684: 弥次郎 :2022/01/14(金) 20:13:08 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「煌武院、立つ」
地球連合の面子を半ば潰しながらも、それでも自らの面子を守ることを選んだ帝国。
戦後、それも直近の、BETAの襲来をはねのけた後のことを考えれば泥を被ってでも取り付けなければならないものだったのは確かだ。
しかして、その日本帝国の面子を満たすに足る戦果というか結果を出すのはどうすればよいか、という連合の問いに帝国政府は窮した。
今のところ、地球連合の進軍は補給と戦線整理などの名目で停止している。
それが完了するまでに派遣できる戦力を決定し、抽出し、動員し、前線に送り届けなければならない。
それも、無理のない範囲でやらねばならないのだ。地球連合軍が停止しているのは善意でしかないわけで、
客観1998年に陥落した旧帝都だ。奪還したというのは大きな意味合いを持つ。
だが、それ故に生半可な戦力などで不足が発生する。つまり、旧帝都奪還という戦果に付きまとう名誉に釣り合う「格」というものが必要だったのだ。
無論、候補がいないわけではない。五摂家や政威大将軍といった武家社会の上位に立つ戦力を供出と言う手があった。
だが、その階級の伴う彼らは多くが臨時首都たる仙台に一足先に退避済みであり、その護衛という形で斯衛軍の多くが即応できなかった。
これに関しては、危機に際して首脳部が脱出することで指揮系統を保全するという意味では理解されたが、連合の心情的に納得しがたいものであったのは確か。
そして、当の脱出していた五摂家などが、戦局の変化が著しく対応中で出撃には時間がかかるなどと事実上拒否したため、いよいよをもって気まずいものとなった。
しかし、ここで帝国政府に思わぬ援護射撃が飛んできた。
連合との会談がもたれていた帝都東京の会場に、当代の政威大将軍の職を預かり、五摂家の一つ煌武院家当代当主の煌武院悠陽が現れたのだ。
当代の政威大将軍がこの東京にいたのは、偏に政威大将軍として最後の守りの務めを果たし、また指揮を執るためであった。
無論のこと、彼女自身が持つ権限は大きくはない。最高権力者たる地位なのが政威大将軍であるが、その実務などは周囲の人間などが担当するもの。
それをわかっていた彼女は、軍や政府に役目を預ける形で、精神的な主柱としては機能していた。
そんな彼女は、どこから聞きつけたのか、地球連合との会談が行われている場所に側近と共に現れたのだ。
彼女は、自分の登場に慌てるやら混乱するやらで対応に戸惑う政府首班を置き去りに、地球連合の代表団に対し、自ら深々と頭を下げ、謝意を述べたのだ。
形式的なところが多いにしても、武家の最高権力者が自らというのは、とてつもない大きなものであった。
慌てて、帝国政府の閣僚や担当者が彼女に倣い、いや彼女以上に頭を下げ、地球連合の救援に謝意を述べた。
無理からぬことであったが、帝国政府には地球連合の救援に対して謝意を伝えるタイミングも冷静さも書いていたのだった。
彼女のその行動は、帝国政府に冷静さを取り戻させる契機となったのだ。
そして、話の流れを確認するや、悠陽は自ら部隊を率いて戦場に赴くことを宣言した。
彼女が最前線に出る、ということは、彼女と彼女に付随する斯衛軍が行動する、ということである。
確かに悠陽が最終防衛ラインのさらに先、帝都において指揮を執っている関係上、斯衛軍も付随していることは確かだ。
それは戦術機部隊に限らず、それを支援する一般兵科やそれに付随するバックアップ人員も含まれていた。
それも、斯衛軍の中でも政威大将軍に付随する部隊だ、練度も装備も極めて整っている。つまり、動員するに不足はなかった。
遠く仙台にまで退避していた他の部隊よりはより近いし、何より戦線が迫るということもあって臨戦態勢にあった。
唯一の懸念は旧帝都まで赴く手段がないことですが、という悠陽に、その心意気を買った地球連合は輸送艦などの提供を提案。
更には付随する一般兵科の戦力などを提供し、これを帝国軍の指揮下に置くことを提案して、その採決を待った。
これを悠陽は受諾。あれよあれよという間に、最前線にして重要地域である旧帝都奪還までの算段が建てられていくことになる。
