649: 弥次郎 :2022/01/28(金) 22:48:52 HOST:softbank060146116013.bbtec.net
憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「煌武院、立つ」8
帝国軍および帝国斯衛軍による旧京都の奪還という第二段階完遂を以て、宵星作戦は第三段階へと移行する。
即ち、ハブたる京都の拠点化を利用した多方面への展開である。
新潟方面から西進してきた部隊と、東海地方を突き破った部隊の合流と再編を行う空白地である京都を得ることで、大軍が渋滞なく動きを継続したのだ。
この旧帝都での補給と再編を終えて、さらに西に進むべく分岐した部隊はいくつかに分かれることとなった。
中国地方日本海側を進む主力集団。
瀬戸内海の島などの解放も含む任務を帯びた水陸両用機を含む部隊。
瀬戸内海側の四国を担当する企業連合の機甲機動戦力。
太平洋側の四国を担当することとなる帝国海軍の艦艇と揚陸艦などを含む日本帝国の戦力。
この4つの集団は旧帝都京都に敷設された司令部にて、東京の政府首脳部などとの協議や連絡を行い、準備を行った。
連合については事前にプランが策定されていたということもあり、すんなりと役割分担は解決することとなった。
しかし、ここでこじれたのが帝国であった。
もっと具体的なところを言うと、帝国軍と斯衛軍と政府と武家でこじれたのである。
身もふたもないことを言えば、負担の押し付け合い。ついでに言えば出場枠のと名誉の奪い合いが起こったのだ。
帝国の戦力で即応できた部隊は、すでに第二段階の旧帝都奪還ですでに消耗しきっており、それ以上の戦闘継続は不可能であった。
最精鋭戦力が全力で戦い、京都を奪還できたことは僥倖。されども、そこで息切れしてしまったのだ。
そんなわけで、政威大将軍の煌武院悠陽率いる親征部隊は旧帝都京都守護という名の待機になった。
では、誰がバトンを引き継ぐのか?それが将軍率いる親征部隊の後から準備を整えた帝国の戦力ということになる。
鶴の一声で一気に動き出せないという弱みこそあれど、数的な主力である彼らは政治的な思惑もあって出場することになった。
ただし、その戦力的価値やフォローに回せる戦力に限りがあることなどを考慮すると、その担当地域は狭くなった。
上記のように主戦場たる中国地方解放戦線ではなく、サブといえる四国奪還に回されたのもそれが理由だ。
名誉と今後のためにも役割は与えるが、大損害など被ってくれるなという連合の意思が優先された。
しかし、その四国、しかもその半分という狭い地域の奪還に誰がどれくらいの戦力を出すのか?
付随する名誉や戦後の発言権などを考えてしまい、誰もが奪い合いとなったのである。
帝国軍は政府が抱える軍ということもあって参加と言いたいところであったが、将軍が親征したのだからと斯衛軍も譲らない。
さらに仙台に先に退避していた五摂家をはじめとした武家のトップ階級たちが自分たちが行くまで待てと言い出す。
政府としてはそこらへんのバランスをとった混成を提案するのだが、武家側の反発もあって頓挫する。
そして政府内意見としても、武家だけにいいところをとられては文民統制などの観点から問題ありという声が上がる。
650: 弥次郎 :2022/01/28(金) 22:49:44 HOST:softbank060146116013.bbtec.net
ここに上乗せされたのが、前述の通り損耗を気にしたが故の、いわゆる出場枠における枠順の争いだった。
連合の支援は限定的。これまでに例を見ない数の侵攻があり、また、新種のBETAが出現している情報は誰もが足踏みするのに十分すぎた。
こうして誰もが戦力の消耗や危険な前衛に立つことを嫌い、押し付け合ったのだからまとまらない。
連合としては早いところ戦力を出してくれ、と言いたいところであった。
どうせサブの戦線にすぎず、全部自分たちでやるのがまずいから出場を要請したのであって、そこまで深刻な問題ではないのだ。
というか、将軍が自ら戦線に赴いて戦っている間にそこら辺の打ち合わせをしていなかったのかと、あきれさえもした。
なまじか、トップである悠陽が自ら連合と交渉して自分の舞台で戦線に赴くという、連合的に点数の高いことをしただけあって、対比で悪く見えてしまった。
将軍は自らの危険も飲み込んだうえで自分から先頭を切って出撃したのに、そんなに我が身がかわいいかと見えてくる。
というか、話し合いをして役割分担を決めるのはいいとしても、こっちは待たされているのだが?とも。
特に追い打ちをかけたのが五摂家の使いの、五摂家当主たちの発現であった。
意訳すれば「自分たちを活躍させれば皇帝に謁見する名誉と帝国から勲章を与えてやろう」。
思わず地球連合担当者と帝国政府の外交官と居合わせた武家の人間が真顔になる程度には、やばい発言であった。
確かにそれは国内向けでは極めて名誉なことであろう。
だが、他国、しかも複数の国家の連合にとってそれは良いとは言えないことだ。
(まさかな……)
冷や汗をかく帝国政府の外交官は察した。
五摂家の面々は、日本帝国との交渉などを担当するのが日系人国家である大洋連合であるから通用すると考えたのだと。
つまるところ、彼らの頭の中にある序列には皇帝>武家(五摂家を筆頭に以下略)>一般家庭というものがある。
同じような人種による国家であるならば当然通用する序列なのであり、それに付随する名誉もまた同じと推測したのだ。
