140: 陣龍 :2022/02/07(月) 19:54:53 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp

無幻世界に置ける第二次世界大戦 ~太平洋ノ波高シ  報復と復讐の連鎖が始まる日~


太平洋戦線

【事前状況】…復讐心と言うただ一点でドイツに奇襲攻撃を仕掛け、欧州に戦禍をまき散らしたフランスを同一陣営に引き込んだ事、そしてそのフランスより尚悪く、最後通牒すら出す事無く日本の横須賀へ奇襲攻撃を仕出かした事から、開戦した動機は白人至上主義や拭い難い有色人種への蔑視が原因と見做される事が多いが、そう言った脚色や開戦後に積み上がったアメリカ側のプロパガンダを除いた根源の理由は、実に凡百極まりなく世に溢れている『経済問題』ただ一点であった。内需拡大政策と満州獲得による各地の開発により、まだまだ開発と発展の余地を多分に抱え、不足している資源や工業力、技術もイギリスとドイツから調達する事で天井無き経済発展に邁進していた日本とは真逆に、既に国内インフラも整えられて開発地も不足し、
尚且つ世界的なブロック経済で外需の冷え込みもとことん深刻だったアメリカの経済は氷河期を彷徨い続けていた。
内戦激化による中華地方へのなりふり構わぬ武器市場への参入とバラマキ、そして軍事ケインズで軍拡を続けているフランスへの一部兵器輸出で多少はマシになったが、アメリカは『大戦』後の野放図な設備投資によって獲得した、自国の負の財産と化した膨大過ぎる工業力が生み出す供給量を遥かに下回る需要しか得られていなかったのが現実だった。開戦時の前政権であるルーズベルト大統領は公共事業の拡大、もっと言えば少しでも需要を拡大する為の大規模な軍拡を経済対策として行ったが、効果は今一つの域を出るモノでは無く、最終的に大統領選挙直前に麻薬か何かの常用者と見られた襲撃者の銃弾によって、死亡こそ避けられたが大統領職を続けられるとは思えない重症を負わされて強制的にリタイアさせられた挙句、社会的不安が満ち満ちている中で無責任なアジテーターが大言壮語を繰り返して大統領になった日に、ある意味二回目の世界大戦が開幕するのが決定付けられたとも言えるだろう。

 そして古今東西、内憂を誤魔化すには外敵の喧伝が最も単純で効果的なのは言うまでも無く、この時のアメリカもその例に漏れる事無く、また『勝てる戦争』を持って冷え込んだ国内経済のカンフル剤にして新たな市場を得ようと目論んだ結果が、日本に対する余りにも外交的常識や信義を無数に逸脱した言動の末の宣戦布告無き横須賀奇襲攻撃に繋がった。尚、『無条件降伏』等と言う外交交渉に置ける暴投球を行き成り投げ付けたのも、『神に愛されし白人より劣った有色人種が経済的に繁栄して居るのは、我等に有るべき富を卑劣にも盗んでいるからだ』『我らは今こそ不当にも奪われた富を有るべき所(自分の懐)へ取り戻し、正義の鉄槌を下さねばならない』と言う完全な逆恨み根性が影響して居たのも大きいが、理性的な面で言えば、そうする事でアメリカ経済が世界経済を飲み込む為でもあった。
そうでもしなければ、昨今日本を中心として複数の国々が経済成長を遂げているのに対して、アメリカからは多少の工作機械や一部燃料油・機械油以外は全くと言って良い程世界の多くがアメリカ商品を買わない挙句に、日本経済の躍進の影響で大打撃を受けたアメリカ企業が存在し、また『万里の長城』と揶揄されるアメリカ関税すら一部乗り越えて、現段階では量も種類も少ないとは言えアメリカ人が日本製工業製品を買い始めている様な現状を鑑みるに、将来的に北アメリカに押し込められた二流国に落ちぶれると言う予測が出されていた程だった。

政治的にも外交的にも経験や見識に乏しかったアジテーター大統領が何処までこの決定に関与して居たのかは定かでは無いが、その後の『日本大陸分割統治論』『英連邦各国独立宣言』『ニュー・フロンティア・プロジェクト』等と言った政治的プロパガンダ等もひっくるめたこの独善極まりないアメリカの要求と欲望は、正当化の為のロジックその他も含めた全てがそっくりそのまま役者を取り換えてアメリカの大地で実行されると言うのだから、何とも皮肉な話である。

141: 陣龍 :2022/02/07(月) 19:57:39 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp


アメリカ側戦略】…時代的にある意味仕方が無いとは言え、兎に角偏見と蔑視に満ち満ちた人種観が原因で日本軍の事を無根拠に最低評価を下していたホワイトハウスら本土の政治家や高位の軍官僚に影響されたか、実戦部隊側も表向きは迎合して居たが、実際は公開情報や中華を経由して日本本土に送り込んだ諜報員からの情報を元に、真剣に日本軍に対する検討対策を行っていた。尚、表向きの迎合は『真面目に情報や予測を上げても無根拠な低評価で【軍部は心配性で臆病】【有色人種が独自に兵器開発出来る訳がない】【奴らの兵器は全て英独からの輸入品、そして劣化して7割の性能程度が関の山】等と一方的に言われ続け、反論の余地も多くが奪われていた』事が主な原因だった。前ルーズベルト大統領と馬の合った海軍高官がその無根拠な思考を指摘し、中華戦線に置ける日本軍の報告を突き付けたら、大統領に楯突いたとして解任され報告書も燃やされてたりもしているので、組織防衛的にも止む終えない行動でもある。そして経済対策として野放図に行われた軍拡によって日本海軍に対して一定の優位性を保持したと思われるや否や、ホワイトハウスは軍部に対して対日侵攻の作戦案を作る事を命令された時には、アメリカ陸海軍は揃ってヤケ酒に走ったと言う。

官僚的組織拡大の性も有るが、軍部はあくまで『祖国防衛の為』として軍拡に賛成した上であり、侵攻するには現段階の互角+α程度の戦力では不十分だと訴えたのだが、にべも無く却下された事が、終戦時の混乱による散逸を免れた書類や証言等の情報収集にて判明している。彼の有名な『日本には長門が居る』と言う名文句も、ホワイトハウスやそれに連なった政治的高官に冷笑され『アメリカにはコロラドが、そしてコロラドより強い戦艦が多数建造されて居る。奴らにコロラドより強い戦艦の建造等が出来はしない』と切り捨てられた逸話が有名だろうか。
日本も日本でアメリカの軍拡に応じた建艦も行っていたし、既に始まっていた対中華戦線にて日本軍の活躍もそれなりに世界に発信していたのだが、無根拠な蔑みの評価に変化が生じる事は無かった。下手に日本軍が強敵であると認めた場合、基本的に非戦志向の強いアメリカ市民が対日戦を忌避して支持率が下がる可能性が有ると言う背景も有ったので、軍部がどう言葉を弄しても政治的欲求から認める訳には行かないと言う理由も強かったが。


 そして軍部に取って更なる逆風となったのが、この対日喧嘩外交をアメリカ経済界が支持し、支援して居る事であった。
彼の世界恐慌の震源地となったアメリカ経済が冷凍庫並に冷え切っている事は既に述べていたが、それを更に加速させたのが日本によるものであると、彼らは認識していた。これは偏見やレッテルでは無く一面の事実を含んでおり、公共事業を主軸とした内需拡大政策による景気拡大で気を良くした日本人は、実益でも気分の面でも良策だとして友好国である英独を引き込んだ事で、英独の様々な対米需要はブロック経済の影響も加味して激減。一種の蚊帳の外に置き去りにされる事でのたうち回るアメリカ経済に対して追い打ちを掛けるように、日本から湧き出て来るようになった一部工業製品がアメリカ本土に加えて、アメリカの強固な【庭】で有った筈の中南米に置いてすらも、日本が開国してから紆余曲折を経て親日国となっていたメキシコやアルゼンチンに向けて進出を開始。現地に溶け込むように移民した日系人の開拓や日本の維新等に刺激を受け、奮起した現地政権の努力により、大恐慌以前から少しずつ自国資本を蓄えアメリカ企業の支配から離脱を図りつつ有った両国は、大恐慌を機に一ドルでも一セントでも資本金を回収しようと強引な貸し剥がし等を強行したアメリカ企業に完全に見切りをつけ、大胆不敵にもアメリカの圧力を晒し、日本を通じて親密さを強めていたイギリス側への傾倒を強め、アメリカ勢力圏からの離脱を敢行したのだ。

142: 陣龍 :2022/02/07(月) 19:58:58 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp

無論、メキシコもアルゼンチンも、後付けの法制度等でアメリカ企業を無理矢理排除した訳では無かったのだが、それでも【庭】で有る筈の国で安穏としていたアメリカ企業の所に突如突っ込んで来た日本企業、そしてその日本企業と合弁会社を設立する形で同じく南米経済に殴り込んで来たドイツ・イギリス企業に対するメキシコ人とアルゼンチン人の人気は、日本企業が仲介と調整を行い、当時としては現地にも利益が還元する様に仕組んでいた事からかなり高く、これまでの強欲な行いによる不評が祟ったアメリカ企業は、この大恐慌下での貴重な経済成長を遂げる国々でまともに稼げる事無く衰亡、撤退を余儀なくされ、その事をアメリカ経済界は恨んでいたのだ。メキシコ軍、アルゼンチン軍の装備が、現地に作られた日独合弁の軍需工場で作られた兵器であったり、イギリス企業が製造した軍用機等で一新された事が、アメリカ企業による南米支配の一角が崩された事をまざまざと証明した、分かり安い例だろう。最早行き詰っていたアメリカ経済界が生き残る為には、なりふり構わず戦争を引き起こして軍需景気を巻き起こし、そしてアメリカの南米利権を侵し、アメリカの利益を侵害している日本を叩き潰すしか無かったのだ。協調や妥協と言う選択肢は、既に日本の間口が英独によって占められている上、不景気から巻き起こった憂さ晴らしと虚栄心の発露である白人至上主義的感情によって、既に消滅して居た。


 金儲けの事しか頭に無いアメリカ経済界と、選挙の票しか頭に無い政治家が肩を組んで無茶苦茶な要求を強制させて来る事にアメリカ軍は怒り心頭であったが、命令に服すしか無いのが軍人で有る為に、半分ヤケクソになりつつも、半年にも満たぬ期間で策定させられた戦略案と言うのが、開戦直後に日本の軍事的要衝を奇襲して時間を稼ぎ、事後稼いだ時間を活用し戦時生産にてアメリカ本土からあふれ出た物量で体制が整わない日本軍に対して一気に詰め寄り、トラック諸島、西南諸島(沖縄)を陥落させてシーレーンを遮断。それで日本が停戦又は降伏に応じなければ、稼働艦全てを用いた日本本土近海での艦隊決戦と象徴的な戦略爆撃にて日本の敗北を宣言しに行く、と言う盛大な物で、言わば【海の電撃戦・一撃講和論】とも言うべきシロモノだった。
勿論海軍士官学校でこんなものを出されたら一から叩き直し確定の、日本軍の抵抗力を軽視しているいい加減かつ無茶な作戦案だったのだが、頭が固く、軍事に疎い政治家には【フロンティア・スピリッツの象徴的作戦】と、中身が薄いが景気の良い言葉を並べたこの作戦案を称賛し、この素案を大筋として練る事を決定。『戦争期間が短すぎると、戦時生産が短期間で終わって景気復活が見込みにくい分は、賠償と市場化で何とかなるだろう』と楽観極まりない政治上層部の発言を聞かなかった事にしたアメリカ軍は、せめて奇襲要素を少しでも満たす為にも、宣戦布告直後に奇襲を掛けるタイムスケジュールを構築し、一抹の期待と大いなる不安を抱え込んだ軍上層部と、しつこいまでの反日、反有色人種の政府・民間プロパガンダに浸っていた現場の兵士達は一路横須賀へ出撃して行った。

 結局のところ、不景気による視野狭窄に陥っていた政財界は、そして彼らの無茶な命に服すしか無かったアメリカ軍もであるが、アメリカがアメリカの都合で動くのと同じように、日本は日本の都合で、世界は世界の都合で動くと言う事を、アメリカ人は完全に忘れてしまっていた。
その結果が、悲劇の幕開け、アメリカ消滅の始まりとなった、横須賀奇襲攻撃だった。

143: 陣龍 :2022/02/07(月) 20:01:26 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp


【日本側戦略】…恐ろしい勢いでアメリカが対日喧嘩外交ルートを爆走して居る状況下にて、当の日本は何故アメリカがこれほどまでに日本を敵視しているのか、まともに理解が出来ていなかった。後のイギリス首相となった政治家曰く『日本人は国獣でもある剣虎とソックリだ。見た目を怖がり襲ったら体当たりで吹き飛ばされる。だが目と目を合わせてゆっくり近付き一緒に居れば、何時の間にか一緒のベッドで寝る事が出来る。そしてその姿で【見かけ倒しの家猫】と勘違いしたチンピラ一党は、五体と家財、武器と名誉の全てを引き裂かれ、骸以下の塵と化す。加えて一番重要なところは、当の剣虎は自分をその【家猫】だと思い込んでいて、生まれてからずっと勘違いしている事だ』と手記に残していたが、ある意味の諦観や呆れと共に書かれていたように、近代社会となって以降相応に時が経っても尚日本人は、外国から自分達がどのように恐れられているのか、自分達の行動がどのように世界に波及しているのか、と言う【覇権国家】ならば多寡は兎も角少しは考え意識するであろう基本的な点について、徹頭徹尾余りにも無頓着で非常識過ぎた。『第一次世界大戦』後の国民感情に流されるがまま行われた、ドイツやオスマンへのある意味無責任な支援は結果的に日本、そして調整に介入したイギリスに取って大きな利益となったが、その代償にフランスや英連邦の豪・南アが暴走する原因を誘発した事を、全くと言う程反省していないと言うか認識もしていなかったままなのだから、変わる理由も動機も無いのが当たり前だが。


