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銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ ゲートの先は神崎島もヤルバーンも無いようですその七十三


眠らない街神崎島鎮守府神崎島市、鎮守府海軍工廠。
アジアはおろか世界に比例するものさえない超巨大ドック、工場群を有する世界最大の海上艦艇工廠である。
その小型艦艇用ドックには盤木が並べられ、ドック周辺には島はもとより日本各地より集められた大勢の船職人、工員が動き回っている。
そして付随する大規模製鉄所、化学コンビナートから金属加工工場に至るまで全てが久方振りの全力稼働を始めていた。

暁型駆逐艦の再建造、日本のふじ型やアメリカのリンカーン級と違いその過程を辿る必要がありかつてと同じ方法を取るしかない。
昭和も始めの艦艇だ、その過程は人力も多い。加えそのトン数は満載で二千トンを超える。通常であれば問題ない。
しかしマシュの状態はいつ悪化するか分からない、命を繋ぐ為に時間も人も島ですら足りないかった。
そこで銀連日本側のヤルバーンが大量の資金を拠出し日本各地の中小含む工場まで動員を始め、
ハイクァーンが普及し技術を伝えるだけだったり特殊なものを製造していたり、他国の消費の為の輸出の為のみだったりで続いていた日本の工場達は久方振りの騒ぎに湧いていた。

また、日本各地やティエルクマスカ各国からも鉄が供給され始めていた。
鋼材を作る為の鉄、そのコアとなる部分の鉄はただの鉄では駄目なのだ此度に関しては人の想いが込められた鉄でなければ。
如何な小型な暁型といえどそのコアとなる鉄の量ですら数百トンに及ぶ。
そのためにティアマトが単独顕現で戻ってきて日本各地に加えティエルクマスカ各国までも行脚し各地でコアとなる鉄を作り出す為、娘(マシュ)の為に頭を下げて回っていた。

お涙頂戴ではないが親しい人々ともたった一人逸れ、ゲート側ヤルバーンが訪れる機会を生んだ健気な少女が命の危機に瀕している。
しかも仲間を殺され、故郷を追われ数少ない仲間と放浪の旅へ出ざるを得なかった滅ぼされた別の地球の少女。
それは銀連日本及び銀連日本側ティエルクマスカ各国で凄まじいムーブメントを生んだ。
加えバトル・オブ・ブリテン等で彼女の友人や仲間が果たした役割は少なくない。
そしてあのティアマトが母として頭を下げ、ただただ電に再び親しい人に会いたいと願ったことが伝えられ一気に爆発した。


「マシュ・キリエライトを救え!!」


特にイゼイラでは並行宇宙のイゼイラへ希望を齎す切っ掛けとなった少女であるためにその声は大きかった。
加え親しい人に再び会いたい、会うまで死ねないという願いはイゼイラ人ならば誰でも共感する。
日本、イゼイラもとよりティエルクマスカ各国で反射炉始め人力による旧式の炉が乱立、
その基礎となった日本のとある島の炉を含め数億人が此度の製鉄に携わることとなった。
お陰でコアだけでなく艦体全体を構成可能な量の鉄が供給されたのは僥倖であった。

加え鉄に関しては遠く欧米からも少量であるが提供の打診があったが若干困ったことになっていた。それが人力ではなかったからではない。
米大統領の夢枕にコヨーテやら雷纏った鳥やら白いバッファローやら立った翌朝枕元に置いてあった鉄塊や、
同様に英国女王陛下や法王の夢に白い獣連れた胡散臭い白い男やらジョニデぽいのが出たら置いてあった鉄…。
というか勝利すべきと付きそうな折れた剣やなんか赤いののついた釘だったりしたからだ。
なお走り書きで神崎提督宛とか書かれた紙が添えられてたとか。
ヤベエもん増やすなとはゲンナリとした表情でそれらを受け取り愚痴ってたら鳩に、通信越しに騎士王に頭下げられた提督の談である。
どうも大工の倅とロクデナシが良かれと持ってきたようだ。

312: 635 :2022/02/17(木) 23:13:47 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp





「フゥ…ヤルマルティアの一部国民の中に蔓延る反ヤルマルティア自立主義の宗教、確かフリンゼの報告ではケンポウキュウジョウ教…でしたか?
加え、チャイナやロシアといった人格改造刑を国家ぐるみで行う様な犯罪者国家…。
それらが我がティエルクマスカの国民…ケラーマシュを誘拐、人格改造を行おうとしていたと報告を受けた時は驚きましたが…。」

「幸いその場に並行ティエルクマスカの軍人やヤルマルティアの創造主が居て下さったから事なきを得たが…企みが成功していたらと思うとゾッとするよ…。」


ゲート側イゼイラの議長執務室、こちら側のサイヴァルとマリヘイルは造成したゼルボードに映る文章に目をやる。
そこには渋谷でのマシュ誘拐未遂事件の顛末、日本の政治状況や地球の国際情勢などの報告が記されている。


「幸いにもそのケンポウなんたらをそのまま鵜呑みにするヤルマルティア国民は多くないようだ。
非中立営利報道機関は我が国民を外国に渡すのが得策と宣伝しているようだが国民の大多数は彼女に同情的だ。
しかし、その宗教の根拠となっている法、戦力の保持や交戦を否定する法を変えることには消極的なようだがね…。」

「フゥ困ったものです。ヂラールやガーグデーラ、話の通じない相手や目的を持って侵略する輩を想定しない法など意味はないのに…。」

「イゼイラ議会でもそこを指摘する者は多いよ。軍の派遣だけでは全く足らないと。
そういった反ヤルマルティア派議員が政権取ったり、チャイナやロシアに同胞が蹂躙される前にイゼイラで保護すべきと言う者も少なくない…。」

「保護?そういうのは併合と言うのですよ。そういえば銀河連合ニホンは、向こうのティエルクマスカはどう動くのかしら?
もしもの時、彼らに統治して貰うのも一考すべきでは?」


ゲート側のティ連ではゲート側日本はヤルマルティア、銀河連合日本側はそのまま銀河連合日本、もしくはニホンと呼ばれている。
その銀連日本による統治案を示すマリヘイルの意見にサイヴァルは溜息を吐く。


「向こうのフリンゼや連合加盟国のカンザキトウ鎮守府で外相をしている向こうの君ともゼル通信で会談し、その時似たような話を出したんだが…。」

「私と…?」

「言われたよ。ニホンによるヤルマルティア併合は悪手だと…並行宇宙同一存在国家であろうと同胞の因果を他者に渡すのはイゼイラの民が許さないだろうとね…。
イゼイラにとってヤルマルティアはもう聖地に留まらない、発達過程を辿ったイゼイラそのものだと思っていることだろうと言われたよ。
指摘されて私も気づいたよ。施政者としては失格だがヤルマルティアの、同胞の因果を他者に託すのは許しがたいという感情を私も持っている…。」

「サイヴァル…。」


重苦しい沈黙が執務室を包み、マリヘイルは話を変える。


「そういえばケラーマシュの容態は…?」

「容態は安定、身体は動かせないが意識は戻っているそうだ。タマシイ?というものが飽和している状態だそうだ。それで身体が動かせないとか。」

「タマシイ?」

「専門家ではないので分からないがイゼイラの科学者が言うには意識体ではないかという推測だ。
兎に角多数の因果の意識体がケラーマシュの脳の量子意識体に存在しそれが量子意識体を圧迫混線しているのではないかと言っていた。
しかし推測でしかないトーラル科学の既知外の事象だ。イゼイラで治療は不可能と匙を投げているよ。」

「なんと…。」


マリヘイルは悲しそうな声を出す。

313: 635 :2022/02/17(木) 23:14:25 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp


「でもニホンが動いてくれているそうだ。治療手段、ある種のサイボーグ化に近いそうだがそれを施す準備をしてくれている。ケラーの知人達がいたのも大きいようだが…。」

「知人…あの異聞帯やカルデアという組織の?」

「ああ…ケラーはこの宇宙で一人ぼっちではなかった。」

「数ある並行宇宙を超えて友人と再会する…どれだけケラーマシュは良き因果に恵まれているのでしょう…。」

「それは我々も同じだよマリヘイル…。」


サイヴァルは椅子を立つと執務室の窓辺へと歩き出し、マリヘイルも続く。
そこからはサントイゼイラの町並みが見える。
目を凝らせば人々が笑いあい自転車に乗ったり、野球をしたり楽しんでいる。
日本から、いや同胞達の築き上げたヤルマルティアから齎されたものに親しみ謳歌し、人々の顔に写る絶望の色は薄くなっている。


「ヤルマルティアは聖地どころか我々の同胞達が築き上げた発達過程文明であった。我々も発達過程文明を築き上げることが出来たのだ…!」

「そうですね…それはイゼイラ…いえティエルクマスカ全体にとっても非常に意義深いことです。」

「そしてもう一つ、混乱の元になるからと君にも伝えていなかったことがある…。」

「何でしょう?」

「既存の精死病は向こうのティエルクマスカの技術で治療出来たな?」

「ええ…新しい方、何者かが糸を引いているものには効果ありませんでしたが…。」


マリヘイルは苦虫を噛み潰した様な顔をする。


「その治療の算段がついたらしくケラーマシュの治療に合わせその技術を貰いにフリンゼ達がニホンへ出向くそうだ。」

「まあ…。」





『戦艦大和はこれより日本を離れます!!』


戦艦大和の艦橋に映し出される造成されモニターから流れる生放送を聞きながらどうしてこうなったのかとこちら側の柏木は黄昏る。
マシュの艦娘化の為に大和は日本を離れることが決定した。加え金剛も同行、艦隊の指揮は長門へと引き継がれた。
大和の艦橋から下を見下ろせば岸壁で暫しの別れにポルらと抱き合うこちら側のフェルやリアッサと手を握り合うシエの姿が見えただろう。
マシュを救う手立てと呪われた精死病の治療手段を求めティエルクマスカ銀河どころか天の川銀河すら越えてイスカンダル…、
もとい銀河連合日本まで赴くのだ。何故か自分も一緒に。

自分がマスゴミや野党共の手から隠れる為に日本離れるのはまあ分かる。
あいつら八王子の家に不法侵入、窃盗した上に逮捕されたらジンケンガー!シルケンリガー!とか叫んでたし何されるか分かったもんじゃない。
向こう側、銀河連合日本へと一時的に渡るのもまあ分かる。
向こうの方が安全だし避難した方が良いだろう家族も連れてってくれるし、でも。


「なんで民間人の俺が総理の親書預かってるんですかねえ。こういうの同じく同行してる白木の仕事やろ…政府特派大使にされてるし。」


しかも極秘裏にだ。こちら側の白木に験担ぎもあるから諦めろとか言われたが、
溜息を吐くと視線の端にテレビ放送に映る柏木の家で犯罪をしてもなお正義の味方面してる犯罪者な自称平和団体やマスゴミ、野党共が映った。

314: 635 :2022/02/17(木) 23:15:05 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp


「あいつらティアマト様辺の怒り買ってさっさと全員死なねえかな…」


柏木は毒づくとゼルモニターには大和のタラップを登りヴェルデオ達に手を振るフェルの姿が見えた。



大和が停泊していた岸壁から離れ自力で旋回し東京湾の出口の方を向く。
艦橋から埠頭の人混みを見れば自分達を見送りに来た総理達の姿も見えた。


「機関始動!微速前進0.6。」


艦橋に操舵手の声が響く。
段々と岸壁が離れ遠くなり、大和は晴海の埠頭を離れた。
横浜沖を通り報道ヘリが飛び回り戦艦大和の姿を映す。
東京湾海上、上空共に政府の命令で開けられているので陸の方の制限されていない所でだがご苦労なことだ。


『戦艦大和は任務の為に日本を離れ銀河連合日本へと帰還するそうですが、如何なる任務なのか銀連日本は明らかにしていません。
今後日本を発ちハワイゲートを通過すると思われます。』


