807: 635 :2022/02/03(木) 16:37:53 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp

銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ サセボ異界紀行十一冊目



大日本帝国の中心帝都東京、そこに存在するFFRの日本における一大拠点こそが在大日本帝国フランス連邦共和国大使館。
FFRモダニズムの権威ル・コルビュジエがデザインを手掛け、日本で見られる唯一の彼の作品としても名高いFFRが誇る現代美術作品の一つである。

その中の一室にFFRのトップ…いやその代行を務めるマリー・マフタンFFR大統領兼軍最高司令官代行はいた。
そしてその部屋はある種神聖な空気に包まれている。
その身に陸軍戦闘服にしてFFRでは正装たる衣服を纏い姿勢を正し椅子に座り、唯一点を見つめるマリーの姿はこれより式典に臨む軍人の姿を想起させる。
マリーの後ろには空軍の正装を纏った駐日FFR大使やマリーと同じく正装(戦闘服)を纏う秘書官や補佐官の姿も見える。

同様の光景はパリのリュクサンブール(国会)やブリエンヌ(国防省)、ブルターニュのサン・シール(陸軍士官学校)やボルダシュ(海軍兵学校)でも見られた。
否、FFRヨーロッパ州やアフリカ州始めFFR全土の年齢は子供から老人まで立場は軍人、学生、会社員まで同様に各々の正装として作業衣や制服を纏っている。
普段それぞれの装いでFFRに貢献するその姿こそは恥じる事無きあの御方の指揮下にある者達の正装であった。


『戦艦リシュリュー艦長閣下、入場。』


マリーらの見つめる先には画面がありそこから流れる音声と共に戦艦リシュリューの艦長の姿が映る。
艦長は観閲式の如く銃を掲げ整然と列を成す海兵の間に通されたtapis rouge(赤い絨毯)の上を歩む。
マリーにはその世の全てのvelours(天鵞絨)よりtapis rougeの深い紅はこれまでのFFRが流しその礎となった者達の血、或いはその者達を想い流した母の血の涙にも見えた。

壁にはFFR各州の紋章が刺繍された布がタペストリーの如く翻り、あの御方とFFRが駆け抜けた戦場を模したステンドグラスからは柔らかな日が注ぐ
画面越しにも感じられるあの御方に捧げられた大聖堂とでも言うべき光景にに映像を見るFFR国民からはうっとりとした溜息が漏れる。
何よりもその大聖堂が存在するのが神体と言うべき戦艦リシュリューの艦内であるのだから仕方もないだろう。
そして艦長が歩むその先にカメラが向けられ、鮮烈にその形が刻まれたFFRの旗と国章の下に座する御方の御影をFFR国民全てが初めてまざまざと目にする。

汚れなき白きローブを纏うその上に深い青と深紅の長いケープを羽織り、麦穂を連想させる流れ落ちる白金色の長い髪、晩秋の葡萄畑の黄金色の葉にも似た瞳。
画面越しなのに頭を垂れたくなる、唯一目見ただけで分かる。
あの方こそがNotre Commandant(我らが指揮官)であると。

敬愛から自然と頭を垂れたくなるのを抑えて国営放送の電波や電子の海を通してFFR全国民はその光景を見守る。
此度は加護が戻ったばかりかFFRへと直接聖剣が下賜されるという慶事、FFR国民否全てに勝る母の子として見届けなくてはならぬ。

艦長は我らが指揮官の御下へと至り片膝をつき瞳を閉じて頭を垂れると我らが指揮官は玉座より立ち上がる。
彼女の白金の髪がふわりと舞うとステンドグラス越しの陽光を浴び燦然と輝き艦長の下へと玉座より降りられた。
それは天上にあった我らが指揮官がFFR国民の下へと降臨した様に国民は錯覚する。

