925: 弥次郎@お外 :2022/01/02(日) 19:53:33 HOST:p2570027-ipoe.ipoe.ocn.ne.jp


憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「舞いて咲く黒子」




 リンクスたちのアセンブリと戦い方は、基本的には単独行動やペアでの行動が基本となる。
 それは、強烈なまでに突き詰めた強い個性を生かし切って戦うための、必然的な選択であった。
さりとて、彼ら彼女らの戦いは戦術や戦術から切り離されているということはない。
あくまでもそれは強力な個体であって、それらは一つの要素として落とし込まれ、全体の戦術・戦略に寄与する形となるのだ。

 例えば、タケミカヅチは前線への切り込み役となる。人型兵器を操る、戦術兵器とも言い換えられる。
膨大な数が開いてであろうとも、単独で切り開き、突破口をこじ開ける存在となるであろう。
鴨川桜子ならば、強力な動く砲撃陣地といってもよい。展開し、そこから強力な火力支援が実施できる強みがある。
個人の力でそこまでやれるというのは、いうなればコストパフォーマンスに優れ、手数をよそに回せるということでもある。
侵略者に対し寡兵となることも考慮しなければならないC.E.世界において、リンクスというものがその性質を維持したまま市民権を得ているのも、そこにあるだろう。

 では、比較的目立たない、静かで名前の通り黒子のように目立たぬ黒子御前とはどういったリンクスであるか。
それは、このβ世界日本帝国の救援の際に、これまた静かに発揮されていたのであった。



  • C.E.世界 融合惑星 β世界 日本列島 旧静岡県南西部 防衛ライン跡地上空


 黒子御前のネクスト「モリビト」は上空で滞空しながらの援護射撃を実施し続けていた。
 メインウェポンたるBFFのレーザースナイパーライフルを用いた射撃は、その射程だけでも100㎞という広範囲に及んでいた。
もちろん、大気中での減衰やズレなども発生する。また、これはあくまでも最大射程であり、着弾までの若干のタイムラグを考慮すれば、有効射程は短い。
だが、それでもそんな射程を持つ機動兵器が地形などをほとんど無視できる高高度を維持したまま展開できるというのは、それだけでも圧倒的な強みだった。

(はい見つけた)

 彼女が優先して狙うのは、母艦級と要塞級という大型種のBETAだ。基本的に広範囲の救援を行う必要があるので、細かい相手は無視する。
その代わりに、簡単には倒せず苦労する相手だけをピンポイントで狙ってやればよいのである。
すでに前線に向かったネクストや観測機などの情報で出現地点などはすでに確認しており、あとは打ち込むだけなのである。

「発射」

 収束させたレーザーの弾丸が、スナイパーライフルの銃口から飛び出す。
 それは刹那の間に距離をむさぼり、母艦級の腹を突き破り、大穴をうがった。
 だが、穴が開いた程度では当然止まらない。全長が2㎞にも及ぶ母艦級からすれば、その程度はまだ許容できる範囲だ。

「うん、タケミー君お上手」

 だが、それでよい。射撃で動きを一瞬硬直させた母艦級に、フツノミタマが両腕のレーザーブレードで切りかかっていくのが見える。
QBの連発でタケミカヅチはその穴を起点にして母艦級を輪切りにしていった。切り口を自分が作り、タケミカヅチが開く形。
極太のレーザーの刃で両断されたことで、母艦級は絶命したのか動きを止めた。それでも内部から湧いてくる。

「だから、お片付け……」

 本来の射程を超えているが、有澤のグレネードランチャーの出番だ。距離と角度を調整し、信管に諸元を入力。そして、打ち込んだ。
 それを読んでいたフツノミタマは一瞬で回避している。そして、輪切りになり、ぽっかりとあいた母艦級の体内にグレネードが放り込まれた。
そして、その弾丸は内部深くまで侵入し、信管が命じられたとおりに発動。一瞬で電子励起爆薬による炸裂がすべてを焼き尽くす。
面白いくらいに、それこそ間欠泉のようにBETAの破片が空中へと噴き出していく様は、いっそ綺麗なほど。

 それを確認しながらも、スナイパーライフルの銃口はすでに次のターゲットへと向いていく。
 今度はハイエンドノーマルたちとかち合った要塞級だ。複数いるので、連続してロックオン、予測位置を含めて連射して置き撃ち。
そしてそれらは、見事全弾命中(フルマーク)。一体だけ、即死させられなかったのがいたが、すぐさまノーマルに弾丸を撃ち込まれ沈黙する。

926: 弥次郎@お外 :2022/01/02(日) 19:54:19 HOST:p2570027-ipoe.ipoe.ocn.ne.jp

「うんうん、お姉さん嬉しい」

 ただスコアをとられたレイヴンたちはうれしくないかもしれないけれど、と黒子御前はつぶやく。
 今回の依頼は基本的に出来高払いだ。つまり、排除したBETAの数と種類に応じて報酬が上乗せされる。
せっかくの稼ぎ時に、大型種という分かりやすい目標だけをかっさらわれたらたまったものではないだろう。
出撃するのだってバカにならないし、そもそも出張してきただけのコストに見合う報酬が欲しいのは誰もが同じこと。奪い合いになっているかもしれない。
 まあ、戦場のスナイパーである黒子御前にしても同じようなリンクスやレイヴンたちとの競い合いなので、どっちもどっちか。
 だが、彼女の独壇場を許すほどBETAも甘くはない。

