819: 弥次郎 :2022/02/20(日) 21:46:13 HOST:softbank060146116013.bbtec.net

憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「The Wild Arrows」5



 イギリス王国軍特別外人部隊「アロウズ」。
 その実態は、いわゆるイギリスに出現した跳躍者たちを集めた兵士たちの集まりである。
 イギリスにおける市民権と居住権および金銭などを得る対価として、外国籍の兵士たちを雇用するという形だ。
それはかつてフランスに存在した外人部隊の焼き直しともいえるものであり、同時に、国連軍からも米軍からも見捨てられた兵士たちの受け皿であった。
当初は身元の各員に加え、状況把握を行うため、ということでイギリスにとどめ置かれていた彼ら彼女らは、BETAの大侵攻の際して見捨てられたのである。
 そんな彼らにイギリスをはじめとしたEUが手を差し伸べたのは、人手を欲していたというのもあるだろう。
彼ら跳躍者たちは民間人も含めれば数十万人以上に上るわけであり、それだけの兵力を遊ばせるのは持ったないというわけだ。
元より人口も減っている中において、それだけのプラスが発生したことはありがたい限りである。
経済の担い手や労働力になりうる彼らは、EU各国にとっては喉から手が出るほど欲しいものだ。
同時に、国連軍と米軍がいなくなったために、その補填を行うことができる人材を欲したというのもある。
 しかし、最も大きいところは彼らの処遇にEU各国が同情した、というのもあるだろう。
 言い方を変えれば、跳躍者たちは数十万人規模の難民ともいえるわけであり、彼らを見捨てるのは余りにも無体すぎる。
しかも、過去の記録に残っている戦闘での戦死者や行方不明者が多かったのだから、冷遇するのははばかられるどころではないのである。
 そういった妥協と心情の両方から、この舞台は組織されるに至った。
 ついでにいえば、この跳躍者たちを見捨てた米国や国連への非難の声はイギリスを筆頭にEU内で急激に高まったといってよい。
当然ながら、置いてけぼりにされてしまったアロウズ内部でも、である。

 無論、米国や国連側の事情もあったのも否めはしない。
 過去に死んだはずの人々の集団がいきなり出現した、というのは常識的に考えればありえないことだ。
身元の照会などができる者もいればできない者もいるし、自称米軍所属だと言われても記録と合致しているかどうかを確かめなくては鵜呑みにできない。
情報の上書きに伴う政治的な混乱が発生していたことも相まって、米国がいきなり受け入れることは不可能だったのだ。

 加えて、突如として発生した難民数十万人というのは、アメリカにとっても大きすぎる数である。
 BETA大戦の影響で人口は減る一方だ。それは後方国である米軍にしても同じなのである。
国家防衛上の戦略のためとはいえ、米軍は世界各地の戦線に兵士を率先して送り込み、数で以て戦線を支えてきていた。
つまり、その分だけ死傷者は出るし、資源もリソースも割かれるし、消費するものは消費する。
そんな状況下でわけもわからない集団を引き取れと言われたところでも、その余裕というものがないというのが実情だ。
 そもそもアメリカ国籍とその市民権というのは安くはない。それと引き換えに兵士として訓練させて実戦に耐えうるようにするにしてもリソースも時間もかかる。
非戦闘員は国内に入れる必要があるが、それにしたって働くことができるかどうかは別にして養っていかなくてはならない。
その分の費用などは一体誰が用意し、あるいは補填してくれるというのか?という問題に突き当たる。

 そして、アメリカがBETA侵攻の発生時に述べたように、例え米軍や国連軍が居ようが居まいが、史上空前規模の侵攻には何ら影響を与えないと考えられたのだ。
攻勢作戦ではなく防衛戦ということになるので防衛三倍有利ということになる。だが、BETAの数は3倍どころではない。
衛星で確認されただけでも近隣のハイヴ4つから、あるいはそれ以上ユーラシア大陸奥地にあるハイヴから放出されたのだ。
その総数はまともに戦って凌ぎきれるものではない。戦略兵器の使用なども行えば多少は何とかなるとしても、まともに勝てるわけもない。
故にこそ戦力温存のために撤収するというのは合理的であった。無駄死によりもより可能性のある方に動かしたくなるものである。
米軍の兵士とて、アメリカという国家の国民であり、財産ともいえる。投げ出すにしても、それはいまではないという判断をしたのだ。

