594: 弥次郎@お外 :2021/12/30(木) 20:37:09 HOST:p2570027-ipoe.ipoe.ocn.ne.jp
憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「Dive Into Dark」2
- C.E.世界 融合惑星 β世界 日本列島 旧神奈川県西部 富士防衛ライン跡地
UNACの群れの進撃は、圧倒的だった。
全長5m程度といえども装甲は下手な兵器より頑丈であるし、火力はMBTなどよりもはるかに高い。
速度に関しても同様だ。グライドブーストを吹かすことによる他を置き去りにする展開力は非常に優れている。
そんなわけもあり、大量の数投入されたUNACたちは着々と地下のルートのマッピングとクリアリングを進めていった。
そして、発進元である防衛ライン跡地の指揮所ではオペレーターたちがその情報を整理していく。
その中で判明したことは、これらの地下侵攻ルートが明らかに一朝一夕で作られたものではない、ということだった。
地下茎(チューブ)と呼ばれることになったそれは東西に延びる形であり、東の端はなんと横浜近くにまで伸びていたのだ。
そして、西側に行くほどそのルートは複雑に分岐し、なおかつ多重層となっていることも判明した。
それこそ、大量のBETAの群れが移動しても問題ないほどに固められ、採掘されていることがわかる、きわめて頑丈なつくりであることも。
連合としてはこれほどまでの地下通路を構築する意義をあまり見いだせずにいたのであるが、帝国側の意見からそれの意味を推測できた。
すなわちBETAは何かを定期的にハイヴから打ち上げている、という情報だ。
これだけわざわざ地面を掘り返して地下道を形成し、それがハイヴのあった横浜まで伸びている。
そして、消えている地下の土。あるいはその土に含まれている物質などはどこに行っているのか?
これらを統合し、現場司令部では、BETAは地下にある何らかの資源を採掘し、ハイヴから宇宙へと打ち出している、と仮の結論を出した。
「つまり、BETAは人類を排除し、その惑星にある地下資源を採掘・集積し、回収するためのユニット……そう考えられるな」
「作業用重機やロボットに該当すると?」
「うむ。戦闘に特化していると思われるBETAだが、如何せんちぐはぐだ。
それに加え、個体ごとの意思や判断力も希薄に見える」
データを精査しながらも、参謀たちと仮設基地司令の話し合いは続く。
過去にC.E.に襲来した宇宙生物などと比較しながら、収集できたデータと突き合わせての仮の結論だ。
何しろ、あまりにも戦い方が乱暴なのだ。そういう生物だといえばそれまでであるが、如何せん連合の経験からすれば侵略生物にしてはおとなしすぎるのだ。
そう、機体さえも溶かす酸を飛ばしてくるとか、装甲を貫通するような棘を飛ばしてくるとか、そういうものがない。
加えて、戦闘についても単調そのものだ。とにかく押し寄せてきて、すべてを踏みつぶそうとする。
味方が吹き飛ぼうが、死骸を巻き込もうが、すぐ隣の個体が死のうがお構いなし。
自己意識が極めて希薄、あるいは、プログラムされた通りの動きしかできないと推測される。
定義にもよるだろうが、これを果たして生物と呼べるであろうか?現地の司令部が出した結論はそれであった。
「まあ、細かい分析については本部に任せるしかないがな……」
ここでわかることなどごくわずかであり、より精査を待たなければならないのは明白。
ともあれ、この段階でわかったことで今生かすべきは決まっている。
「BETAがそのような性質を持ということならば対処のしようはある。
これ以上、地下侵攻を食らうのは何としても避けねばならない。前線と指令本部に最優先で伝達をせよ」
「了解!」
これまで帝国側も、この世界の人間も把握しきれていなかった、BETAの地下の活用法。
これから進撃していく先、東海以西の領域においても、地下からのBETAの出現というのが想定される。
いかにBETAが弱い個体であるとはいえ、油断はならない。地下に潜伏されて不意の襲撃で損害を受けるなど、たまったものではないのだし。
