165: 弥次郎 :2022/01/04(火) 18:48:46 HOST:softbank126066071234.bbtec.net


憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「Zone Of Twilight」第2章1節「信仰と紅い射手」2



  • C.E.世界 融合惑星 β世界北米大陸 アラスカ州 国連軍ユーコン基地 演習場




 飛んでいくSu-37UBを追走(チェイス)するのは、Su-27Dチョルミコート。ソ連製の戦術機をベースに、ユーラシア連邦の開発した戦術機だ。
 指定されたコースをひたすらに飛ぶ戦術機達は、その機体スペックをどこまで行けるかをひたすらに挑んでいた。
実戦同様の装備と条件下での比較検証試験。競い合うというよりは、互いが互いを僚機として、調和を持った動きをしていた。
それは、両者の技量が高く、また、乗機のスペックをうまく生かしているからこその、美しい動きであった。

 しかして、そんなのは中の人間、衛士にはあまり関係のない話だ。特に、Su-37UBをコントロールする紅の姉妹にとっては。
 如何にバージョンアップしたとはいえ、所詮はSu-27は第二世代戦術機だというのが事前の評価であった。
一般論的に言えば先発機体は後発機体にスペックでは劣る。バージョンアップと言うてもあるが、それには限界があるだろうと。
加えて、衛士が紅の姉妹というのはソ連側の地震をもって送り出したESP能力者。二人でありながらも一人であるかのように戦う能力は、並の衛士を超える。
 だが、そんなソ連側の自信はAH(対人戦)による比較試験をはじめとした各種試験であっけなく砕かれていた。
ユーラシアの出したSu-27Dにあっけなく負けてしまったのである。

 そして、その差が技術やOSなどの差にあると知ったソ連側は、急ぎでこれの取り込みを図った。
 それこそ、Su-37で予定されていたカリキュラムやテストを半ば飛ばしての、なりふり構わずであったほどに。

(同じOSにしたのに……ここまで差が出るなんて……!)

 新型OSを導入し終えたSu-37UBは、これまで不可能だったレスポンス能力を発揮できるようになり、従来を遥かにしのぐ力を発揮できた。
イーニァおよびクリスカがこれまで当然と考えていた硬直やラグ、あるいは応答の遅れなどが悉く解消されるようになった。
 しかし、それでもなお、眼前のSu-27Dには追い付けていない。
 差を埋めるだけ埋めたというのに、まだ追いかける立場だった。今は追跡されている状態だが、相手がまだ全力ではないのはクリスカも認めるところ。
 スペックの差か、衛士の差か。それとも、両方か。
 ただ、最近になって変わったのは、こちらの不備を咎められなくなったことであろうか。

(どうして……)

 コースに合わせ、跳躍ユニットの制御を行いながらも、クリスカの疑問は尽きない。
 これは、クリスカが理解しえないことであった。
 彼女にとって、指示とはイコールで義務であり、果たすべき数値であった。
ソビエト共産党からの指示ということであり、その軍務は党からの命令により遂行されるもの。
故にこそ、失敗や失態は許されず、期待以上の成果を出し続けなければならないものとクリスカは認識していた。
 だが、それは主観だ。その彼女の信奉する共産党---というか、その指示を受けたサンダークはどうあがいても勝てない相手を前に、妥協を選んだのだ。
勝ち負けではない、と判断せざるを得ないほど、地球連合やユーラシア連邦が上をいっていることを認めざるを得なかったというべきか。
 そしてサンダークはそんな忠実すぎる節のある彼女の心情を慮り、あえて何も言っていなかったのが、実際のところは逆効果だったわけである。

 ともあれ、Su-37UBはOSや主機の換装などにより、これまで予想されていたスペック限界を超える動きを発揮できるようになっていた。
そして、それが自分たちが届かないと諦めていたSu-27Dに追従できているだけというだけでも、サンダークらは満足にたる結果を出していたのだ。
色々あるとしても、建前的には試験小隊。それにふさわしい働きをすれば、首脳部としては表立って文句は言えないわけである。
特に不審死が相次いでいたソ連にとっては、無事に成果を出せるだけでも稀少という状況なのが追い風となったというべきか。
 そんな背景をあまり知ることなく、紅の姉妹の操るチェルミナートルは仮想の戦場を飛行していく。

