177: 弥次郎 :2022/02/13(日) 22:55:15 HOST:softbank060146116013.bbtec.net
憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「醜貌割鏡/習貌歪鏡」6
アメリカ合衆国。
未だにBETAの侵攻を遠方の彼方に置き、後方国家として前線国家を支え続ける超大国。
東西冷戦において東側陣営を率いていたソ連をはじめとした共産圏がBETAの侵攻で瓦解したことにより、事実上の覇権国家となった国でもある。
この世界において、
アメリカの果たしてきた役割は大きかった。
宇宙開発の時点でもそうであったように、多方面で人類の延命に大きくかかわってきた。
戦術機の開発・生産・配備・改良、着陸ユニット迎撃防衛システムである「シャドウ」の配備、食糧・医療支援。
難民の受け入れ、国連軍への人員及び物資の供出、前線国家支援のための国債の引き受けなどなど。
BETAとの総力戦において、後方国家であり資源国家であり超大国であるこの国が果たしてきた役割は極めて大きい。
最も大きいところで言えば、BETAの研究においてその国力故に大きくリードしているということか。
カナダに迫った着陸ユニットを迎撃し、そこからBETAやら何やらを発見し、研究しているというのは大きい。
その中で発見されたのがG元素であり、それを用いた抗重力機関がML機関であり、行きつけば五次元作用爆弾であるG弾にたどり着く。
このG弾こそが、核兵器以上の戦略兵器として着目を受け、AL5計画の主軸に据えられている。
しかし、そんなアメリカ合衆国であったが、控えめに言って混乱状態にあった。
それもそのはず、G弾の炸裂に伴う、文字通りの意味で天変地異に翻弄されていたのだから。
最も大きなところでは、ハイヴに対して用いられたG弾が全く予期しない効果を発揮したことであろう。
G弾は確かに横浜ハイヴをBETAもろとも吹き飛ばした「ことになっていた」。記憶はある。しかし、途中経過がすっ飛ばされ、結果だけになっていた。
そして、爆心地にはなぜか国連軍横浜基地という名のAL4の拠点が出来上がっており、G弾によって確保されるべきものが残さず取られた状態にあった。
そして、全く未知の勢力、宇宙から現れたという地球連合を名乗る、同じ人類による組織との接触はその混乱に拍車をかけた。
BETA以外の知的生命体に接触した、しかも同じようなホモサピエンスに。それはまさしくAL計画に始まるこれまでの対BETA戦略の崩壊さえも、意味していたかもしれない。
このアメリカ合衆国を担当することになったのは、依然述べたとおりに大西洋連邦だった。
同じ土地、同じ母語をしゃべり、民族的にも似通っているからこそ、対話のハードルは低いのではという目論見もあっての抜擢。
だが、その目論見は半ば失敗に終わってしまっていた。
何しろ、これまでの30年以上をBETAとの戦いに費やしてきた国家なのだ、歴史が違うどころの話ではなかった。
人種差別や公民権、あるいは社会一般の常識など、想定されたのとは違うところが多く存在していた。
また、対BETA戦の中で醸成された一種の空気---無知、あるいは騙りが、アメリカ国内には蔓延していたのだ。
冷戦時代の思考のフレームを引きずり、そして地球唯一の超大国という立場は、それを誘発させるのに十分すぎるものだったということだ。
178: 弥次郎 :2022/02/13(日) 22:56:43 HOST:softbank060146116013.bbtec.net
- C.E.世界 融合惑星 β世界 現地主観時間1999年9月3日 アメリカ合衆国 ワシントンD.C. 在米大西洋連邦大使館
護送車を引き連れた車の列が、臨時の大使館となっているホテルの駐車場に滑り込んでくる。
大西洋連邦の運用する時系列的には未来の車だ。要人が乗り込むことも前提に、防弾・防爆などあらゆる対策の施された高級車だ。
ホテルのロータリーで待ち構えていたSP達が展開して周囲を固め、安全が確保されたところで車の中からその姿を現す男がいた。
スティーブン・アームストロング。大西洋連邦上院議員であり、今回のβ世界のアメリカ合衆国を相手とした外交の担い手の一人だ。
アメフトと議員になってからも「運動」を欠かさないこともあって、鍛え上げられた肉体はアメリカ的なマッチョイズムに適合するような巨躯だ。
のそりと車から姿を現し、堂々と歩みを進めていく姿はその気がないとしても周囲を圧倒し、威圧するものであった。
だが、その男の眉間に刻まれた皴は深い。
アームストロングだけではない、続けて降りてくるSP達やサムエル・ホドリゲスら腕利きの護衛達も同様だった。
その理由はあえて語るまい。ただ一つ言うなれば、この時代のこの世界のアメリカは文字通り白人にあらずんば人にあらず、であった。
そう、大西洋連邦は、そして地球連合は決して歓迎されていない。政府からも、一般市民からも。
片や大西洋連邦からすれば「人種」などという鎖で自分を縛り付けて古い考えに固執する国家。
片やアメリカ合衆国からすれば「人以下」と群れ、行動を共にしている、控えめに言って狂った国家。
そうであるがゆえに、外交官という立場にあるにもかかわらず、無体な扱いを受けることがままあった。
それは何も外交の場においてだけでなく、こうして移動したりする際の市民からの対応や「もてなし」からもわかる。
(ボスの機嫌は最悪だな、こりゃ……)
高周波ブレードを格納したケースを背負って続くサムは本日の一連の動きを思い出しながら心中でつぶやく。
アメリカ合衆国はAL5を推進する国ではある。だが、内部では実際そこまで統一されているというわけでもない。