 こうして、EUとアメリカの対立は不可避となった。
 双方に理屈があり、理論には筋道が通っており、国家として譲れないところがある。
 だからこそ、交渉は決裂し、双方は別個に行動することになってしまった。
 感情にしても理屈にしても、なまじぶつかり合っただけになおさら拗れた。
 どこまで行っても、人は人。派閥や考えの違いは生まれてしまい、すれ違うというものなのか。

820: 弥次郎 :2022/02/20(日) 21:47:28 HOST:softbank060146116013.bbtec.net

 そして、BETAの侵攻が地球連合---この場合、担当国であった大西洋連邦の助力により防がれたのち、英国を筆頭としたEUは連合とのつながりを求めた。
腐っても鯛、地球上においては最も大きな後方国家の援助を半ば以上に切られた状態にあったのだから、当然のことながら支援を欲したのだ。
 内に数十万人の人口が増えていたことに伴うリソースの枯渇は死活事項だ。イギリスという国家はお世辞にも農業などに向いていない。
無論、生産能力は可能な限り底上げされてはいるのであるが、それでも供給には限界が伴う。

 食糧問題だけではない。生活を維持していくためのあらゆる物資やリソースが不足するのが見込まれていたのだ。
ここでアメリカに首を垂れるなど、感情的にも国民情緒的にも絶対に避けねばならない状態だった。
イギリスにしてもEUにしても、是が非でも大西洋連邦の援助の手はつかみたかった。
 幸いにして、国民感情という意味では大西洋連邦をはじめとした地球連合への好感度は高かった。
共に戦い、国難を切り抜けてくれたというのは広く広報によって伝えられており、悪い印象は与えていなかった。

 だが、それだけではだめだというのはEUもわかっていた。
 アメリカと同じ轍を踏むような真似をすれば、大西洋連邦は容易くそっぽを向かれることになる。
 だから、関心を引くというか、ただ甘えるだけではないという姿勢を示す必要があった。
オペレーション・アヴェンジによって大陸の一部奪還を為したのでそのエリアへの派兵を志願するのはもちろんのこと、積極的に交流を進めたのだ。
大西洋連邦が用いていたMSの技術の供与を求めたり、あるいは兵器開発や生産を共同で行えないかと打診を行っていった。
 そして、その一環としてアロウズという外人部隊を結成するに至ったのだ。
 前述の通り、兵力を欲していた、というのもある。同時に、国民感情と大西洋連邦からの視線を考えていたのだ。
行き場のない彼らをいきなり放り出すことは、どう考えても利にならないし、アメリカの同類と思われかねない。

 これらの動きに関して大西洋連邦は好意的な態度を表明した。
 少なくとも、交渉が難航していたアメリカよりはスムーズに行きそうであったし、最前線国家故に必死な態度が窺えたためだ。
現地勢力の協力を抜きにしてことを強引に進めてしまうことも不可能ではないにしても、それは余り望ましいものではないと考えられていた。
そういう意味では、EUが積極的に協力を選んでくれたというのは非常に大きかったのである。

 そして、大西洋連邦はEUとの間でいくつも計画や取り決めを交わすこととなる。
 これまで行っていた食料や医療支援の拡張実施。
 居住可能な海上都市の提供およびイギリス本土の環境改善。
 これからの時代を支える戦術機の新規開発や改良などへの協力。
 既存戦術機の部品や武器弾薬などの消耗品の製造・生産への協力。のちにこれは総合戦略計画「IXS」に発展。
 そして、国家間における防衛協定。EUはBETAの他世界への侵攻を阻止するために戦い、大西洋連邦はそれに協力するという主旨のそれを結んだ。
これらはのちに、アメリカとの交渉や対処に専念することになる大西洋連邦から企業連合へと引き継がれるのだが、それは微々たる差であろう。

 ともあれ、これによってβ世界の枠組みがこれまでとは大きく外れることになったのは、確定的な事項となったのである。
アメリカという国家に依存するのではなく、地球連合というバックを得ることになり、EUはより広い択と視野を得た、ということ。
どうしようもないほどに、これまでの世界から変わってしまったのだった。良きにしろ悪しきにしろ、である。

821: 弥次郎 :2022/02/20(日) 21:48:01 HOST:softbank060146116013.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。
次で区切りが付けられそうですねぇ。
後は設定集かなーって…

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最終更新:2022年02月28日 11:10