たちへの対処の方がよほど苦労したといってもよい。
 何しろ、大洋連合をはじめとした地球連合及び企業連合がこのβ世界に介入してからほんのわずかな期間しか過ぎていない。
もちろん政府間の交渉などは進められているが、普通の一般兵などに情報が行き渡っているということもないのだ。
むしろ一兵卒達にとっては明星作戦後のごたごたの方が記憶に新しく、尚且つそちらに対処するだけで手一杯だったのだから。

(元気がいいというか、血の気が多いというか、なぁ……)

 実のところ、自分が攻撃を受ける場面さえあった。
 一応、IFFでは帝国軍から発行されている正規のものを連合籍のと合わせて発しているが、それさえ信用させるのに十分ではなかった。
だから、今のところはHQとつないで事態を説明させるのが今のところの最適解となっている。
 そんな扱いを受けるのは初めてではないとはいえ、救助した相手に敵意を向けられたり攻撃されたりするのは眉をひそめたくなるというもの。

(やれやれ……)

 ともあれ、仕事だとタケミカヅチは意識を切り替える。
 いけ好かない態度をとられたことなど、日企連世界では往々にしてあったことであるのだし。
 それどころか、だまして悪いがを食らったことも---そこまで考えたところで、次のBETA群を捉えた。
 複数の母艦級の反応があり、戦術機が複数機その周囲で戦闘しているのが見えた。

(機種は……やはり不知火。いや、これは…?)

 あるだけの戦術機を繰り出していた帝国の実情を反映してなのか、F-4J撃震やF-15J陽炎が不知火に交じっていた。
 だが、前方に見える部隊は全機が不知火によって構成されているという、なかなか装備が整っている部隊だった。
加えて、その中にはなんと高級機である戦術機の武御雷が一機確認された。しかも、カラーリングが黄色ときたものだ。
明らかにただの一兵卒の集団ではない。おそらく帝国軍ではなく帝国斯衛軍であろう。
 紫・青・赤・黄・白・黒という出身や歴史に応じたカラーリングが戦術機に施される帝国では、それによってある程度見分けがつくようになっている。
紫はありえないというか限定されているので、黄色ということはちょうど中央に分類される出身ということになる。
だが、それでも限られた出身なのは事実だ。黄色は譜代の武家。これ以上は五摂家とそれに近い武家にのみ許されるので、実は高級階級ということになる。

(しかし……武御雷か)

 00式戦術歩行戦闘機「武御雷」。不知火の上位互換機であり、帝国斯衛軍の専用機だ。
名前の通り2000年に配備が開始された純国産第三世代戦術機であり、そのスペックは間違いなくトップランクといえる。
客観で1999年の帝国には本来存在しないものであるが、おそらく2000年以降の時系列から飛ばされてきたのだろう。
 そして重要なのは無関係に見える符号の一致だ。即ち、武御雷という高級機、黄色のカラーリング、1999年。

(まさか、な)

 導き出されるのは、篁唯依という人物。トータルイクリプスにおけるもう一人の主人公である彼女がそこにいるかもしれないのだ。
 戦術機としては異例なほど突き詰め、特化させた武御雷はその生産数は多くない。いや、突き詰めすぎ代償として生産数が限定されてしまったのだ。
これには国内にあるリソースの問題や帝国軍向けの不知火の製造ラインを維持するという負担なども付きまとっている。
ともあれ、帝国斯衛軍でも一部にしか配備できないほどに数は少ないということが重要だ。
 そして、これもまた夢幻会のみで明かされている資料にあったものであるが、その武御雷の配備が許された部隊の一つが帝国斯衛軍中央評価試験中隊「ホワイトファングス」。

(よもやここで会うことになろうとは……)

