353: 弥次郎 :2022/01/23(日) 23:04:08 HOST:softbank126066071234.bbtec.net

憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「煌武院、立つ」5.5



 帝国軍と斯衛軍、そして地球連合軍による合同での京都市街地奪還は、半ばまで進行していた。
 当然といえば当然だ。地上と地下を活動するBETAに対し、陸空の両面でアドバンテージをとるのが合同軍なのだから。
 そして、ここにきて連合軍が別個で放っていた戦力が効力を発揮し始めていた。
 即ち、BETAの地下侵攻ルートの掃討部隊の活躍による、BETAの地下侵攻の阻害が始まったのだ。
先遣として送り込まれたUNAC、そして後続のハイエンドノーマル部隊により、次々と張り巡らされていた地下道がクリアリングされていくのだ。
これによって、後方に突如としてBETAが出現して包囲されるというリスクが減ったのである。
 加えて、地下観測ユニットが設置されたことにより、母艦級の移動や出現をリアルタイムで計測できるようになったのも大きいだろう。
つまり、BETAは搦め手とよべる地下侵攻への対策を打たれており、元の通りの数の平押ししかできなくなりつつあったのだ。

『地下ルートの制圧はだいぶ進んで、もうマッピングも進んだみたいね』
『……驚きましたよ、ここまで広い範囲を採掘していたとは』
『客観の1998年から1年足らずで掘るなんて、すごいものよねー』

 地球連合軍、正確には企業連合軍の空中母艦に一時帰投した二機のネクスト「サキモリ」と「フツノミタマ」は補給と簡易の整備を受けていた。
常識外の戦闘をこなし、膨大な数を叩き伏せていくネクストは、同時にそれだけ消費をするということである。
射撃戦を主とするサキモリはその弾薬を武器ごと交換することで、次なる先頭に備えて準備を進める。
また、近接格闘戦主眼であるフツノミタマに関しては、弾薬の補充もそこそこに、大量に付着したBETAの体液やら汚れを落とす作業にも追われていた。
 その間、コクピットで若干の暇を持て余す二人のリンクスはそんな他愛もない戦場の話をしていた。
 作業の間に、戦場で収集された情報が次々と届けられてくるのだ。それも、膨大な量。
 AMSを介して複列的に処理していなければ、目を回すほどの量だ。

『けど、それの逆侵攻も順調。警戒すべきは、あの大型種だけってところかしら?』
『まだわかりませんよ。いきなり新種が、まだ未確認の種が出てくることも十分あり得ます』

 今のところは、とタケミカヅチは付け加える。
 BETAの進化能力や適応能力に関しては、散々考察されたり二次創作で想像されたりしているが、どれも不安定だ。
 ただ、光線級が地球におけるローカルモデルというのは分かっている。岩盤を溶解させる原種を基に開発されたということも。
 ほかにも確認されいないだけでも複数の種が、門級や重頭脳級といった種類も存在している。
 今はまだ誕生してはいないであろうが超重光線級など人類の産物に影響されて誕生した個体も存在する。

(あるいは…)

 タケミカヅチは、自分達の乗るネクストを見る。
 コジマ粒子やという存在にBETAが触れた時、どういう応答を示すであろうか?そう考えてしまう。
 いや、コジマだけではない。MSの用いるミノフスキー粒子やミラージュコロイド粒子など、様々な要素が持ち込まれている。
二次創作などでは無双だけではつまらないと、BETAが独自進化する流れがよくあったものだ。
それと同じようなことが起こってしまう可能性は決して0ではないし、BETAが何かしらの変化を起こす可能性はあり得る話だ。
 他方、あくまでそれは創作上の都合であり、BETAの能力は高くないとみる意見もある。BETAはあくまで作業機械にすぎない、と。
必要な資源を探し出し、採掘し、打ち出して回収させるための作業工作機械。宇宙でも活動可能な炭素を主軸として作られた生体ユニット。
故にこそ、戦術機が登場しても、それを航空機ほど脅威とみなさず、現在ある種だけでごり押ししているではないかと。

