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日米枢軸ルート 現代ネタ《姉妹たち》

西暦2019年12月25日 大日本帝国帝都 東京 
アジアにおけるローマと称され、新大陸におけるローマであり、世紀を跨いだ同盟国であるアメリカ合衆国とともに世界の海洋のほぼ全てを支配する超大国の一角である大日本帝国。

江戸幕府開闢から朝鮮戦争・満洲戦争・世界大戦・冷戦・日米同時多発テロとその後の対テロ戦争など、幾度の戦乱を経てなおその繁栄に陰りを見せずに揺るがず発展し続けているこの国の政治の中枢たる帝都東京は、
今日も学生、社会人、奥様方、自動人形、観光客等の多くの人が行き交い、人々はその繁栄を謳歌していた。

そんな東京の片隅にある猫耳メイド喫茶にて、帝国最大の秘密結社にして政治結社である夢幻会を構成する各団体や派閥の代表者達による緊急の会合が開かれていた。

「・・・これは本当なのか?」

当代の夢幻会会合の司会役であり、また、この超大国の事実上の長たる内閣総理大臣を務めている神崎博之は国家情報大臣が上げてきた
【欧州連合にて極秘裏に進められているレーベンスボルン計画について:極秘】と報告書に目を通し、絶句したあとにそう呟いた。

それ以外の会合の参加者(全員最高レベルのセキュリティクリアランスを保有)も同様に報告書を読むなり驚愕のあまり絶句するか、天を仰ぐか、もしくは情報を上げてきたが情報部がデマを掴まされたのではないかと疑いの目を向ける。

「残念ながら。統合情報局欧州部が珍しく働きまして手に入れる事ができました」

「・・・国防総省情報本部ならび国家安全保障局、4軍の情報機関による裏付けも取れております。その内容に誤りはないでしょう」

共同で会合に情報を上げた国家安全保障大臣と国防大臣は、驚愕している会合の面々を前にして溜息を付きながら間違いでない事を念押しする。

「しかし、こう言ってはなんだが、欧州の連中の技術でこんな事が可能なのか?」

「確かに、軍や統合情報局が欧州連合にデマを掴まされただけなのでは?」

「そうだ。こんな非人道的な事をして見ろ。奴らの政権が一発で飛ぶぞ」

一部の会合出席者からその様な声が出るが、それも当然であろう。何せ、その報告書の内容はとても信じられるものではなかったし、
近年のインテリジェンス組織、特に統合情報局の無能ぶりは彼らから統合情報局が提出した報告書への信頼感を失わせるには十分であった。

「しかし、実際に本当だった場合は我々の優位が一つ消えますぞ」

「容易な楽観論は危険すぎる。慈樹障害者介護医療院(※1)の一件でもわかる通り、我が国でも2000年代の時点ですでに技術的には可能です。技術的問題ならすでに欧州連合も問題ないでしょう」

「そうです。それに欧州連合は中東での対テロ戦争やアフリカ植民地での対応により、莫大な支出を出しています。それを縮小する為にこのような手段に出ても可笑しくはない」

逆に欧州連合と言う仮想敵国を冷静に分析している軍、特に欧州大陸でにらみ合う陸軍は実際に可能性が捨てきれていなかった。
何より、統合情報局からだけならば「ハハッ、ワロス」で返せる情報であっても、軍のインテリジェンス機関がそれを裏付けているのなら、彼らにとっては信用に足る。

「科学省としてはこの報告書の信憑性は高いと思います。技術的には不可能ではないでしょう。確かに欧州連合の技術力は多くの分野で我々に劣っていますが、それでも遺伝子工学などの一部技術に関しては我々に匹敵あるいは凌駕するものがあります」

「IOPも大まかには軍や理研と同意見だな。補足するなら、もし仮に国からの十分な注文と許可があれば施設整備に1年は必要だが、それ以降なら我社でも生産を開始する事はできるぞ。
コストも生産数次第では自動人形を下回る事すら可能だろうし、生産開始から5年、いや今なら3年あれば納品可能なはずだ。無論、反逆を犯すような可能性を最小限に抑え、必要な技術をインストールさせた状態でだ」

