227: 弥次郎 :2022/02/06(日) 00:47:15 HOST:softbank060146116013.bbtec.net


憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「醜貌割鏡/習貌歪鏡」2



 さて、大洋連合と日本帝国が接触して、いきなり起こった事件があるのであるが、それは何か?
 端的に言えば、赤坂離宮事件である。
 それは、如何に日本帝国という国家が追い詰められ、尚且つなりふり構っていないかを示す事件であった。

 帝都東京は赤坂に存在するこの迎賓館というのは、端的に言って外交のための場である。
本来ならば帝都京都にある京都迎賓館(歴史が違うのでこちらが先に成立)で出迎えたいところであるが、そうもいかない。
京都は衛星によればまっ平に近い状態にされ、すでに建造物としては失われているためだ。遷都もしており、こちらが本命ということになる。
外の世界からというのが今一ピンとこないとしても、正式に国家として来訪してきたならば接待をしなければ国家の品格が問われるのだし。
まあ、この迎賓館に招かれるにあたっては事前にアレコレと折衝などがあったのだが、ここでは省略としよう。

 ともあれ、大洋連合の外交使節はそこに招かれたのである。一国の宰相とまではいかなくとも、ほぼ全権を担う大使が派遣されてきたという力の入れぶりである。
 単なる会談だけでなく、数日以上にわたって会議や折衝が行われることが確定的であったことから、政府はここの使用を決定した。
居住性などはともかくとして見栄えも良いし、同じ日系人による国家という認識であったがゆえに、最適と判断されたのだ。
 無論、今は戦時ということもあり、過度なもてなしなどはできないし、相応な質素さが要求されていたが、万事手はずは帝国政府によって整えられた。

 無論、この外交使節の受け入れは政府内でも意見が割れたところでもある。
 何しろ、対外不信というべきものが蔓延していたのだから。
 遡れば、戦術機の優先順位を下げられて欧州に多く輸出され、帝国には近接長刀のみが納入されるという屈辱に始まっていた。
さらには光州作戦での悲劇とその結末、BETAの侵攻の際に米国による安保条約の破棄と撤退。とどめに作戦中のG弾の突然の使用である。
ここまでされて感情が沸騰するなという方が極めて難しいであろうことは言うまでもない。
他にも、この世界の歴史故に解消されていない人種差別の強さなども相まって、形として残らないものでも多くのトラブルなどが密かに積み重なっていたのだ。
 そのようなことを鑑みるに、ここで全く未知の国外勢力を受け入れるということに慎重論が出てしまったのも無理からぬことであった。

 しかし、提示された支援プランも垂涎のモノであったのも確かである。
 食糧支援や医料品などの人道的な支援に始まり、BETAとの戦争で荒れている環境の改善などを提案されていたのだ。
事実上米国との間が殆ど途切れている関係上、BETAの脅威におびえなくて済む大国からの支援は喉から手が出るどころの話ではない。
 ともあれ、会ってみなければ始まるまい、という次第であった。
 榊首相はそれらの意見を統合して、そのように決定。外務省をはじめとした関係各所に手配を指示したのであった。

228: 弥次郎 :2022/02/06(日) 00:47:52 HOST:softbank060146116013.bbtec.net

 他方、大洋連合、ひいてはその背後にいる夢幻会は色々と準備をしていた。
 マブラヴオルタの世界は、控えめに言ってクソのような環境と世界である。故にこそ主人公たちの決死の戦いが輝くというのもあるが、基本的にクソである。
なおのこと救われないことに、主人公たちの決死の戦いという黄金に対しクソな世界の割合が高すぎるというのもある。

 どれほどクソであるかは語りつくせないのであるが、その一つの例として指向性蛋白というものがある。
 平たく言うと、洗脳を行うための特殊なたんぱく質である。
 BETAとの大戦は、当然であるが酷いものである。世論が沸騰し、統制がままならなくなる可能性がある。
加えて、衛士の育成に時間をかけている余裕などもなく、とにかく数を揃えなければならない。そんな理由があって、そのタンパク質は使われたのだ。
 しかも、これが国家規模で、水にさえ混ぜられているというのだから堪ったものではない。
国民を思考レベルで統制し、娯楽や楽しみがなくても問題ないようにし、不便な生活を当然と思い込ませることによる世論のコントロール。
ちょっとしたディストピア国家も真っ青な、とてつもない統制国家となっているのである。
無論、そうでもしなければBETAとの戦い以前に国家内での壮絶な争いとなっていたというのもあるだろう。
非常時故にそういった選択をとらざるを得なかったのは、まさしく苦肉の策といえるかもしれない。

 だが、それが交流する相手の国家内で蔓延しているのは問題である。
 駐留する人間が知らず知らずのうちに摂取を重ねて意識に異変が起きたら国家間問題となりかねない。
下手を撃てば、外交官を洗脳して思い通りの要求を通そうとするという半ば戦争染みた行為とみなされかねない。
そうなった場合、やむを得ないとはいえ、大洋連合は日本帝国を占拠し、鎮圧しなくてはならなくなる。
仮にそうなってもBETAとの戦いには勝てるであろうし、日本帝国を姫のようにあやして傀儡にすることも容易いかもしれない。
 だが、そんなのはとんでもない苦労だ。融合惑星という事象に対してあまりにもリソースを割きすぎるのは問題視された。
なにしろ、C.E.世界の広い宇宙のどこからいつ何時侵略者が現れるか分かったものではないし、融合惑星の他の世界にも対処しなくてはならないから。

