420 :Forth:2012/03/07(水) 04:18:20
コンピュータ言語のネタを投下します。
このネタは実在の人物、団体、その他と一切関係がありません。ってやっぱり入れた方がいいんでしょうか?



「私の案を採用していただければ、日本の電算機でのトップの地位は30年いや、50年は揺らがないでしょう」
内田秀男は辻に対して大見栄を張った。
「しかし、コンピュータ言語に日本語を使うのは非効率なのではありませんか」
「そんなことはありません。たしかにひらがなは51字とアルファベットより多いですが、一時に処理されるbit数は結局そんなには変わりありません。それよりもプログラマの思考時間を考慮に入れるとその効率はかなりのもになります」
内田は畳み掛けるように言葉をつないだ。
「C言語やベーシックよりもコンパイルの負担が少ない言語があります。
Forthです。そして、このForthの文法は英語よりもはるかに日本語に近いのです。
Forthをベースにすれば、アルファベットは一文字も使う必要はありません」


さらに内田は言い募った。
「さらに、日本人のプログラマ養成にかかる費用がどのくらい節約できるか考えてみてください。また、敷居が低くなり成り手がかなり増えるでしょうし、小学生からプログラムする人口も圧倒的に増えるでしょう。つまり優秀な人材がそれだけ増えるわけです。

 一方、英語を言語として使った場合を考えてみてください。英語圏の人間に簡単に解析されてしまいます。日本人が苦労して英語でプログラムしたものを英国人や米国人が簡単に模倣、改竄をできるようになるのです」

「よいでしょう。あなたのプロジェクトに予算を通しましょう」
辻は大きくうなずいた。


(これで、アメリカ人にも少しは日本人がした苦労を体験させることができる)
内田は口をゆがめながらつぶやいた。
実は内田は逆行者で前世ではB-TRONの研究に携わっていたのだ。Windowsをはるかに超えるスペックを持っていたその国産OSはアメリカの横槍によってつぶされた。アメリカの内政干渉によって日本の市場はWindowsが席巻してしまったのだった。
そのような挫折を味わった内田が逆行して考えたことは、外国に横槍を入れられない日本人による日本人のためのコンピュータを作ることであった。

この決定によって逆行プログラマたちは怨嗟の声を上げた。が、内田は全く気にせずプロジェクトを進行させた。

421 :Forth:2012/03/07(水) 04:20:48

コンピュータ言語のネタの続きを投下します。

例によってこのネタは実在の人物、団体、その他と一切関係がありません。





「さて、今日諸君に集まってもらったのは他でもない、先日予算が通った私のプロジェクト用の入力デバイス選定についてだ。

日本語を用いたプログラムを作るにあたって適切なキーボードを作らないと効率が悪くなるからな。
諸君にはぜひ忌憚の無い意見を言ってもらいたい……」

内田の言葉が終わらないうちに罵声がいくつも浴びせられた。
「何で日本語なんだよ!」「英語でいいじゃないか!!」「みんなQWERTY配列になれているんだから他のキーボードで入力なんかできるか!」「俺のDvorak配列だと日本語入力やりにくいんだよ!」「日本語なんかローマ字入力でいいじゃないか」「「「「「英語!英語!」」」」」


「黙らんか貴様ら!英語英語とそれでも日本人か!!
大体QWERTY配列なんざわざと入力しにくく作ったタイプライターから欧米人がなれていると言う理由だけで採用したんじゃないか!」
会議室に集まった逆行プログラマ達を怒鳴りつけると、内田は少し息を整え彼らをにらみつけた。

「そもそもお前ら、シリコンバレーどころかベル研すら無くなって、さらにチューリング博士ですらコンピュータを作ってないんだぞ。日本人がコンピュータの始祖になったんだ!
それなのに日本人が英語で表記されるマシンで英語プログラムを作ってみろ!津波で証拠が流されたのをいいことに米国の発明を丸ごと盗んだと言われるに決まっている。悪いことに状況証拠だけは山ほどそろっているんだ。お前らが生きている限り、いや、歴史が続く限り言われ続けるんだぞ!」

逆行プログラマ達はばつの悪い顔で黙り込んだ。

内田は不機嫌な声をだした。
「もういい。キーボードは親指シフトで決定だ!文句は言わせん!これならほとんど思考に遅れることなく日本語を打てる」

後ろの隅に座っていたプログラマが立ち上がった。
「賛成です!史実では少数派で苦労しましたが日本語入力ならJISなんかより早く入力できます」
反対の隅に座っていたプログラマも立ち上がった。
「ここは将来を見越して英文キーボードとの互換性も考慮したA型親指シフトで!」「おれはJ型の方になれてるんだ!」