 これもある意味運命か、と思う。
 ともあれ、確かめるためにも救援が必要だ。
 そして、フツノミタマはQBの連発で急速に接近を選んだ。

427: 弥次郎 :2021/12/28(火) 21:18:15 HOST:softbank126066071234.bbtec.net


 複数の要塞級、そしてその要塞級を吐き出した母艦級の包囲の中にあって、その部隊は冷静であった。
 母艦級ではなく、湧いて出てくるBETAの駆逐を優先し、離脱を図っていたのだ。光線級を叩き、退路の確保に努めている。
連続して現れている状況にあって、かなり冷静さを保ったまま動けている。
 その動きだけでも、薬漬けや暗示などで無理やり仕立てた促成ではないというのがわかる。死なせるには惜しい。
 だが、彼女らの必死の動きは母艦級一つで敢え無く阻害され、一転して危機に陥った。
 進路の変更を余儀なくされ、この戦場に湧き出している光線級の射線上へとその機体を晒してしまったのだ。
地下侵攻や母艦級の吐き出した分を合わせれば、百にも及ぼうという数が付近には展開していた。
 ならば、やることはただ一つ。

「まとめて一掃する!」

 QBでの水平方向への噴射を上空へとベクトル変更。
 光線級がいるが、大した脅威にはならないので、そのまま無視して周辺を睥睨する高度にまで上がる。
 こうして高度をとると、これまた地面を覆いつくすBETAが目に付く。全くをもって醜い。度し難いビジュアルだ。
 だから
 AMSを介した瞬時の操作により、周辺のBETAをまとめてロックオンしていく。
 こちらに気が付いた光線級が照射を始めようとするが、余りにも遅い。
 そして、放たれたレーザー光は、大地を蠢くBETAの群れをまとめて吹き飛ばした。
 やはり、あっけないほどに、脆い。直撃でなくとも余波だけでも撃破できてしまうあたり、BETAの弱さがわかる。
まあ、個体ごとの強さはともかくとして数に任せた押しつぶし戦術というのは脅威であるのだろうが。

(ELSよりもはるかに少ない!)

 こちらの機体を次々と模倣し、変化し、戦術までも真似てくる驚異的な異星人がELSだった。
 宇宙空間という立体の中で大小問わず様々な種がとびかかってきて合一しようとしてくるあの戦場から見れば、生ぬるい。
 レーザー照射を受けた、とAMS越しにダイレクトに感知。だが、すでに重光線級であろうともPAはおろか、素の装甲すら抜けないのは分かっている。
 そして、攻撃を許すほど自分はのろまではない。

「発射!」

 投射は全方位へ。優先目標は光線級だが、それと並行して突撃級なども含めて排除する。
 すでに何度も繰り返した動作。そして、展開される光景も同じになる。

(さて……)

 眼下、呆然とこちらを見上げる武御雷や不知火が見える。
 戦場で動きを止めるのは自殺行為だろうが、まあ無理もないか、と苦笑する。
 光線級のいる戦場で高高度飛行。光学兵器の使用。突如として現れた救援。ネクストという異形。
これで周囲のBETAが駆逐されていなかったら今頃死んでいるかもしれない。

「周囲の敵影は……ないか」
『こちらでも確認できています、戦術機を逃がすなら今の内かと』
「わかった。回収機を頼む」
『了解です』

 一先ず周辺索敵は怠らない。地下侵攻が、それこそ母艦級というここに出現していることを考えると、平面だけでなく、地下にも気を配る必要がある。
自分でも知っている。安全を確保したと思ったらふいにBETAが現れてトラウマを作り出す、なんてのはマブラヴではお約束のようにあるのだと。

(ノーモア、まりもちゃん…)

 そう思いつつも、回線を繋げる。
 オペレーターに頼んで取得した、帝国軍および斯衛軍の回線の周波数。それに合わせ、声を飛ばす。

「こちら、地球連合より派遣された大洋連合軍タケミカヅチ少佐。そちらの帝国…いや、斯衛軍の戦術機、聞こえるだろうか?」

 果たして、一瞬の空白の後に回線がつながる。
 つながった先、やはり黄色の強化衛士装備に身を包んだ女性が映る。
 長い髪、鋭い視線、整った顔立ち。なるほど、予想通り篁唯依だ。