その報道を聞いて柏木は普通はそう思うじゃんか?と笑った。
ハワイ沖のゲートへ行くには途中に他国含め不確定要素があり過ぎた。
マシュを抱えている以上安全策を取らざるを得ない。
画面内では背景で宇宙戦艦ヤマト発進のテーマをドチャマカと演奏している者もいる偶然だがこの時に似合う程のBGMもないと柏木は思う。
この艦は向かうのだ文字通りの希望を求め銀河を離れ運命を背負い。


「いいか確認だが間もなく空間振動波機関本格始動、風の塔通過直後に『離水』だ。」

「はい任せて下さい!ハイクァーンプラズマロケット、斥力推進機関最大出力!離水まで後四十。」


乗員が確認し合う、本来艦娘大和のみで全工程を可能だが人の手を介在させることで二重でフェイルセーフとなる。
そしてその瞬間戦艦大和が海上艦艇らしからぬ急加速を行い、軍艦色の艦体が純白へ変わる。


『あっ!?戦艦大和が急加速しました!凄いスピードです!!』


渋谷の交差点で、昼時のラーメン屋で、自宅で…永田町で遠くホワイトハウスやクレムリン、中南海で人々は目撃する。
巨大な風の塔が急速に見えてきた所で操舵手はカウントを開始する。


「5、4、3、2、1…空間振動波機関接続、全力始動!!」

「大和発進!!」


操舵手の声と共に艦長である艦娘大和、伊邪那美命を降ろした彼女の発令と共に戦艦大和の巨体が水を纏い海面より飛び上がる。
戦艦大和、その純白の艦体は上下に分かれ超重力砲も含むその全機構を展開する。
副の空間振動波機関を鳥の翼の様に広げ、光の軌跡を残し空を駆ける大和。
その大和を見送る総理やヴェルデオ達、その光景を見てヴェルデオが呟く。


「ああ…創造主ナヨクァラグヤ、貴女とヤルマルティアの血を引く子孫が希望を求め並行宇宙の壁すらも超え旅立ちます…。どうかフリンゼの旅路をお守り下さい。」


ヴェルデオは二礼二拍手一礼、日本で覚えた創造主への願いを込める際の手順を踏み旅路の安全を願った。

315: 635 :2022/02/17(木) 23:15:35 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp




空を駆ける大和の艦舷、そこにゲート側のフェルは先程まで離れゆく日本を暫く見ていた。
シールドを張り安全なそこで日本から離れ始めゼルモニターを映せばヤルバーンの乗員達や日本政府に自衛官達。
フェルと一緒に旅してきた、日本で出会った同胞達が大和に向かい手を振り続ける姿がゼルモニターに映る。
暫しの別れにずっと笑顔で応えようと思ったが熱いものがこみ上げる。
手摺から身を乗り出し見下ろせば遠く小さくなっていく自身に流れるもう一つの血の故郷が金の瞳に映る。


「必ず、必ズ…!希望を携えてここへ、もう一つの故郷へ!マシュサンと一緒に帰って来マスカラ!!」


フェルは涙を流しながらもう見えないヴェルデオ達に手を振り続けた。




他国への抑止の守護者として日本列島、その上空五〇〇キロメートルを漂う砲艦アルテミス。
現在月女神を宿した艦(ふね)を横目に大和は飛び続ける。


『原初神イザナミ―――よき旅を―――。』


月女神よりの発光信号、それに応え信号を送ると戦艦大和は光の速度を超えた。

戦艦大和、202X年9月某日日本を出発、同日大気圏突破。
火星へディルフィルド試験航行後目的地へ向かう。



目的地冥王星ディルフィルドゲート基地。

316: 635 :2022/02/17(木) 23:16:19 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp
以上になります。転載はご自由にどうぞ。

他国「「「音紋とか取ろうと網張ってたら飛んで行かれた…。」」

319: 名無しさん :2022/02/17(木) 23:27:10 HOST:58-3-121-156.ppp.bbiq.jp
311
×それが人力ではなかったではない。 ○それが人力ではなかったからではない。

324: 名無しさん :2022/02/17(木) 23:54:34 HOST:58-3-121-156.ppp.bbiq.jp
314
×銀河を離れ運を命背負い。 ○銀河を離れ運命を背負い。

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最終更新:2022年02月23日 13:46