119: 弥次郎 :2022/02/04(金) 22:53:13 HOST:softbank060146116013.bbtec.net

憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「醜貌割鏡/習貌歪鏡」



 β世界日本帝国と地球連合---の中でも同国を担当する大洋連合の外交は次なるステップへと踏み出した。
 それが変わったのは、やはりというべきかBETAの突如としての大侵攻が契機であろう。
 端的に言えば、日本帝国は滅びの危機を迎え、それを大洋連合が圧倒的な力で救援した。
 それまでは情報交換や人道的支援を主眼とし、状況把握に努めていた地球連合が初めて行った本格的な武力的および政治的介入であった。
その結果として、日本帝国は存亡の危機を潜り抜けることに成功したのだ。
日本帝国だけではない。最前線国家であったイギリス、極東ロシアなどでの大規模なBETAの侵攻は阻止された。

 だが、重要なのは国家の存亡を救われた、ということである。
 当の日本政府からすれば、役に立つかどうかわからないというか半信半疑で地球連合の参戦を受け入れただけであった。
堂控えめに見ても状況的には最悪であり、如何に担当国である大洋連合が見た目には強いと推測はいても、大多数の意見としては焼け石に水と思っていた。

 ともあれ、この大攻勢を跳ねのけ、あまつさえ逆侵攻を行い、本州全土の奪還を成し遂げてしまったのは大きかった。
何しろ、危機を救われて国土奪還という悲願を達成することができたので、米国などとは比較にならない「借り」ができてしまった。
 国家間の発言権の比重はどう考えても大洋連合側に傾き切っており、かろうじて雀の涙ほどの傾きが帝国に残されている有様である。
これを、強大な力を持ち助けてくれた国家とのつながりを得たとみるか、払え切れない代償を支払う苦労をしょい込んだとみるかは、見方によるであろう。
 確実に言えることは、どんなに拒否を示そうとも、最早帝国は大洋連合そしてその母体である地球連合を無視しえない、そういうことである。

 さて、天川作戦成功による本州奪還の喜びもそこそこに、地球連合及び大洋連合との交渉を開始した帝国だが、いきなりずっこけた。
 そもそも、地球連合とは?大洋連合とは?というところから過半がスタートすることになっていたからである。
融合惑星の誕生の引き金を引いたこのβ世界、余りにも多くの事態が発生し、そこに地球連合がやってきたのだ。
身の回りの情報などを確認したりするだけで手一杯な者が多く、未知なる国に対して意識を割く余裕がなかった。

 加えて、明星作戦時の米国の独断でのG弾の投入が帝国の世論における対米不信ひいては国外不信に拍車をかけていた。
そんな中でいきなり接触を持ってきた国をいきなりもろ手を挙げて歓迎するなど難しい情勢であった。
かろうじて同じ日系国家(より正確には大洋連合は日系を主体とするだけだが)と接触したという面で何とかつながっていたのだ。

 とどめに、帝国全体でもあったことであるが、一部の人間が同じ日系国家ということで勘違いをしでかしたまま行動したというのが痛かった。
天川作戦時に五摂家が図々しくも大洋連合に要求したように、自分たちの常識や状況が相手に理解され、多少無茶を言ってもいいだろうという慢心を招いたのだ。
それが武家の地位だとか歴史だとか格などで理由付けして、あまつさえ皇帝さえも引っ張り出してきたのだから、大洋連合の心証は言うまい。
大洋連合が外交官や交流を行う武官に華族や皇族、あるいは古い家柄の人員を混ぜ、積極的に前に出したのもそれへの対処のためだった。
要求を突き付けられた側の大洋連合も、割と腹に据えかねた、ということか。

120: 弥次郎 :2022/02/04(金) 22:54:08 HOST:softbank060146116013.bbtec.net

 ともあれ、交流が始まったことで、帝国は大洋連合の出方を窺うこととした。
 すでに外交的失策は少なからずあったので、割りと本気で危ういと思っていたのだ。

 幸いにして、大洋連合の方針としては現政権---榊政権の支持と援助で固まっていた。
これが組織的抵抗をさせている間に自分たちだけが逃げ出すような性根の腐った連中ならば相応に処理しただろうが、戦う気概を持っているならば歓迎できた。
何しろ、国家を乗っ取るというのは面倒が付きまとう。不可能ではないのだが、やると労力が増えてしまうのだから。

 加えて、これまでの交流などの中で判明していたことであったが、武家という帝国のもう一つの柱との交流も推進されることとなった。
異なる歴史をたどったがゆえに、その武家というシステムは帝国という国家にとって切っても切れない関係にある。
それこそ、五摂家が外交上の失言をやらかしても簡単には処断できない程度には、張り付いているといっても過言ではない。

 この際、大洋連合が積極的に外交を進めたのが、政威大将軍である煌武院悠陽を送り出した煌武院家であった。
何しろ、彼女は現職の政威大将軍であり武家のトップである。周りがどうこう言ったところでそれは揺らがぬ事実であった。
 加えて、彼女は宵星作戦において自ら軍を率いて戦い、日本帝国のメンツを保った張本人であったのだ。
地球連合軍にまるっきり任せるのではなく、帝国もまたBETAと戦うのだという気概を見せ、外交的に大きく働いた。
武のトップであるということが自称でも他称でもなく、事実なのだと証明してみせたのである。