そして我らが指揮官は腰に帯びた剣、戦艦リシュリューの指揮刀たる艦長のリシュリュー刀をすらりと抜くとその剣の腹で艦長の両肩を軽く叩く。
accoladeだ。中世において騎士の叙勲の際に騎士と認めら君主より行われる行為、
現在ではFFR軍総司令代行たるFFR大統領により代行される行為であるが我らが指揮官本人により執り行われた。FFR国民はその事実に皆涙を流す。
艦長は女神本人より戦艦リシュリューの艦長、我らが指揮官の騎士足り得ると認められたのだ。これ程の慶事はない。


そしてaccoladeを終えると我らが指揮官に促され艦長は頭を上げた。
カメラが引き玉座全体を映すと我らが指揮官の玉座の脇には見届人であろうか此度共に降臨した女神である戦艦金剛が日本の巫女の様な姿でいる。
そして正装をした誰かがこれより下賜するであろう聖剣を白い絹越しに手袋を嵌めて持ってくるのだが、生半可な人物で務まるのかと誰もが思った。
同格たる女神金剛であればFFR国民は納得するであろうがその当人は玉座の脇に立ち、またそんなことをすればFFRより下に見られたと大日本帝国が納得しないであろう。
だがそれを成すのは誰もが納得しえる人物。

808: 635 :2022/02/03(木) 16:38:35 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp


「ジャンスール提督…。」


誰かの声が漏れる。
我らが指揮官と共にあった伝説、それが聖剣を抱えそこにいた。
儀式の最中にも関わらず艦長も呆然とその人物を見つめる。
そして彼の人物は聖剣を我らが指揮官へと差し出す。
剣を優雅に受け取ると艦長へと自身より削り出した聖剣を手渡す。
心ここに在らずといった様子の艦長、だがその手でしっかりと聖剣を拝領する。

しかし剣を受けった艦長含めて現実感が全く存在しない。
FFR国民全てが夢見心地のまま儀式は終わりを迎えた。





日本が夜になりFFR各地がさらなる狂乱と歓喜のお祭り騒ぎとなる中、帝都東京も大騒ぎだった。
FFRの主神の姿が生放送で日本で流れたこともあるが、その前に戦艦陸奥と創造主ナヨクァラグヤが日本やティ連の前に公式に姿を現したのだ。

そして佐世保で長鎖の陣頭指揮を取っていた柏木真人ティ連担当大臣が急遽帰京し総理官邸を訪れた。
マスメディアはこれについて二藤部総理に柏木がこの事について報告を上げたのではないかという憶測を報道を流した。
そしてFFR大使館、その通信室。


「いやよ!どうして私があの御方の前で礼砲を披露しなければならないの!?」

『落ち着いて下さい!!代行どうしたのですか!?』


目の前の画面に映る戦艦リシュリューの艦長に対して怒鳴り声を上げるマリー、それに対して困惑する艦長。
マリーが怒りを顕にしたのは艦長がマリーに依頼した我らが指揮官の御前で礼砲を披露することに対してだ。
我らが指揮官の前でその戦車の腕、しかもあの英雄である『元帥』の指揮下にあった車両であるFT-17bisを用いて披露するという誉、
FFR陸軍機甲部隊の者ならば誰でも真っ先に手を挙げるであろう舞台への登板を拒否するマリーに艦長が困惑するのも無理はない。
周辺の者が慌てて諌めに入りハアハアと息を吐きながら心を落ち着ける。


「ごめんなさい、みっともない所見せたわね…。」

『いえ、ですが御前にて礼砲を拒否するのは如何なる理由か、教えて頂けますかな?』

「言わなきゃだめ…?」

『最高司令官代行、現在日本にいる現役、予備も含めた我が国が誇る精鋭の戦車乗りの中で小官の知る限り貴女の右に出る者はおりません。』

「………。」

『それにお解りだとは思いますが、我らが指揮官の御前に生半可な腕の者…「分かってる!分かってるわよ!」。』


マリーは艦長の声を遮るように叫ぶ。


「自惚れじゃないけど私、いえ私達以外に我らが指揮官の御前で見せられる技量を持つ戦車乗りは現在日本に来ていないわ…。」

『………。』

「だけどね…駄目なのよ…私じゃ…。私がFFRを任されている時に我らが指揮官は地上へ降りられた…。
つまりね…私は我らが指揮官の代行を務めるに値しない…と判断されたのよ…。
我らが指揮官は私の今までの行動にお怒りなのよ…。
そんな女が我らが指揮官の御前で軍人としての、戦車乗りとしての腕を披露する?そんな恥知らず出来る訳ないでしょ…。」