彼らの国家の全容についての情報は未だに共有しきれておらず、国家像についてはおおむね似ているとしか認識は広まっていない。
何しろ情報量があまりにも多すぎたし、帝国だけでなく世界各地であらゆる現象が起こって余裕が乏しかったのもある。
ともあれ、そういった無知と自らの常識が他者の常識と勘違いしたが故の無法は、余りにも危うい発言であったのだ。
さらに、今回の軍事作戦は帝国は援助を頼む側であり、頭を垂れて依頼しなくてはならないし、感謝しなくてはならない立場にあったのだ。
それこそ、武の筆頭、政威大将軍にして煌武院家当主煌武院悠陽が宵星作戦前に自らやったようにだ。
そもそも、明星作戦以降に接触し、何くれと支援をしてくれていた国家に対し、自分の立場を上にしてそのように尊大にふるまうなど、アウト以外の何物でもない。
これ以上馬鹿の代弁者をしゃべらせれば、帝国は大恥どころでは済まなくなる。帝国の誰もが、そう考えた。
結果的に、その五摂家からの使いをその場から物理的に退出させたことで、帝国側の意見は一致を見て、そこからは速やかに戦力供出の割り当てが決定した。
斯くして、帝国は何とか第三段階への参加を確定させ、行動を開始したのであった。
651: 弥次郎 :2022/01/28(金) 22:50:30 HOST:softbank060146116013.bbtec.net
さて、そんな交渉事が進んでいる間にも、状況は進行していく。
帝国軍は第三段階の作戦に送り込む戦力の移動やら準備に追われることになった。
帝国政府に関しては帝都東京において相変わらず折衝などを続けて、今後の動きについて話し合っていた。
遠く仙台では交渉の失敗を知らされた五摂家の当主やその周辺の人間たちが発狂したりしたが---まあ、些細な事であろう。
もっと広い範囲を見れる視点に立つと、帝国の情勢が見えてくる。
帝国は、帝国の一般市井は、G弾がいきなり投じられた明星作戦のショックもそこそこに、それ以上の事態に直面した。
つまり、融合惑星の誕生と地球連合という国家間の垣根を超えた連合組織との接触である。
さらに言えば、G弾の起爆に付随して跳躍者や受信者などが大量に発生して情勢やら何やらが変化したことも追い打ちをかけた。
とどめが、BETAの突如の空前絶後の規模での侵攻だ。よくわからない組織である地球連合のことより、よほどショックが大きかっただろう。
客観1999年は旧帝都京都の失陥から1年足らずであり、明星作戦から一か月と経たずに大規模侵攻が来たとなれば、そのショックは察するほかない。
もはやこれまでと、逃げ出すことを諦めてしまう帝国民さえもいたといえばわかるだろうか。
しかし、そんな情勢がいきなりひっくり返され、地球連合が救援してくれてとなれば、再び感情がひっくり返ったのだ。
まして、若くして政威大将軍という重職を預かる煌武院悠陽を自ら親征するという情報が出回れば、なおのこと。
ここには将軍の親征という事態に半ばやけっぱちになった煌武院家や帝国政府の発表が流されたのもある。
つまり、うまくいくかどうかもわからないが、カンフル剤として期待したというわけだ。
さらにここに追い打ちをかけたのが、連合の広報だった。
民間や地球連合および大洋連合のそれを動員したそれは、各地での地球連合の戦力の活躍を報じた。
単なる新聞や写真だけではない。映像やラジオなども含む、この時代のマスメディアも動員してのものだった。
それこそ、帝国政府中枢の面々は部隊に付随する広報部隊によるいわゆる中継放送を見せられたし、何ならばパイロット視線での活躍も見れた。
これらに京都奪還の成功というとんでもない爆発物を交えたら、どうなるか?
ここでは敢えて詳細まで語るまい。
帝国を見捨ててあまつさえG弾を放り込んだ米国や国連への評価が底値を割った。
代わるように、地球連合という組織の力の一端を見て、帝国一般市民にまで届く支援をやっていたことも含めて株価が上昇。
とどめに、煌武院悠陽という頼りなさげな少女が、武家のトップとしての役目を全うし、「魅せた」のである。
これは、あくまで生じた結果にすぎない。
しかして、結果とは次の現象を引き起こす原因となり、次の流れを決めてしまうことになる。
これまでの思考のフレーム構造に、地球連合というものが無理やり接合され、あるべき流れが大きく変わったのだ。
後世において、この時に参加していた勢力は余りにもうまくやりすぎたと、そう評されることになった。
地球連合は、その強すぎる常識外の力で他を恐怖させた。
帝国は、非常時故にこれまでに積み重ねてきたところに、助かるためとはいえリスクも弊害も特大のカードを切ってしまった。
将軍や武家は、五摂家やその周辺の武家という中で、煌武院だけがとびぬけすぎてしまった。
所詮は人がなすこと。すべてが後々のことまで含めてうまくいくなどという、そんな当たり前のことを示したのだ。
機械仕掛けの神(デウスエクスマキナ)などというものはなく、現実という名の演目は果てしなく続いていく。
将軍である煌武院悠陽は確かに立った。
そして、それを発端に、あるいはターニングポイントとして、帝国を含むβ世界は大きく動き出したのだった。
652: 弥次郎 :2022/01/28(金) 22:51:00 HOST:softbank060146116013.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。
やっとひと段落。
一言で言えば、やりすぎたのだ…
最終更新:2022年01月29日 13:51