685: ホワイトベアー :2021/12/25(土) 23:14:48 HOST:om126193187227.23.openmobile.ne.jp
理研などのいくつもの研究所を傘下におさめている科学省や、第3世代自動人形開発の為に莫大な予算と情報アクセス権を有しているIOPなどの民間からの参加者は自身の専門分野であったり、利益の為の投資先であった為、他の参加者より詳いからこそ不可能でないと主張した。

軍はともかく、彼らもこの報告書が信頼に足ると意見を表した事で反対意見を出していた人間も黙らざるを得なくなり、頭を抱えるか天を仰ぐしかなかった。

「つまり、彼らがこれを実際に実戦配備した可能性は大と言う事ですか・・・まったく、欧州侮りがたしとでも褒めて言うべきでしょうか」

それまで沈黙し、会合の様子を伺っていた辻大蔵相(憂鬱辻ーんの転生体)は小学生くらいの猫耳メイド(自動人形)が持ってきたコーヒーを一気に飲むと溜息をつく。

コーヒーカップの隣に置かれていた資料には、ソ連軍の戦闘服や装具を身に纏い、アサルトライフルや分隊支援火器などの火器で武装した状態で、数十人単位の全く同じ顔立ちや体型の少女達が整列している写真が載せられていた。

「そう言えば欧州連合、いやドイツとソ連はこれを《シュヴェスター》、《スィストラ》つまり《姉妹》と読んでいるようですよ」

「姉妹達か。まるで《マブラヴ》の世界だな」

「どちらかと言えばスター・ウォーズだろ。こちらは見た目はあれだがロボット兵士なのに対して、向こう側はクローンやシディアス卿もいる。ピッタリじゃないか」

幾人かは自分を保つためか軽口を叩きあうが、それも長く続かず、思い沈黙が喫茶店を支配する。
この日、喫茶店から出る人間はいなかった。

(※1)
慈樹精神医療介護院
アラスカの田舎に夢幻会が転生について研究するために設置した機関。
母体は陸軍の731部隊の転生者研究員達で、1940年代の日本大陸改造政策とそれに伴う軍縮により陸軍の手を離れ、表向きは国立の精神病院となりつつも内務省傘下の研究機関となった。
冷戦期に入ると、転生についての研究以外にも以外の公ではできない研究や人体実験を行う機関としても利用され、上海などの租界内外にあふれる大陸難民や国内の死刑囚など次々と被験体の幅を広めていく。そのため、研究内容も転生についてよりも生物学やサイバネティックスの方面に重きを変化させていく。
冷戦終結時には様々な要因から夢幻会ですら完全に組織を把握しているとは言い難く、犯罪組織を使って一般の日本人やカナダ人などを被検体として利用するために誘拐するなど暴走していた為、
IOPの子会社であるGKMSの本社直轄特殊部隊とアラスカ支社の部隊が粛清の為に派遣され、関係者や被検体は全員処分された。

なお、その研究データ等はIOPが継承し、日本の生物学やそれに関連する応用科学・総合科学の発展に貢献した。

夢幻会
大日本帝国最大の政治系秘密結社。
様々な組織や派閥の談合組織である為、政府に大きな影響力を有する秘密結社でありながら江戸時代初期から現在までの間まで継続している。
もともとは転生者を中心とした組織であったが、時代が経つごとに非転生者の参加者の割合が増えていき、現在では転生者5割・非転生者5割ほどの割合となっている。

686: ホワイトベアー :2021/12/25(土) 23:17:41 HOST:om126193187227.23.openmobile.ne.jp
以上。欧州連合が日米陣営の自動人形に対して用意するかもしれない回答の一つとなります。

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最終更新:2022年01月20日 12:29