 その対策をどうするかという中で、夢幻会は一芝居打つことにしたのである。
 即ち、早期に発見し、問題が深刻化する前に鎮火してしまえ、というわけである。
 幸いにして、そういうものとわかってしまえば、検出するための手段には事欠かないし、場合によっては人体改造までもできる。
帝国を交渉の場に引きずり出すための方便にもできるであろうし、ついでに言えば、本来ならば起こってしまうよりも小さく起爆できる。
勿論、双方がダメージ無しということにはならないだろう。だが、それでいい。それはやむを得ないのだと。
コラテラル・ダメージ。万能でも全能でもない彼らは、それを選ぶこととした。

229: 弥次郎 :2022/02/06(日) 00:48:24 HOST:softbank060146116013.bbtec.net

  • C.E.世界 融合惑星 β世界 現地主観時間1999年8月23日 日本列島 帝都東京 赤坂迎賓館



 斯くして、大洋連合から派遣され来た全権大使や外交官らの一団は、赤坂迎賓館に招かれた。
 大洋連合の外務省からの人員も含めた、かなりの集団。まあこれから行うこと、起こること、起こすことに備えるならばいくらいても足りないことはない。

(胃がいてぇ……)

 その中の一人に、夢幻会の実働委員の一人である有崎トオルも混じっていた。
 表向きとしては外交官のガード。しかして、裏の顔としては夢幻会の構成人員。
 今回のために仕込みを体に済ませてきている一人である。
 ガードとは一言にいうが、テロを警戒するためにその体は義体化され、あらゆる機能が付加できるようになっている。
それこそ、食べたものに含まれている物質を分析し、即座に性質などを特定するなど容易いことである。
何しろ、技術の発展はその手の後ろめたい方向でも恩恵をもたらし、脅威度を高めた。故に、ガードもまた相応の力を身につけねばならなかった。
 しかして、その彼は人工臓器に置き換えてある胃が痛い錯覚に襲われていた。
 幻肢痛。あるいは、虚臓器反応だ。脳みそは生身の胃があったことを覚え、その感覚を思い返していたのだ。
これから起こることを考えるとどうしてもストレスが湧き、それがありえない痛みを引き起こす。

(上層部が描いたシナリオはわかっちゃいるが……結構危ういぞこれ)

 無論、この手の芝居を一つ打つことになったのも無理もないとは理解している。
 だが、その芝居の当事者として行動しろと言われて、はいと躊躇いなく実行に移し、外交での横車を押せるかという問題が付きまとう。
夢幻会の持つ虚憶や前世の知識などをいかにうまくごまかし、自然にふるまえるか。
今後将来的に大きく起爆するかもしれない爆弾を、事前に小さく爆破処理させることができるか。
その為の準備は重ねられており、密かに打ち合わせも済まされている。
さらに言えば、普段の自分の業務---薬物などがないかを事前に毒見する役目からも逸脱はしていない。
 しかして、今後の歴史の教科書にも載りそうな事件の当事者になるとは夢にも思っていなかった。

(やるしかない、か)

 無論、指向性蛋白が検出されないことが一番ではある。
 だが、混入してもおかしくない状況と情勢であることは言うまでもない。
 必要なのは、覚悟。そう思い、トオルは一団を守りつつも赤坂迎賓館の中へと向かう。

 そして、トオルの願いはかなうことなく、指向性蛋白は検出されることとなった。
 彼らが毒見役として先に口にいれたそれらには、人為的なたんぱく質が含まれていたのだ。
すぐさまトオルは自らの役目としてそれを報告することとなり、問題は表面化することとなった。
 斯くして、「指向性蛋白による洗脳をもくろんだ」という、狙ったではないにしても罪を犯すこととなった日本帝国は、否が応でも連合との相対を強いられた。
内々に処理され、表向きには存在しないことになった事件ではあるにしても、その影響が果てしなく大きいものであるのは事実であった。

230: 弥次郎 :2022/02/06(日) 00:49:14 HOST:softbank060146116013.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。
帝国は自分が歪んでいることを認識できていたのか?
それとも、自分は正しく世界が歪んでいると思っていたのか?
どちらなのでしょうね…

244: 弥次郎 :2022/02/06(日) 11:37:23 HOST:softbank060146116013.bbtec.net
おはようございます、メインシステム、したらばモードを起動します

早速ですが誤字修正を


227
×食糧支援や衣料品などの人道的な支援に始まり

○食糧支援や医料品などの人道的な支援に始まり


229
×今後将来的に大きく起爆するかもしれない爆弾を、事前に小さく縛させることができるか。

○今後将来的に大きく起爆するかもしれない爆弾を、事前に小さく爆破処理させることができるか。

転載時には修正をお願いいたします。

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最終更新:2022年02月08日 11:16