428: 弥次郎 :2021/12/28(火) 21:19:01 HOST:softbank126066071234.bbtec.net

『こ、こちら…こちら、大日本帝国斯衛軍ホワイトファングス、隊を預かる篁唯依中尉。
 貴官は……その……』
「落ち着いてほしい、味方だ。大日本帝国からの救援要請に基づき、派遣されてきた」
『た、単独で……?』
『まさか…』

 そりゃあ、信じられないよな、とタケミカヅチは頷く。
 戦術機が単独行動など危険すぎる。ツーマンセルのエレメントを編成して行動するのが一般的だ。
 それに加えて、相手がタケミカヅチなどと名乗れば混乱は避けえないだろう。明らかに人間の名前ではないのだし。

「周辺のBETAはこちらで一掃した。まもなく回収機が到着するので、それで離脱してくれ」
『あ、え、とあの……救援感謝申し上げます。タ、タケミカ…ヅチ少佐殿。
 それで…ええっとあの』
「落ち着いて」

 美人になると、混乱している様さえ美しいな、と思い笑みがこぼれた。
 救援したのに罵倒されることもあった中にあって、ここまでかわいらしく対応されると心が癒される。

「貴官らは後方のCPが……富士防衛ラインが地中侵攻で壊滅したことに伴い、最前線で孤立状態にあった。
 そして、最前線の部隊の回収と救援が私たちには任されている。誘導に従ってくれると助かる」
『ほ、本当にCPが?』
「事実だ。HQに問い合わせるといい。今は通信を中継しているからつながるはずだ」

 そして、これまでの救援後の光景と同じように問い合わせが始まった。
 すぐにHQにつなぐように指示を出したので、面倒事は避けられたようだった。
 果たして、唯衣からの通信が再びつながる。

『こちらでも確認が取れました。前線部隊は直ちに後退、戦線から離脱して戦力再編に努めよと。
 窮地を救っていただき、あらためて感謝申し上げます』
「なに、これもまた仕事だ。互いに助け合わねばすぐに死ぬ、そういうものだからな」
『いえ、ですが……死を本当に覚悟しましたので……』

 震えが声に乗る。無理もない。薬物投与や後催眠暗示などで恐怖心を麻痺させていないならば、死の恐怖はとてつもないものだっただろう。
光線級にロックオンされていたようであったので、おそらくその事前の照射も検知していたはずだろうし。
まさしく間一髪、というところか。光線級がそれだけこの世界においては空を飛ぶものに対して死神ということになる。

「なら、本当に良かった。篁中尉のような美人が死んだら世界の損失だ」
『び、び、びじ……美人…!?』
「ああ、美人だ。これからが楽しみな、そんな宝石の原石に見える」

 つい口が滑ったが、まあいいか。通信の向こう側で何やらざわざわしている。そういえば、異性と接した経験が少ないのだったか。
 そんなことを思いながらもレーダーを確認すれば、回収機が近づいてきているのが映った。

(この分ならば、すぐに彼女たちも回収できるか)

 だが、そうは問屋が卸さない。すぐにレーダーにいくつもの敵影が確認され、地面には独特の揺れが走った。

「団体のお出ましか……ホワイトファングスは先ほども言った通り離脱を最優先にして、回収機の所へ。
 BETAに関してはこちらで吸引し、排除する」
『そ、そんな!単独では危険です!』
「BETA程度にやられるほど、弱いつもりはない。それに、貴官らは戦闘継続は難しいだろう」

 言いながら、再び上昇をかける。明らかに光線級や重光線級の狙いはこちらだ。
 そういえばBETAというのは性能の高いコンピューターを優先して狙う性質があるのだったか。
 ならば、うまく立ち回ればヘイトをうまく稼いで、彼女たちを離脱させることができる。

「急げ!」
『あ……は、はい!ご武運を!』

 半ばひっくり返った唯衣の声を受けながら、タケミカヅチは改めて武器を構える。
 来るがいい、BETA共、そしてそれらを管轄するBETAの頭脳級。人間を、人間の可能性を舐めるなよ?

429: 弥次郎 :2021/12/28(火) 21:19:58 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
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最終更新:2025年08月23日 15:03