会議はまだ終わらない。



ということで、逆行者たちはみんなわがままというお話でした。
キーボードについて気になさっていた方が何人かおられたので続きを書いてみましたがいかがだったでしょうか。

422 :Forth:2012/03/07(水) 04:21:56

コンピュータ言語のネタ3話目です。



 内田秀男を主任とした日本語コンピュータ言語の開発が始まったが、逆行プログラマ達はなおも不満をくすぶらせていた。
「内田主任、なぜそんなに日本語にこだわるんですか?英語の方が簡単じゃないですか。何より英語の開発言語の方が論理的でしょう。あの合理的なアメリカ人が開発した言語ですよ」
逆行プログラマの一人が内田を何とか説得しようと発言した。


「お前らはアメリカに洗脳されすぎだ。英語が論理的だといっていたのはアメリカ人だぞ。自分達に都合が良いからそう主張していたに過ぎない。本職の言語学者に聞いてみろ。英語がいかに不合理か教えてくれるぞ。
 それにアメリカ人が合理的だというのも、やつらが主張しているだけだ。自分の都合の良いように言っているだけだぞ。

 ちょっと考えてみろ。世界中ほとんどすべての国がメートル法を採用してたのに、宇宙時代になっても最先端技術分野にさえヤードポンド法を世界中に強要したのがアメリカだぞ。
 ヤードポンド法といえば12進法と16進法と14進法と3進法と4進法と20進法と10進法と8進法が混在する不合理の見本みたいな単位系だ。
 あの単位のせいで何度航空機や宇宙機が事故を起こしたことか!犠牲者は数え切れない!!

 さらに、簡単に変えられるはずの温度の単位でさえ不合理な華氏を使い続けてる。
やつらは自分達の都合だけを考えているんだ。本当の合理性なんかには興味ないんだよ」

内田は苦々しい口調で断言した。偏見に満ちた意見ではあるが内田はアメリカからの横車に何度も苦しめられてきた。その経験から身に着けてしまった偏見であるから、確固としたものとなってしまっていた。

「それでもいきなりForth言語からはじめるのはどうなんでしょう?30年近く先取りとはチートもいいところでしょう。習いやすさを考えるとまずはベーシックからはじめるのが順当じゃないでしょうか」

「何を言っている。ベーシックもC言語もアメリカ人が使いやすいってだけだぞ。コンピュータに合理的な言語はForthなどの逆ポーランド記法のプログラム言語だ。

だいたいForthが一般に広まらなかったのはアメリカ人が使いにくかっただけだ。そうに違いない。

 事実、宇宙開発やロボット制御系ではForthが大活躍していたではないか。クリティカルな分野では使わなければならなかったわけだ。やつらだって冗長性が許されない分野では合理的になることもある。

逆に言えばすこしでも冗長性が許されるなら、自分達のわがままを押し通したということだ。

史実のアメリカ人の不合理さに習う必要は無い。幸いコンピュータ言語は逆行チートが使いやすい分野だ。逆ポーランド記法の開発言語を数十年先取りするのも難しくは無い。

この逆ポーランド記法のプログラムは、これから軍事の主流となるロケット兵器開発に必要不可欠となるのだ。これからは軍事分野や航空宇宙工学では、逆ポーランド記法のプログラムがなくてはならなくなる。

 それで、最初の質問に戻るが、せっかく逆ポーランド記法の文法と日本語の文法が似ているんだから、それを利用しない手は無いだろう」

 内田は自分で話しているうちに新たなインスピレーションを感じた。
「む!小学校の算数や数学の表記も逆ポーランド記法に切り替えてはどうだろうか?全員が逆ポーランド記法を使えるようになればForthも簡単に普及するだろう。早速、各省庁に働きかけて…」

逆行プログラマ達は青くなって叫んだ。
「「「「「やめてください!教師達が大混乱しますよ!」」」」」


 内田は不思議そうな顔を逆行プログラマ達に向け、さらに言い募った。
「宇宙開発に出向したプログラマはみんな計算に逆ポーランド記法しか使えなくなって帰ってきてたぞ。
それを考えれば、まえもって教育した方が合理的じゃないか」

「「「「「それは特殊すぎる例でしょ!」」」」」

(万が一実現したら胃潰瘍で倒れる数学教師が続出するだろうな)プログラマの一人はそうなった教育現場を想像して身震いした。


逆行者は偏見まみれというお話でした。
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最終更新:2012年03月07日 21:28