『タケミ君……タケミ君?』

 そこで、タケミカヅチは自分の名が呼ばれていることに気が付いた。知らず、深く黙考してしまったようだった。

『あ、すいません、黒子先輩』
『いいのよ。それで、新種がまだいるかもしれないって話だけど、どういうのがいるのかしら』
『……何とも言えませんね。倒しやすい分にはまだいいですが……人間に寄生されたら困りますね』
『なるほどね。目に見えるだけじゃない、とても小さな種がいるかもしれないということ?』

354: 弥次郎 :2022/01/23(日) 23:04:54 HOST:softbank126066071234.bbtec.net

 その興味の言葉に、タケミカヅチは頷きを返す。
 公式で、BETAは体を細菌レベルまで分解し、再構築できるという設定がある。
 要塞級がBETAの個体を運搬する際も、個体を液体のようにし、展開する際には3Dプリンターのようにして出力すると聞いている。
採掘した土から元素をより分ける際の能力を応用したものとも聞いているが、ともあれ、そのような性質を持っているのは確かだ。

『BETAについての研究は連合でもまだ始まったばかりです。
 それも、これまではこの世界が収集した数十年分のデータの解析に費やされていました。
 本質に迫るには、まだ時間がかかるでしょう』

 まあ、分かっていることもいいのだが、と心の中で付け加える。
 夢幻会ではすでにある程度の答えは知っている。それを迂闊に表に出せないのも、また事実だ。
 その時、AMS越しに通信が入った。

『タケミさん、こちら作業班です。フツノミタマの作業の方はほぼ完了しました』
『了解。状態は?』
『ばっちりです。付着していたBETAの体液は回収して解析に回すそうです。けど、あんまり気分がいいものじゃないですね、ありゃあ』
『じゃあ、気を付けるとしようか……アセンは?』
『ご注文通りそのままです。腕部パーツは念のため予備と交換してあるので、接続時には誤差に注意してください』

 了解、と返事を返す。同時に、作戦司令部からの指示が更新されて、詳細なデータが送信されてくる。
 どうやら帝国軍はいよいよ旧京都市街地に踏み込み、補給を受けつつも、地点の確保に入ったようだった。
 そして自分の役割は、押し寄せてくるBETAの数を可能な限り減らし、後方への負担を減らすということだった。

『黒子先輩、どうやら出番みたいです』
『そうね。私も呼ばれたみたい。あら……』

 通信を繋いだ先、黒子御前も出番のようだった。
 彼女のネクスト「サキモリ」は武装を一部変更し、グレネードランチャーのほかにミサイルポッドを搭載している。
 そして、彼女は情報に目を通すと驚きの声を漏らした。

『私、一目連さんの援護に向かうことになったわ』
『師父の、ですか?』
『正確には、一目連さんが張り付いている帝国軍の援護ね』

 上空からの火力支援ね、と言いながら、黒子御前はコクピットブロックをコア内部に収納させる。
 同時に、スタッフが各機材やら装置を動かして、出撃に備えた準備を行っていく。

『ということは、戦場に出ている将軍殿下に戦場で拝謁ですか…』
『そうなるわねー。私はタケミ君より後方だから、出来るだけ数を減らして楽をさせてね?』
『鋭意努力しますよ』
『こらそこ、棒読みしないー』

 ふざけ合いつつも、タケミカヅチの乗るフツノミタマもまた、メンテナンスベッドから身を起こし、出撃の準備を整えていく。
 短い休息の時間は終わり。
 そして、また翼を持った山猫たちは戦場に赴くのだ。
 今日も、明日も、またその次の日も。来る日も来る日も。

355: 弥次郎 :2022/01/23(日) 23:05:44 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
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最終更新:2022年01月29日 13:47