 スペイン内戦の早期決着や、冬戦争でもフィンランド軍の奮戦で比較的短期間で終結した事で何とか開催に漕ぎ付けられた東京オリンピックは、大恐慌の経済ダメージを最小限に抑えた上に、関東大震災を切欠とした内需拡大政策にて昇竜と化した戦前日本経済の一つの到達点となった。
フラグシップとして建造された、太平洋最大規模の超巨大豪華客船『出雲丸』『橿原丸』『鳳凰丸』『青龍丸』の四隻。東京―大阪間を繋ぐ新型列車による弾丸特急。英独からの技術導入と自助努力により花開き始めた日本のモータリゼーション。
峻険な山岳や河川等の地形障害を物ともせず貫く日本初の高速道路(東名高速)。それらの整えられた社会インフラや近代的ビル等の建築物、自動車の数と勢いは留まる事を知らずに増え続けており、日本を訪れた外国人は一様に驚き、そして日本と親密な英独らはまるで出来の良い親戚の子を見る様な感覚で微笑み、政治的主義の関係で日本と対立状態にあるソ連は愁眉の眉を顰め、ドイツ側に明善と立っている日本を毛嫌いするフランスは難癖付けて見下し、そしてアメリカは唯々嫉妬した。オリンピックその物は大成功で、欧州勢の強さに負けず総合メダル獲得数で二位に滑り込んで開催国の面目躍如で喜ぶ日本の経済的成功は国民気分の更なる上向きで留まるところを知らずに拡大の一途を辿り、社会主義経済で我が道を突き進むソ連と軍事ケインズ真っ盛りのフランスは例外として、アメリカを置き去りにしたまま英独と共に世界経済のけん引役に躍り出た事を象徴する平和の祭典の閉幕式が、第二次世界大戦前最後の戦間期の終わりを告げる号砲となったのは、何とも皮肉な話である。

144: 陣龍 :2022/02/07(月) 20:03:37 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp


 東京オリンピックが終幕し、その興奮が未だ冷めやらぬ頃に、そのオリンピックに中華唯一の統一国家として出場して居た中華民国軍が、満洲国に対して突如帰属命令を突き付け、これを拒まれるとすぐさま侵攻を開始。
現地軍や諜報により、辺境を除く中華大陸を統一後の中華民国では俄かに国粋主義的な世論が、内乱終結による反動で暴発して居ると報告を日本政府は受けていたが、まさかこうも行き成り侵略戦争を仕掛けて来るとは想定外だったために面食らったが、日本の重要な外郭防衛陣地にして市場でもある満洲国を失う訳には行かないので、現地関東軍には即時満州国軍と共同で中華民国軍を国境外に叩き出す事を命じ、経済発展による予算増額と英独との交流で発展した新兵器を与えられていた現地軍は『武勲の稼ぎ時である』として、まるで新しいプロ仕様のバットとグローブを与えられた直後の野球少年の如く勇躍し出動。満州国軍と、後に増援に来た朝鮮駐屯師団と海軍航空隊、そして【中華的恒例行事】の被害を受けて激昂し立ち上がった、満州移民のユダヤ人義勇兵と共に中華民国軍と宣戦布告無き戦争状態に突入し、極稀に内戦による経験値が有る中華民国軍の精鋭部隊に後れを取る事も有ったが、基本的に列強から輸入された旧式装備が主流の歩兵の群れでしかない中華民国軍は、多数のトラックや戦車、各種軍用機を揃えていた日本軍に機動力と火力の格差で大敗。満州国外に敗走する中華民国軍兵士を後ろからトラックや戦車で追撃し徹底して掃討した後、日本軍も満州国軍も行儀よく国境線にて停止。国内を荒らされて怒っている満洲国や未だ復讐心に猛り狂っているユダヤ人達の感情面は兎も角、日本軍としては久方ぶりの大規模な紛争で損害も比較的少ないまま武勲を多数挙げられた事や、新装備の実戦チェックを行えた事で満足しており、満洲国やユダヤ人達へは外交的に国際社会で中華民国を袋叩きにする事を確約して矛を一旦収めさせた。