これを悠陽の越権行為というのは簡単。しかし、誰もが口をはさめず、問われる言葉に返事をするしかできなかった。
そして、地球連合側も、彼女に相応しい戦力を供出することとした。
武家社会という、C.E.世界においては過去のものとなっている制度に合わせやすい人間。
大洋連合の企業「ムラクモ・ミレニアム」に属するリンクス「一目連」であった。
685: 弥次郎 :2022/01/14(金) 20:14:43 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
- C.E.世界 融合惑星 β世界 日本列島 相模原・厚木最終防衛ライン 地球連合軍拠点
連合の後詰戦力が駐留する、帝国が用意した最終防衛ライン。
そこに、ネクストが一機西部から帰還してきた。爆発的な光の奔流はOBのそれだ。
圧倒的な速度のそれは、防衛ラインに近づくにつれて輝きと速度を緩め、やがてそれを静かな0へと収束させる。
それは、通常ではありえない減速と位置合わせ。だが、それはコジマによってもたらされた慣性制御により実現していた。
そして、ガイドビーコンに従い、一目連のネクスト「斬月」は緩やかな降下と共に用意されていた滑走路へと着陸していく。
機体が纏うPAとそこから乖離するコジマ粒子の輝きは、そのネクストを並々ならぬコントラストで彩っていた。
着地。静かなそれは、振動をほとんど立てることなく、その巨躯を地面へと下ろした。
そして、通常歩行によって斬月は用意されていたガレージへと向かい始めた。
既に斬月の周囲にはコジマ粒子の不活性化を促進するガスが展開され、無用な汚染の拡大の阻止を行っている。
また、自動化されたメンテナンスアームが激戦によって使い倒された武器を斬月から預かり、回収していく。
それらの動きはスムーズで極めて洗練されたものだ。そのエリアを抜けたころには、斬月はすべての武装を取り外し終え、素のままのフレームとなっていた。
そこまで行って、ようやっとガレージのメンテナンスベッドへとネクストは体を預け、あらゆる機能を緩やかに停止させていく。
コジマ粒子の放出が止まり、主機関であるコジマジェネレーターが停止。電力供給が停止したことでネクストを動かすあらゆる機能が止まっていく。
メンテナンスアームや作業デッキが周囲を回りながらも、機体に付着した汚れを落とし、あるいはコジマの影響を落とす液体を吹きかけていく。
そして、固定用アームが機体を固定し、全てのチェックが完了したところで、ようやっと斬月のカメラアイから光が消えた。
控えていたメカニック班が取り付いて作業を開始するとともに、コアパーツのハッチが解放され、内部から一目連が姿を現す。
それに群がるのは、コメディカルスタッフ達だ。一目連も承知していることだが、この後彼はVIPと顔合わせをすることになる。
それも、政治も絡むことになる極めて重要な案件であった。その為に戦闘後のケアを迅速に行い、準備を整える必要があった。
「そう慌てなくともいいぞ」
「そうもいかないんですよ、一目連さん」
「ええ、この後超VIPと顔合わせですから」
「あー……それは、そうだがな」
「ですから、私たちに任せてください。
ケアが終わったら、軽い休息の後でお色を整えてもらいます。段取りはできていますから、それに従ってくださいね!」
準備万端か、と真剣なスタッフたちの言に一目連は苦笑するしかない。
まあ、地球連合の肝いりなのだから当然かとも納得する。
何しろ相手はあの煌武院悠陽だ。
前線で暴れている途中で急に帰還命令が下り、その途中で事態の説明と地球連合の決定が伝達されたのは記憶に新しい。
なるほど、武家というものに対して詳しく、対応しやすいのは自分というのが適役だろう。
無論のこと、外交面で担当を行う地球連合や大洋連合の担当者がいることも確かである。
しかし、単なる文官なだけでは相手が難しい相手だ。なにしろ、政治形態的には、武のトップを務め、また政にも影響を及ぼすトップなのだから。
況や、その武のトップが自ら最前線に出て戦うということになれば、相応しいエスコート役が必要になるのだ。
とはいえ、原作を知っているだけに、なんとも新しいつながりを得ることになったものだ、と嘆息するしかない。
何しろ彼女は主要人物と深いかかわりがあり、単なるお飾りのトップとは言い難い役回りだ。
