450: 加賀 :2022/01/10(月) 21:47:59 HOST:softbank060072032201.bbtec.net
「まぁ斯くしてパーティーの準備は整ったわ」
「盛大過ぎるパーティーですねぇ……」
瑞鶴の言葉に青葉はそう返した。
「トラック諸島沖海戦で私の飛行隊は壊滅したけど、一航戦が主体となっていた601空のが補充されたから練度的には低下したけどそれでも南太平洋海戦頃の練度を維持しているわ」
「確か母艦飛行隊にも空地分離方式が採用されていたんですよね」
「そうよ。601空を筆頭に602空、603空、605空、606空、607空が各それぞれの航空戦隊の空母に配当されたのよ」
「成る程」
「そして基地航空となった一航艦はヤップ島に小沢中将が司令長官として司令部を構えていたわ。陸攻隊もヤップ島に避難していたから損耗も無かったわ。そして……6月11日に米第五艦隊がサイパン島及びテニアン島等のマリアナ諸島を空襲したわ。でも待ち構えていたのは……」
「450機近くの陸海戦闘機隊……」
『何でこんなにジャップがいるんだよ!?』
『全機落ち着いて対処せよ!! くりかーー』
『隊長が落とされたぞ!!』
『後ろにジークが取りついた!? 誰か助けてくれェ!?』
『撤退だ!? 撤退するんだ!!』
サイパン島攻撃隊は散々だった。第五艦隊に帰還出来たのはF6F40機 SB2C22機 TBF16機という有り様でありそれ以外は未帰還であった。
「マリアナ諸島の航空戦力を見誤っていた」
報告を受けたスプルーアンスは静かにそう呟くだけだったという。だが米軍は直ぐに航空機の補充を行ったので然したる損害は無かった。しかし喪失したパイロットは二度と帰って来ないのだ。
「それでもスプルーアンスはマリアナ諸島への空襲を強行したわ。まぁキング作戦部長から急かされていたらしいとの事は蒼鶴から聞いていたしね」
「成る程……」
「だがそれでもマリアナ諸島の被害は軽微だったわ。戦闘機隊の奮戦によって米第五艦隊の航空戦力は日に日に練度は落ちていった。そこで第五艦隊は旧式戦艦部隊を押し出してサイパン島を艦砲射撃する事にしたわ。そして6月15日、遂に米軍が力任せでサイパン島に上陸を開始したわ。米軍は艦砲射撃で陸軍は戦力を低下させていると思っていたけど……」
「要塞化していたので軽微だった……と」
「本当にそうよ」
瑞鶴はそう言いながら三本目のタバコ火を付けて吹かす。
「そして米第五艦隊がサイパン島に釘付けになっている時に……第一機動艦隊は15日にはギマラス泊地を出撃して18日には第五艦隊との距離南南西220海里まで接近していたわ」
「よく……バレなかったですね?」
「まぁ松型の皆が対潜掃討で15隻も米潜水艦を撃沈していたら録に哨戒も出来ないわよ。それに南南西から攻めたから向こうからしてみたら見当違いの方向から来た……って事になるわ」
「そうだったんですね……」
「そして……運命の6月19日0632……そこから始まったわ」
451: 加賀 :2022/01/10(月) 21:48:42 HOST:softbank060072032201.bbtec.net
「千早大尉機より電文!!『敵機動部隊、方位ーー』」
「長官」
通信兵が千早大尉機よりの電文を読み上げ読み終えると山口の傍らにいた古村参謀長が呟く。
山口は全員を見渡し頷いた。
「第一次攻撃隊全機発艦、始めェ!!」
飛行甲板で待機していた一航戦の三空母、二航戦の三空母から第一次攻撃隊が発艦を開始した。その数、第一次攻撃隊として選ばれたのは250機であった。
第一次攻撃隊が発艦し米第五艦隊への海域へ向かった後、山口長官は電文を最大出力で発信させた。
『Z発令0745 Y実施0930予定。以下座標――』
電文を受け取った第一航空艦隊司令部でも小沢中将は山口中将と同様に攻撃隊発進を命令、ヤップ島、硫黄島で待機していた陸攻隊と護衛の零戦隊が離陸し米第五艦隊に向かうのである。その数、第一次攻撃隊360機、第二次攻撃隊510機と鍛え抜かれた精鋭達だった。
「後は攻撃隊からの報告しかなかった。千早大尉機から逐一で第五艦隊の状況は来ていたし千早大尉も命懸けだったろうよ」
「そういや千早大尉の彩雲って……」
「……魔改装された試作3号機の彩雲よ。確かYZ作戦で鹵獲した100オクタン価のガソリンを使用しての速度が730キロを越えていたらしいから……」
「米戦闘機隊からしたら悪魔的な機体じゃないですか……」
「だって倉崎の爺が関わっていたんだもの」
倉崎、マジチートである。
「そして第一次攻撃隊は予定通りに0930には米第五艦隊上空に到着したわ。本当なら第五艦隊も戦闘機隊を上げてうたけど、基地航空隊の彩雲隊がアルミ箔製の吹き流しで米戦闘機隊を四方八方に誘導させたから到着した時には30機程度しかいなかったわ」
『敵戦爆連合、数250あまり。低空進行!! 輪形陣内部まであと10分!!』
その悲報を聞いた時、スプルーアンスとミッチャーは軍帽を叩きつけた。
「これではミッドウェーのナグモ・タスクフォースではないか!?」
この時、第五艦隊では第一機動艦隊を漸く発見した事で攻撃隊の準備中であり飛行甲板や格納庫では対艦装備を施したSB2CやTBFが満載して待機していたのだ。しかも戦闘機隊発艦を優先していたので発艦は遅れるばかりだった。
そして残っていた30機程度の戦闘機隊は護衛の烈風隊に1機残らず撃墜され全滅しその隙を突いて攻撃隊の誘導役に来ていた7機の彩雲が高度4500から第五艦隊上空に侵入し腹に抱えていた燃料タンクを次々と投下した。
投下した燃料タンクは落下途中でパカリと割れ、中から30センチ程度のアルミ箔を大量に撒いたのである。
「VT信管対策だ。タップリと味わってくれ!!」
そして第一次攻撃隊隊長の村田重治中佐は発した。
「全軍突撃せよ!!」
村田機からト連送が発信され攻撃隊は一斉に攻撃を開始したのである。
「敵機直上ォォォォォォォォォォォォ!! 急降下ァァァァァァァァァァァァ!!」
ミッドウェーで日本海軍のトラウマになった言葉はマリアナで米海軍のトラウマになったのである。
452: 加賀 :2022/01/10(月) 21:50:55 HOST:softbank060072032201.bbtec.net
- サイパン島?本当に難攻不落になりました(良かったの東條
- 溶ける米航空戦力、でも増える航空戦力(意味分からん
- アルミ箔はやっぱいりますよねぇ
次回、『炎上』
最終更新:2022年01月29日 11:15