余談だが、この突発的な対中華民国との戦争を好機と見た一部の将軍や、部数拡大の為に新聞社が主張した『暴支鷹懲(支那=中国への武力制裁の意)』は、全面戦争をする気等毛頭ない軍部や政府が完全に否定しており、そしてさらに主張した将の中の数人が独断専行で開戦の既成事実を作ろうとしたが、具体的行動に移る前に予兆を察知した現地軍の憲兵が捕殺し、この事に心底衝撃を受けた日本軍部は内部調査と再教育を行った事で、この様な軍の将官として不適格かつ矯正が無理だと判断された人間であったり、また思想的に偏った者も軍から叩き出して自浄作用を働かせると言うおまけもついて来ていた。国内に関しても、非戦の平和が望ましいとする天皇陛下の御意志が政府を通じて発表されると、国民は戦争拡大を煽った新聞社の方を猛批判し解約の嵐が巻き起こり、間もなく倒産すると言う有様でも有った。
そして日本各々で戦争拡大を望む輩が潰えた後は、外交交渉で中華民国を外務省が国際社会と共にぶっ叩くだけの筈だった。


 だがその予定は、遠く欧州にてフランスが突如ドイツへ喧嘩を吹っ掛けてオランダが巻き添えで吹き飛ばされると言う異常事態に加えて、アジア最大の国際都市である上海に、同じく事前警告等無しに中華民国所属の軍閥兵が襲撃して来た事、そして多額の賄賂と共にばら撒かれた中華民国の反日プロパガンダに乗っかったアメリカの強硬姿勢により一瞬で潰えた。
イギリスは日本支持を明言して中華民国と中華民国を支持したアメリカを非難し、また【調停】の為に王族を特別大使として巡洋戦艦タイガーにて送り込む事を表明し実行していたが、そんなイギリスの横っ面を張り倒すが如くアメリカは【悪逆無道な虐殺事件を引き起こした日本軍】に対する批判と共に、外交上は宣戦布告一歩手前の在米日本資産の凍結を実施。
軍閥兵が上海在住の欧州市民や従業員の中華人を攻撃、殺害して居る所を、海軍陸戦隊が急遽派遣されて防衛戦に苦慮し、本土駐留の師団を急いで増援に向かわせている最中のこのアメリカの行動に、日本は激怒する以前に理解が追い付かずに唖然としていた。反日プロパガンダを仕込んだ中華民国もアメリカののめり込み具合が予想外であったし、中華民国の上層部は満州でボロ負けしたとは言え、中華が満州に属すると言う政治的主張の根拠を作れたと言う事も有って早急に戦争状態に有るのを切り上げたいのが本音でも有ったのだが、統制の甘かった華南の軍閥が勝手に暴走して欧州人を攻撃して居る事に、中華人が皆拍手喝采して居る世論と言う背景も有り、中華伝統の【夷を以て夷を制す】策のままにアメリカと共に日本への糾弾と謝罪・賠償要求を正式に出して居た。如何に時代錯誤であろうと中華思想としては、化外の民である欧米人は兎も角【夷敵】と言う相容れない存在である日本と妥協する事は不可能なのだ。

145: 陣龍 :2022/02/07(月) 20:05:35 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp


 華南軍閥に対する日本兵の攻撃と市民の殺害やら、満州各地の中華民国軍軍閥兵士による満州人への虐殺行為やら、連動して蜂起した元中華難民によるユダヤ人植民地への襲撃やら、軍需物資を溜め込んでいた駅を爆撃した跡地で撮影された泣き叫ぶ赤子やら、兎に角戦争犯罪行為を擦り付けるプロパガンダの連打に対し、被害を直接被った日本よりも、満州国にて安住の地を得ていたユダヤ人の方が怒り狂っていた。宗主国である日本の意向も有って、欧州では何かにつけて差別やら冷たい目で見られる事の多いユダヤ人だが、日本の過去で言う『お雇い外国人』に近い雰囲気で、短時間で教育程度の高い人材を多数得られると言う事で積極的にユダヤ人を満洲国に受け入れ、また日本人らしく宗教に関しては基本的に不干渉が原則で、慰撫の意味も有るだろうがユダヤ教の立派な教会が街の中心部に堂々と建設された程の配慮具合も有って、満洲国への帰属意識は兎も角忠誠心は確かな物だった。分かり安く言えば『御恩と奉公』である。

