783: 名無しさん :2021/12/30(木) 20:23:18 HOST:sp1-79-83-18.msb.spmode.ne.jp
近似世界
日本包囲網と思わぬ情勢
「まさか、そうなるとはねぇ……」
2020年代、日本を挟むように存在する太平洋の両岸には、十分に大国と言ってもいい3か国が存在する。
アメリカ、中国、そしてロシアだ。
事態は60年代の第二次国共内戦終結後まで遡る。
中国……中華人民共和国は、共産党の元、米国傀儡の民国政府を打ち倒してほぼ全土を統一したのは良いものの、その後に勃発した中ソ国境紛争やスターリン批判問題でソ連との関係が悪化。
南側では日本陣営に近い明との間で明中国境紛争が発生し、日本との関係も冷えきっていた。
この情勢下で中国は、
アメリカとの関係を急速に改善していく。
アメリカとしても、ソ連の背後を脅かし日本陣営に楔を打ち込める位置に存在し、なおかつ失った筈の大人口市場が戻ってくるとあって中国を歓迎した。
その後も貿易自由化が進展するにつれ、日本陣営の巨大経済圏に対抗する為の安価な中国人労働者が欠かせない存在となっていった。
こうして
アメリカの製造業などは人件費の安い中国へと進出し、中国もまたそれを受け入れて経済を発展させていく。
90年代にソ連が崩壊して太平洋方面での影響力がほぼ消失した頃には、米中関係は蜜月と言ってもいい程だった。
しかし、その後。
イラクのサウジアラビア侵攻から始まった湾岸戦争を奇貨に、中東における日本の影響力に対抗する為にサウジアラビア駐留を始めた
アメリカ。
それに対し、メッカとメディナという二大聖地がある地に異教徒の軍が居座る事を良しとしない組織は、過激派となって反欧米テロを繰り返した。
そして、2001年のアメリカ同時多発テロをきっかけに、アメリカは中東という泥沼に嵌まり込んでいくこととなる。
そんな中で、発展を続けた中国は、これまで育てた自国資本の放出先を海外に求め始めた。
しかし、近場は全て日本陣営によって固められているか、人口希薄のシベリアだった。
そこで目をつけたのが、南米。
特にアルゼンチンは、フォークランド紛争の際に中国がアルゼンチン寄りだった為、両者は急速に経済的繋がりを強めていった。
また、資源を求めてアフリカにも借款等で経済進出を進めていく。
しかし、南米において中国の影響力が高まることは、南米を自らの裏庭とする
アメリカにとっては看過できない事だった。
アフリカにおいても、企業の進出にて影響力を確保していた欧州諸国との摩擦が高まっていった。
アルゼンチンが中国へと接近していく中、隣国であるブラジルは
アメリカ寄りの態度を取り始める。
それに伴い、これまでの利害関係によって南米のブロック分けが始まった。
経済的な摩擦は政治的問題にも飛び火し、関税障壁や輸入停止といった措置は、人権問題等まで巻き込んで両者の対立に火を着けていった。
もはや、状況は「米中新冷戦」といっても過言ではない。
立ち直り始めたロシアも、ウクライナへの対応を始めとした東欧や黒海沿岸での対外進出や威圧的資源外交を強めていく。
アルメニア・アゼルバイジャン紛争に強く反応したトルコを始めとして、西欧諸国も中露の人権問題をしきりに政治問題化し、ピリピリし始めていた。
そして……日本は見事に盤外の存在と化した。
「いや、まさかね……米中の日本挟撃で太平洋新冷戦が起こるとは考えたけど……そうなる前に人の頭上飛び越して睨み合いが始まるとは思ってもみなかったよ」
中国は言う。
『かつて世界中を植民地として支配し、今でも自らの価値観で他国を塗り潰そうとする傲慢な西洋諸国へと対抗する為には、東洋の大国である我が国と太平洋の盟主である日本の連帯が必要なことなのです』
アメリカもこちらに手を伸ばす。
『日本と
アメリカ、自由と民主主義という共通の価値観を有する我々が連携すればこそ、強権的・独裁的な政治で世界を覆わんとする国々に対抗できる。我々には日本の協力が必要だ』
ロシアはほどほどにビジネスしつつなるべくこちらに関わり合いたくないといった雰囲気で、欧州はたまに非政府のリベラル勢がうるさいだけで、国としては何事も無く付き合うだけ。
「で、どうする?」
「まぁ、焦って結論を出す必要も無いでしょ。ウチは単独でやっていけるし」
『JAXAの発表では本日、小惑星イトカワでのクラスターイオンエンジンによる軌道変更実験が成功─────将来的な隕石落下を回避する技術への期待─────』
『月面有人基地稼働にむけて、運び込まれた小型原子炉が発電を開始───月軌道プラットホームではお祝いのパーティーが───将来的な探査にむけて火星地表に設置された「酸素・メタン無人生成装置」の────』
キナ臭さを増していく世界を尻目に、日本は今日も平和だった。
784: 名無しさん :2021/12/30(木) 20:26:05 HOST:sp1-79-83-18.msb.spmode.ne.jp
多少短めですが以上です。
とくに大きな戦争はありませんでしたのでそこそこ平和です()
最終更新:2022年01月20日 12:53