事実、G弾の使用後に起きた事態---融合惑星への転移、重力異常などをあげて非難する声もあるくらいだし。
米国はヒュドラ---多頭の毒龍にたとえられる。それ即ち、内部ではいくつもの組織や集団が存在し、利害関係にあるということなのだ。
故に、G弾に懐疑的な派閥との接触や交渉は順調だった。それこそ、G弾の影響について理論的に説明。
連合としてはこの危険な戦略兵器の使用を禁じる、少なくとも最終手段として避けるべきという論調を展開したかった。
懐疑派にとっては自分たちの言い分に理論だった説明がつくことになり、今後の交流などは順調に進む気配を見せていた。
そして、戦術機の開発計画などにおいて技術交流などを進めるなど、具体的なプランの策定なども行われて双方で合意も得られている。
日本を巻き込んだ新世代戦術機開発を目的としたXFJ計画を発展させて行うという点でも、協力して行えるということもだ。
だが、肝心の推進派が、そして民衆の意思を受けて政治的な意思決定を行う政府がその声を無視しては溜まらない。
ということもあって実際に会って話をしたのであるが、これがまたかみ合わず、交渉は難航した。
G弾によりお手軽にハイヴをつぶし、BETAを駆逐できるという考えのアメリカ首脳部は、提示された危険性の証拠を欺瞞と捉えていた。
これは技術や科学の発展度合いなどによって律速される認識の差異というものもあるのだろう。
だが、連合がそれほどまでに恐れているのだから、むしろカードとして有効なのではないかとさえ考えてしまったのだ、アメリカは。
それが有効な兵器なのだという自己の中での納得を作ってしまったため、さらに話が通じにくくなるという負の循環。
挙句、口出しが過ぎれば交渉を打ち切ってG弾を使用するぞと脅してくる有様だった。アームストロングでなくともこれにはあきれるしかない。
179: 弥次郎 :2022/02/13(日) 22:57:14 HOST:softbank060146116013.bbtec.net
確かにG弾というのは力だ。新しい時代の戦略兵器。アメリカが考えている「B戦後」のことを考えれば手放したくない兵器だろう。
調べたところによれば、G弾の開発というのは1979年からスタートした、アメリカという国家が総力を挙げたプロジェクトだという。
つまるところそれの開発のために投じられた国力などを考えれば、早々に手放したくない、というわけである。
旧世紀でいうところのコンコルド効果といってもいい。それだけのリソースを割いたのだから、それだけのリターンがなくてはたまらないというわけである。
(けど、だからと言ってそれで脅しをかけてくるのはねぇだろう)
アームストロングに従いホテル内を移動していると、あからさまにホテルマンから不躾な視線を送られる。お世辞に接客態度が良いとは言えない。
「あれが連合からの外交官か?」
「ハン、単なる田舎者の礼儀知らずさ」
通り過ぎた後で、ホテルマンたちがぼそぼそと話す声が聞こえた。不快どころではない。こちらは一国の外交官一行だというのに。
ともあれ、大西洋連邦としてもそのG弾が手放せない理由も理解している。
とはいえ、そんな危険なものをよくわかっていない人間がもっているほど怖いものもない。失礼かもしれないが猿が戦略兵器のボタンを磨いているの等しい
その危険が惑星どころか太陽系全体にまで及びかねないものといっても納得しないのだ。
そして、不可解な現象は伴ったとはいえ、G弾によるハイヴ攻略は成功したわけであり、実証済みであるという見解も示されたのだ。
融合惑星の誕生を招いたといわれても、そもそも融合惑星という状態にすら懐疑的であり、さらにはその程度ならば問題ない、とまで言われもした。
(こりゃあ、他の方面で成果を出すしかない、かねぇ)
単なる護衛であるサムでもわかる理論だ。
つまり、G弾には価値がないということを証明するしかないということ。
使われては困る。ならば、アメリカの側が自発的に使えないものと納得さえすればいい、というわけである。
ハイヴの攻略などをそのG弾を抜きにした兵力で実行して成功させることなどが最たる例であろうか。
ただ、それはボスがほかの外交官とも話していたが、この世界の政治や国際事情に介入して行わなくてはならないことだ。
このアメリカはともかくとして、他の地球連合加盟国が行っている他国への政治的な接触がうまくいくことを祈るしかない。
「そういうことか」
「どうした、サム?」
思わず漏らした声に、同じく護衛のサンダウナーが反応する。
「それはな……いや、今は言わない方がいいな」
少なくともボスの前では言えない。
他者の力を当てにしてチマチマやるのをボスは好きではないのだ。そして、最近の苛立ちの原因はそこにもあるのだと。
ともあれ、あとで話そうということでサンダウナーの言葉を止める。あの面接再びは勘弁してほしいところがある。面白かったが。
180: 弥次郎 :2022/02/13(日) 22:58:21 HOST:softbank060146116013.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。
この時のアメリカ、地球連合を過小評価していて、G弾がカードになるのか!としか思っていない模様。
夜郎自大をこじらせるっていやねぇ…
181: 弥次郎 :2022/02/13(日) 23:00:11 HOST:softbank060146116013.bbtec.net
179
修正を
×
とはいえ、
○
とはいえ、そんな危険なものをよくわかっていない人間がもっているほど怖いものもない。失礼かもしれないが猿が戦略兵器のボタンを磨いているの等しい。
最終更新:2022年02月18日 13:41