そしてそんなユダヤ人達に取って、安住の地を侵す蛮族共(中華民国軍)を叩き潰して戦災の被害に遭ったユダヤ人でも分け隔てなく治療や保護を行い、結果的に守護者の様になっている日本に対して一方的で事実無根な悪評のレッテル貼りを連打し、虐殺を繰り返した連中を絶対的正義として讃えているアメリカと中華民国は、紛れも無く近代ユダヤ人に取って最大級の【絶対悪】だった。
その為日本とは半ば無関係の独自行動としてユダヤ人ネットワークを通じ、全世界に事実を伝えて反日プロパガンダのカウンターとして米中を糾弾する世論工作が実行された。多少飛ばし記事染みていたが、満洲国在住のユダヤ人が『日本人の人種偏見の無さと甘さを見る限り、交渉次第ではユダヤ人念願の建国が行える可能性大』とする情報が、満洲国内にてゆっくりと進行していたユダヤ人独自の完全自治区構想と共にばら撒かれたのも、ユダヤ人ネットワークによる世論工作が推し進められる一翼ともなった。
そしてこのユダヤ人の感情的行動の結果、戦争終盤にイギリスが仕掛けたアメリカ内乱の為の情報攪乱に最大限の協力体制が結果的に整っていたが為に、その報償として飛ばし記事の如きユダヤ人国家の建国と言う夢が旧アメリカ合衆国領土内にて現実になる遠因にもなったのだから、この世の中は正しく塞翁が馬の通りである。



 ユダヤ人ネットワークによる親日反中宣伝や被害者達の写真や生の証言をアメリカ全土にぶちまけられ、日本も外交や国際社会の場で全力で反論と反撃を繰り返し、それがより一層アメリカ側の頑なな態度を呼び込みアメリカ国内で親中反日プロパガンダが政府主導で連打されると言う極めて不毛なやり取りの末に、何とか日米外相による交渉こそ行われたが、その場では一方的にアメリカ国務長官が【日本による中華への侵略と虐殺】を非難し【極東アジアの平和のために直ちに中華全域から撤収しこれまでの行為全てに謝罪と賠償】をする様に要求した後に日本側の言葉を聞く事も無く一方的に席を立つと言う有様であり、アメリカ国内では脚色されて『言い訳を許す事無く正義と平和の使者として毅然と要求を伝えた』等と喧伝されたが、事此処まで至ると流石に日本側もいい加減に態度を硬化させ、『アメリカの現実を無視した要求に応える事は出来ない』と端的に伝え、日米間の外交交渉は数日で頓挫した。尚この日本側の対応に
アメリカのマスメディアは様々に【戦争狂】【虐殺賊】等と日本を嘲る紙面で埋め、イギリスは正確に交渉の状況等が伝わって来ていた為に、白人至上主義を拗らせた一部を除いて皆が呆れ返るか失笑するか、若しくは戦争が明らかに眼前へ近付いてきた事に頭を抱えた事情通や上層部の三者三様の反応であった。

146: 陣龍 :2022/02/07(月) 20:08:25 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp

 『アメリカは明らかに我が国との戦争を望んでいる』。その事が本当であると先の交渉になっていない日米外相同士の会談にて思い知らされた日本であったが、それでもまだ精神的な余裕は有った。この頃には仲介の為にイギリス本国からわざわざ送り込まれて来た巡洋戦艦タイガーを旗艦とする小艦隊が、外交特使として現国王の親族たる王族と共に日本に到着しており、天皇陛下直々の出迎えと日本国民の盛大な歓迎の下で行われた会談では、日本としてはこれっぽっちも戦争する気は毛頭無い事等をイギリスと共通認識とし、イギリスがアメリカの一方的な喧嘩外交の停止に向けて全力で努力すると明言した為である。
先の『大戦』で被った国力的ダメージも凡そ復活していたイギリスの政治力は世界一であり、如何に戦争を求めるアメリカでも日本とイギリスの挟み撃ちを望んで受ける筈が無いのが常識的判断だった。また在米日本資産の凍結こそ一方的に実施されたが、国交断絶や最後通牒が行われて居ない為に宣戦布告とその軍事行動が行われるのはもう少し先でも有るとも、批准している国際条約を横目に見つつ考えて居た。自らを鏡にして、戦争を始める大国は相互に最後通牒を出し合う儀式を行うものであると思い込んでいた事が、この時の日本人の最大の失策だった。




【開戦】…先の『大戦』期に就役していた老齢艦である巡洋戦艦タイガーは、実を言うと近代化改修が施されて以降は一度も事故や大きな損傷を起こしていないと言う、少し珍しい戦艦だった。他の老齢戦艦の多くは何かしらでドック入りする事が多かったが、タイガーは老齢ながらに故障とは無縁の健脚で元気に走り回っていた。であるからこそ、此度の対日派遣の為の戦艦に抜擢されたのだが、日本からの出航予定日の少し前に軽度の事故が発生。幸い大した問題になる事も無く、予定日より数日遅れた程度で済んでおり、乗員からは『此方のネコは何時も素直だったが、初めての我儘は日本の景色をもっと見たかったらしい』と洒落っ気満載のジョークを飛ばしていたが、その近代化改修後のたった一回の、平時である筈の時期に起きた何でもない小さい事故が、このタイガーの命運を決めたのは悲劇と言うよりない。