その彼女の相手を務めることになるとは思いもよらず。まあ、機体がなかったといえばうそになるのも事実であるが。
ともあれ、一目連はたくさんのスタッフたちにせかされるようにして、会談に向けた準備を整えることとしたのだ。
686: 弥次郎 :2022/01/14(金) 20:15:49 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
「お待ちしていました、一目連様」
「様はいいよ、柴崎」
「失礼を。ですが、こればかりは致し方ありませんので」
実家からのお目付け役も兼ねるスタッフの柴崎といつも通りの会話をしつつ、タブレット端末を受け取る。
起動させれば、この後のスケジュールがびっちりと書きこまれている。
その内容をざっと眺めれば、如何にこのスケジュールが政治的・軍事的な急かしを受けているのかが手に取るようにわかる。
「で、この後はこの通りで?」
「はい。斬月は輸送機に積載しメンテナンスと装備の換装を実施します。お色直しもしなくてはなりませんからね。
そして、帝都から到着予定の日本帝国政威大将軍の煌武院悠陽様および付随する斯衛軍をお迎えし、出発する手はずとなっております」
「……会談は道中で、か」
「時間がぎりぎりなんですよ。鶴の一声で派遣が決まって、あちらも相当急いだみたいですしね。
まあ、意見が全然まとまらないところに現れて一気に決めてくれたので、こちらとしても助かりましたけど」
「違いないな」
会話しながらも、クライアントとなる煌武院悠陽のプロフィールへと目を通しておく。
それは知っていることも含まれているが、それ以上のことがあった。
殊更、止まっていた政治の歯車を外側から叩き、見事に動かして見せた情報についても。
「なるほど、鳳雛か」
「そこまで一目連様がおっしゃるとは……」
「少なくとも目に力があるのがわかる。
まだ多くを知らないということもあるだろうが、目に力が宿っている。期待できるかもしれない」
少なくとも、他の五摂家などよりは、と胸中で一目連は付け加える。
原作においても、大胆にもクーデターを起こした将兵らの目の前まで赴くなど行動力があった彼女だ。
生まれの時点からすでに翻弄され、武家の中でもトップランクの生き方を続けてきた彼女が、そういった果断な意思を持つのは喜ばしいことだ。
その時点で、情勢に流されがちな凡百とは異なるという証左になっている。
「ただ……」
「ただ?」
ただ、一人の兵士、あるいは戦士としてみるならば、彼女はまだ未完だ。
すでに大器を伺わせているとはいえ、それを磨かねば、あるいは成長をさせねば何ら意味がない。
殊更、武のトップを務めるというからには、この段階以上に強くなくてはならないだろうというのは想像に難くない。
故にこそ鳳雛。鳳となり得るとしても、今はまだ雛でしかない。辛辣であり、礼を失するかもしれないが、そう評価した。
「今後、そのまま飛び立つか、否かが決まる。良くも悪くも、な」
「遠慮なしですね、一目連様」
「まあ、な……」
ともあれ、会ってみねばわからないこともあるだろう。
控室に通され、用意された衣服とメイクアップを担当する要員の歓迎を受けながらも、一目連は思う。
願わくば、彼女の行動が帝国にとっても連合にとっても良いものとなってほしい、と。
687: 弥次郎 :2022/01/14(金) 20:17:12 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。
一気に進めました。
次回は近畿上空からお送りいたします。
なお、殿下は原作の時系列から飛ばされてきましたので、紫の武御雷を持ってきます。
ビジュアル的にもばっちりですなぁ
688: 弥次郎 :2022/01/14(金) 20:28:43 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
誤字修正
685
× しかし、単なる文官名だけでは相手が難しい相手だ。
〇 しかし、単なる文官なだけでは相手が難しい相手だ。
686
×「時間がぎりぎりなんですよ。天の一声で派遣が決まって、あちらも相当急いだみたいですしね。
〇「時間がぎりぎりなんですよ。鶴の一声で派遣が決まって、あちらも相当急いだみたいですしね。
転載時に修正をお願いいたします
最終更新:2022年01月20日 10:56