「マリー様…。」「お労しやマリー様…。」


絞りだす様に、血を吐く様に言葉を紡ぐマリー。
最後は涙を流しながら床に手を付き周囲の者達に支えられた。
その姿を見て艦長は溜息を吐き呟く。

809: 635 :2022/02/03(木) 16:39:24 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp


『我らが指揮官がおっしゃていたのはこのことだったのか…。』

「え…?」

『マリー・マフタン、FFR大統領でも、FFR総司令官代行でも、ましてやFFR陸軍の戦車乗りでもない貴女個人に我らが指揮官より伝言を賜っております…。』


我らが指揮官よりの伝言、その言葉にマリーの顔は青ざめ周囲の者達も緊張する。


『【戦艦リシュリュー(あの子)を出汁にお小遣い(予算)強請り過ぎたの以外は怒っていないからさっさと顔を見せに来なさい、バカ娘】だそうです。』

「え…?」


予想外の言葉にポカンとした表情をするマリー、周囲の者達も狐につままれた様な顔をしている。


『我らが指揮官はお怒りではありません…そもそも我らが指揮官があの御姿で下界に、いえ現世に降りられたことそのものが事故だそうです…。』

「どういうことです…?」


呆然とするマリーに代わりサン・シール以来の同志の一人であるオリアーヌが質問する。


『あの御姿は霧の向こうで戦う先達や父母達を心配された我らが指揮官が己の魂を分かち霧の向こうへと渡らせた半身であるそうです。』

「なんですって!?」

『我らが指揮官の半分は現世に残り戦艦リシュリューの中で我らFFRをみそなわれ、
あの姿艦娘としての我らが指揮官はオセアンや提督、元帥らと共に霧の向こうの戦場に立たれているそうです…我らFFRを霧の向こうの悪意より守る為に…。』


全員がその話に呆然となる。
FFR神話から見れば分からない話ではないがこうもさも真実の様に言われると混乱する。


「だが日本の女神でも戦艦金剛やイゼイレイゼ(イゼイラ人)の女神であるナヨクァラグヤがいるのはどういうことだ!?」

『霧の向こうの悪意とは現世の我々へ見当違いな恨みや憎しみを募らせ化け物と化したセクト共だそうです。
故に日本やイゼイラの女神とも歩調を合わせていると…かつてのエストシナ戦線と同じですな…。』


【かつてのエストシナ戦線と同じ】、その艦長の言葉は全員の腑に落ちた。
例え国も宗教も考えも違えどヒトの尊厳を守る為にヒトは協力できるのはここにいる誰もが知っている。
それがこの世界での最低限のルールでもあるからだ。ならば女神たちが同じ事をしていても不思議ではない。

それを聞き終えマリーの瞳から再度涙が流れる。
今度は悲しみの涙ではない。自分が我らが指揮官から見放されていないという安堵の涙だった。
その姿を見ながら艦長の心は痛む、FFR国民にとって身を引き裂かれる思いだが総司令官代行であるマリーに伝えなければならない。


『総司令官代行、先程話した通り艦娘の我らが指揮官は霧の向こうの御方です…故に提督がこちらに来られたのです。』


艦長の言葉にその場の全員の目が見開かれる。


『霧の向こうへの門が安定する数ヶ月後、我らが指揮官は霧の向こうへ戻らなければなりません…ジャン・スール提督はそのためにいらっしゃたのです…。』

810: 635 :2022/02/03(木) 16:39:54 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp
以上になります。転載はご自由にどうぞ。

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最終更新:2022年02月13日 12:06