 出航が遅れた事を本国並びにアメリカにも通達し横須賀から出航した時、隣には王族の見送りと言う事で旧式ながらも戦艦四隻の付き添いが付いていた。特に先の『大戦』にて欧州戦線へ馳せ参じた扶桑型姉妹が居る事に、イギリス人たちは過去の戦歴を思い起こして此度の航海の成功を確信していた、そんな午前の事。遠洋航海任務に出ていた駆逐艦が『所属不明多数ヲ確認、ワレ攻撃ウク』の発信した直後に通信を途絶。報告を受けた基地司令官は権限を一部拡大解釈して基地機全てに出動を命令。試験配備段階だった高速偵察機を通信途絶地点に向かわせ、基地は退避の為大混雑する攻撃機や輸送機群、そして念の為と称して戦闘機隊の全てを巡洋戦艦タイガーやその付き添いの艦艇に向かわせる命令を出した直後に、扶桑ら旧式戦艦群、そしてタイガーから『所属不明機多数レーダーにて確認』との報告の直後に『ワレ、米軍機に攻撃をウク』と言う絶叫の通信が飛び込んで来た。宣戦布告も何も無い中で行われたアメリカ軍の奇襲攻撃が、この第二次世界大戦の開幕のベルであった。



 奇襲に成功したアメリカ海軍機動部隊は、お誂え向きに横須賀軍港から出航した直後の『日本海軍戦艦【5隻】』を視認し、狂喜乱舞して総攻撃を開始。戦闘配置に着かず出航して居たと思しき日本海軍の戦艦は対空射撃も疎らな中で、真ん中に囲んでいた『金剛型戦艦』を守ろうとする動きを見せたが、上空に日本軍戦闘機が居ないと言う絶好の機会を逃す様なアメリカ軍パイロットは居らず、一気呵成に投弾。当時アメリカ海軍の精鋭をかき集めたとされる機動部隊の艦載機隊はその任務を果たし、洋上で第二次攻撃隊と合わせて敵戦艦【5隻】を纏めて撃沈すると言う大戦果を果たした。そして一部の部隊は出撃途中の日本軍基地に対して空襲を敢行し、また近くに発見した『兵舎らしき建物』も急降下爆撃の投弾で崩壊。基地近隣への機銃掃射等も含めて暴れ回ったアメリカ軍艦載機隊は、第二次攻撃隊の帰投と共に急速に退いて行った。機動部隊指揮官は日本海軍の空母撃沈を厳命して居たが、この時の日本海軍の空母は全て支那への対応や訓練の為に佐世保や舞鶴に居り、横須賀のドックには居なかったのがアメリカの幸運の中の不幸で、日本の不幸中の幸いだった。後世のネオ・ステイツなる合衆国再統一論者が言うには、この一種奇妙な被害は日本はアメリカによる攻撃を知っていたものであり、アメリカは日本によって仕組まれた攻撃をさせられた被害者だそうだが、実際にその言葉をまともに聞いた人間は後にリベラル思想に凝り固まり暴走したアメリカ人以外は誰一人としていない。

147: 陣龍 :2022/02/07(月) 20:11:33 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp

 そして緊急出撃して来た少数の日本軍戦闘機『ゼロ(零式艦上戦闘機二一型。別名ジーク)』『ヨーダ(一式液冷戦闘機 隼。当時の首相米田の名前が言い易い様にスラング化)』によって艦載機の一割弱が被害を受けた事に対して、艦隊の上層部が大き過ぎる懸念材料だとして目頭を抑えている中、大半の乗員が意気揚々と帰投して行ったアメリカ機動艦隊だったが、日本側の被害は甚大だった。
先に上げた通りに、出航して居た扶桑型、伊勢型戦艦の四隻に加えて、イギリス王族諸共巡洋戦艦タイガーが、多数を被弾して横転転覆。殆ど全ての乗員が艦と運命を共にし、王族も行方不明となっていた。またこの五隻の事に加えて、横須賀軍港への空襲による設備破壊による機能低下は未だ良いとして、米軍機の誤爆や誤射により民間人や民間施設に被害が多数出てしまったのも大問題であった。特に米軍機が急降下爆撃で破壊した『横須賀県立女学高等学校』には、登校中や登校直後の女学生が多数学校内や近隣に居り、上空からの爆撃と機銃掃射で多数の死傷者を出して居た。
緊急出動した近くの駐屯地の陸軍兵士や救急隊がこの女学校に急行した時には、倒壊した校舎から助けを求める声や、グラウンドに力なく横たわる子供達、そして爆撃と機銃掃射により【挽肉】と化した肉片の塊が散在。この女学校に勤めていたイギリス人英語教師が片腕を吹き飛ばされても尚一人でも助け出そうとしていたように、生き残りの教師や駆け付けた兵士らが、我が身を顧みず救出を試みたが、結局二次被害による者も含めて死者89名、重傷者103名、軽症者多数を出した惨劇になった。この時の記録は、生存した先のイギリス人英語教師の証言を通じて欧州や中東にも話が映像付きで流れ、国際連盟側の反米姿勢を確固たる物とする根拠にもなっている。