 地球連合としても、非常にこれは好意的に受け取られた。
 まだ20にも満たぬ少女が、国家というものを背負い、代表して、先陣を切って戦争に赴いて勝ちを得たのだから。
他の武家や五摂家などは口だけは達者であるのに、彼女は連合の求めるところを察し自ら行動で示した。
そして、お荷物となることもなく、お飾りというわけでもなく自分自身が戦った。
ここら辺は帝国と地球連合との間で意識と常識の差があったにしても、評価するべきものと映ったわけである。
 故にこそ、彼女を介した交渉や交流は積極的に推進されることとなった。

 彼女の要望もあってのこととはいえ、彼女の剣術指南役にリンクス「一目連」が推挙されたのも、内外に連携をアピールするという目的もあった。
付随して彼女の威を借りる形になるが、帝国内での政治的なアドバンテージを確保したかったというのもある。
 いずれにせよ、他の五摂家や武家などが訳知り顔で悠陽や煌武院家を悪しく言おうとも、それは雑多な騒めきにすぎなかったのである。
 むしろ、他人を攻撃して評価を下げるような者たちという誹りを受け、何もしていなかったという事実を強調してしまったとさえ言えた。
功を焦ったにしろ、連合の力を甘く見ていたにせよ、余りにも対応はお粗末と言えた。

121: 弥次郎 :2022/02/04(金) 22:55:00 HOST:softbank060146116013.bbtec.net

 そしてもう一つ、欠かせない存在があった。
 G弾が炸裂後にまとまって跳躍者達が集まっていた国連軍横浜基地である。
 即ち、国連主導の対BETA戦略計画---すなわちオルタネイティヴ計画の4つ目であるAL4との接触であった。
 いや、それに限った話ではない。国連の計画であるオルタネイティブ計画の現行の二つ、4と5についてである。

 融合惑星誕生の原因について状況の把握と証拠の収集にあたっていた地球連合では、まさにその根源たるG弾について知ることとなった。
G元素と呼ばれる物質をもとに製作されたML機関を意図的に暴走させ、核兵器を超える爆発を生み出す戦略兵器。
凄まじく乱暴に言えば、重力を手始めとして次元空間というものにさえ影響を与えうる超強力な爆弾である。
それを無断で使用した米国から堂々と公表された事実なども含め、それはまさに連合の血圧を一気に上げることになった。
重力に始まり、五次元作用によって次元や空間にまで影響を与えるG弾はその原因の一つとなったと早期に結論付けられたほどに。

 そして、その次元の歪みが残り続けている横浜にいたのが「因果律量子論」を提唱した香月夕呼博士。
 並行世界や選択肢によって分岐した世界線の存在とその影響、あるいは過去が未来/未来が過去に与える影響を論じたものは、まさしく劇薬であった。
地球連合がこれまでさんざん相手にしてきた相手は、そういった、次元や因果などというものが密接にかかわる存在が多くいたのだ。
それこそ重力を操るとか次元に影響を与えるとかざらにあったのである。改めて振り返ると修羅である。ヴァルハラかここは。
 そして夢幻会のみであったが、そういった世界線や次元に関わるあれこれに干渉した存在がどうなるかをよく知っていた。
その存在がいったいどのような経過を経て、一体どのような末路を迎えたかまでも、はっきりと。
 これらの事情も相まって、地球連合という国家群からして、この世界に存在するものの危うさは、もはや数え役満であった。

 よって、地球連合は総力を挙げ、このAL4と5の主導国および参加勢力へと接触し、対処を強いられることとなった。
 下手をしなくとも、次に影響を及ぼすようなことがあれば、惑星が誕生する程度のことでは収まらない。
その恐怖があったからこそに、連合は多方面へと力を注ぎ、行動を開始した。
 結果的に言えば、その行動の結果がより状況を混迷させていくことになったのだが、所詮は結果論。
 β世界の勢力と同じように、地球連合もプレイヤーとして参戦することとなった。それこそ、大番狂わせを可能とする、強力すぎる存在として。

122: 弥次郎 :2022/02/04(金) 22:55:40 HOST:softbank060146116013.bbtec.net

以上、wiki転載はご自由に。

醜貌割鏡

習貌歪鏡

どちらも創作した四字熟語です。
醜い風貌は鏡を割ってしまう。
風貌は歪んだ鑑に倣うものである。
もっと平易に言い換えれば、歪んでいるのは自分か、それとも自分を見る鏡なのか?という問いかけ。
自分が世界に合わないのか、それともその逆か?ともいえますな。

134: 弥次郎 :2022/02/05(土) 09:42:52 HOST:softbank060146116013.bbtec.net
おはようございます
早速ですが誤字修正とか

121
×国連の計画であるオルタネイティブ計画の現行の二つ、4と5に
○国連の計画であるオルタネイティブ計画の現行の二つ、4と5についてである。

×その存在がいったいどのような経過を経て、一体どのような末路を迎えた鎌でも、はっきりと。
○その存在がいったいどのような経過を経て、一体どのような末路を迎えたかまでも、はっきりと。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2022年02月08日 11:14