595: 弥次郎@お外 :2021/12/30(木) 20:38:07 HOST:p2570027-ipoe.ipoe.ocn.ne.jp
- C.E.世界 融合惑星 β世界 日本列島 旧神奈川県西部 地下 BETA侵攻ルート
富士防衛ラインの救援からしばらくして、次の部隊が到着した。
それは、地球連合の設営部隊。
彼らの仕事はBEATの構築した地下侵攻ルートへの対処であった。
埋め立てるだけでは、また突き破ってくる。ならば、それまでの間BETAが攻めてきたときに自動的に探知・迎撃するようにしておく必要があったのだ。
だからこそ、迎撃用の固定砲台やセンサーなどを各所に設置。侵攻ルートをそのまま利用した、強力な迎撃態勢を構築したのだ。
地下防壁までもしっかりと構築したそれは、いずれは人類側が活用することも含めて環境浄化や舗装なども行う予定となった。
いうまでもないことだが、この地下トンネルを含めたBETA支配地域はひどい状況であった。
それこそ、アンチレーザーのために転調された重金属雲による重金属汚染、戦術機の弾薬に含まれる劣化ウラン、さらにはBETAの体液などなど。
それらは状況が状況であるがゆえに放置されてきており、拠点化するにあたってはあまりにも人間には危険であった。
よって、主要な拠点の設営個所に関しては優先的に汚染の除去を行うことになっていた。
また、人類の生存領域へと流れ込むのを阻止するためにも、地下だけでなく地上部にもそういった設備を設置することも決定し、順次取り掛かることとなった。
これらは帝国に対してほぼ一方的に通達され、なし崩し的に承認を得ることとなった。
すでに帝国は救援を受けたとはいえ絞り出した戦力の半数近くを消耗した状態にあり、もはや現場の実質の発言権は地球連合にあったためだ。
そして、連合の打った手は効果的であるというのは認めざるを得ず、結局のところ対応を任せるほかなかった。
無論のこと、帝国でも国連でもそれぞれに反発はあった。
帝国に関しては、失地奪還ができたならばそこを守るのは帝国の仕事であり、そこを他国にゆだねることを忌避したためだった。
すでに米国、そして国連軍が今回のBETAの襲来に際して事実上帝国を見捨てたということもあり、その声は上層だけでなく下層にまで共通した意見であった。
国連に関しては、山口までの奪還が完了した後にしゃしゃり出るという、帝国からしても連合からしても最悪のタイミングであったので、相手にされなかった。
とはいえ、バンクーバー協定の有名無実化というのは今後のBETAとの戦いに支障をきたしかねず、ひいては人類結束に響くというのもある意味ではあっていた。
それゆえ、帝国と地球連合は国連に対して、それぞれの事情とBETA襲来時の国連の対応を引き合いに出して「一昨日きやがれ(意訳)」と伝えることになったのだった。
だが、これらの影響が後々にまで響いたことはほぼ確実であった。
人間というのは、理性の生き物である。だが、同時にどうしようもないほどに本能の生き物でもある。
理性は納得したとしても、感情や情緒の面までも納得するというのはかなり難しいのだから。
まして、この時の帝国をはじめとしたβ世界の実情や情緒、あるいは観念からすれば地球連合の横やりは疎ましいと思われてもおかしくないのだから。
総合的に振り返れば、この時の勝利は確かに勝利ではあった。
けれど、100点満点というわけにはいかず、禍根は少なからず残ってしまった。
勝ってしまったことだけではない。この外の勢力の介入は、当然のごとく、内部の和を良くも悪くも乱したのだ。
然るに、情勢はまさに先の見えない暗闇の中になったに等しい。
まるで、UNACたちが飛び込んでいった、長い長い暗闇のトンネルのように。
596: 弥次郎@お外 :2021/12/30(木) 20:39:35 HOST:p2570027-ipoe.ipoe.ocn.ne.jp
以上、ウィキ転載はご自由に。
3話の予定が2羽で終わってしまった…(ゴローちゃん並感
まあ、是非もないよね?
2021年の投下はこれにてラストとなります。
最終更新:2022年01月20日 10:30