166: 弥次郎 :2022/01/04(火) 18:49:27 HOST:softbank126066071234.bbtec.net

  • 演習場 管制塔内


「……ふぅ」

 ベットの住人から一時的にしろ脱却したサンダークは、演習場内を飛行するチェルミナートルの動きに満足を覚えていた。
MSなどの兵器には到底及ばなくとも、供与技術と自国の技術を混ぜ合わせた戦術機が期待通りに動けるだけでも、試験段階では大成功というべきだ。
何しろ、試験とは危険と隣り合わせだ。綿密な設計や計画を練ったとしても、危険が伴う。
まして、新機軸の、外からの技術を取り込んだのだから危険性や不安定さについては言うまでもないだろう。
だから、現段階でしっかりと結果を出せているというのは僥倖以外の何物でもない。

(問題は……)

 そう、問題となるのは隣で観戦しているユーラシア連邦のリング大佐だ。
 こっちのことを知ってか知らずか、アプローチを繰り返してきているのだ。
 干渉するではなく、アプローチというのがありがたくもあり、迷惑なところ、というのがサンダークの感想だ。
担当国がソ連であり、その担当者ということもあって顔を合わせる機会もあるが、それ故に逃れられない相手でもある。
 恐らく、連合に対する諜報活動のことを知っている。そのうえで、何も言うこともなく接してくるのだ。
 それがかえって不気味で、同時に恐ろしくもある。なぜそこまで平静なままに接することができるのか。
 それが、分からない。
 わからないというのは元来恐怖である。
 暗闇が恐ろしいのは、暗いがために、そこに何があるかわからないという恐怖故なのだ。
 その理論---あるいはヒトが元来持つ本能的な反射に基づき、サンダークは恐怖を覚えていたのだった。

(こちらに対して何らかの行動をしてくるかと思えば……あまりそうでもない。どういうことか……)

 つまるところ、意図や距離感などを図りかねていたのである。それがリングから見て距離をとられている、と感じたわけであるが。

 さて、そんなリングであったが、処々の「仕込み」を終えてこの演習に臨んでいた。
 直接では難しい。なればこその搦め手、というわけである。
 何しろ、直接だけでは相手が警戒をしたままになってしまい、真意を伝えるのが難しくなるのだから。
 とはいえ、その「仕込み」さえも、相手がこちらの行動にうまく乗ってくれればという、確率論的には余り期待するのはよろしくない。

(とはいえ……サンダーク中尉が無視できない形であろう方法を使うのだから、うまくはいくはず)

 そのために、ロートス・フライシュッツに属する、いわゆる強化人間であるリナリアにまで苦労を掛ける羽目になった。
彼女がうまく「接触」してくれればあとはうまくいくのかもしれないのだが。

(結局、人が人と理解し合うのは難しい、か)

 言葉の違い、立場の違い、属する国家の違い、常識の違い、あるいはそれらの複合。
 いかに通信手段や意思疎通の方法が発達し、利便性を増しても、結局はそこにたどり着く。
 人と人とを結ぶのは結局のところ、人の意思に依る。
 だから、こちらにできることは、相手とわかり合いたいと、言葉を交わしたいと、そう伝える意志と力を示すこと。

(……)

 そっと、無意識のうちに「仕込み」の「それ」を手で押さえてしまう。
 ぶつかるしかない。それが、部隊内で相談した結果だったのだ。
 避けられるのを追いかけ、逃げられないようにして、誠意を示すしかない、と。相手の疑心暗鬼を超えるには、さらけ出すしかないのだと。

「うまくいけばよいが……」
「?」

 そのつぶやきが聞こえたのか、サンダークがこちらに訝しげな眼を向けてくる。
 だが、それが気にならないほどに、リングは考えを巡らせていた。

167: 弥次郎 :2022/01/04(火) 18:50:36 HOST:softbank126066071234.bbtec.net

以上、wiki転載はご自由に。
次でこの話は終わりにします。
次はSMSとルナ・ハンターズの話にする予定です。

168: 弥次郎 :2022/01/04(火) 18:53:07 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
転載にあたってはタイトルの修正をお願いします

×憂鬱SRW マブラヴ世界編SS「Zone Of Twilight」第2章1節「信仰と紅い射手」2

〇憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「Zone Of Twilight」第2章1節「信仰と紅い射手」2


189: 弥次郎 :2022/01/04(火) 21:04:00 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
166の一部修正をお願いします

×だから、現段階でしっかりと結果を出せている

〇だから、現段階でしっかりと結果を出せているというのは僥倖以外の何物でもない。

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最終更新:2022年01月20日 10:44