「あ、また来たかな…」

 警告がAMSを通じて脳内に響く。
 空中からBETAを狩っていく存在がいれば、それは当然の帰結として、光線級の標的になってしまうということになる。
事実として、こうして洗浄を俯瞰している状態でも重光線級を含めた光線級から照射を何度も受けている。
だから、動き回りつつ、あるいはポジションを適宜変えながらの狙撃が求められていた。
実際のところ、狙撃する瞬間以外は回避運動の連続だ。そうでなければ、数えるのも億劫なレーザーに撃ち抜かれるだろう。
とはいえ、PAであえて受けて計測された出力などからすると、あまり怖いものでもないのが確かだった。
それこそ飽和攻撃をわざと受けて、なおかつ素の防御を貫通されるほど間抜けをさらさない限り安全とさえいえる。

(これで地上の人たちは少しは安全になってくれると嬉しいなぁ)

 光線級のヘイトを稼いでいることで、少しは地上も楽になっているはず。
 事前のブリーフィングで確認した情報では光線級は飛行して攻撃してくる相手を優先して狙うそうだ。
ならば、こうして自分が上空に浮かんで回避し続けることで光線級は地上目標を狙わなくなっているはずだし。
 というか、疑問に思ったのだが光線級のヘイトを稼いで安全を確保するデコイのようなものはないのだろうか?と。
いや、でもレーザーを蒸散させる技術というのは意外と高等と聞く。西暦年間の技術でそこまでできるかどうかはちょっと怪しい気がする。

(とりあえず…これもみんなのためだね)

 回避しつつも、もう片方の手で保持するマークスマンライフルで光線級にカウンターを放つ。
 機械的に、あるいは反射的にレーザーを放ってくるだけならばMT以下の砲台にすぎない。むしろ、位置をはっきり示してくれて助かるほどだ。
 だからというように、放たれた弾丸が次々と柔らかい光線級を次々と貫いていった。
 マークスマンはとびぬけた射程はないにしても、連射と威力とをバランスよく保ったまま射程を延ばした武器だ。
飛び込んで近距離で使うならばともかく、こうして距離を保ったまま使うならば最高のパフォーマンスを発揮できる。

(あら……あれは、一目連さんかしら?)

 遠方、土煙が上がっている。独特の間隔をあけながら吹き上がるそれは、地表すれすれをネクストがQBの連発をしている証だ。
そして、時折光るのはレーザーブレードの斬撃だ。それこそ、地形毎吹き飛ばさんとばかりに振りぬかれる。
それのたびにBETAの反応がごっそり減っていくのだから恐ろしいところだ。
 派手な戦いだ。それこそ、一騎当千というものだろう。
 それは自分には無理な話。せめてもの守りを届けるのが、自分の役目。

「かといって……一目連さん相手に援護はいらないわよねぇ……」

 けれど、あそこまで単騎の無双を見せられて茶々を入れる勇気はない。
 援護を入れたら失礼なレベルだ。第一、一目連という日企連トップランカーリンクスの援護とはたやすいことではない。
それこそ中堅がいいところの自分よりもさらにレベルの高い人間がやらなければ、邪魔とさえ断じられる可能性もある。
撃ち放った弾丸を物理ブレードで打ち返してくるくらいはしてきそうだし。

(じゃあ、できることをしましょうか)

 そして、次の標的へと照準を合わせていく。
 目立たず、派手さはない戦い。けれど、多くの命を救いあげることとなる黒子御前の戦いは、続いていく。

927: 弥次郎@お外 :2022/01/02(日) 19:55:35 HOST:p2570027-ipoe.ipoe.ocn.ne.jp
以上、ウィキ転載はご自由に。
地味で目立たなくても、コツコツ頑張るリンクスの姿を…
ちなみにタケミーとか一目連とか黒子御前らリンクス、そしてレイヴンたちの戦いは帝国にもβ世界にも公表されます
ありえないとか思われるんですけどねぇ(苦笑

953: 弥次郎@お外 :2022/01/02(日) 21:20:03 HOST:p2570027-ipoe.ipoe.ocn.ne.jp
今更ですが誤字修正を

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× 本来の射程を超えているが、有澤のグレネードランチャーの出番だ。距離と角度を調整し、信管に緒言を入力。そして、打ち込んだ。
〇 本来の射程を超えているが、有澤のグレネードランチャーの出番だ。距離と角度を調整し、信管に諸元を入力。そして、打ち込んだ。

×面白いくらいに、それこそ間欠泉のようにBETAの破片が空中へと噴き出していく様は、いっそきれいなほど。
〇面白いくらいに、それこそ間欠泉のようにBETAの破片が空中へと噴き出していく様は、いっそ綺麗なほど。

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×撃ちはなった弾丸を物理ブレードで打ち返してくるくらいはしてきそうだし。
〇撃ち放った弾丸を物理ブレードで打ち返してくるくらいはしてきそうだし。

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最終更新:2022年01月20日 10:35