 そして米軍による奇襲によって混乱している最中にようやく、駐日アメリカ大使がアメリカ本国からの宣戦布告文書を日本側に提出。
尚提出した時刻は、アメリカ軍による横須賀奇襲から半日以上も過ぎた夜中であり、完全に全てが手遅れな状態で受け取った日本側の近衛外務大臣は『これ程までに恥も名誉も知らぬ卑劣な文書は今まで見た事も聞いた事も無い』と、状況に全くかみ合わぬ慇懃無礼な言動のままのアメリカ大使のあからさまな態度も相まって怒り狂って糾弾したが、大使側は憮然とした表情と態度で日本から退去した。その後帰国した旧駐日大使はアメリカ本国で自己保身の為かそれとも政府に指示されたのか『日本政府の妨害により宣戦布告文書を手渡せなかった』『アメリカは、世界は日本に騙されたのだ。横須賀奇襲は作り出された狂言の事件だ』と、公の場で遊説しており、最終的に内戦や戦略爆撃による書類の散逸と消失、そして日英共同開発の人類初の原子爆弾により元駐日大使は逃亡先のニューヨーク共々蒸発した為に、この宣戦布告文書の手渡しが遅れたのが駐日大使個人のやらかしによるものなのか、アメリカ本国の責任によるものなのかは不明である。先代の知日派としても知られたグルー大使は、ルーズベルト大統領の暗殺騒動による大統領交代の機に更迭され、現アジテーター大統領側の人間が当時の大使だったので大使当人の思想は白人至上主義にドップリ浸かっていた為、最早どちらが真実なのかは二度と分からない。



 タイガーの撃沈による王族の行方不明。そしてその直後に連発したオーストラリアと南アフリカでのクーデターにてイギリス本国と共に混乱しつつも、鬼畜米国を口々に日本は総力戦へと突入して行く事になるが、アメリカ本国に対する反攻は暫くの間海軍戦力を除いて先送りとなる。
フィリピンのマッカーサー将軍が裏交渉で日本側に下る事が分かり、オーストラリアと南アフリカの離反と言う二つの要素で大戦略の大前提が崩壊したのも有るが、それよりも眼前の仏領インドシナと蘭印で共産革命を旗印にした暴動と反乱が大規模に発生し、そちらへの対応に力を向ける必要が出てしまったからだ。しかもこの暴動と反乱は、仏領インドシナではマジノ線構築の為の苛烈な収奪に耐え切れなくなった現地民の死なば諸共と言うやけっぱちの統一性の無い全土各地での大暴動で、蘭印の反乱は方向性の違いにてトロツキスト的共産革命を掲げる勢力や現地民の自治を求める勢力、またただ単にオランダ人へ復讐したいだけの勢力等が入り混じる混沌の塊であり、後背に不確定要素を抱え込んだままオーストラリアやアメリカへの攻撃等出来る訳が無かった。終戦後の総決算で、この仏領インドシナと蘭印の混沌を短時間で抑え込む手がかりと足掛かりを提供してくれたタイ王国に対し、日本が感謝の意とその実績を見込んだ思いを込めてアジア会議の議長国に推薦したのも、当然のことと言えるだろう。

……当のタイ王国が本心からそれを求めていたかどうかは兎も角として。

148: 陣龍 :2022/02/07(月) 20:18:06 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
戦後

日本「ありがとうタイ王国君!貴国のお陰で東南アジアでの戦争では大助かりだったよ!(本気)
    だからお礼と実績を込めてアジア会議の議長国に推薦するよ!(善意)」

タイ王国「  う  わ  ら  ば  」

大英帝国「あれが?偽りの無い善意が多いのだから、下手な侵略国家等よりある意味恐ろしい」(達観)
独逸「うわぁ……大丈夫かアレ……」(憐憫)
ブルガリア「タイ王国=クン!壊れた胃腸にはヨーグルトが効くヨ!」(壊れかけの笑顔)


軍事的な戦果は大した事無いですが、その代わり様々な伝手で仏領インドシナと蘭印の統治の旗印出来そうな独立運動家や組織らを引っ張って来た功績は偉大だからねしょうがないね(欺瞞)

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最終更新:2022年02月08日 13:01